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『本麒麟』5年目の挑戦。“本麒麟らしさ”に新しい価値をプラスした限定商品「本麒麟 香りの舞」発売

「あなたの一番うまい!」を目指す『本麒麟』。妥協せずに手間暇をかけてつくり、育ててきたブランドが新しい挑戦をしました。

キリンビールから2022年11月8日(火)に期間限定商品『本麒麟 香りの舞』が発売されます。

ビール、発泡酒に続く“新ジャンル”の商品としてご愛飲いただく『本麒麟』ブランドが限定品を出すのは初めてのこと。今回の『本麒麟 香りの舞』は、『本麒麟』の力強いコクと飲みごたえはそのままに、和柑橘を思わせる香りの日本産ホップの「IBUKI」をブレンドしました。

『本麒麟』は2018年発売してから、4回のリニューアルを経て、お客様の「うまい!」を追求し、うまさを磨き続けてきました。

左が赤い缶の本麒麟、右が緑の缶の本麒麟 香りの舞(期間限定)

いま、香りに着目した新商品を送り出すことには、いかなる理由があったのでしょう。『本麒麟』ブランドマネージャーの岸川真と、『本麒麟』の中味を設計している、醸造担当の大橋優隆が、今回の『本麒麟 香りの舞』が生まれるまでを語りました。

岸川と大橋は、キリンビールの“同期”だといいます。「休みの日には一緒に釣りへ行く」というほど親しい間柄の二人。お客様のことを常に思いながら、“本麒麟らしさ”について徹底的に議論し、意見を交わしました。

ただ、『本麒麟』として良いものをつくりたい──。

その思いが形となった『本麒麟 香りの舞』には、本麒麟ブランドが愛され続ける未来への願いが込められていました。

マーケティング本部 マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 主務 岸川真

【プロフィール】岸川 真
マーケティング本部 マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 主務

マーケティング本部 マーケティング部商品開発研究所 中味開発グループ 主務大橋優隆

【プロフィール】大橋 優隆
マーケティング本部 マーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループ 主務


2005年から続いていた、新ジャンルへの挑戦

─まずは『本麒麟』ができるまでのことを聞かせてください。どういった経緯で、この商品は生まれたのでしょうか。

岸川:もともと新ジャンルというカテゴリーは、お客様にとって「妥協の選択」であったのだと思います。本音では『一番搾り』などのビールが飲みたいけれど、価格メリットなどで選んでいただいていたわけですね。

しかし、その状況に甘んじるのではなく、「おいしいビールを飲みたい」というお客様のニーズを真正面から捉え、選ばれる一本をつくろうと。キリンビールが持つ技術を全て搭載し、味わいにこだわって生まれた新ジャンルが『本麒麟』です。その成果は、多くの方にご愛飲いただいていることで証明できているのではないか、と思っています。

大橋:実は、新ジャンルの商品は2005年に発売した『のどごし<生>』以降、12商品ほど挑戦してきたのですが、お客様のニーズを捉え続けることができず、ブランドとして定着させられませんでした。ついに捉えた『本麒麟』の発売は5年前ですが、『のどごし<生>』に続くブランドの確立という意味では、2005年からチャレンジし続けてきたともいえます。

─その意志は『本麒麟』というネーミングにも表れているように感じます。

岸川真さんが喋っている様子

岸川:そうですね。決まるまでには、かなりの議論があったと聞いています。発売当時の書類などを見返すと、「本」という漢字には、「本気」や「本物」という思い、あるいは全ての原点となる「大本」の意味合いが込められています。さらに社名を冠することで、新ジャンルに対しての熱意も表現しています。

『本麒麟』は、日本中のお客様にデイリーに楽しんでいただきたい商品として生まれました。週に一度だけの特別な飲み物ではなく、お客様の日々の生活で気に入っていただけるものになっています。それに合う味覚は何かを探った結果、今のうまさのバランスに落ち着いています。

大橋:私は『本麒麟』の中味開発担当としては二代目なのですが、初代から見聞きするに、中味の開発はかなりの苦労があったようです。それまでの新ジャンルにお客様が求めていたものは、どちらかといえば、スイスイと楽しめる「飲みやすさ」だったと思います。

それに比べて『本麒麟』は、一口目から感じる確かなコクを持ち、それでいて新ジャンルでに求められる飲みやすさも失ってはいけない。このバランスの取り方が非常に難しかったんですね。実は毎年、中味はブラッシュアップを重ねています。仕込釜での煮込み時間を分単位で変えたり、温度を1℃単位で管理したりなど、原材料の配分も含めてさらなる味わいを追求しています。

─理想とする味わいは見えているのでしょうか?

大橋:やはりビール類なら、1本で満足感が得られたり、心地よい“飲みごたえ”があったりしてほしいものですが、岸川が言うように『本麒麟』が目指す理想のうまさはデイリーに飲みやすいこと。ほどよい飲みやすさを楽しんでいただきつつ、たとえば週にビールを5本飲んでいる方ならば、そのうちの3本が、気が付いたら『本麒麟』になっていた!という位置づけが、私の目指している味覚です。

言うならば、目指しているのはお客様にとって日々手に取ってもよいと思っていただける「普通のうまさ」です。ただ、「良質な普通に勝るものはない」のです。この言葉は、水凪トリさんのマンガ『しあわせは食べて寝て待て』の名言を引いていますが、まさに言い表してくれていますね。

今は『本麒麟』の未来に向けてチャレンジできるステージ

本麒麟香りの舞を手に持つ

─“良質な普通”を目指す『本麒麟』が、それまでの“普通”から路線を変えて、香りに着目した新商品『本麒麟 香りの舞』を発売されます。どういったきっかけがあったのでしょう?

岸川:理由は複数あるのですが、1つの大きな契機になっているのは2023年や2026年に予定されている酒税法改正です。それにより、ビールと新ジャンルの価格差が近づいていくことは、新ジャンルのカテゴリーにとっては逆風といえます。

─ビールより手頃な価格、という新ジャンルのメリットが減るからですね。

岸川:そうです。ただ私たちは、酒税法改正後の2027年以降、そしてこの先もずっと『本麒麟』をお客様にご愛飲いただきたい。まだ『本麒麟』の魅力に気づいていないお客様にも限定品をきっかけにした出会いを生まなければ、いずれ酒税法改正の荒波に飲まれてしまうと考えました。そうやって未来から逆算すると、チャレンジするタイミングは今しかない、と思えたんです。

『本麒麟』は発売して約5年が経ち、「赤い缶を見ると本麒麟を想起する」といったブランド価値をお客様へ定着させることができました。私たちはそれを「アセット」と呼んでいますが、アセットが育っていない中で限定品などを設けると、お客様の中で商品に対するイメージが混乱してしまいかねません。

酒税法改正という荒波を見越した逆算、そしてアセットの定着が実現できた現在、という両面から、『本麒麟』は未来に向けてチャレンジできるステージである、と決断しました。

岸田さんと大橋さんが話している様子

─そのチャレンジとして「香り」を選んだのは、なぜですか?

岸川:最近のクラフトビールの楽しまれ方にも顕著ですが、お客様の嗜好に「香り」という新たな味覚の軸が表れてきたように感じています。ビールに対するこれまでの香味は「爽快さ」と「コク」のバランスをいかに取るか、といった評価軸であったところに、「香り」という軸が増えた。そこに私たちも着目したんです。

大橋:ビールに求める味覚は、これまで大きく3つに分かれていたと思います。「コクがある飲みごたえを楽しみたい」「爽快にさっぱりと飲みたい」「バランスよく食事に合わせたい」という分け方ですね。ただ、家飲み需要も相まって、さまざまなビールを楽しむお客様が増えたことにより、これらに限らないニーズが生まれてきています。

実際にお客様調査にも表れていまして、「ホップのフルーティーな香りが好き」といった回答が急増しています。『本麒麟』が掲げる「あなたの一番うまい!になるために。」というキャッチコピーに照らすならば、「香りを楽しみたいお客様にとっての一番」を目指して私たちが提供できることを考えたのも『本麒麟 香りの舞』の着想でしたね。

“本麒麟らしさ”とは何か、という問い

大橋優隆の横顔

─“普通”というバランスを取ってきたところに、香りという要素を足さなければならない。どのように中味の開発に挑まれたのですか?

大橋:スタートは「本麒麟らしさとは何か」を考えることからです。味づくりよりもコンセプト開発を先行しました。「コク、飲みごたえがありながらもデイリーに飲みたくなるラガービール」という定義を立て、その範囲の中でお客様へ新しい提案をする。さらに、新ジャンルというカテゴリーさえ超えて、ビール好きに納得されるうまさを追求しようと。

今回の限定品を出す理由は、岸川が言ったように『本麒麟』を未来にわたってご愛飲いただくブランドにするためです。それを前提に考えたとき、たとえば原材料などを変えてプレミアム志向にすると、通常品が霞んで見える恐れがあります。「エールビールのような味わいにしよう」と造り方から大きく変えてしまえば、それはもう『本麒麟』とは呼べません。

岸川:大切なのは、いかに“正しく兄弟関係のように見えるか”という設計です。約半年にわたって定例会を設けて、醸造、マーケティング、デザイナーで一丸となり、じっくり議論していきましたね。

大橋:『本麒麟 香りの舞』も、基本的にベースの味わいは本麒麟と変わらないように設定しています。技術的な観点でいうと、力強いコクと飲みごたえという『本麒麟』らしさは、長期低温熟成という製法から生まれていますが、そこにどういう香りを付けていくべきなのか。

トロピカルな香りをつけてしまうと、野球で言うなら「助っ人外国人」みたいで遠すぎます(笑)。かといって、香りが繊細すぎても『本麒麟』と差別化できません。結果的に、フローラルで上品な和柑橘のような香味を特徴に持つ、国産ホップの「IBUKI」を採用しました。あとは、IBUKIの香りをどれくらいの“強度”で表現するのかを、段階に分けて探っていきました。

岸川:半年間、議論を重ねコンセプトが明確に共有できていたからこそ、試験醸造と試飲を合わせて約2か月で決まりました。これが他ブランドですと、100種類近くの方向性から探ることもあるので、かなり短期間でしたね。

大橋:2017年頃から、キリンビールとしてもブランド育成の観点を重視して、中味担当もディスカッションに加わって方向性を決めていくことにしています。中味はブランドに紐づく要素の一つだとすれば、やはりコンセプトを前提に検討されるべきですから。

緑色のグラデーション缶に込めた、デザイナーの思い

岸田真さんの笑顔

─ブランド育成に関連して、先ほどは「赤い缶を見ると本麒麟を想起する」といったお話もありました。『本麒麟 香りの舞』は緑色を採用していますが、このカラーに決めた理由は?

岸川:多くのお客様は店頭で商品を選ぶ際、棚の前には3秒ほどしか立ち止まりません。パッケージからも瞬時に、ホップの爽やかな印象を受け取ってもらえることが重要だと考えました。

『本麒麟』は赤色の印象が強いブランドですが、もう1つの特徴として、オーバル型のロゴがあります。実は発売後の5年間で、このロゴだけを見ても『本麒麟』を思い浮かべてくださる方も増えてきていたのです。さらに、『本麒麟 香りの舞』の文字の下にあしらった帯には『本麒麟』と同じ赤色を使っています。

オーバル型のロゴ、『本麒麟』の文字、ワンポイントの赤色という3つの共通項で、『本麒麟』の兄弟品であることを感じてもらう。さらに、緑のカラーでビールの香りを大切にしたコンセプトも瞬間的に伝わるようにしたい、という意図が込められて、このデザインに落ち着きました。

赤い缶の本麒麟
『本麒麟』の缶は、本体のカラーが底部から注ぎ口へ向けて濃くなるグラデーションになっている。グラスへ注ぐ際に、コクや飲みごたえを思わせるような“重厚感”を感じさせる意図が込められている。
緑の缶の本麒麟香りの舞
一方で『本麒麟 香りの舞』の缶は、底部から注ぎ口へ向かってグラデーションが薄くなっている。華やかな香りを表現するために“香りが上へ舞う感じ”を意図しているからだ。

─名前を『本麒麟 香りの舞』にしたのは?

岸川:口の中に香りが広がったときや、ひと時の「おいしかった」思いから、お客様の気持ちが少しでも舞い上がるような感覚を楽しんでほしい、という願いを込めました。いろんなネーミングにトライしましたが、『本麒麟』という力強い名前に合うもので、なおかつイメージが伝わるものとして、『本麒麟 香りの舞』が最も良いと決まりました。

ビールと新ジャンルは、これからも共存していく

大橋さんが話している様子

─お客様に『本麒麟 香りの舞』はどういうふうに楽しんでもらいたいですか?

岸川:まずは単体で飲んでいただければと思いますが、今回は『本麒麟』と『本麒麟 香りの舞』を2本でパッケージした飲み比べセットも数量限定で作ります。ぜひ、グラスに移して、それぞれの味わいを比べながら、楽しんでいただく体験をしてもらえたら嬉しいです。

大橋:『本麒麟 香りの舞』を料理と合わせるのであれば、金木犀や和柑橘を思わせる香りが特徴ですから、白身魚との相性はぴったりだと思います。お刺身やカルパッチョ、ムニエル、クリーム煮といった料理に合うはずです。

本麒麟らしい飲みごたえもありますので、和食との相性も良いです。やや濃い味の料理とも合うので、これからの季節ならぶり大根のお供にもいいでしょう。天ぷらなど揚げ物にもおすすめです。食べる際に、レモンやすだちといった柑橘をしぼるような料理は、全般的に相性が良いですね。

─『本麒麟 香りの舞』を含めて、今後の『本麒麟』はビールに近づいていくのでしょうか。新ジャンルとしての役目を、どのように考えますか?

岸川:今後価格の差が合っても無くても『本麒麟』がデイリーな飲み物として愛され続ければ、デイリーさはお客様に価値として受け止めていただけるはずです。
ビールとは飲まれるシーンも含めて、根本的に役割が違うものとして共存していくのではないでしょうか。

大橋:そうですね。そこで残っていくのも、ブランドがあってこそ。それぞれで目指す体験や味わいは異なり、開発側が思い浮かべているお客様像も違います。今後はさらに、ブランドが確立しているものだけが、ご愛飲いただけるのではないかと思っています。

文:長谷川賢人
写真:土田凌
編集:RIDE inc.


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