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食材1つで贅沢気分。秋の味覚をシンプルに楽しむ【#私の晩酌セット vol.05】

家族と食卓を囲み、「プシュッ」とやりながら、頬張る秋のおつまみ。

思わずニヤリとしてしまう自分だけの晩酌の楽しみ方をご紹介する「#私の晩酌セット」。第5弾は、料理家の今井真実さん。まだまだ残暑が残る時期ですが、涼しい風が吹く秋にぴったりな晩酌セットを紹介してくれました。使う食材は1つだけ。素材の味をシンプルに味わうレシピで秋を先取りしませんか?

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【プロフィール】今井真実
料理家。神戸市生まれ。作った人の手も心もお腹も「緩む」ように、作っている時も出来上がった時も嬉しくなるような料理を提案。企業へのレシピ開発、フード撮影の調理や盛付けのスタイリングなどを中心に活動している。不定期で、料理教室「nanamidori」を主宰。季節ごとの、梅仕事、味噌作り、ソーセージ作りのレッスンも人気。キャンプで焚き火をしながら塊肉を焼くのが一番のストレス解消法。

父のために作る晩酌のおとも

「晩酌」の思い出と言えば、母の「お父さんがプシュッとやる前に!」と、急いで料理をする姿です。

父と母は、同じ会社で仕事をしていて、同じ時間に一緒に帰って来ていました。そして父はすぐさまお風呂に入りスッキリすると、冷蔵庫からビールを取り出し、「プシュッ」とやるのです。そして、ぐいっと一息に飲み、いかにも美味そうに「ああ!」と言う。

それを皮切りに我が家の夜ご飯はスタート。まず、最初に出来上がった父のおつまみを急いで出し、父が1本目のビールを飲み終えるまでに、もう1皿、メインなどを猛スピードで作り上げていくのです。

母がやっと座れた頃には、もう父の晩酌は終わっているのですが、母にビールをついであげたり、みんなのお腹が少しずつ満たされると、家の中の空気はふと緩むのです。

子供ながらに、母も同じ時間に帰って来ているのに大変だなあと思っていました。脇目も振らずバサバサと夜ご飯を作っている母のために、いつの間にか、私が父の晩酌のおつまみを作るようなりました。そうすると、たっぷり両親に褒めてもらえて嬉しかったのです。

そして今、父はあの頃の恩返しのように、母との二人の晩酌のために、おつまみに色んなおかきを買うようになりました。

さて、私もそんな両親の血筋か、お酒が好きな大人になりました。普段のお料理でも、ついついお酒に合うおつまみを考えてしまいます。

休日は特に、長い時間をかけてちびちびと飲むのが好きです。料理をして、お酒を飲んで、肴をつまみ、ちょっといい気分になって、少し覚めて来たらまた飲んで。時折、本を読んだり、音楽を聞いたり、外の風に当たったり。

ビールをすすっていると、その時にかすかに音を立てる細かな泡がピチピチと弾け、鼻先に当たるのも楽しいものです。

私が自分のために作る晩酌のレシピ、みなさまにもおすそ分けします。

【1品目】まぐろの生姜醤油あえ

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奮発して、脂がたっぷり乗っているトロでも良いですし、色のしっかりとした赤身でも良いです。切り落としでも構いません。

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まぐろをたっぷりのすり下ろした生姜とお醤油に漬けます。

ここでふと葛藤が生まれるのです。色んなオイルでマリネ風に、調味料を足して複雑なお味にしたり、お薬味もたくさん入れたい…。

しかし、ここはグッと我慢して、きりっと生姜醤油だけ。今回はまぐろ130g、すり下ろしの生姜5g、醤油を12g程度。お醤油の量はまぐろに絡めて少し底に溜まるくらいと覚えておくと良いです。生姜は苦手でなければ、過剰なくらいたっぷりと。

15分も置けばねっとりしたまぐろの味に驚くでしょう。一晩置くと更にぎゅっとした旨みが増します。その場合、お醤油をもっと足して味を濃くし、山かけや、ただ切っただけのきゅうりなどと合わせると美味。

【2品目】エリンギのじっくり焼き

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エリンギったら、こんな表情をお持ちだったのね…と思う、じっくり焼き。元々はキャンプの時に早々に酔いがまわり、切るのさえ面倒で炭火の網のはじにぽいっと置いておいたら、なんとまあ!

早速、家に帰り魚焼きグリルを使って作るとこれは良い、ちゃんと再現できました。網で焼くと火が近すぎるので、天板にエリンギを並べます。

洗い物が少なく済むようホイルを敷き、火が偏らないよう何度か転がし、全面に焦げ目がつくまで辛抱強く待ちます。つまり、多少放っておいても大丈夫。

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軸の薄皮がチリチリとシワを作っていきます。そうしたら、根元にちょんちょんとハサミで切れ目を入れ、豪快に指で引き割くのです。

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この時、どうか火傷にご注意を。パンと乾いた薄皮から想像もしなかったエリンギの熱々の汁がじわじわ溢れます。

エリンギに塩をふり、すだちをたっぷり。ポン酢やお醤油だって良い。でもすだちは忘れずに。この香り、滑らかな繊維、しゃくしゃくとした歯ざわり。一口噛み締めたら笑ってしまいますよ、「エリンギこんなに美味しいの!?」って。

【3品目】ごぼうの素揚げ

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この辺りに来たら、ちょっと揚げ物がほしくなりませんか?

口の中に広がった油を、しゃんしゃんに冷たいビールで喉まで流したら、永遠に続く楽しい気分になります。

見た目は少し地味でしょう。でもこのごぼうの強い味といったら、つまむ指を決して止まらせない魔力があるのです。

ごぼう半分を(半分なんて一人で食べ切ってしまいますが!)ピーラーで薄く剥いていきます。この時に太くても細くなっても途中で切れても大丈夫です。

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ごぼうを剥いたそばから、フライパンに乗せていき、火をつけます。

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まず、空炒りします。ごぼうの水気を飛ばすことで、少ない量の油でもカラッと揚がりやすくなり、ハネにくいのです。

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ある程度ごぼうがしなっとしたら、全体に絡まるくらいのオリーブオイルを入れ、ごぼうの端がカリッとするまで、弱めの中火で炒め揚げしていきます。

ぱちぱちと油がハネたら、火を弱めて。こんなに少ない油だと、終わったら拭けば良いくらい。

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香ばしく色付いたものから順にフライパンから引き上げます。ひょろっとしたものがあってもそれもまた良いのです。全部をカリカリにしようと思わず、カリッとした部分、揚げ切らずコリっとした部分、その噛み応えの違いこそが面白いのです。

少ない油で揚げているので、バットを出さずにお皿にキッチンペーパーを敷き、油を切っていきます。お塩とたっぷりの青海苔をまぶしたら出来上がり。

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自分の晩酌のために作っても、子供たちが横からどんどん手を出してつまみ食い。いつかの私もそうでした。お手伝いをしながらも、出来立てをつまみ食いするのがどれだけ楽しかったか!

ごぼうの素揚げなんて、ほとんどおやつのようなもの。どんどん食べなさい、と子供達のふくふくとした頰をつつきながら、「プシュッ」とやり、私は笑うのでした。

今日の1杯

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爽やかな味わいで、自然に囲まれて川のせせらぎや鳥のさえずりを聴きながら飲むと幸せな気持ちになります。キャンプでは定番の一杯です。


今井さんの料理を見ると、必ずそのままスーパーに直行したくなります。おそして「料理は楽しくする」ものだと教えてくれます。これまでも今井さんのレシピにお世話になりましたが、今回ご提案いただいた「季節のおつまみ」も、どれもこの秋の定番選手になりそうです。

次回は、エッセイストの中前結花さん。お月見の季節、月を見ながら音楽と楽しむ晩酌セットについてお話していただきます。

それでは、次の乾杯まで。

表紙イラスト:カラシソエル

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