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『夜更けのおつまみ』文庫本の発売に寄せて

「大賞は書籍収録!」と銘打ったポプラ社さんとの共催企画『#夜更けのおつまみ』投稿コンテスト。2020年3月5日、ついにその文庫本が発売されました。

▼収録された大賞作品『葱のにゅうめん』

ポプラ社さんから送っていただいた見本誌が届いたのは発売の少し前。実際に手にした時の高揚感はまるで、学生の頃フラゲしたCDアルバムの包装ビニールをはがす時のようでした。

大賞の奥村さんの作品は、このエッセイ集のラストを飾っています。大トリです。事前にその情報は聞いていたので、まずは奥村さんの作品を見ようと背表紙からページをめくりました。

見覚えのある『葱のにゅうめん』のタイトルを見つけた時には、思わず「載ってる!」と声が出てしまいました。当たり前なのですが、いざ紙に印字されたタイトルを見るとやはりグッとくるものがありました。

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本になった奥村さんの作品を読んでみると、スマホで読んだ時とはまた違う印象を受けました。描かれた情景により肌感が宿り、物語の流れる時間も少しゆっくりと感じました(あくまで個人的な感覚ですが)。

改めて、この企画を一緒に進めていただいたポプラ社さん、素敵な作品を届けてくれた参加者の皆さん、そして奥村さんにお礼申し上げます。素晴らしい機会をありがとうございました。作品のひとつひとつが私にとって「仕事のご褒美のおつまみ」でした。

大賞を受賞した奥村さんからのコメントは、ポプラ社さんのnoteでご紹介しておりますのでぜひご覧ください。

ひとしきり感動に浸ってから、今度は頭から読み始めることにしました。

31名もの人気作家さんが語る「夜更けのおつまみ」は、思わずメモをとりたくなるほど実践的。そして何より美味しそう。夜更けの時間帯に食べるものだから、手の込んだ料理ではなく簡単に混ぜ合わせたり、さっと炒めるくらいの調理でできるものが多く、ご丁寧にレシピまで載せてくれている作家さんまでいました。

文章からおつまみの味わいやにおいを感じ取ることができるくらい精緻な描写は、読んでいるうちに思わず晩酌を始めたくなるほどでした(読んだのは午前中のオフィスでした)。

さらに「夜更けのおつまみ」を彩る数々のエピソードがさらに食欲、いや「飲欲」をくすぐります。学生時代の友人との思い出や飲み屋でのやりとり、はたまた執筆しながらの酒の肴など(飲みながら執筆する方って多いんですね)、とにかく幅広いエピソードが添えられたユニークな「話のおつまみ」が並び、ページをめくる手が止まりませんでした。

エッセイとしても面白く、レシピとしても役に立つ。そして付け加えるなら差し込まれるおつまみの挿絵にほっこりする、そんな一挙両得な一冊です。

一緒に生きることは、一緒に食べることなのだと知った。

奥村さんの作品『葱のにゅうめん』の結びの一文です。文庫版をはじめから読み通し、最後のこの一文に再会した時、この言葉があることで『夜更けのおつまみ』にたしかな温もりが添えられ、あるべき場所に落ち着いたような大団円を感じ、ひとり唸りました。

ぜひ手に取っていただき、お腹も喉も鳴らしていただければと思います。

ちなみに冒頭の写真は、このエッセイ集に出てくるとある作家さんがご紹介されたおつまみです。

それでは、また次の乾杯まで。






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