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“午後ティーらしさ”はそのままに、おいしく進化し続ける。35周年を迎えた『午後の紅茶』

『午後の紅茶』が生まれたのは、1986年のこと。透き通る色鮮やかな紅茶がペットボトル飲料として開発・販売されたのは、当時とても画期的でした。

それから35年が経ちましたが、『午後の紅茶』は今でも「いちばん身近な紅茶」として、多くの方に手にとっていただいています。この記事を読んでいる方の記憶のなかにも、 どこかの瞬間に“午後ティー”があるのではないでしょうか。

ストレートティー、ミルクティー、レモンティーの3品をベースに、「おいしい無糖」や「ザ・マイスターズ」シリーズなど、幅広いラインアップを展開してきた『午後の紅茶』。数年に一度のリニューアルを含め、ブランドは常に少しずつ変わり続けてきました。

35年の長い月日のなかで、ブランドが受け継いできたアイデンティティとは。そして今、『午後の紅茶』はどんなことを考えているのか。
長い歴史を持つ『午後の紅茶』シリーズのこれまでについて、シニアブランドマネージャーの加藤麻里子にさまざまな角度から話を聞きました。

キリンビバレッジ株式会社の加藤麻里子

【プロフィール】加藤麻里子
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 午後の紅茶ブランド担当 シニアブランドマネージャー
アメリカの大学を卒業後、複数の会社でマーケティングやブランドマネジメントを行い、2018年4月にキリンビバレッジに入社。その後、現在にいたるまで「午後の紅茶」シリーズのブランドマネージャーを担当している。


それぞれの記憶のなかにある『午後の紅茶』

キリンビバレッジ株式会社の加藤麻里子

─まずは加藤さんについて聞かせてください。ブランドマネージャーとはどんなお仕事ですか?

加藤:わかりやすく言うと、『午後の紅茶』ブランドの責任者で、午後ティーブランドの社長のような感じです。『午後の紅茶』シリーズをつくることから販売するところまでの経営はもちろん、ブランドや人材の育成まで、幅広く担当しています。

私はいま35歳なので、35周年を迎えた『午後の紅茶』とほぼ同い年なんです。バスケ部だった高校生の頃から、部活のあとはみんなでコンビニに立ち寄って、午後ティーを飲んでいました。
入社面接で希望を聞かれたとき、叶わないだろうなと思いながらも「午後ティーがやりたい」と言った記憶があります(笑)。青春をともにしてきた大好きなブランドなので、担当できると決まったときは嬉しかったですね。

─実際にブランドマネージャーとして仕事をするなかで、改めて感じたことはありますか?

加藤:担当してすぐの頃、色々なデータを見たときに清涼飲料のなかでブランド好意度が2位、女性では1位ということに驚きました。私自身の好きなブランドではありましたが、まさか全国を対象にした調査でもここまで好意が高いとは思っていなくて。本当に多くのお客様に支えられているブランドなんだなと、改めて知りました。

「午後の紅茶」の発売35周年記念広告

『午後の紅茶』発売35周年を記念した広告「午後の紅茶 しあわせ写真館」

─先日、代々木八幡駅のホームに掲出され話題になった、発売35周年を記念した広告についてもお聞かせください。写真館で撮影したような家族や友人同士のポートレートと、『午後の紅茶』を並べたもので、ブランドのこれまでを象徴していますよね。

加藤:そうですね。日本一長い交通広告ということでいろいろな企画アイデアを考えていくなかで、発売35周年の感謝を伝えたいというのと、見た人が何かしら幸せな気持ちになってほしいというのがありました。そこで具体的な案として出てきたのが写真館です。

午後の紅茶 しあわせ写真館

「午後の紅茶 しあわせ写真館」ストレートティー広告

加藤:家族、友人、同僚、さまざまな関係性のなかで、世代を超えて午後ティーが一緒にいる。そういう姿を見て、自分自身を重ね合わせてもらえたら、と考えました。写真館をイメージした写真にすることで、そういう人間模様が表現できるかなと。

こういう広告ってタレントさんが人間模様を演じて撮影することが多いと思うのですが、今回は親子や友人などリアルな関係性がある方々に出演いただきました。日頃一緒にいるからこその表情や笑顔を切り取ることで、幸せな瞬間みたいなものがより伝わるんじゃないかなと。そこはこだわった部分です。

私も代々木八幡駅に行って実際に広告を見たのですが、みなさん本当にいい表情をされていて、日々の幸せなときめきを感じることができました。

“変わらないおいしさ”の背景にあるもの

午後の紅茶

─昔から変わらない味のように思える『午後の紅茶』シリーズも、実は数年ごとに少しずつリニューアルしているんですよね。前回のリニューアルは2018年だったそうですが、今年3月には3年ぶりに定番商品がリニューアルされました。その理由を教えてください。

加藤:ストレートティー、ミルクティー、レモンティーのレギュラー3品は、発売当社から数年に一度はリニューアルするようにしています。大きな骨格は変わりませんが、やっぱり時代ごとに飲む人の嗜好は変わってきます。ロングセラーブランドとはいえ、ちょっとずつ進化していく必要があると思っているんです。

今回は発売35周年という節目でもあるので、レギュラー商品の味とパッケージを刷新するには良いタイミングで、リニューアルは去年からずっと計画してきたことです。

─味のリニューアルというのは、どのようにやるものなんでしょうか。

キリンビバレッジ株式会社の加藤麻里子

加藤:これまでもいろいろなやり方をしてきたのですが、今回に関しては、「午後ティー史上最高においしい紅茶」を目指しました。そこで、過去の『午後の紅茶』のレシピを遡れるだけ遡って、商品開発研究所のメンバーに作ってもらい、そのすべてを飲み比べて、「いちばんおいしい『午後の紅茶』はどれか」というのを担当者で話し合いました。

─それぞれの記憶に「この時代の午後の紅茶がいちばん好き」というのがきっとあって、そのなかでベストを見つけていく作業は難しいですよね。

加藤:そうですね。「おいしさ」ってやっぱり主観によってしまうものだということを実感したんです。なので、我々の検証と並行してお客さま調査も行いました。定性的なグループインタビューと定量的な味の検証をして、そこから改良してというのを何度もくり返し、のべ2,700人のお客さまに試飲していただいたかと思います。35年間で史上最高においしいものを作りたかったので、そこにたどり着くまではやり続けました。

最終的には、お客さま調査で「これまでに飲んだ『午後の紅茶』のなかでいちばんおいしいですか?」という質問に対して、「おいしい」という回答をレギュラー3品平均で95%以上獲得することができたので、お客さまの期待に応えられるものになったかと思います。

─そんな経緯があったんですね。新しい『午後の紅茶』はどんな味になっているのでしょうか?

加藤: 3年前のリニューアル時には、飲んだときにバラを思わせるような華やかな香りがあったのですが、今回はより茶葉本来の心地よい渋みが感じられる味になっていると思います。

紅茶の味は茶葉のブレンド、抽出温度、抽出時間によって大きく変わってきます。特に、ストレートティーはミルクやレモンと比べると、よりごまかしの効かない繊細な味です。いちばん苦労したところでもあるので、ぜひ飲んでみてほしいですね。

ブランドのアイデンティティを守るということ

午後の紅茶の新パッケージ

─今回のリニューアルではデザインも一新していますが、どのような点を変えているんでしょうか?

加藤:新パッケージには、ティーポットなどのモチーフを加えています。茶葉から抽出して淹れた本格紅茶であることや、午後ティーらしい上品なかわいらしさを視覚的に伝えようと思いました。

―デザインを決める上でこだわっていることってありますか?

加藤:ブランドに紐づくアセット(ブランド資産)を大事にしています。どのブランドにも、アセットってあると思うんですが、午後ティーにとっての1つがアンナ・マリア婦人です。

ブランドロゴにエレガントな雰囲気があるのとないのでは大きく違ってきます。去年の夏に、ブランドアセットに関する調査を行って、改めてわかってきました。直接の因果関係ははっきりわからないのですが、過去の『午後の紅茶』を振り返ってみると、売り上げが伸び悩んでいた2000~2003年のタイミングでロゴからアンナ・マリア婦人が消えているんです。

ほかにも、たとえば『午後の紅茶』という5文字を1行で書くか改行するかでも印象が変わります。きっと、無意識的な部分で影響するんですよね。ブランド形成において、継続して使用し続けることがいかに大切かということも感じています。

─そんな時期があったんですね。35年のなかで、苦労した瞬間というのは他にもあったのでしょうか?

加藤:以前、いちばん最初の担当者から話を聞いたことがあるのですが、『午後の紅茶』というブランドを初めて世に出したときが、やっぱりものすごく大変だったと。
なぜかというと、温かい紅茶を急激に冷やしてアイスティーにすると、性質上どうしても白く濁ってしまうんです。それだと、どんなにおいしくても見た目が美しくない。ストレートティーにおいて、濁りのない「クリアアイスティー製法」を開発するまでの最初の一歩が、いちばん苦労したときだったのかなと思いますね。

─逆に、何かのきっかけで大きく人気が高まったということもありましたか?

加藤:それはいくつかあったと思います。まずは1996年に、今ではお馴染みの500ミリリットルのペットボトルを発売したこと。それまでは1.5リットルの大きなペットボトルか缶のものしかなかったので、携帯しやすいサイズが出たことで、急激に売り上げが伸びていきました。

また、紅茶=甘いというイメージがあるなか、2006年にヘルシー&ナチュラルな方向にレギュラー商品をリニューアルしたこともターニングポイントになったと思います。他にも「おいしい無糖」を発売した2011年や、「ザ・マイスターズ ミルクティー」を発売した2019年も非常に売上が伸びた年でした。そういう時代ごとの変化が、ブランドを支えているのかもしれません。

キリンビバレッジ株式会社の加藤麻里子

─すでに確立された『午後の紅茶』というブランドを育てていくうえで、「午後ティーらしさ」から離れないために意識されていることはありますか? 

加藤:味覚の話でいえば、これまでのレシピや手法を含むすべてのことが、商品開発研究所のスタッフのなかに蓄積されています。だからこそ、「これは午後ティーっぽいけど、これは違う」っていう方向性を、それぞれが理解して共有できるんです。

デザインや広告においては、先ほどお話したブランドアセットに加えて、『午後の紅茶』のどこか上品でかわいらしい雰囲気だったり、大人っぽさ、気分が上がる特別な感覚を大切にしています。当時から現在までのお客さまの声を聞いても、そういうイメージはずっと変わらないんですよね。

“午後ティーらしさ”を共有して受け継いでいくために、これまでの歴史やこだわりなど細かいところまで詰め込んだブランドブックをみんなで作ったんですよ。そうすることで、会社のなかで人が入れ替わっていっても、ブランドを守り続けることができるんじゃないかなと思っています。

今の時代が求める『午後の紅茶』の在り方


キリンビバレッジ株式会社の加藤麻里子

─変わらない“午後ティーらしさ”と、時代に合わせた変化。その両方がブランドにとって大切なんですね。では、今の時代が求める『午後の紅茶』ってどういうものだと感じていますか?

加藤:『午後の紅茶』って、ほとんどの方が一度くらいは飲んだことのある商品だと思うんです。それだけ定番のものだからこそ、やっぱり変わらない甘さや、おいしさが求められている。ただ一方で、昨今の社会環境の変化で生活を見つめ直す人も多いなかで、無糖や微糖といった健康志向なものも求められていると感じます。

それから、もうひとつの軸になってきているのがCSV活動(※)の観点です。SDGsの事業などへ関心が高まっているように、持続可能であることや、地球環境などの社会に対して良いかどうかという部分は、しっかり向き合い続けてきています。今後はより一層丁寧に取り組みを伝えていく必要があるとも感じています。

※Creating Shared Valueの略。お客さまや社会と共有できる価値の創造。

スリランカの紅茶農園への支援

─そのひとつとして、スリランカの紅茶農園への支援を継続的に行なっていますよね。具体的にはどんな支援内容なのでしょうか?

加藤:スリランカの紅茶農園への支援は、大きく分けて2つあります。
ひとつは、2007年から開始した農園の子どもたちが通う学校への支援です。現地の学校に、本棚や図書の寄付を行なっています。私も実際に現地へ足を運んだのですが、広大な紅茶農園がある田舎のエリアでは、建物や机がすごく古かったり、環境が整っていないなかで子どもたちが勉強していたりするんです。農園の方からも、「紅茶農園を継承していくために、子どもたちの教育水準を上げたい」という声がありました。現在では、ようやく200校くらいの学校に寄付をすることができました。

もうひとつは、レインフォレスト・アライアンス認証の取得支援で、これは2013年から行なっています。環境保全や労働環境の向上に取り組む持続可能な農園にするために、知識や方法を伝えるためのトレーニング費用をサポートしていくという取り組みです。大農園から小農園まで、地道に少しずつですが支援を続けています。

スリランカ紅茶農園支援の取り組みはコチラ

─日本でもCSV活動として取り組んでいることはありますか?

加藤:「午後の紅茶 HAPPINESSプロジェクト」と題した国内復興応援活動を、新たに始動します。プロジェクトの第一弾として、熊本県産のいちごと茶葉(※)を使った『熊本県産いちごティー』を発売するのですが、35周年のテーマでもある“感謝”の思いを込めて、1本につき3.9円が熊本県の復興支援のために活用されます。
おいしいフルーツティーを楽しんでいただきながら、復興支援につながればいいなと思っています。
※果汁0.1%、熊本県産紅茶葉5%

─いちごティーは数年前にも発売されていましたよね。『熊本県産のいちごティー』も、とても楽しみです。最後に、ブランドの今後について考えていることがあれば教えてください。

加藤:『午後の紅茶』は「幸せなときめきを届ける」をブランド・パーパス(ブランドの社会的存在意義)としています。ただ喉を潤す飲みものとしてだけではなく、商品やさまざまな活動を通して、世の中を少しでも明るくしていければと思っています。

今後50周年、100周年を迎えても、ずっと愛されるブランドを目指して、発売当初のこだわりはそのままに進化し続けるブランドでありたいですね。日本だけではなく世界中に人に幸せなときめきを届けられていたら嬉しいです。

─今、社会状況によって世の中が大きく変化していると思います。今までは当たり前だった「誰かと一緒にお茶を飲む」という日常的な幸せが遠いものになってしまったり。そういった変化のなかで、『午後の紅茶』が伝えてきた「幸せ」や「ときめき」という言葉の意味も変わりつつありますよね。

加藤麻里子

加藤:そうですね。『午後の紅茶』のこれまでを振り返ってみると、やっぱり日々の何気ない幸せや、気分が上がるちょっとしたときめき、そういう瞬間を感じてもらうことを大事にしてきたと思うんです。でも、今はこれまで当たり前にしてきたことができなくなっているときでもあります。

まさに去年の春の広告は日々の何気ない幸せをテーマにしていて、「きっと幸せは、さわれるくらい、そばにある。幸せの紅茶、午後の紅茶。」というコピーとともに、家族や友人など大切な人と過ごす日常のシーンを描いた広告をつくりました。

生活のなかのふとした瞬間に幸せなときめきがあるということに立ち返って、これからも『午後の紅茶』らしく、おいしい紅茶とメッセージを届けていけたら嬉しいです。

『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』が6月1日に発売!

午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー

フレッシュな甘さと酸味を持つ熊本県産いちご「ゆうべに」と、優しい飲み口の熊本県産茶葉を組み合わせたスペシャルなフルーツティー(※)。「いちご本来の甘酸っぱさやみずみずしさが再現できて、とってもおいしい紅茶になりました」と加藤も太鼓判を押す新商品です。1本につき3.9円が熊本県の復興支援のために活用され、気軽にドネーションに参加できる商品でもあります。
※果汁0.1%、熊本県産紅茶葉5%

次回は、「午後の紅茶 HAPPINESSプロジェクト」の取り組みや『熊本県産いちごティー』誕生の経緯についてさらに詳しく紹介。商品を一緒に作り上げた、「ゆうべに」のブランディングを担当するJA熊本経済連の野田さんとキリンの開発担当社員の対談企画です。お楽しみに。


文:坂崎麻結
写真:土田凌

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