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アサヒユウアスさんと考える、共創から生まれるサステナビリティ【CSVチャンネル vol.2】

「2027年にKIRINが世界のCSV先進企業となる」

そんな未来をイメージしながら、座談会・勉強会などを通じて、従業員がCSVを自分ごと化して考えていく過程をお届けしていく「CSVチャンネル」。

※CSV:「Creating Shared Value」の略。「共通価値の創造」と訳され、社会的価値と経済的価値の両立を目指す、経営の指針・スタイルのこと。

第2弾は、アサヒグループジャパン株式会社の傘下に、今年1月に新設された、サステナビリティ事業を展開する「アサヒユウアス株式会社」社長・高森志文さんとのトークセッションです。

国内酒類事業ではライバルとして日々切磋琢磨しているキリンとアサヒ。

一方で、アルコール事業をとりまく社会課題への取り組みや社内浸透など、ライバルだからこその共通点も多くあるのではないだろうか?

それぞれが社会課題に取り組む企業として、赤裸々に悩みや想い、そして未来について語り合うことで、今後につながる新たな学びを得たい。そんな思いから今回の対談が実現しました。

アサヒユウアス誕生の経緯について伺いながら、社会的価値と経済的価値を両立させていくことの難しさや大切さ、さらには競合同士が手を組むことの重要性について、キリンホールディングス CSV戦略部の草野と語り合いました。

【プロフィール】
(写真左)キリンホールディングス CSV戦略部 草野結子
IR投資家向け広報に従事後、CSV/ESGコミュニケーションを中心としたキリングループのCSV戦略の策定と推進を担う。
(写真右)アサヒユウアス株式会社 代表取締役社長 高森志文


Cheer the Future – かけがえのない未来を元気に

— アサヒグループもキリングループも、ビールの製造・販売を中心とする企業。そして、それぞれが持続可能な社会の実現に取り組む企業でもあります。そこでまずは、アサヒグループ様全体がどのようにサステナビリティと向き合っているのかについてご紹介いただきつつ、アサヒユウアスの事業についてプレゼンテーションしていただきました。

アサヒユウアス 高森:私たちアサヒグループでは、サステナビリティと経営の統合を実現させるため、未来への約束「Cheer the Future(かけがえのない未来を元気にする)」を中心に据え、サステナビリティ戦略を構造化しています。

また5つのマテリアリティ(※)を掲げ、特に重点的に取り組むべきテーマを設定しています。本日はそのうちの「環境」と「責任ある飲酒」について、私たちの取り組みをご紹介します。

※マテリアリティ:自社に関わる「重要課題」のこと。企業活動による社会課題への影響度合いを評価し、取り組むべき課題に優先順位を付け、わかりやすく示したもの。

まず、環境についてご紹介したいのが「アサヒの森」の取り組みです。アサヒグループでは広島県に広大な森を所有しています。ビールの王冠(フタ)の裏にあるコルクを日本の木から製造するために森林の所有を始めましたが、我々が特に力を入れているのが「水源涵養すいげんかんよう」です。

▼アサヒの森の取り組みについて

キリンさんも同様だと思うのですが、ビール製造には大量の水が必要です。そこで工場における水の使用量を削減するとともに、森林が持つダム機能を十分に働かせ、国内のビール工場で使用する水の100%を地球に還元しようという取り組みです。

つまり、豊かな森を育む森林保全の活動によって、私たちがビール製造に使用した水をきちんと地球にお返ししたい。私たちはこれを「ウォーターニュートラル」と名付け、取り組みを推進しています。

次に責任ある飲酒をテーマにアサヒビールが提唱しているのが「スマートドリンキング」、略して「スマドリ」の取り組みです。

アサヒグループはグループ飲酒方針の実現に向け、グローバルスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を策定しています。不適切な飲酒の撲滅に向けて、従業員一人ひとりが責任ある飲酒に対する知見を深め、実践し、アンバサダーとしてその必要性を社会に広く発信することを目的に取り組んでいるものです。意識の醸成や知識の習得を目的とした社内セミナーも実施しています。

アサヒビールが提唱している「スマドリ」とは、お酒を飲む人・飲まない人、飲める人・飲めない人、飲みたいとき・飲めないとき、あえて飲まないときなど、状況や場面における飲み方の選択肢を拡大し、多様性を受容できる社会を実現するために、商品やサービスの開発、環境づくりを推進するものです。2025年までにアルコール分3.5%以下の低アルコール飲料・ノンアルコール飲料の販売量構成比20%を目指しています。

▼スマドリの取り組みについて

ビール事業から独立し、社会貢献のさらに先へ

高森:アサヒユウアスは、あなた(YOU)と私たち(US)で明日を共創する会社。また、朝から夕、そしてまた明日が来るという、自然が巡るイメージを体現しています。

2022年1月に設立したばかりの企業ですが、一言で表現するなら、「サステナビリティをマネタイズする会社」です。こちらも動画を用意しているので、ご覧ください。

会社の定款 ていかん(※)では「地域の課題解決の推進に資する事業」「循環型社会の実現に資する事業」と定めています。なかでもアサヒユウアス設立のきっかけになったのが「森のタンブラー」です。

※定款:会社設立時に発起人全員の同意のもとで定める、「会社の憲法」と言われる基本規則。

人が集まるイベントに参加すると、使い捨てられたプラスチックのカップが山積みにされている光景を、ビール好きの方なら、見たことがあるのではないでしょうか。森のタンブラーに関しても、開発者が使い捨ての現状を目の当たりにしたことから生まれました。

日本ではカップが使い捨てにされる一方、ヨーロッパではエコカップが当たり前のように広まっています。欧州と同じことを日本らしい素材で実現したいという想いが、森のタンブラーの始まりです。

パナソニックとの共同開発で生まれた森のタンブラー。パナソニックが開発した「セルロースファイバー」という植物繊維を使用し、原料には間伐材も含まれている。ビールを注いだ時に舌触りも泡立ちも良くなるよう設計されている。

もともと、森のタンブラーは、アサヒユウアスの事業ではなく、アサヒビールの事業として展開されました。時期としてはコロナ前のこととなります。実はこの商品、ビール好きの方々に話題にしていただいた『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』の技術開発にもつながっています。

プラスチックゴミの削減を目的にイベントのドリンクカップに採用いただき、結果的にゴミがどれくらい減ったのか、それによってCO₂排出量がどれほど削減できたのか、実態調査も行いました。

同時にサステナブルを志向するのであれば、大量生産・大量販売という従来の在り方から距離を置き、これからの時代はちょっと手間がかかったとしても、地域にフォーカスするような取り組みが必要だと考えました。

サステナビリティを推進する商品やサービス、事業、そうした取り組みそのものが社会課題を解決するという考え方です。

しかし、ビールがコア事業であるアサヒビールでやろうとすると、どうしてもCSR(※)的な考え方になってしまう。また、森のタンブラーという事業はまだ小さな事業なので育ちにくいだろうと考えました。反対に森のタンブラーから始まるサステナブルな取り組みをマネタイズできれば、事業そのものが自分の足で立てるようになります。

※CSR: 「Corporate Social Responsibility」の略。「企業の社会的責任」と訳され、企業は利益を追求するだけでなく、社会に対して企業が責任を負うべきであるという考え方。

これがアサヒビールから森のタンブラーを切り離し、アサヒユウアスを立ち上げた起点となっています。まだ設立から半年にも満たない会社ですが、サステナブルを推進する商品開発も、あるいは事業の推進も、双方を推し進めていくのがアサヒユウアスの役割だと考えています。

今では食べられるコップ『もぐカップ』も開発し、サステナブルクラフトビールの開発・販売も行っています。

クラフトビールに関しては、フードロスの削減と地域活性が目的です。最初に開発したのが『蔵前BLACK』と『蔵前WHITE』といって、前者は廃棄されてしまうコーヒー豆、後者はパンの耳をアップサイクルしています。福祉作業所の方に回収のご協力をいただいているのも特徴です。

そして、森のタンブラーを基点に東急ホテルズさんと進めているのが、「東急REIホテル」18店舗へのウォータータンブラーの設置です。ホテル客室で提供される無料のPETボトルのお水をウォーターサーバーとタンブラーに切り替えました。

さらに系列の「渋谷ストリームエクセルホテル東急」には、森のタンブラーを進化させた水筒型の「森のマイボトル」を設置いただいています。ホテル業界は今後、また海外からの観光客が増えた時に、SDGsの取り組みを行っていないと、海外、特にヨーロッパの代理店に扱ってもらえないと危惧しているんです。そのため多くのホテル事業者がサステナブルな取り組みを進めていますが、森のタンブラーもその一環で取り入れていただいています。

私たちは、こうした取り組みを浸透させていくことが大事だと考えています。
アサヒグループでは脱炭素を進めるため、工場に多額の投資をしていますが、従業員の一人ひとりにまでサステナブルの意識が浸透しているかというと、まだ道半ばなのが現実です。すると投資家には評価されたとしても、世間の方々にはそうは映らない、といった齟齬が生じてしまいます。

アサヒユウアスは、自分たちのグループに向けたサステナブルの旗振り役でありたいと考えています。

同時にサステナビリティの分野は、競争領域ではなく共創領域です。このようにキリンさんの「CSVチャンネル」に出演させていただけているのも、1つの共創だと思っておりますので、ビジネスでは競合しながらも共創するという姿勢が、本質的な課題解決につながると考えています。

強く感じる社会の求めと、挑戦することの重要性

— アサヒユウアス・高森社長のお話を受け、ここからはトークセッションがスタート。両社がSDGsに取り組む理由や意味、さらには共創の重要性について、キリンホールディングス CSV戦略部の草野と共に語り合いました。

KIRIN 草野:今日はありがとうございます。高森社長が特製のカップをお持ちくださいましたので、乾杯からスタートしたいと思います。青のカップがアサヒさん、赤のカップがキリンですね。植物繊維や間伐材が原料だと伺ったので、ブラウン1色なのかと思いきや、色のカスタマイズまでできるのは驚きです。

高森: カップそのものはパナソニックさんとの共同開発ですが、色付きのバージョンに関しては、三陽商会さんが手掛けるアップサイクルブランド「ECOALF」との共創です。顔料を分散させて色を付けているので、染色による汚水は発生しません。

草野:ビールの泡立ちも最高ですね。マネタイズにつながるのも納得です。とは言え、社会にいいことをしつつ経済価値も付けるって、非常に難しいことですが、そこをあえてアサヒビールとは切り離し、別会社として設立したというのは、すごく勇気あるチャレンジだなと思いました。

高森:アサヒビールの社内事業としてやると、どうしても主力商品であるビールの判断軸になります。アサヒユウアスの提供する商品価値を伝えるためには、やはり切り離したほうがいいだろうという判断でした。

草野:英断ですよね。

高森:世間の追い風も感じていて。今、フードロスやアップサイクルといった切り口の取材依頼を多くいただくんです。

草野:営業をかけているのではなく、向こうから共創のお話がやってくるんですね。

高森:社会から求められる声を強く感じますね。これだけSDGsが注目を集める中、自分たちも何かやらなきゃいけない。そうした意識の表れなのか、私たちへの直接的なお声掛けだけでなく、アサヒグループのビール事業や飲料事業の営業を通じても、アサヒユウアスへのお問い合わせをいただくことがあります。

草野:なるほど。皆がサステナブルな取り組みへの必要性を感じ、営業ルートからもお声が掛かるのですね。

高森:はい。アサヒビールやアサヒ飲料の営業からも声がかかり、お得意先をご紹介いただく機会も増えています。
東急ホテルズさんに関しては、産学連携の流れで東急ホテルズさんをご紹介いただきました。来日客をお相手にするホテルさんからすると、より喫緊の課題を感じていたところの良いソリューションだったのだと思います。

草野:業界が各々、やるべきことを模索していますよね。そこでアサヒさんにとってもキリンにとっても難しいのが、お酒とサステナビリティの親和性です。お酒は飲みすぎると健康を害するリスクがあり、そのリスクを大きく捉える見方もあります。でも、コロナを経験して、お酒と食によって深まるコミュニティの重要性を、改めて実感したところもありまして。

高森:そうですね。大事なのは、逃げないことではないでしょうか。逃げずに向き合い、「スマドリ」の取り組みを通じて責任ある飲酒を進めていく。

草野:私たちはCSV先進企業になることを宣言していますが、それこそ大きなチャレンジで、お酒の価値を信じて伝え、その先に事業の存続や成長があるとも思いますし。

高森:私たちも同じ考え方です。

草野:キリンでも「SLOW DRINK」でお酒の時間をゆっくり楽しもうと、アルコールの有害摂取根絶に取り組んでいますし、抱えている課題は一緒ですね。
環境でも、最初にお話しいただいた水の問題や、容器包装のPETボトルリサイクルの取り組みも同じく今抱えている課題です。社会問題を正しく伝えること、これも推進する我々の重要な役割に感じています。

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なぜCSV戦略を取るのか?理解と共感の先の実践

草野:アサヒユウアスさんに関しても、啓蒙の役割が大きいように思うんです。「私たちはこんなことができるんだよ」という姿をお伝えするような。

高森:おっしゃるとおり、会社を立ち上げて良かったことの1つが、まさに啓蒙なんです。自社のグループ内にアサヒユウアスという会社ができて、何か環境にいいことをやっている。それをアサヒグループの従業員に伝えていくことも私たちの大事な役割です。

草野:ちなみに、どういった反応があるのでしょうか?

高森:若い従業員の意識の高さは実感しますし、今はお客様からSDGsの取り組みについて聞かれるので、全体的に意識は高まっていると思います。そこでアサヒユウアスのような事例を少しでも知っていると、取り組みの必要性をより身近に感じてもらえるのかなと思います。

そうしたことも背景にあり、この4月から新しく「ローカルSDGs専任リーダー」という役職ができました。地域のグループごとにSGDsの取り組みを進め、そのリーダーを各地に配置するといった試みです。

草野:お聞きしたところ、そのリーダーがベテランの方々なんですよね。感度の高い若手ではなく、あえてベテランをお選びになるのが面白いアプローチだなと思いました。

高森: 平均年齢58歳くらいですね。元工場長だったり元支社長だったり、ベテラン中のベテランです。こうしたベテランは自分の仕事を一心にやって来たゆえに、SDGsという視点が見えづらくなっていた側面があると思うんです。

でも、ひとたび視点を変えると、いろいろなことが見えてくる。実際に「昨日はこんな発見をしたよ」という報告をもらうことも多くて。さらに、自身の豊富な経験とネットワークを活用して、地域課題の解決にどのような役割を果たせるか?連日熱い議論を繰り広げながら、活動をスタートしています。

草野:若手との相乗効果もありそうですね。そうした従業員の理解は、非常に大切です。サステナブルな取り組みがなぜ必要なのか、私たちはどうしてCSV戦略を取るのか、そこへの共感がないと実践へと進めません。

草野:キリンはCSVつまり事業を通じた社会課題解決を掲げているので、事業ど真ん中でチャレンジしています。その中でキリンビールでは「CSVチャート」を使って理解を促進させています。お客様を真ん中に位置づけ、パートナーの価値、社会的な価値、そして自社の価値を可視化できるチャートで、理解促進に役立っているのはもちろん、実際にこのチャートを持って商談に臨むこともあります。

価値を可視化する努力を続け、チャレンジする。CSVチャートは、そういう思考と行動を引き出すための試みでもあります。キリンビバレッジでもSDGs提案マップというものを作成して商談に活用しています。徐々にグループ全体に浸透しつつありますが、アサヒユウアスさんの社外も含めた影響力を思うと、うちはまだまだですね。

高森:アサヒユウアスに関しては、事業のわかりやすさが特徴なのかもしれません。いろいろな企業さんとお話をしていても、SDGsの取り組みを一生懸命やっても、なかなか消費者の方に伝わらない、といったお悩みを多く聞くので。

草野:森のタンブラーを例にしても、価値が可視化されていてわかりやすいですよね。この価値の可視化は、パートナー企業にとっても大きなメリットだと思います。

高森: 森のタンブラーはパナソニックさんとの共同開発であり、三陽商会さんほか、多くの皆さんと共創していますが、確かにそこは評価いただけている点かもしれません。BtoCに向けたわかりやすさ、取り組みのストーリーや価値をお伝えしやすいのだと思います。

草野:まさにそこですね。企業の枠を超えて、皆で社会課題を解決する。今回私たちキリンも学ぶべきことが満載でした。最後にアサヒユウアスさんの未来についてお聞かせください。

高森:まずは、社会的な価値によって評価される会社に育てたいという想いがありつつ、同時により強く推し進めていきたいのが、さまざまな地域の活性化です。各地のローカルSDGs専任リーダーとも連携しながら進めていきたいです。

実際に地域のお声に耳を傾けてみると、「過疎化対策として移住者を増やしたいです」とか「人口減少の対策として婚活支援をしてください」といったお話もあるんですよ。

草野:婚活支援ですか!幅広いですね。

高森:そうなんですよ。そうしたご要望を聞いたときは驚きましたが、会社が定めた「地域の課題解決の推進に資する事業」には一致するので、アサヒとして共創できる事例を考え続け、課題を見つけるお手伝いもしていきたいです。

例えば、サステナブルクラフトビールで共創している狭山茶は、その代表例ですね。食品ロスの問題を抱えると同時に担い手不足も問題化しつつありますが、彼らは狭山茶が衰退していくことの焦燥感はあっても、危機感まではなかったと思うんです。

草野:そこを客観的な視点から課題を明確化するお手伝いをし、さらに課題解決も一緒に行うということですね。まさに共創ですし、手を携える相手が競合同士であっても同じですよね。

アサヒさんとキリンは輸送コストとCO₂排出量削減のために共同配送に取り組んでいますが、これも自社だけでは実現できず、手を携えるから、より大きい課題解決を可能にします。

高森:自社だけでは実現できない。共創の意味は、これに尽きますよね。PETボトルに関しても自分たちがリサイクルをするだけでは足りないし、不適切飲酒を減らすにしても、一社だけで撲滅できるものではありません。キリンさんとのお話を通じ、改めて共創の意味が浮き彫りになりました。

商品の背景に潜んだストーリーにこそ価値がある


— CSVに関わり深いテーマについて語り合い、共創の重要性にも触れたトークセッション。セッション後には参加者からの質問が多く寄せられました。最後に、その質問と回答をお届けします。

Q:飲料業界を牽引する大手だからこそ共創しうる取り組みのアイデアがあれば、お伺いしたいです。

草野:やはり環境分野ではないでしょうか。実際に取り組んでいる共同配送も、CO₂排出量削減を目的の1つに掲げています。

高森:ビール事業者のみならず、ここに流通業者も巻き込めると、より高い効果が得られそうですよね。そして、個人的に共創したいのがお祭りです。お祭りにお酒は付き物ですが、みんなが盛り上がるあまりに不適切飲酒が見過ごされがちです。お酒の文化も、お祭りの文化をも守るため、ビール事業者が一体になって、不適切飲酒を防いでいきたい領域です。

Q:CSVやサステナビリティの取り組みが、リクルートにどのような影響をもたらしているのでしょうか? お互いの捉え方や肌感をお聞かせください。

草野:CSVをきっかけにキリンを志望してくださる学生さんは多くいらっしゃいます。サステナビリティは多様な価値観を守ることでもありますが、いろいろな考え方の方が集まってくることで多様性の広がりも実感しますね。同時に優秀な人材が集まり、雇用面でのメリットを感じています。

高森:私も同じことを感じます。個人的なエピソードとしては、大学生の方から直接「御社と一緒にサステナブルに取り組みたいです」というメッセージをいただいたことがあります。SDGsに取り組むことは競争優位性の面でも欠かせませんが、上辺だけではいけない。表面的な取り組みだけではこうした熱いメッセージに対し、本質的な答えは返せないと実感させられました。

Q:サステナビリティをマネタイズ。この流れの理解が難しい人に対し、どのように理解を求め、プレゼンテーションされているのでしょう?

高森:商品やサービスの背景にあるストーリーをお伝えすることではないでしょうか。アサヒユウアスが取り組むサステナブルクラフトビールに関しても、350ml缶の値段が700〜800円。それなりのお値段ですが、フードロスの軽減に貢献し、障がい者の方の福祉支援にもつながる商品です。こうしたストーリーをお伝えすることが、商品価値の理解につながるはずです。

草野:高森さんのおっしゃるストーリーをお伝えすることが、日本社会にエシカルな考え方を浸透させる一助になると良いですよね。日本はエシカル消費に対する意識がまだまだ欧米に比べて低い傾向にありますが、その意識をどう変容させるかも、私たち企業が取り組むべきチャレンジなのかもしれません。

文:大谷享子
写真:大童鉄平
編集:RIDE inc.


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