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“キリン魂”をかけて開発に挑んだ8年間。『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』がついに発売

「これが、“本物”の無糖ミルクティーです。そう伝えるまで、8年かかりました。」
 
2023年3月7日に発売される『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』は、砂糖や甘味料を全く使わないだけでなく、ミルクに含まれる乳糖の量を無糖と呼べる基準内に抑えるなど、糖分を徹底的にカットした新製品。
 
「おいしい無糖」シリーズ待望の新メンバー。この登場が日本のティービバレッジ文化にどんなプラスをもたらすのでしょう。
 
『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』の発売にあたり、前回、紅茶談義をしていただいた静岡県で茶葉のショップ「teteria」や紅茶教室を営む大西進さんを今回もお招きしました。

キリンビバレッジのマーケティング部で『午後の紅茶』ブランドマネージャーを務める田代美帆と大西さんによる、“紅茶談義”第2弾をお届けします。

▼前回の対談記事はこちら


日本のティービバレッジ文化に足りなかったピース

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー

田代:「おいしい無糖」シリーズにミルクティーが仲間入りすることとなりました。ぜひ、大西さんに『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』を飲んでいただきたく、本日はお招きした次第です!

大西:ついにですね!楽しみです。

そもそも、日本で広く認知されている「甘いミルクティー」というのは、『午後の紅茶』をはじめとするペットボトル飲料が世の中に広めてイメージを作り上げてきたと思います。

その第一線として、甘い飲み物を作ってきたキリンさんが「なぜ砂糖を抜くことにしたのか」、とても興味深いです。

teteria大西進

【プロフィール】大西 進
1976年 群馬県生まれ。大学卒業後、紅茶専門店勤務を経て2005年紅茶を中心とした茶葉の卸販売と、紅茶の楽しさを伝える教室、webshop、紅茶メニューの開発などを行う紅茶屋「teteria(テテリア)」を静岡県沼津市で始める。現在は富士市に移転。著書に『紅茶の絵本』(ミルブックス)など。

田代:前回の対談で、大西さんが「紅茶に携わる会社や人は『株式会社紅茶』の一員であり、紅茶文化を盛り上げていく同志であり、キリンは業績を上げている『第一課』である」と、私たちを表現してくださいました。
 
第一課を拝命した身としては、日常にもっと紅茶が溶けこんで、日本に紅茶文化が根づくようにしていきたいと思っています。そのために、いかに紅茶を広めていくか。そこで可能性を感じたのが無糖飲料です。
 
どうしても加糖の紅茶だと「おやつやティータイムに」といったイメージが先行しがちですが、無糖なら時間やシーンを問わずに飲みやすい。

さらに、ミルクティーは『午後の紅茶』ブランドとしても特にお客さまから親しまれていて、「紅茶といえばミルクティー」とイメージされる方も多いほど、人気のフレーバーなんです。
 
こういった背景から、ミルクティーにも「無糖」という新しい選択肢を作ることが、第一課としての我々の役目だと思い、信念を持って開発に取り組んできました。

キリンビバレッジの田代美帆

【プロフィール】田代 美帆
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 ブランド担当 主務 ブランドマネージャー。2006年入社。2020年より『午後の紅茶』シリーズのブランドマネージャーを担当している。

苦労した甲斐もあり、今回発売される『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』は、「日本のティービバレッジ文化に足りなかったピースは、この無糖ミルクティーだったのではないか」と思うくらいの自信作となりました。ようやく発売できてうれしいです。ぜひ、試飲してみてください!
 
大西:さっそく、いただきますね。…本当だ、全然甘くない!すごく良い…!本当に甘さがないのが、まず驚きです。

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私は各社のいろんなミルクティーのペットボトル飲料を飲んでいますが、やはり甘いんですよね。もちろん、その甘さが魅力なのですが。それに対して、この新商品は砂糖も甘味料も全く入っていない、確かな無糖です。
 
田代:実は、牛乳に含まれている乳糖まで調整をして、甘さを全て断ち切っているんです。でも、飲んだときにはしっかりミルク感もあるかと思います。
 
大西:うん、甘くないのに、ミルク感はありますね。
 
田代:実際にお客さま調査でも、最初のひとくち目はビックリされることが多かったのですが、1本通して飲むと不思議さにも慣れてきて、スッキリとした味わいを評価していただけることが多かったです。

キリンビバレッジの田代美帆
大西さんから味の感想を聞いて、ガッツポーズする田代さん

大西:味に嘘がないです。これまで私たちは、無糖飲料の転換期にいたと思うんですよ。たとえば、ボトルに「甘さがない」や「微糖」と書かれていても甘いことがあり、その甘さの程度は飲んでみるまでわからなかった。

だからこそ、『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』は「本当に無糖飲料を求めている人が、やっと安心して買えるものができた」という味ですね。

定番人気のミルクティーに、新たな選択肢を

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー対談

田代:お客さまに「紅茶といえばミルクティー」と発想される方が多いなかで、『午後の紅茶 』に無糖のミルクティーがないのは、キリンとしても課題に感じていました。

なので、開発から発売までに8年間かかりましたが、やっと既存商品のストレートやレモンとも違う、新たな選択肢を提供できるなと。
 
大西:やっぱり「ミルクティーを制したものが紅茶を制する」と言わざるを得ないところがあるんですよね。もともと、紅茶が親しまれているイギリスでも「紅茶といえばミルクティー」ですし、甘みもあって飲みやすく、紅茶を体験する入り口としても向いています。
 
なぜなら、ミルクティーって「半分は知っている味」だからなんです。紅茶の味は知らなくても、牛乳なら知っている。紅茶にミルクが混じった時にも半分の味は知っているから飲みやすいというわけです。私の子どもも、紅茶はストレートではなくミルクティーから飲み始めていますね。

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田代:なるほど。もともとミルクの味を知っているから、親しみが湧きやすいんですね。
 
大西:「知っている味が入っているから怖くない」という。だからこそ、甘さのない無糖のミルクティーを作る際に、どんな方が飲むことを想定されたのかをお聞きしたいです。
 
田代:もともと加糖のミルクティーは男性からの支持も意外と厚く、男女問わず人気の商品です。ただ、甘いミルクティーには優雅な雰囲気があるからか、仕事中に飲んでいると「休んでいる」といったイメージを持たれることも多いみたいで。

それに対して、無糖ならミルクティーとしても楽しみながら、ビジネスシーンにも合うのでうれしいという声も結構寄せられています。
 
大西:デザートドリンクみたいな感じですからね、甘い飲み物というのは。たしかに無糖ならそのイメージを脱却して、より多くの人たちに楽しんでもらえそうですね。

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー対談
大西さんの手書き資料

『午後の紅茶』から『終日の紅茶』へ

キリンビバレッジの田代美帆

大西:発売まで8年かかった話をぜひ伺いたいです。「おいしい無糖」はシリーズとしても支持されていますから、是が非でも作りたかったとは思いつつ、特にどの部分にそれだけの時間を要していたのでしょう?
 
田代:理由はさまざまですが、大きなところでは先ほども少し触れた、牛乳の乳糖をコントロールする技術開発の難しさです。無糖の紅茶に牛乳を加えるだけでは乳糖が入ってしまうので、法律の観点からいっても、スペックとしても、「無糖」として打ち出せないんです。どうやったら乳糖をコントロールできるか、その上で、ミルク感を出せるかというのが難しいところでした。
 
たとえば、「おいしい無糖」シリーズではなく、「ノンシュガーミルクティー」を発売しようと思えば、もっと早く実現はできました。でも、あくまでも「おいしい無糖」のラインナップで発売するのであれば、無糖と言えるだけの制約で作りきらないといけません。
 
「おいしい無糖」シリーズは発売から11年経ちましたが、ブランドの立ち上げ当初から「ミルクティーも出したい」という夢はずっとあって。歴代の担当者や技術者がずっと思い描き、何代にもわたって取り組みを続けてきました。スペックとして無糖と謳えるものができて、なおかつおいしい味わいを作ることに8年間かかった、というところです。
 
裏話ですが、無糖ミルクティーを発売することを社内で周知したら、以前の担当者から「国の無糖に対する基準が変わったの?」と聞かれたくらいです(笑)。そうではなく、「基準のなかで作ったんです」と返事をしたら、すごく驚いていましたね。

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー対談

大西:私は、そういったキリンさんの開発姿勢を、ひそかに「キリン魂」と呼んでいるんです。石橋を叩いて、叩いて、コンクリートになるまで叩くという。
 
田代:確かに「無糖」と呼ばずに別の商品を発売するという選択を取らなかったところに、大西さんがおっしゃる「魂」を感じますね(笑)。「絶対においしい無糖として出すんだ!」と。
 
大西:制約を踏まえた上で味わいを作る面でもそうですが、無糖シリーズによって『午後の紅茶』という名前から『終日の紅茶』へ転換していくことが、このミルクティーでも図られると思います。だから、今回の発売は、私にとってもインパクトがある出来事です。まさに「新御三家」の誕生ですよね。

心の豊かさのために、おいしい選択肢を増やす

午後の紅茶おいしい無糖シリーズ

大西:パッケージはどんなふうにくるのかと思ったら、こう来ましたか!
 
田代:パッケージも色んな切り口からすごく考えました 。ミルクティーというと、競合他社の製品も含めてロイヤルブルーが多いんですが、今回は無糖ミルクティーとしてのスッキリ感や爽やかさを表現したくて、水色にチャレンジしてみました。あとは、パッケージに載せたグラスのシズル感も好評でしたね。
 
大西:とても良い感じだと思いますよ。文字の位置も『午後の紅茶 おいしい無糖 香るレモン』とは趣が違って、無糖のミルクティーであることを強調した仕上がりに見えます。
 
田代:ミルクティーはイメージとして甘いものですから、お客さまが加糖のミルクティーと間違わないように、無糖であることをわかりやすく伝えたかったんです。

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー

大西:これで役者が揃って、新御三家のストーリーが始まりますね。10年、20年とかけて定番商品へ変わっていくところに立ち会っているんだなあ。
 
それにしても「おいしい無糖」は、キリンの『午後の紅茶』ブランドが作ってきた建物を自ら壊していくような作業だなと思うんです。「甘さ」には誰もが飲みたいと思わせる強い引力があるのに、それをミルクティーでも手放すことに勇気を感じますね。ただ、甘さを手放したということで、そこに新しく入るものがある、とも言えるのでしょう。
 
田代:そうですね。甘さがないからこそ、日常的に飲むという楽しみ方だったり、食事とのペアリングは提案していきたいです。
 
大西:良いですね。加糖のミルクティーは「紅茶とミルクと甘み」という円環が完結しているものですから。そこから「甘み」が落ちることで、サンドイッチといった塩味のあるフードも合いそうです。

あとは同じく塩味のあるケークサレとか、ストレートティーだとまだ塩味が口に残ってしまいがちな塩味のサブレなどとも無糖ミルクティーは相性が良さそう。フルーツがたくさん乗ったタルトとか、ストレートだと渋みと酸味がぶつかってしまう果実類も合うんじゃないでしょうか。
 
田代:そうなんです。「スイーツと一緒に飲んでも罪悪感がないミルクティー」なんですよね。カロリーも100mlあたり10kcalと加糖に比べてグッと少なくなりました。それこそ健康志向が強くて「なるべくカロリーがないものを…」となっていくと、食事時に合わせる飲み物が、ついつい緑茶に落ち着いてしまうことってあると思うんです。
 
でも、日常的に取り入れやすい飲み物があれば、それこそ「今日はお昼にサンドイッチを食べてみようかな」という気持ちをサポートできて、食事にあわせて飲みたいものを選べるということが心の豊かさにもつながってくるはず。

そのために、私たち飲料メーカーができるのは「おいしい選択肢を増やす」ということだと思います。無糖ミルクティーはまさにその一つですね。

紅茶の本質的な楽しさは、バリエーションがあること

午後の紅茶おいしい無糖ミルクティーの手書き図

大西:この発売で、別のメーカーさんからも無糖商品が続くかもしれませんね。正直なところ、競合が増えるというのはキリンさんからするとどういう気持ちなんでしょう。やっぱりどこか嫌なものなのか、いろんな人が道を踏むことで整備されていくと考えるのか。
 
田代:『午後の紅茶』ブランドとしては「一緒にティービバレッジ文化を作っていく」という動きだと思っています。最近、缶チューハイでもティーテイストの商品が出てきて、そういったところにもティービバレッジ文化の広まりを感じています。

お客さまと紅茶の接点が増えていくなかで、もっと紅茶を楽しんでもらうための課題をみんなで解決していけたらいいな、と。

キリンビバレッジの田代美帆

大西:そうですね。普段紅茶を飲まない人をどんどん取り込んで、全部のパイが広がっていくのが理想ですよね。
 
田代:清涼飲料における紅茶の市場は5%しかないんです。同じ紅茶の中だけで戦っていては市場として大きくなれないですし、それを10%に高めていく世界を叶えるためには、他のカテゴリを選んでいる人に振り向いてもらわなければなりません。

だからこそ、私たちも「紅茶文化を広げる」ためのミッションとはなんだろうと常に考えていますし、その視点で開発を続けることができるんです。
 
紅茶の本質的な楽しさって、バリエーションがあることですよね。ホットでも、コールドでも。ストレート、レモン、ミルクでも。そういった多様性が伝わっていくためにも、無糖ミルクティーは良いトライになると思っています。もちろん、加糖には加糖の良さもありますが。
 
大西:やはり『午後の紅茶』の根っこは、加糖の定番3商品「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」が支えていますからね。加糖があるから無糖がある、という関係性も大事にすべきだと思います。

全てのラインナップで「紅茶という一本の木」を大きくしていきたいですね。私たちにはまだまだこの先があって、同じ夢を追っている同志ですから。

文:長谷川賢人
写真:飯本貴子
編集:RIDE inc.