数字で振り返るキリンビールサロン。講師をつとめた2人が綴る、5年間の「ありがとう」
「これからのビールを考える」をコンセプトに、体験を通じてビールのおもしろさを知り、ビールが好きな仲間と出会う場として2019年に発足したキリンビールサロン。今年の3月に第5期の最終回が終わり、5年間の幕を閉じました。
さまざまな方にご参加いただいたキリンビールサロンは、どの期も印象深く、たくさんの人たちとビールとの出会いがありました。これまでの歩みを数字で振り返るとともに、全期を通して講師の二人が感じたことを語ってもらいました。
▼「キリンビールサロン」に関する記事はこちら
参加人数・メンバーの属性
第1期から第5期までの参加メンバーは総勢169名。最年少は20歳から、最年長は83歳まで幅広い世代の方にご参加いただきました。また、第1期は関東地域にお住まいの方が中心でしたが、第2期からオンライン中心になったことから、さまざまな地域から参加くださる方が増えました。なんと、北は北海道から南は鹿児島まで!
初めたばかりのころは私たちが発信するnoteやSNSなどで知ったという方が多かったのですが、実は第5期の約半数のメンバーが「友人や知人からの紹介」をきっかけに参加してくれました。過去に参加してくれた方やサロンの存在を知ってくださった方がおすすめしてくれたこと、ビールをきっかけに輪が広がっていったことは本当にうれしいです。
サロンで取り上げたビールの数・種類
これまで講義で皆さんに試飲いただいたビールは100種類以上。自社・他社にこだわらずビールをもっと好きになっていただきたいという想いから、キリンの商品だけでなく全国のブルワリーのビールも飲んでいただき、それぞれの個性や楽しみ方をお伝えしてきました。
また、私たちが一方的に紹介するだけでなく、参加メンバーの皆さんにも「私の好きなビール」を紹介していただきました。そこで紹介されたビールは約218種類。もちろんキリンの商品以外もOKとしていたので、国内外のさまざまなビールとともに、なぜそのビールが好きなのかという熱い気持ちを語ってもらいました。
その熱量たるや「さすがビール好きの集まり!」と圧倒されるほど高く、それは講義中だけでなく、メンバー同士が交流するFacebookグループでも感じました。そこで投稿される「今日のビール」には2024年8月23日時点で3,223ものコメントがつき、参加メンバーの皆さんも積極的にビールを紹介するなど、その交流は現在まで続いています。
お越しいただいたゲスト、その他
講義には、株式会社BrewGood代表の田村淳一さんや、伊勢角屋麦酒ブリューマスターの出口善一さん、ベアレン醸造所の嶌田洋一さんなど、これまでに総勢24名のゲストにお越しいただき、さまざまなビールの楽しみ方や魅力を伝えてくださいました。
そんなゲストとの交流も含め、SNSでも期ごとの様子やこれまでの取り組みを発信してきました。X上でのリーチは6,600万以上(メンションは5,000強!)にのぼり、当初想像していた以上に、たくさんの方にキリンビールサロンの活動が届いたことはとても感慨深いです。
また、キリンビールサロンでは毎回参加メンバーからいろんなご意見をいただきますが、たまに「キリンの商品を紹介しなくて大丈夫ですか?」と、ご心配の声をいただくことも(笑)。でも、胸を張って「全然大丈夫です!」と答えられたのは、サロンの皆さんが楽しそうにビールを飲む姿と、「ビールをもっと好きになった」「新しい発見と学びがあった」という、うれしい声があったから。
ビールをこよなく愛する参加メンバーの皆さん&ゲストの方々と、一緒に歩んできた約5年間。振り返ると、たくさんの人たちとビールとのかけがえのない出会いがそこにありました。
講師の二人が振り返る、キリンビールサロンの5年間
最後に、第1期~第3期の講師をつとめた草野裕美、第4期~第5期の講師をつとめた後藤沙耶香に、これまでのキリンビールサロンの取り組みを総括してもらいました。
全5期の歩みを振り返って一言いただきたいと伝えたところ、それぞれが抱えていた不安や葛藤、壁を乗り越えるための工夫、感じたよろこび、そしてメンバーへの想いがたっぷりと綴られた14,000文字以上の文章が届きました。それはまるで溢れんばかりの愛を詰め込んだラブレターのようで。少し、いやかなり(笑)長文となりましたが、最後まで読んでいただけたらうれしいです。
第1期から3期で講師をつとめた草野より
キリンビールサロンは、第1期の募集を2019年に開始し、2024年の第5期が終了するまで、若年層を中心に総勢169名の方々が参加したコミュニティです。5期までで160名ほどの参加者と聞くと、小さなコミュニティと感じる方も多いかもしれません。
ですが、サロンは小さいながらも、とても素晴らしい「場」だったと感じています。キリンビールサロンが終了し、少したった今、このサロンについてあらためて振り返ってみたいと思います。
●キリンビールサロンを始めたきっかけ
キリンビールサロンを始めたきっかけは、「若者のビール離れ」に対し、「若者がビールに興味を示すようなことをやってほしい」という社内のリクエストからでした。当時、私はキリンビール横浜工場でビールの歴史や文化を伝える「キリンビールセミナー」の講師をつとめていました。
キリンビールセミナーのお客さまも40~60代のお客さまの参加が多かったため、私も同じような課題感は感じていました。ところが、いざ何をすべきか考えてみても、まったくいいアイデアが出てきませんでした。
そこから、社内のサポートメンバーと何度も議論を重ねるなかで出てきたのが、「毎回同じメンバーで数か月顔を合わせて学ぶ」というアイデア。キリンビールセミナーは毎回2時間の講義を単発で開催していたので、最初は「数か月もずっと来てくれるのだろうか?」と疑問でした。でも、そのときにアイデアを出してくれた方は、「若者は場を求めている。学ぶ、楽しむなど何か共通項があるメンバーと一緒に集まれる、そんな場を求めている」と話してくれました。
当時の私は、正直それにピンと来ていませんでしたが、この形式がサロンの核となるメンバーの一体感を生み出していくこととなります。
●こだわりたいこと
初めに、「ビールの魅力が伝わるならキリンの商品でなくとも紹介する」を、こだわりにしようと決めました。キリンの商品はどれも魅力的ではありますが、さまざまな視点でビールのおもしろさを伝えるにはキリンの商品のみならず、世界中の魅力的なビールを紹介するのがいいと思ったからです。
サロンの方針が決まり、私はとてもワクワクしました。当時の私は、ビールに夢中でビールに関する国内外のさまざまな場所を訪れたり、ビールを買い漁ったり、ビール関連の本を読んで勉強することが何よりの楽しみで、一日中ビールのことを考えていました。
ですが、それはあくまで個人の興味で行っていたことでした。それが今回は、自分なりに集めたビールや情報を使い、ビールの魅力を「仕事」として伝えることができるのかと考えると、とても不思議な気持ちであると同時にとてもワクワクしました。また、社内のサポートメンバーや、のちに4期・5期の講師をつとめる後藤さんも加わり、意見を出し合いサロンを作っていく過程が刺激的で、ゼロから作り上げることの楽しさも感じていました。
●悩みに悩んだ企画
やりたいことはたくさんあり、お呼びしたいゲストも自分のなかでスムーズに決まりました。ところが、いざ企画を考え始めると、それをどのように表現していいのかは大変悩ましいものでした。サロンを始める際にお呼びするゲストは、「ビール界の最前線でリアルに活躍し、若者がかっこいい!と感じるようなゲスト」というイメージが自分のなかにありました。
ビールに関心を寄せ、これからもっとビールを知っていきたいと思い参加してくださる方々には、とにかく本物の素晴らしい方々に触れていただきたかったのです。そのイメージに合うゲストをお呼びできることはうれしかった一方、そこで満足はしたくないと思っていました。刺激的なゲストをできる限りきちんと理解し、尊敬の気持ちを持ちながらも私なりの、キリンならではのビールへの気持ちや考え、こだわりをゲストとの対話を通じ、きちんと表現したいと考えていました。
そして、それまでのセミナーと一番異なる点は、講義を行うだけではないという点です。5か月間同じメンバーで過ごし、メンバー同士が5か月後にはビールを通じてより深くつながりあっていることをサロンは目指していました。
ゲストときちんと向き合いながら、小手先ではなく、参加者の皆さんとのコミュニケーションもしっかり行い、ビールの知識を通じて参加された方々が少しでも「ビール」について考えるきっかけを提供したいと考えていました。
今までは「ビールって楽しい!」という気持ちだけで自由に楽しんでいましたが、サロンでは当然ながらそれだけでは足りないことに気付いてしまい、ワクワクする気持ちと同時に、毎回とても苦しみながら企画を考えてきました。
●コミュニティを考える。自分の役割を考える
こうして始まったサロンでしたが、ありがたいことに素晴らしい参加メンバーのおかげで、順調に期を重ねていくことができました。一方、私の心のなかでは、毎回参加者が楽しめるか、ゲストの素晴らしさを真摯に伝えることができるか、どんどん大きくなるサロンを仕切れるのか…と、そんなことばかり考え、サロンを続けるのがつらくなった時期もありました。
でも、それでもどうにか続けていきたいと思ったのは、サロンに参加してくださった皆さまの存在があったからです。サロンの申し込みはペアなどでは申し込みはできず、一人ずつお申し込みをする形です。そんな募集の仕方で、各地から見知らぬ者同士が集まったのですが、共通して本当に素晴らしい方々ばかりでした。
「こんなこと言ったら、どんなふうに思われるかな?」
「ぜひお伝えしたいが、難しい内容でもあるし、退屈しないだろうか?」
「私は思い切り楽しんでいるが、皆さんも本当に楽しんでいるのだろうか?」
いつもそんなことを考えながら皆さまの前に立ちますが、毎回皆さまがサロンの最中に大いに楽しみ、盛り上がってくださる姿にホッとし、それが励みになりました。そして、サロンが終わったあとには、こちらを思いやりながらも率直に忌憚のないご意見をくださるため、みんなでサロンという「場」を作っている気持ちになりました。
立ち上げた当初は「ビール」そのものにフォーカスをして「ビール好き」の集まりをつくるということをイメージすることしかできていませんでしたが、次第に私のモチベーションの源は皆さまになり、この素晴らしい皆さまがいてくださるサロンという「場」について意識が向くようになりました。
そこで、サロンという「場」を考えたとき、自分はどうあるのがいいのかをあらためて考えました。そして、「仕切りすぎない」という結論に至りました。立ち上げ当初はオーガナイザーである自分が先頭に立ち、皆さんを引っ張る必要があるのではと感じていましたが、その必要がないことに気づいたのです。
サロンに参加くださった皆さまは「自分が楽しむ」ことを「人任せ」にしない方々です。そして、各自が自分のできることを肩ひじ張らず、すっと手を差し伸べてくださる姿に「みんなで楽しむ」をみんなでつくればいいのだと思うようになりました。
そして「みんなで楽しむ」なかで自分のできることを考えたときに、仕切るのではなく、皆さまがリラックスしてサロンで楽しめるように「場を和ませる」空気のような存在になりたいというシンプルな役割に気づきました。私は、勝手な思い込みで自分自身を苦しめていたことに、皆さまを通じ気づかせていただいたのです。このマインドのシフトは、4期目から後藤さんに引き継ぐこととなった際にも、軽やかにバトンを渡すことにもつながったと思っています。
とはいえ、いまだにときどき空気になり切れず、クセの強さを発揮してしまう私ではありますが、このような心境の変化を経ることにより、不思議と皆さまとの距離がより近く感じられ、サロンという「場」がもっと楽しく、サロンが「場」として育っていくことをうれしく感じるようになりました。
●考え始めた「サロンのこれから」
サロンという場を心から楽しみ、後藤さんへのバトンタッチもスムーズに行き、しばらくたったころ、「これから」について次第に考えるようになりました。2019年からスタートしたサロンはおかげさまで5期目まで続けることができましたが、その間に自分の状況や心境にもさまざまな変化が起き始めていました。不思議なことに、後藤さんも同じタイミングで同じようなことを考えており、会社とも何度も協議をしたうえで、サロンの6期目は開催しないことを決めました。
私たちのなかで開催しないことは決めたものの、それでいいのかという気持ちも強くありました。サロンは「みんなで楽しむ場」なので、私たちの一存でそのようなことを決めていいのかという想いからでした。
そこについては本当に悩み、後藤さんや社内のサポートメンバーとも何度も話し合いを重ねました。ですが、いつも皆さまが率直にご自身の気持ちを私たちにお伝えくださったように、正直に包み隠さずに私たちの気持ちを皆さまにお伝えしたいと考えました。
そこで、急なお声がけではありましたが、オンラインで場を設けることにしました。月末の金曜日の夜というお忙しい時間帯にも関わらず、多くの方がご参加くださいましたが、皆さまがオンラインで続々と入室し始めると、どんどん胸が苦しくなり表情が硬くなっているのが自分でもわかりました。
時間になり、話を始めましたが今思い返しても何を話したか思い出せません。話を終えると、「お疲れさまでした」という私たちをねぎらう言葉とともに、皆さまからは意外な反応が返ってきました。
「キリンが主催のサロンは終わるということね、OK~」
「でも私たちは引き続き、このメンバーでビールを楽しむことには変わりないよね」
「じゃ、これからサロンどうしていく?」
そんなリアクションばかりでした。皆さまががっかりして、「辞めるなんて身勝手だ」と思うこともありえるのではないかと想像をしていたため、大変驚きました。
そして、その明るく前向きな言葉や態度には、おそらく硬く暗い表情の私たちを受け止めて和ませてくれようとする意味合いもあったかと思います。皆さまの優しい心遣いが伝わってきて、やはりサロンは「みんなで楽しむ、みんなでつくる場」なのだと、あらためて感じました。
その瞬間にほっとして、それまで我慢していた涙が一気にあふれ出しました。横を見ると、私と違いいつも冷静な後藤さんも大泣きしていて、後藤さんも本当にサロンを大切に感じていたのだと思いました。大変怖かったですが、皆さまに救われ、直接皆さまに正直に話をしてよかったと感じました。そこからは泣きながらも皆さまと笑い合い、これからのサロンの在り方について話をしました。
●尽きない感謝の気持ち
こうしてキリンが主催するサロンはいったん終了することとなり、今年7月に今までの感謝の気持ちを込めて、皆さまやゲストの方々がリアルで集う謝恩会を開催することに。その日は、遠方からの方も含め、90名ほどの方々にお集まりいただきました。
謝恩会はとにかく楽しい場にしたいと考えました。そこで思いついたのが、「私の好きなビール」を紹介しあうということでした。「私の好きなビール」を紹介し合うことは、第1期から毎回、1回目と卒業時に行ってきました。1回目には「初めまして」ともに持参した自分の好きなビールを語る。そして卒業する時にもまた同じことを聞くのです。
いきなり初対面の人に自分の「好き」を語ることは勇気がいると思いますが、サロンにはそれぞれの「好き」を否定する人は誰一人としていませんでした。そして卒業時にはメンバー同士の交流も深まり、「そのビールは○○さんらしいね!」などと、それぞれの人となりも含めそのビールを解釈できることも楽しく、毎期ずっと続けてきたのです。
「私の好きなビール」を語り合うことでお互いをわかり合う、ビールの世界を広げる刺激になると感じていたので、これを90人で行ったらさぞ楽しいのではないかと考えたのです。
当日は20組以上のグループに分かれ、各テーブルで自己紹介とともに「私の好きなビール」の紹介が始まりました。初めて会うメンバー同士も多くいましたが、持参したビールをシェアし合ううちに、各テーブル大いに盛り上がり、笑い声が絶えない時間となりました。
そのあと、参加者全員が持ち寄ったビールを集め並べてみましたが、90本ものさまざまなビールが並ぶ様子は圧巻でした(皆さん、ここはまったくキリンに忖度せず、本当に好きなビールを持ってきていました)。私はその光景を見た時に「ああ、これが私の見たかった風景だ」とあらためて感じました。
「ビール」と一言で言っても、「ビール」は大変奥深く、100種類以上のいろんなタイプのビールが存在します。ただ、ビールの魅力はたくさんの種類があるだけでなく、そこに各醸造所や造り手のクリエイティビティが加わることで、さらに広がっていきます。そしてさらに、飲み手の想いや背景、手に取った理由が加わると、その個性は無限大に広がっていき、それがビールの楽しさ、魅力であると考えており、それは私がビールに魅了される大きな理由でした。
これを言葉で伝えてもなかなか体感していただくのは難しいと思うのですが、皆さまが持ち寄ったビールを注ぎ合い、乾杯し、笑顔になっている様子を拝見し、あらためてビールの力、皆さまの力を感じざるを得ませんでした。
そして、会の終盤に皆さまから、とても素敵なサプライズがありました。メンバーの皆さまが私たちに花束をご用意くださり、温かな言葉とともに贈呈してくださったのです。しかもそれだけでは終わらず、謝恩会のあとの二次会の場でも、期ごとに大変気持ちのこもった素晴らしいギフトを、私と後藤さんそれぞれにプレゼントしてくださったのです。
私は皆さまにはただただ感服しました。もはや意味がわからないとさえ感じました。決して安くはない参加費をお支払いいただいたうえに、毎月時間をサロンに割いてくださっただけでも感謝の気持ちでいっぱいでしたのに、こんな温かなお気持ちまでいただくとは、サロンを開始した時には想像もしていませんでした。
謝恩会後、参加してくださったとあるゲストの方がアンケートに「お疲れさまでした、素晴らしい試みでしたね。チャレンジは素晴らしい、怖いけどやってみると達成感ありますよね」とコメントを残してくださっているのを見つけ、また涙があふれてきました。
本当にその通りです。時にはつらいこともありましたが、そのかいあって、素晴らしい皆さまと乾杯ができたこと、皆さまとだからこそサロンを続けてこられたことを実感し、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
●終わらないキリンビールサロン
こうしてキリンビールサロンは一旦幕を閉じました。ですが、そのまま終わりではなく、新たに始まりを迎えることとなりました。謝恩会の日に皆さまと話し合い、サロンメンバーは今後もつながり続けることとなりました。
そのため、私たちキリン主催のサロンは一旦閉じ、新たにメンバー間でコミュニティを立ち上げることとなり、皆さまの中から新・キリンビールサロンの代表が決まったのです。
さっそく先日、新たなサロンの在り方について代表の皆さまとお打ち合わせをしましたが、願望、野望(?)も含め楽しいアイデアがたくさん出てきてとても頼もしくもあり、「すごい!」の一言でした。今後はいちメンバーとしてサロンに入れていただきますが、どんなサロンになるのかとても楽しみです。
キリンビールサロンを立ち上げた時、「自走するコミュニティを目指そう」と話していました。今思うと、当時はそれがどういう意味なのかちゃんとわかっていなくて、正直、何となく「いい感じっぽい」気がして言っていた気がします。
でも今、皆さまの姿を見ればそれがどういうことかわかります。これからも一人ひとりが楽しみを尊重し合いながら、みんなで楽しむ素晴らしいコミュニティであるキリンビールサロンがますます盛り上がっていくことを願っています。
●最後に
キリンビールサロンに並々ならぬご親切とご配慮をいただき、携わってくださったゲストの皆さま、本当にありがとうございました。立ち上げからサポートしてくれたメンバー、いつも支えていただきありがとうございました。noteの執筆や撮影をしてくださった皆さま、ロゴをデザインしてくださったデザイナーさん、いつも私の細かな要望にも快く、一緒に取り組んでくださったスタッフの皆さま、本当にありがとうございました。いつも私の思いつきをかたちにしてくれて、一緒にサロンを作り上げてくださった後藤さん、本当にありがとうございます。お疲れさまでした。
そして、サロンメンバーの皆さま。今サロンのことを思い返すと、皆さまの笑顔ばかりが思い浮かびます。いつも楽しい気持ちをいただき、本当にありがとうございました。そして、どうぞこれからも引き続き、よろしくお願いします。
いちビール好きとして皆さまとお会いできる日を楽しみにしています。また乾杯よろしくお願いします!Cheers!
第4・5期で講師をつとめた後藤より
2019年から開始したキリンビールサロンは、素晴らしいメンバーとゲスト、関わってくださった皆さまに支えられ、第5期終了となる2024年まで続けることができました。この5年間、毎年30名ほどのサロンメンバーを新規に迎え、期を重ねるごとに人の輪やビールの多様さが広がっていった光景を思い返すと、とても感慨深いです。
キリンビールサロンは変化や進化をしながら続いていて、物語のようにざっくりと分けますと、現在第3部に突入していると感じています。第1部は草野さんが講師を担当した第1期~第3期、第2部は後藤が講師を担当した第4期~第5期、そして第3部はメンバーが主体となって本格的に自走しだした現在です。
キリンビールサロン物語は第何部まで続くのかまだわかりませんが、第3部の現在でも、すでに何章かの見出しができそうで、今後メンバーの皆さまがどんなふうにこのコミュニティを展開していくのか楽しみです。
このnoteには、キリンビールサロンの立ち上げから第5期終了まで、各期開始前後の想いを綴りました。各期に込めた想いやサロンの進化についてはそれぞれのnoteに詳しく書いておりますが、今回は総まとめとして、私が感じるキリンビールサロン物語の第1部から第3部について書き綴ってみます。
【第1部】キリンビールサロンの発足とオンライン化、継続まで
キリンビールサロンの計画が練られていた初期は、まだ私は関わっておらず、募集開始の数か月前にこのコミュニティの話を聞きました。当初からコミュニティの芯はブレず、「これからのビールを考える」をテーマに継続してきました。
第1期の初回が開催され、まず驚いたのは、「私の好きなビールとその理由」が全員違い、ビールに対してこんなにもさまざまな思い出話や好きな理由があるんだということでした。
自己紹介を兼ねた「私の好きなビールとその理由」紹介は毎期必ず行っていることですが、一人ひとりの言葉でうかがうと、お人柄まで見えてきて、さまざまな発見につながります。私は第1期のころに半分参加者のような気持ちで参加していましたが、ふだんは周りにこれほどビールに興味のある同年代がいなかったので、新鮮さと驚きがありました。
しかも参加くださった皆さまの人間性がとても素晴らしく、20代前半の方もたくさんいらっしゃいますが、皆さん物事の捉え方や考え方が大人で、自分の意見を持っており、かつ思いやりのある優しい方々ばかりでした。これは第1期メンバーだけでなく、全期を通して参加メンバーの皆さんに言えることです。
それぞれの個性はありますが、第5期までの総勢160名以上のメンバーはそこが共通していると感じています。これはとても素晴らしいことだと思っていて、キリンビールサロンの一番の自慢ではないでしょうか。
第1期はコロナ渦となった最終回を除いて対面での開催でしたが、第2期からはコロナ渦真っ只中となり、オンラインにシフトしました。第2期のnoteにも書かれていましたが、そもそも開催できるのか?という運営側の話し合いからスタートし、早くも継続危機となりました。
しかし、新たな挑戦としてすべてオンラインで行うこととなり、それが結果的に全国からキリンビールサロンに参加できるようになったことは、よかったことだと思っています。今でこそオンライン会議などは当たり前になりましたが、そのころはあまり例がなく、どのようにオンラインで講義をしていくのか、オンラインで楽しめるのかというところからの模索でした。
参加する方々がなるべくストレスを感じずに講義ができるよう、オンラインセットの機材購入のために、草野さんと1日中電気屋さんに入り浸り、店員さんにあれこれ相談をしながら揃えたのは、いい思い出です。
第2期からは、より運営に関わるようになりました。第1期の時点ではビールのことを含め、右も左もさっぱりの状態だったため、できることがほぼなかったのですが、第2期ではオンライン配信のことなど、自分にもできそうな仕事が明確になり、役割もはっきりしてきたように思います。
リアルに比べると、メンバーのリアクションや表情が画面越しになってタイムラグも発生するため、難しい部分もありましたが、サポートを行う事務局目線で、いい点も多くありました。
例えば、講義が進んでいても、チャットでいつでもコミュニケーションが図れたり、進行の妨げにならずに豆知識を追加でお送りできたり。基本的にはメンバーのご自宅からオンラインでつないでいただいているので、ご自宅でリラックスしながら受講している雰囲気を拝見したり、一人ひとりの行動に対して、こちらもチャットなどを活用しながら気軽に話しかけたりすることができました。
リアルであれば、進行中の話に割って入ることは難しいところですが、オンラインではチャットでメンバーの考えなどを好きな時に打ち込めるのはよかった点でした。
メンバーが話に集中できなくなるので、あまりしませんでしたが、ときには進行中の話と関係ないことを尋ねることもあり、例えば「〇〇さんが今画面に戻ってきたけど、何か新たなおつまみを持って登場したぞ」というタイミングで、チャットで「〇〇さん、何のおつまみを持ってきたのですか?」「今飲んでいるビールと合いますか?」などと投げかけることもしていました。
そうすると、画面越しにその人のニコッとした顔が映り、チャットを返してくださり、またその人についても少し知れた気がしました。皆さまの様子をじっくり見て、今どんな心境で話を聞いているのだろう、どんな考えでいるのだろうとじっくり観察ができたのは、事務局の立場だったからできたことでもありました。
メンバーにとって、オンラインのメリット・デメリットはそれぞれ感じるところがあったかと思います。しかし、「オンラインになってありがたかった」というお声も多くいただいており、リアルだけでは参加が難しかった方々にキリンビールサロンに参加いただけたことは、私たちとしてもうれしいことでした。
第2期から第3期にかけては、オンライン配信のやり方を変えてみたり、機器を変えてみたりと、ハード面でも試行錯誤を繰り返しました。私と草野さん、ときにはスタッフさんを交えながら、スマホやパソコン数台を駆使して接続をし、シミュレーションを行うなど、幾度となく訪れるオンラインミーティングツールの更新に苦戦しながらも、やり方を工夫していきました。
そして、3期生が加わったころ、一気に“コミュニティ感”が増した気がします。それは、コロナが少し落ち着いてきた時期で、メンバー同士の交流が少しずつ活発になってきたからだと思います。ある方は東京以外でのビールイベントの様子をオンラインコミュニティ上にアップしてくださったり、またある方はゲストとして登場した方にリアルに会いに行ってくださったり、サロンメンバー内でビール旅の参加者を募ったり…フットワークの軽い方々がさらに増加したことで、このような光景を目にすることも多くなりました。
実は第3期を行う際、業務の関係で草野さんが講師をつとめることが難しい状況でした。ですが、これまでの参加メンバーの熱量や期待の高まりを見ていると、まだ私には第3期の講師を担当するのは荷が重く、今引き継ぐと皆さんの満足度はどん底に下がり、打ち切りになるのでは…と懸念するぐらいでした。
無理を言って、第3期は引き続き草野さんに講師をお願いしました。第3期までの経験や時間を頂戴したからこそ、第4期をそろそろ考えるころには、私のなかで次は講師に挑戦してみようという気持ちが湧いてきたのです。
【第2部】講師の引き継ぎとキリンビールサロン終了まで
第4期をスタートする際も、運営チームでこれからどうしていくかを話し合いました。第4期は「講師に挑戦しよう」という気持ちがありながらも、不安もたくさんあり、なかなか言い出せないでいました。
話し合いのなかで恐々と「講師をやろうと思う」というやっと出た私の一言に対し、これまでずっとキリンビールサロンの立ち上げから携わっていたサポートメンバー、そして草野さんが後押しの言葉をくれ、第4期から講師をつとめることになりました。そのときの運営チームの言葉で、これまでの不安が少し和らいだように感じました。
ですが、ここからが大変でした。テーマも自由がゆえに企画アイデアがなかなか浮かんでこないので、まずは「どういうテーマだったらできるか?」というところから第4期の大枠を考えることにし、さらに興味のあることを盛り込んでいきました。
そして、「参加者目線で同じようにビールを楽しむ。さまざまなカルチャーからビールを見てみて、楽しさを広げる」というざっくりとしたテーマと決め、運営チームにヒントをもらいながら、ゲストのバランスや内容を仕上げていったのです。
ゲストのことを理解し、各回の講義内容の詳細を詰めていくのは苦労したところでもあるのですが、実際に講師を担当してみると、メンバーを主役にしながらいかにうまくゲストとバランスをとって進行していくか、一体感づくりをするか、まとめ上げていくかが想像以上に大変でした。
「ふだん何気なく見ているテレビのなかの司会者は、こんなに大変なことをしていたのか…」と、テレビ番組の司会者に注目して言動を参考にしてみたり、第2期と第3期の講義の様子を見返してみたりということも行ってみました。
慣れない進行でしたが、「こうしたほうがもっといいのではないか」「これはよかった」など、さまざまな意見をサロンメンバーが出してくださり、本当にメンバーの皆さんに支えられているなと、講師の立場になってあらためて実感しました。こちらが気づかなかったところや、次回に反映できそうなところはどんどん取り入れていきました。キリンビールサロンは単発ではないので、こういった改善が繰り返し行われることも含め、「みんなでつくるコミュニティ」になっています。
第4期が終了に近づいてくると、第5期を考える必要がありました。第4期で「自分のできることは出し切ってしまったかも?」と思っていたため、第5期のテーマ決めや各回の流れ、ゲスト決めが難航し、第4期よりも生み出していくことが難しかったです。
第5期は、久しぶりにリアルで集う回も開催しました。第2期からのオンライン化でメンバーが全国から参加できるというメリットをなくしてしまうのはもったいないと思う一方で、「リアルだったら参加したい」というお声をいただくことも多かったためです。
これまでのメンバーの皆さまを見てきて、もしかしたら遠方の方でも1回であれば足を運んでいただくことが可能かもしれないと考え、5回連続講座の2回目にリアル回を設けたのでした。そうして開催したリアル回は、当日の会場準備時間が20分ほどしか捻出できず、開始も終了後もバタバタで、私もメンバーも「時間が足りない!」という感想でした。
実際に会ってメンバー同士で話したり、ゲストのお話を目の前で直接聞いたり、一緒にビールを飲んだり、雰囲気や音楽など「場」をシェアできたりということもあり、オンラインより時間がたつのが早いような気がしました。リアル回を設けたことで、より一人ひとりの輪郭がはっきりとし、皆さまとお会いできる機会があってよかったと感じています。メンバーの皆さまも、きっとそう感じてくださったのではないかと思います。
この時期から、次回のサロンをどうしていこうかという話し合いも重ねていました。メンバーの皆さんからは「第6期は友人にすすめます」「子どもは第20期ぐらいかな」など、うれしいお言葉をたくさんいただいているなかで、大変心苦しかったのですが、これからの運営体制などを考慮して話し合った結果、第5期で終了という決断に至りました。
第5期の参加応募ルートとして「友人・知人の紹介から」が50%に上る勢いがあった事実を見ても、これまでのメンバーの皆さまが「キリンビールサロンっていいよ」「キリンビールサロンってこういうところだよ」と周囲にお話しくださり、広がっていたんだなとしみじみ感じます。
第5期終了から1か月ほどたった今年の春ごろ、キリンビールサロンのメンバーとゲストの皆さまへ、次期キリンビールサロンは開催せず、第5期で終了する旨をお伝えしました。
なるべく直接お話ししたかったため、急ではありましたがオンラインミーティングをつないで皆さまにお伝えすることにしました。こちらの話を聞いた皆さまが、次々に温かい言葉を投げかけてくれ、思いがけず胸がいっぱいになってしまい、しばらく声を発することができないほど涙が溢れました。
「終了してしまうのは残念だけど、このつながりはこれからも続いていくと思っている」という前向きな言葉が次々と紡がれ、私たちは逆に励まされました。皆さまがおっしゃるとおり、これからもつながりは続いていくと思っています。
キリンビールサロン終了の報告をした数か月後の今年7月、メンバーとゲストの皆さまへこれまでの感謝の気持ちを込め、謝恩会を開きました。謝恩会ではリアルとオンラインを初めて両立させる試みを行い、リアルで参加できない方もつながれる仕組みとし、約90名にご参加いただけました。
これまで全期を通して行ってきた「わたしの好きなビールとその理由」を行ったり、歴代ゲストにまつわるビールを試飲しながら歓談したり、第1期から第5期までの振り返りを行ったりと、会場は猛暑に勝る熱気に包まれました。謝恩会で初めて直接お会いする方も多く、皆さまがビール談話で笑顔になっている様子を見て、また新たな一面を知れた気がします。
これまで期の最終回には、ハートランドビールとオリジナルグラスをお渡しして乾杯することが恒例になっていたのですが、謝恩会でも記念としてハートランドビールとオリジナルグラスをお渡ししました。ハートランドに込めた想いはさまざまありますが、その一つとして“リターナブル瓶”であるという理由があり、「また瓶を持ち寄って会いましょう」というメッセージと、これからもつながりは続くという意味合いを込めてお贈りすることにしました。
そろそろ閉会の締めに入ろうとしたところで、「ちょっと待ったー!」という声が会場に響き渡りました。予想外のことに一瞬固まっていると、1期生のお二人が素敵な花束を持って登場されたのです。皆さまからということでいただいたその花束は、草野さんと私それぞれをイメージした色合いの、心のこもったプレゼントでした。
感謝したいのはこちらのほうなのに、こんなに素敵なサプライズがあるなんて!と、それだけでも十分すぎるぐらいでしたが、さらにそのあとの二次会では、さらなるサプライズがあり、なんと各期からそれぞれの愛が溢れるビールやグッズのプレゼントをいただきました。
皆さまがよく私たちのことを見ているなというのが伝わる、本当に素敵なプレゼントばかりで、早速次の日から大切に使わせていただいています。
遠方から足を運んでいただいた方も多く、キリンビールサロン史上最多の参加者数を記録したキリンビールサロン懇親会は、最後まで皆さまに支えられて無事終了しました。
【第3部】新たなフェーズへ
私たちが運営していたキリンビールサロンは終了となりますが、これからはメンバーが主体となり、舵を取っていく第3部に入ります。
メンバーもそれぞれに環境変化があり、月日を重ねるたびにビールやコミュニティとの付き合い方も変わってくると思います。謝恩会の際の皆さまからのお声で、「ビール(アルコール自体)をあまり飲まなくなり、こういった状況のなかで今後どのようにサロンを楽しもうかは若干悩むところ。しかし、キリンビールサロンの人たちやバイブスは大好きなので、今後も関わり続けたい」というお声もいただきました。
このように思われる方は結構多いのではないかな、と感じています。少し状況は違うかもしれませんが、私はもともとアルコールに弱い体質で、その日の調子によってはほとんど飲めずに時間をかけて1杯を飲んでいたり、すぐソフトドリンクにシフトしたりすることも多く、「でも一緒にいる人やその場が好き」という、なんとも歯がゆい気持ちをすることがあります。
バーの空間もとても好きなのですが、飲めるペースがとても遅いためにそわそわしてしまい、混んでいない時間帯はまだよくても、ほどほどに席が埋まってくると、「まだ居ても迷惑じゃないかな」「ソフトドリンクを頼むのもなぁ」という気持ちで焦りが出てしまうこともあります。
こういったことも含め、「『わたしにとってのこれからのビール』を考える」というキリンビールサロンのテーマをあらためて考えさせられ、これからも続いていくコミュニティが今後どうなっていくのかを見届けていきたいのです。
キリンビールサロンのいいところは、しばらくコミュニティから離れても、いつでもふらっと戻ってきていいんだよ、いつでもウェルカムだよ、というところです。これは最初に決めたキリンビールサロンのロゴに込められている意味で、「いつでも扉は開かれている」ことを表しています。
「今は違うな」と思ったらしばらく離れていてもいいし、「このイベントだけ興味あるから参加しようかな」でも、もちろんいい。イベントの開催場所や内容によるかもしれませんが、ビールを飲む人がいるなかで清涼飲料を飲む方たちがいてもいいと思うんです。飲まなくてもビールについての話はできますし、ビールに縛られなくても「ビールを飲んでいる人たちやその空気感を楽しむ」というのも一つの楽しみ方だと思うので(笑)。
先日、キリンの運営に代わる、メンバー主体の新たなキリンビールサロンのオンラインコミュニティを、第1期から第5期の代表者の方々と立ち上げました。私と草野さんは、これからいち参加者として関わっていく予定です。この新しいコミュニティをどのように運営していくかについて、代表の方々とオンラインミーティングをした際に、こちらの想像以上に皆さまがこの先のビジョンを描いていて、舌を巻きました。
それぞれが心地よく居られる場所を確保しながらも、さらに展開がありそうな今後のキリンビールサロンに期待を抱きつつ、稀有なコミュニティであるキリンビールサロンに関われたことや、素晴らしいメンバー、ゲストの皆さま、携わってくださった方々と関われたことに感謝を申し上げます。