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note開設から1年。キリンビール公式noteの運営の裏側を公開します

キリンビール公式noteが立ち上がってから1年が経ちました。2019年4月19日に開始した「#社会人1年目の私へ」投稿コンテストとともに私たちのnoteは始まりました。

開設から1年が経ち、当時とはだいぶ状況が変わりました。当初では考えられないほど企業アカウントも増えましたし、note上で行われる投稿コンテストも目にする機会が多くなりました。何よりnote自体の「住人」がこの1年で倍以上に増えました。

たかが1年、されど1年。まだまだ手探りな状態ではありますが、「noteの街」は私たちを好意的に受け入れてくださっているように感じます。また、クリエイターさんや企業アカウントとの温かい交流も増えてきました。

次の1年を考えたとき、これまで以上にnoteのクリエイターさんや企業アカウントとつながり、街を盛り上げていきたいという想いが(ここ数か月の世の中の情勢を見て、より一層)強くなってきています。

1企業アカウントである私たちがnoteという街でできることは、「楽しい催し」を企て、少しでも「明るく有意義な広場」を提供することだと思っていますし、ひとりでも多くのクリエイターさんが作品づくりに対して前向きになれることだと思っています。

同時に、企業アカウントがもっと集まり、楽しい広場をつくることができれば、それは企業発信としても非常に大きな役割を担う場所になると確信もしています。

そこまで考え、開設1年のこのタイミングで、なぜ私たちがnoteを始めたのか、どうやって運用しているかについて、(どこまで参考になるかわからないですが)包み隠さずお伝えすることにしました。

ひとつでも企業アカウントが増えることと、ひとりでも多くのクリエイターさんが私たちと交流することで、また新しい作品の息吹が芽生えることを願って。

(そして7,000字を超える長文になりました)

なぜnoteだったのか

遡ること1年半前。noteの立ち上げを考え始めた背景にはいわゆる「オウンドメディア」と呼ばれるメディアの潮流の変化がありました。

当時は「オウンドメディア」が続々と閉鎖に追いやられている時期でした。反面、その動きに呼応するかのように新しいスタイルのオウンドメディアが増えてきていました。それらの特徴を一言でまとめるのであれば、企業のミッションや想いを伝えることを主目的に置きながら、社内広報的に社員に向けたメッセージも併せ持っているメディアであるということでした。

キリンのオウンドメディア(企業サイト・SNS)を見渡せば、企業のミッションや従業員の想いをていねいに伝えられている「独立したメディア」はありませんでした。

また、noteに視線を移すと急成長の真っ只中でした。筆者のTwitterのタイムラインには、日々多くのnoteの記事がポジティブな声を伴って流れてきていましたし、noteの住人同士の「声の掛け合い」も日に日に大きくなってきているように見えました。まさに「街」ができつつあるという感覚がありました。

コンテンツを発信するプラットフォームでありながら、ユーザー同士のつながりも生まれるSNSとしての側面を持つnoteですが、その特徴は他のSNSとはだいぶ異なります。

よくTwitterは「LOOK at THIS」、Instagramは「LOOK at ME」と言われますが、noteは「LOOK at STORY」、つまり長文でしたためた想いが伝搬する場であるという点で、これまでのSNSとは一線を画しているかと思います。

ここまで伝えたnoteの魅力をまとめると大きくふたつに分けられます。ひとつはSNSでリファラル(推奨)が生まれやすいということ、もうひとつはポジティブなコミュニティ形成がされやすいということ。

リファラルが生まれるとはつまり、発信されたコンテンツに共感した「近い人」から徐々に「同心円状」に拡がっていくということです。

そういった拡がり方が期待できるnoteであれば、無理がなくサスティナブルにメディア運営ができるように感じられました。さらには、その違いが先述したオウンドメディアの潮流とも符合していました。

既にだいぶ文字数を割いてしまいましたが、上記が私たちがnoteを始めた「外側」のきっかけであり決め手になります。

noteを始めた時の「内側」の動機についてはこちらを併せてお読みいただけるとわかりやすいかと思いますのでぜひ。

先述した通りここ1年で企業アカウントはどんどん増えてきています。様々な企業アカウントを拝見させていただいた上で、筆者なりにnote開設の目的を整理させていただきましたので、現在ご検討されている企業さまがいたら参考にしていただければと思います。

■企業note開設の4つの目的
プロモーション

 ・新商品・新サービスなどのリリースの補完的役割
 ・広告表現では伝えきれない情緒的価値の提供
ブランディング
 ・企業活動のストーリーの発信
 ・企業の「中の人」を出したコンテンツで好感・親近感を獲得
コミュニティ
 ・商品のファンによるリファラルの促進
 ・ファンの声を可視化し、共感の輪を醸成
コスト削減
 ・ページ制作コストがかからない。予算をコンテンツに集中投下できる

はじめに立てた旗

noteをスタートする際にまずやらなくてはならないこと。それは「所信表明」です。これは読者との約束であり、運営側にとっては、いつでも立ち戻れる旗であり、横文字に翻るならミッションやビジョンということになります。

私たちがnoteを始める際に出した記事はこちらです。

ひとつ前の章でお伝えしたnoteの立ち上げの背景をもとに、noteでどう立ち振る舞っていくかを、考えに考えて導かれたのがこのタグラインでした。

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なぜ「伝える」ではなく「考える」なのか。それは、「声を掛け合う」カルチャーがあり、自らの考え(ストーリー)を表明することが好意的に受け入れられるnoteであることが関係しています。

この特徴を鑑みれば、私たちから一方的に伝えるだけではnoteという街で住み続けることが難しいのではないかと感じました。

そこで、私たちが自ら発信をすることと、その発信に共感してくれた方とコミュニケーションを取ること、それを繰り返していくことでメディアを拡げていくことを根本姿勢にすることにしました。

その姿勢にもとづき、noteにいる方たちと一緒にメディアを作り上げていきたいという想いを込めて「考える」をタグラインに採用することにしました。

タグラインを決めたなら、メディアのミッション(長期到達目標)を考えることになります。ちなみにミッションとは、noteという街において私たちが貢献できることです。お酒を扱う1会社としてどんな貢献ができるかを考えました。

現在、キリンビール公式noteのミッションは「キリンのnoteがあることで1人でも多くの人が次の乾杯が楽しみになる」としています。

「次の乾杯が楽しくなるコンテンツ」。聞こえは良いのですが、それだけではメーカーのオウンドメディアである必要がありません。メーカーが運営するメディアとして、企業と商品の魅力が伝わり、私達の商品もしくは企業そのものを好きになってもらうことが当然の目的としてあるわけです。

そこでミッションの次に考えることはビジョン(短期的な目標)です。

ビジョンは「キリンの「今とこれから」の思想が伝わるとともに、読者が心地良いお酒との付き合い方を知り、誰かに薦めたくなるメディアとなっていること」としています。

ここで伝えたいことは、決める内容よりも「順番」が大事だということです。SNSなど個人の方が既に楽しんでいる場で発信をするのであれば、企業アカウントとしてそこでどんな発信をするかを考える前に、まずはその住人に対してどんな貢献ができるかを考えることです。その上で企業のメディアとしての目的達成のためにできることを考えることです。この順番は守るべきだと思っています。

旗を掲げたなら、具体的なコンテンツについて考えていくわけですが、忘れてはいけないのが読者にとってのバリューです。どんなにきれいなミッションが立てられても、読者にとって「つまらないもの」であっては意味がありません。私たちはバリューを以下の3つに定めています。

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noteの読者と交わした約束ごとであるタグライン、コンテンツの指針としてのミッション・ビジョン、メディア活動が与えうるバリューを常に立ち戻る旗に据えたら、ようやくコンテンツを考えていくことになります。

NGラインを決める

コンテンツを考える前にもうひとつ決めなくてはいけないことがあります。それは、note上において「越えてはいけないライン」です。読者との約束を守るためにも超えてはいけないラインを作ることは非常に重要です。

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シンプルに言えば、noteでなくても発信できる内容のものは発信しないということです。noteだけではなく、これはSNSの運営についても同じことが言えるかと思います。

企業の発信拠点となれば、多方面から発信を依頼されます。とは言え、どんなものも無尽蔵に出してはプラットフォームの住人に嫌われることもあります。そういった意味でもNGラインを定めておくことは重要です。

コンテンツを3つのレイヤーに分ける

それではここからは、私たちが実際にコンテンツをどうやって考え決めているのかについてまとめます。

いかにnoteにおける読者の全体像がわかったとしても、私たちが扱うコンテンツの対象はお酒にまつわるものに限られます。ですので、具体的にコンテンツを考える際にはお酒に対する興味関心を軸に読者の属性を分けて考えることにしました。現状、キリンビール公式noteでは3つのレイヤーに分けてコンテンツを考えています。

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「ストーリー」「プロダクト」「エントリー」です。三角形の縦軸がキリンへの関心度であり、横軸が読者の規模になります。つまり、上の「ストーリー」は、読者の数は狭まる一方でキリンへの関心度も高いということになります。

ひとつずつ説明をします。

一番上の「ストーリー」は会社としての想いやビジョンを伝える場所です。想定される読者としては既にキリンの愛好者であったり、ビジネスまわりの関心が高い方が挙げられます。具体的なコンテンツとしては造り手や社員などのインタビュー記事が該当することになります。

真ん中の「プロダクト」については、乾杯の楽しみ方を伝えるレイヤーです。お酒やお酒のカルチャー(クラフトワインやオーガニックワインなど)にも興味関心度が高い方が対象になります。

具体的なコンテンツとしては、ペアリング記事や食卓の楽しみ方が当てはまります。このレイヤーを「プロダクト」としているのは、コンテンツの中には確実にキリンの商品も併せて紹介する、というルールを設けているためです。

一番下の「エントリー」は乾杯の周辺にあるストーリーとしていますが、こちらはお酒にそこまで強い嗜好性はないものの、noteのカルチャーが好きである方などが挙げられます。コンテンツとしては主にお酒の入口になるようなものですが、一番の代表例は「投稿コンテスト」になるかと思います。

なぜコンテンツのレイヤーを分けるのか。それはオウンドメディアの「風通し」を調整するためです。

風通し。
もう少し説明が必要そうです。

冒頭の「オウンドメディアの潮流」に則ると、ストーリーや想いを伝えることが重要になってきていることがわかります。そうすると必然的に前述の三角形の一番上(ストーリー)が最も重要になってきます。

しかしながら、一歩引いて私たちが扱う商材である「お酒」を眺めてみると、本来的にお酒は「手軽に楽しむもの」だということもわかってきます。そんな特徴を考えると「想い」だけが並ぶメディアは少し窮屈に見えてしまいます。

商材によってはもっと「絞りのきかせたコンテンツ戦略」でもいいでしょう。しかし前述したように私たちはお客様の間口が広い飲料メーカーですので、偏り過ぎるコンテンツ展開はチャンスロスにつながってしまうと判断し、意図的に3つのレイヤーに分けることにしました。

コンテンツを3つに分け、バランスよく混在させることで、そこまでお酒に興味のなかった人が興味を持ち、さらにそこからキリンの商品や企業姿勢にも目を向けるきっかけにしてもらう、そんな階段を登ってもらうことが可能となります。「風通しを調整する」というのはそういう意味合いです。

上記の3つのレイヤーに分けてコンテンツは考えますが、もう一点、どのレイヤーにおいても共通して考えていることは「noteの住民と一緒にコンテンツをつくる」ことです。

「これからの乾杯を考える場」であるnoteです。なのでコンテンツを考える際には、noteのクリエイターさん(料理家さんや専門家、企業アカウント)と一緒に作る可能性はありえるか、をいつもはじめに考えています。

クリエイターさんと一緒にコンテンツを作る際に、一番気を付けなくてはいけないのは、私たちと一緒にコンテンツを作ることが、そのクリエイターさんにとって「プラスになるか」という点です。さらに言えば、そのコンテンツがそのクリエイターさんのフォロワーにとっても楽しめるものになっているかという点です。

そのためにまず必要なのは、クリエイターさんと向き合い、クリエイターさんの意向に耳を傾けることです。そして合意形成ができたなら、クリエイターさんにとって「次の一歩」につながる企画を考えることです。

理由は簡単です。私たちもクリエイターさんもnoteというひとつの街で一緒に住んでいるからです。ずっといい関係でいるためには、こちらからただ要求することはありえないことだという前提に立つべきだと考えています。

また、「クリエイターさんのフォロワーが楽しめるもの」を考えるということは、アウトプットされたコンテンツが「誰がなんと言ってシェアしてくれるか」を考えることでもあります。コンテンツを作る上で大切なことは、そのコンテンツを見て、いの一番に「いいね!」と声を上げてくれる「具体的な人」を知ることです。

結果として、実際にこの1年を振り返ると、noteのクリエイターさんと一緒に作り上げたコンテンツは他のコンテンツと比較して反応がいいことがわかっています。

どうやって読んでもらうのか

コンテンツの作り方を決めた後はどうやって届けるかを考える必要があります。noteの記事は大きく5つの集客経路があります。

① 自社オウンド(メルマガ・SNS)からの集客
② noteのアカウントフォロワーからの集客
③ smart newsからの集客
④ コンテンツ関係者からのシェアによる集客
⑤ note編集部のオススメからの集客

上記5つの中で最も重要なのが④です。 実はこれがnoteにおける一番の集客手法であり拡散方法でもあります。そして、先述したコンテンツの作り方の章でも語った「クリエイターと一緒に作る」こともここに寄与してきます。

クリエイターさんの多くはSNSでも発信をしています。中には多くのフォロワーを抱えた方もいらっしゃいます。そういった方と一緒に作ったコンテンツは、公開されたタイミングでありがたいことにSNSで紹介していただけます。

そこから更にフォロワーから賛同とともにシェアされ、コンテンツは同心円状に拡がっていくことになります。オウンドメディアで出すコンテンツが、多くの日本人が気になるニュースではなく「不要不急のコンテンツ」である以上、この視点はとても大事だと思っています。

KPIは「場合による」

オウンドメディアを運営していて一番聞かれるのはKPIについてです。その度に答えに窮してしまうのですが、基本的には「場合による」だと思っています。

先ほどお伝えした読者のレイヤーの三角形の通り、コンテンツによって想定される読者の数が当然違ってくるわけです。そうなると一概にViewを並べて数だけで見ることが適切な判断とは言えないのはわかると思います。なので、基本的には記事ひとつひとつの目的に合った「反応が出ているか」ということがKPIとなります。

とはいえ、ひとつ共通してはかれるモノサシがあります。それは読者のSNS上のシェア(発話)です。私たちが出したコンテンツに対して何を感じていただいたかを測ることが「これからの乾杯を考える」というコンセプトにも合致するとして、唯一共通して見ている指標になります。

もちろん、数値として測ることができる「view数」「スキ数」「スキ率」「フォロワー数」などはすべて見ています。しかしながらそれらは三角形の中でどの位置に属するコンテンツなのかによって重要視するポイントを変えて見ることにしています。より多くの人が興味を持つものなら「view数」ですし、よりコアな人向けのコンテンツなら「スキ率」といったように、並んだ数字のバランスをみて課題点を洗い出しています。

なかなか回りくどいやり方ではありますが、こうしたKPIを置くことのメリットは、ひとつひとつのコンテンツに対して、企画から効果解析まで一貫して「考え続けることができる」という点にあるかと思います。

ひとつの指標にこだわり過ぎると、徐々に部分最適に走ってしまうおそれがあります。それはメディアを運営していく上であまり健康的な状態とは言えません。しっかりと山を見て走り続ける意味でも、数字との向き合い方は丁寧にしたいところです。

これからも何卒

最後にこれからの話をします。この記事で何度も出てきましたが、コンテンツ発信における基本の姿勢はnote上のクリエイターさんと「一緒に」コンテンツを作っていくことです。なので、これからもいろんなクリエイターさんとコラボしていく企画を考えています。

昨年は投稿コンテストを通じて「書き手」さんと接点を増やすことができました。今後は「乾杯にまつわるクリエイター」の方とより接点を持てるような企画を立ち上げていく予定です。料理はもちろん、晩酌を華やかせる音楽や映画、食器なども「乾杯にまつわる」ことです。乾杯をより彩ることができるクリエイターさんと一緒にコンテンツを作っていきたいと思っています。

私たちの企てを通じて、クリエイターさんの作品がより多くの人の目に留まり、クリエイターさんのファンが増え、クリエイションのモチベーションが高まり、さらによりよい作品がアウトプットされるような循環を生み出していきたいと思っています。

特に今は先行きの見えない不安が日本のみならず世界中を覆っています。そんな中で私たちは、引き続き「次の乾杯が楽しくなる」ことを提供していきたいと思っていますし、noteにいるクリエイターさん達にどんどんと声をかけていきたいと思っています。

引き続き、キリンビール公式noteをよろしくお願い致します。
そしてこれからのキリンビール公式noteを楽しみにしていてください。

それでは、また次の乾杯まで。





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