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キリンビールサロン第二期を振り返って

オンラインだけでも、参加者の心を掴み、熱量高いコミュニティをつくることはできるのだろうか?キリンビールサロン第二期は、そんな無謀ともいえるチャレンジだったようにも思います。

全5回のオンラインイベント。その最終回、最後の乾杯の時、講師草野の感極まった表情と、参加者の方々からの温かいコメントを画面上で追いかけながら確信しました。それは可能であると。

今回は、第二期を終えたばかりの草野に、キリンビールサロン第二期を振り返ってもらいました。最後には、第一期・第二期全メンバーへ向けた「お願い」もあります。

それでは草野さん、お願いします。

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【プロフィール】草野裕美
キリンアンドコミュニケーションズ株式会社 企画担当 ビールセミナー講師。キリンビール横浜工場をメインに開催している「キリンビールセミナー」で、講師としてさまざまな視点で“ビールの楽しみ方・魅力”を伝えている。

オンラインで「伝わる」ために意識したこと

キリンビールサロン講師の草野です。

突然ですが「あなたにとって、ビールとは何ですか?」こんな質問をしたら、何と答えますでしょうか。

大変難しい質問です。お伺いしておきながら、私もおそらく端的に答えることはできないと思います。しかしながら、改めてキリンビールサロン第二期を振り返ると、この難しい問いかけをサロンメンバーにし続けた5ヶ月間だったような気がしています。

キリンビールサロンは「これからのビールを考える」をテーマに掲げて、2019年に第一期を立ち上げました。

第二期はコロナ禍ということもあり、全5回をオンラインで行うこととし、2020年の11月よりスタートしました。

オンラインということもあり全国から応募が集まり、嬉しいことに参加希望者数は第一期を上回りました
多くの方々にご応募をいただきとてもありがたい半面、全編オンラインは初めての挑戦です。サロン特有のメンバー同士の熱量のある交流がどれだけできるのかが未知数で、不安も大きかったのを憶えています。

キリンビールサロンのテーマは「これからのビールを考える」。コロナ禍においてあらゆることが変化している状況の現在であれば、ひとりひとりがじっくりとそのことについて考えることができるのではないだろうか。むしろオンラインであるからこそ私たちから直接伝えられるものがあるのではないか。そんな期待感もありました。

▼第二期への想い・途中の振り返りはコチラ

サロンメンバーが楽しみながらもしっかりと学ぶことができ、その上で「これからのビール」についても考えることができる。そんな場を作っていくために、特に意識したのは各回の連動性を持たせる構成でした。

#1:「私の好きなビール」について各自が発表し合う回
#2:ホップの産地岩手県・遠野と中継し、遠野でホップ産業の推進に携わる方々から、ビールの原料の「生産地の方々」の声を聞く回
#3:SVBのヘッドブリュワー古川から「造り手」としての視点でビールを語ってもらう回
#4:ビアアーティストの茶坊主さんをお招きし、「注ぎ手」の立場でビールを語っていただく回

この順番にした理由は、「原料の生産地」「造り手」「ビールの提供者」と、目の前の一杯のビールを口にするまでに携わる方々を順番に紹介していく流れにすることで、ビールの魅力をより深く知ってもらうことはもちろん、サロンメンバー自身が、目の前の一杯のビールができるまでの物語を五感で感じ取り、「自分にとってのビール」とは何かということを考えていただけるようにしたかったからです。

茶坊主注ぎ手元

私たちのこの想いをサロンメンバーが感じ取ってくださっている実感は、毎回終了後にご提出いただくアンケートからも垣間見ることができました。

遠野から中継でつなぎホップ産業に対する熱い想いを伝えた回では、「いつかホップ畑に行きたい」という声が届きました。醸造家によるビール造りの多少マニアックな話を受けて、「ビール造りの奥深さにメモの手が止まらなかった」という声もいただきました。ビールの注ぎ方を学ぶ会では、「ちょっとした注ぎ方の工夫で家飲みビールが格段に美味しくなった」という驚きの声も上がりました。

アンケートを見る度に、準備してきたことがしっかりと伝わった実感が湧いてきてとても嬉しくなりました。

実は4回目の講義までは、お話しする内容や当日の段取りについては、かなり綿密な下準備をしました。どうしてもオンラインでは画面越しに一方的にお伝えすることが増えます。なので、より一層伝えることを明確にしておく必要があったからです

最終回で確信した強い「つながり」

オンラインの様子草野さん&サロンメンバー

キリンビールサロンの講義は全5回です。卒業式にあたる5回目は、1回目で聞いた「今の私が好きなビール」を改めて語ってもらうことにしていました。皆さんに直接お話しできるのも最後。これまでの4回以上に徹底的に準備をして臨もうと考えていました。

サロンメンバーには、4回目の講義終了後に改めて「今の私が好きなビール」のアンケートをお願いするとともに、サロンでの気づきやこれからビールとどう付き合いたいかを回答いただきました。その回答を参考にしながら念入りにシナリオをつくる準備をしようと考えていたのです。

ところが、メンバーからの返信をまとめたものを拝見した瞬間、私の考えは変わりました。なぜならば、私たちが5ヶ月間にわたり問い続けてきた「あなたにとって、ビールは何ですか?」という難しい質問に対し、皆さんが迷いながらも、自分なりの答えを見つけ、自分の言葉で表現してくださっているのを強烈に感じたからです。

サロンnote写真①

最終回で配布されたサロンメンバーのコメントをまとめた冊子。草野の冊子にはメモと付箋がビッシリと

私は皆さんからの返信を読みながら、仕事中にもかかわらず何度も何度も泣いてしまいました。そして当日は皆さんの話を、先入観を持たずに存分に聞きたいと思いました。私たちから「答え」を出すことは必要ないんだ、そう思うとふっと肩の力が抜けるようでした。これまで考えていたプランを見直し、ほとんど最小限の準備にとどめ当日を迎えることにしました。

そしてサロン第二期の最終回当日がやってきました。今回はシナリオをほとんど作っておらず、もはやノープランに近い状態。どんな展開になるかは私たちも含め誰もわかりません。私たちは「楽しもう!」その言葉だけを「決めごと」にして、メンバーを迎えることにしました。

最終的に用意した5回目の約2時間半にわたるプランは、「サロンメンバーのひとりひとりがみんなの前でビールについて語ること」これだけでした。

実際に始まってみると、ひとりひとりが好きなビールについてその理由を語るとともに、自分なりのこれからのビールとの付き合い方を自分の言葉で素直に語ってくれました。事前にメールで伺っていたコメントの背景が本人の言葉でさらに深く語られると、すでに何度も皆さんからのコメントを読んでいたはずなのに、また新たな嬉しさがこみあげてきました。

情報を飲んでいるのだと感じました。そして情報の解像度が上がるほど、味に名前がつき、より美味しさを理解できると思います。なのでビール製造の背景にあるストーリーや想いを知ることは、単純にビールの美味しさをより感じられると思いながら参加させていただきました。おいしかったです。
一杯のビールにはそれをつくる人・売る人・飲む人を始めとする多くの人が関わっていて、その一人一人がビールを「愛している」。その事を強く感じました。また、そのビール愛をどのように表現しているかも様々でした。ビールをつくってみる、ビールで記事を書いてみる、ビールで町おこしをしようとする人などなど。ビールには、時に人の人生をも動かしてしまうような、とても大きな力があるとも感じました。一杯のビールには色々な人の愛が詰まっている。
これまで味にも種類にも詳しくない自分は、ビール好きとして”にわか”なんじゃないかと思っていました。でも、サロンで味を学び、ビール造りへの苦労や工夫を学んだことで、味を作るために工夫を重ねた人たちやストーリーのことを知り、愛せれば、「ビールを愛している」と考えていいのだと思うようになりました。

こんな風にビールによって得られた新しい気づきを、パソコンの画面から皆さんが飛び出してくるのではと錯覚しそうになる勢いで熱く話してくださる方もいる一方で、

せっかく専門家の方がいろいろと教えてくださったのだから、これからはしっかりとした知識をもとに、こだわりを持って飲まないとも思ったりしますが、きっと単純にビール好きだからおいしく楽しく飲めればそれでいいじゃんという原点に戻ってしまいそうなそんな気もしております。
1回目と5回目のビールが同じになってしまった。それはビールを知るにつけ、何を選んでいいのかわからなくなり、そんなとき、自分の原点のビールに戻った。
いろいろ飲んで、やっぱり自分が1回目に選んだビールが一番好きだとわかった。

など、自分の好きを再確認でき、さらに思いが深まった方など様々でした。

ひとりひとりの熱い想いがあふれ、尽きることがありませんでした。私は途中で、当初予定していた時間がすでにオーバーしていることには気づきましたが、皆さんのあふれる想いを思い残すことなく全て聞きたいと思いました。それはきっと、その場にいた全員がきっと同じ気持ちだったと思います。

最後の乾杯に「ハートランドビール」を選んだ理由

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(写真提供)とみこさん

こうして全員が話し終え、いよいよ締めくくりの乾杯の時間となりました。私がこの場面でサロンメンバーに選んだビールは「ハートランドビール」でした。

なぜハートランドビールを選んだのか。

それにはこんな理由があります。ハートランドビールは1986年に誕生しました。80年代に入り、物があふれる状況が続く中、これからは個人が自分の価値観で商品を選ぶ「選択の時代」になるだろうと考えました。そんな時代に時、新しい生活意識・価値観を持つ人に向けて、ビールの楽しさを提案したいと考えた結果、ハートランドというビールが誕生しました。

私はこのハートランドビールの持つ背景が、現在のような大変な状況の中でも、新しい生活意識を見出し、その中で最大限にビールを楽しもうと考え、キリンビールサロンに参加をしてくださったメンバーの姿に重なりました

そしてもうひとつ、ハートランドビールは、飲み終わった後工場に戻していただき、繰り返し使用する「リターナブルびん」のビールです。いつかまた乾杯できることを願い、「再会の約束」の想いを込めて、ハートランドビールでサロンメンバーと乾杯をしたかったのです

いよいよハートランドビールがキリンビールサロンのオリジナルグラスに注がれ、全員で最後の乾杯をする時がやってきました。

「乾杯!」

その掛け声に合わせるかのように、「いつか必ずリアルで乾杯しよう!」「楽しかった!」とメンバー同士のチャットの連打が止まず、その言葉のかけあいを見ていると、それまで我慢していた涙があふれてしまいました。泣き笑いをしながら皆さんと乾杯をし、第二期の5回目が終了となりました。

#5ハートランド乾杯2

キリンビールサロン第二期の5ヶ月間、私は自分自身でも答えられない難しい問いをサロンメンバーに投げかけました。そしてオンラインでどこまでビールの楽しさが伝えられているのか毎回不安でした。ですが、サロンメンバーは私たちの想像をはるかに超える気づきを自分の力で見つけ、自分の言葉で語ってくれました。人前で語るには勇気が必要だったと思います。ですが、サロンメンバーにはそれを受け入れ、尊重し合うフラットで温かな関係性がありました。

私は今回のキリンビールサロンを通じて、サロンメンバーのつながる力、多様性、懐の深さを強く感じました。また「ビールが好き」の共通項だけで、オンラインでもこれだけでの一体感を醸成できるビールの素晴らしさを改めて確認できました。皆さま、私たちにとても素敵なストーリーを見せてくださりありがとうございました。

さて、第二期はこのようにしていったん区切りの最終回を迎えましたが、皆さまとの「つながり」はもちろん続きます。そして、サロンメンバー同士が、これからもずっとビールを通してつながり続いていくことを願っています。そして、いつの日かメンバー全員で乾杯できる日を楽しみにしています。

全キリンビールサロンメンバーへのお願い

最後に、これを読んでいただいた第一期・第二期のサロンメンバー全員へ、私からお願いです。

第三期が仮に開催されるとなると、サロンメンバーは総勢で100人を超えることになり、ますます大きなグループになります。引き続き私たちはメンバーの皆さまにビールの魅力を伝えていけるよう努めますが、その時に、もしかしたら、サロンチームの私たちだけでは力が足りなくなることがあるかもしれません。

そんな時、ぜひサロンメンバーの皆さまのお力をお借りしたいのです。サロン終了後のアンケートにも「協力できることがあれば言ってください」「これからも関わりたい」「運営も協力したい」そんなありがたいコメントが多く寄せられています。皆さまがより、自分らしくビールを楽しめるような場にするために、私たちと一緒にサロンを作っていただき、ビール好きの輪を大きくしていくことが大切だと考えています

ですので、私からサロンメンバーの皆さまへのお願いはひとつ。

「これからも仲間でいてください」

引き続きよろしくお願いします!

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