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読書で旅する。青山ブックセンター店長・山下優さんのビールのお供、夏の3冊【#私の晩酌セット vol.04】

読書は、自分では辿り着けない世界へ連れて行ってくれる。

思わずニヤリとしてしまう自分だけの晩酌の楽しみ方をご紹介する「#私の晩酌セット」。第4弾は、青山ブックセンター店長の山下優さんです。
この夏、ビールを飲みながら楽しめる「旅」をテーマにしたオススメの3冊を紹介してくれました。

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【プロフィール】山下優
青山ブックセンター本店店長。2010年に入社し、青山ブックセンター本店にて2018年11月から店長を務める。書店販売だけでなく、イベントや講座、ワークショップ、SNS発信など幅広い展開を続けている。学生時代はクラフトビアバーで働いていた経験も。
写真:植本一子

ビールと読書で過ごす夏のひととき

年中ビールを飲んでいますが、特に夏に飲むビールは最高です。程よく冷房が効いた自宅で、読書をしながら飲むのは、僕にとって贅沢な時間。ご飯を食べてから、ホッとしつつ、ぼけーっとする時間を経て、ビールを注ぎ、おつまみを用意することは、すでに読書することへの導入部分のような役割を果たしている気がします。

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最近は、下北沢の発酵デパートメントで出会った、ちょっと癖のあるお味噌をおつまみにすることにハマっています。まったく「映え」ませんが、止まらなくなり、永遠にいけます。チーズと一緒に食べても最高です。味噌をおつまみにビールを飲むことは、なぜかはわかりませんが大人になった気分です。

ビールを飲むことで、気を張っている体と脳をゆるめて、読書中は、感覚の半分は本の世界にどっぷりダイブし、もう半分は普段考えていることとシンクロすることや何かと何かを繋げるきっかけだったりを思考し続けています。

何か直接的に知識を得るというより(もちろんそのためにも有効だと思いますが)、考えるきっかけを得ることが、読書における快感だったりします。

本を通して「旅」に出る

本や読書によって、自分だけでは辿り着けない世界や思考に連れていってもらえる感覚があります。

書店の仕事を始めてから、いわゆる夏休みを取ったことはないですが、不思議と夏は僕にとって、いろいろな面でより遠くを意識することが多い季節です。

本や読書を通して「旅」に出る、そんな感覚が特に強いのかもしれません。実際の旅も何にも代え難い体験ですが、読書による、自分だけが体感できる「旅」もまた何にも代え難いものです。

書いてある文章は誰にとっても等しく同じかもしれませんが、感じ方やおもしろいと思う部分などは、人によって違うと思います。同じ本でも、その時の体調やタイミング、世の流れによっても、また違います。そんなところも本の好きなところだったりします。

日本や世界、そして人類を旅する「本」

この夏に、個人的にも改めて読みたい3冊を選んでみました。

日本をめぐる1冊

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1冊目は小倉ヒラクさんの写真集『発酵する日本 (Aoyama Book Cultivation) 』です。手前味噌ですが、青山ブックセンターの出版プロジェクト第1弾です。

47都道府県の知られざる発酵文化を訪ね、数百年継承されてきた日本独自の発酵文化にまつわる様々なシーンを切り取った写真を86点収録しています。

ヒラクさんの写真と視点を通して、登場する人々や発酵している現場の空気感を感じることができます。

ヒラクさんが体感してきたまま、あえて暗いまま印刷したのですが、藤原印刷による印刷の素晴らしさも体感できます。

世界をめぐる1冊

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2冊目は上出遼平さん『ハイパーハードボイルドグルメリポート (朝日新聞出版) 』です。

テレビ番組から生まれた本で、番組ももちろん最高なのですが、番組を見たことのない方にもぜひ読んでもらいたい内容です。

リベリアでの人食い少年兵の廃墟飯、台湾でのマフィアの贅沢中華 、ロシアでのシベリアンイエスのカルト飯、ケニアのゴミ山スカベンジャー飯。

上出さんの世界各地への旅を通して、食べること、人間そのもの、人間の関係性、そして生きることに、深く考え向き合わせてくれます。晩酌している自分の環境がどれだけ恵まれていることか。

人類をめぐる1冊

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3冊目は中沢新一さんと山際寿一さんの『未来のルーシー(青土社)』です。

霊長類学、そして人類学はもとより、考古学、宗教学、生命科学、AI。また日本を代表する人類学者「西田幾多郎」や哲学者「今西錦司」など。

森羅万象を縦横無尽に往還しながら、閉塞した人類がまさにすすむべき未来を模索する本書。

本当に幅広いテーマを扱っていて、それが全部リンクしています。著者のおふたりが対話を通していろいろなところへ行き来しながら急にいろんなところに繋がっていきます。

自分の感覚や世界も広げてもらえて、もっとあれやこれについて知りたいと思えましたる1冊。

目の前のことも大事ですが、過去と未来、どちらにも射程を広く持って考えることの重要性を改めて感じることができました。

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今回、僕は「旅」をテーマに選びましたが、ぜひ晩酌セットとして料理を選ぶ感覚で、本を選んでみて頂けたら嬉しいです。

今日の1杯

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苦味が強すぎず弱すぎなくてちょうどよくお気に入り。
バランスが個人的にストライゾーンど真ん中で飲みやすいです。

外出がなかなかできない中で、まったく知らない世界へ連れていってくれる本は、私にとっても最近手放せないものになっています。ビールとおいしいおつまみでほどよく頭がほぐれれば、気持ちよく好奇心の滝壺にダイブできそう。山下さんからご紹介いただいた本たちもとても楽しそう。この夏の課題図書にしようと思います。

みなさんの「#私の晩酌セット」もぜひお寄せください。投稿されたnoteは「#私の晩酌セット」マガジンに格納していきます。

次回は、料理家の今井真実さん。食欲の秋が近づいてくる季節です。秋の美味しい食材を使ったどんな料理が紹介されるのか楽しみにしていてください。

それでは、また次の乾杯まで。

表紙イラスト:カラシソエル

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