みんなが主役になれる「持ち寄りお鍋」【今夜のラガーのおとも。#10】
発売から130年、多くの人に愛されてきた『キリンラガービール』。このビールをよりおいしく愉しむために、料理研究家の瀬尾 幸子さんと“最良のおとも”を考えていく連載企画もこれが最終回となりました。
シンプルで家庭的な“普段着のおつまみ”を、瀬尾さんならではの視点からご紹介してきましたが、最後は「持ち寄りお鍋」を囲みながらこれまでの連載を振り返り、あらためて「家飲みの楽しみ」についてうかがいました。
家庭料理は「くたびれない」ことが大切
─春先から晩秋にかけて全10回。ラガーに合う簡単で家庭的なおつまみを教えていただきました。
おいしいけれど調理が難しい料理は、自分でやってみようという気にはなかなかなりませんよね。ラガーのおともシリーズでは、ポイントさえ押さえれば誰にでも簡単につくれる「普段着のおつまみ」をテーマにご紹介してきました。
─あらためて、瀬尾さんがおっしゃる「普段着のおつまみ」とは、どういうものなのでしょう?
家庭でつくるおつまみは「名前のない料理」でいいということですね。特別である必要はないんです。作る側も食べる側も「くたびれない」ということが大切です。
外で食べて「おいしい」と感じるものはたくさんありますが、よく「外食ばかりだと疲れる」という言い方をしますよね。逆に家庭料理は「ほっとする」と表現されます。
私たちは自分の体が必要とするものをおいしく感じるようにできています。夏の暑さで食欲が落ちてくるときにさっぱりしたものを欲したり、寒くなるとニンニクやしょうがを入れて体を温めたり。
食べる人の気分や体調に合わせて食材や味付けを考えていく。それは家でしかできないことで、自分の体に合っているから「ほっとする」。そういうおいしさが家庭料理にはあるんだと思います。
─体調に合わせた料理を食べることは、体にとって大切なんですね。家庭料理は、その役割を担っていると。
そう。大切なのは「何をつくるか」ではないんですよね。
「お腹の具合はどうかな?」「いつもより柔らかく煮てあげよう」とか、そういった気配りこそが家庭の味であり、“普段着のおつまみ”の醍醐味です。調味料が少ないから、味の調整もしやすいですよ。
そして、そんな家庭料理に寄り添ってくれるのがラガーなんだと思います。
ラガーの良さは、実直な味。
─あらためて、ラガーの良さとはどんなところだとお考えですか?
旨味があるけど苦すぎない、素直な味で、何にも邪魔しない。だからどんな料理にも合う。そういうところがラガーの良さだと思います。昔からみんなが「とりあえずビール」って親しみをもって飲んでいる、あれこそがラガーの味なんじゃないでしょうか?
ビールから始まって、レモンサワーにいってもいいし、日本酒にいってもいい。いろんな選択肢の始まりになれる。それが「とりあえずビール」というニュアンスだと思うんです。料理によっていろんなお酒と合わせる楽しみがありますが、その出発点となるにふさわしいのがラガービールなんです。
─どんな料理にもラガーはあう。だから、瀬尾さんのおっしゃる「名前のない料理」を受け入れることができるということですね?
ラガーにはなんでも受け入れてくれる包容力があります。家庭料理のおとものビールでもあるけれど、レストランで提供されるビールでもあるわけですから。擬人化すると「実直ないいやつ」というのが私の持つ印象です。良い個性を持っていながら目立ちすぎない。いちばん心が落ち着くビールです。
みんなが「主役」になれる持ち寄り鍋
ラガーのおとも最終回は、瀬尾さんからのご提案で「持ち寄りお鍋」になりました。「あなたはキノコ担当」「あなたはお肉担当」と各自役割を任命され、食材を持ち寄るがルール。どんなお鍋ができるのかは、当日のお楽しみ。
─最終回にお鍋を選んでいただきました。みんなで火に向かいながら団欒するのは温かくていいですね。
特別なものを用意しなくても、お鍋ってそれだけでひとつのイベントになるんですよね。みんなでつつき合うだけで。
─鍋具材のご指定をいただいただけで、お鍋の種類は当日まで秘密でした。具材ひとつでは全体像が把握できないから、そのぶん期待感も高まります。
できあがるまで指令を出すホスト役の人しか何ができるかわからない。そこがこの鍋のおもしろさです。
「これ買ってきて」「あれ持ってきて」とお招きするみんなに指示を出します。「お鍋をするから好きな具材を持ってきて」だと、逆にあれこれ悩ませてしまうでしょ? だから、舵取りはあくまでホストの役割。
これならお呼ばれする側も気楽でしょう。気心知れた間柄ならばなおさらホスト一人に負担がかからないほうがいい。みんなで気兼ねなくやりたいじゃないですか。
─招かれる側に役割を与えることで、かえって気楽に楽しんでもらう。そういった心遣いの意味が含まれているんですね。
ホストが忙しそうにしていたら、招かれる側も気を遣うじゃないですか。買い出しだけじゃなくて、具材を切ったりお皿に盛り付けたりしてお手伝い。そうすれば、ホストだけ会話に入れないなんてこともないし、ひとつのお鍋をみんなで仕上げていく過程もイベントになります。
変幻自在の「豆乳鍋」
─それでは、今日のお鍋の種明かしをお願いします。ベースとなる出汁は?
市販の顆粒だしと顆粒鶏スープの素を水でといて、薄口醤油、しょうがのすりおろしを入れた和風の出汁がベースです。素麺のめんつゆよりも少し薄いくらい。ここに無調整豆乳を加えていきます。
─豆乳としょうがの組み合わせとは意外ですね。
しょうがはたっぷりと1パックの半分(40g)くらい入れます。このしょうがの風味が重要。出汁にサッパリ感を与えてくれるんです。だからスープのように飲み干せちゃいますよ。顆粒だしでつくった出汁と豆乳を食卓に用意しておけば、減ってもすぐに足せます。これなら「シメの前に出汁が無くなっちゃった」なんてことも心配しなくていい。
まずはベースの和風豆乳鍋を味わっていただきます。次はすりゴマをたっぷり入れて味を変えます。こうするとひとつの鍋でも飽きずに最後までおいしく楽しめる。いいでしょ?
─ひとつのお鍋でどんどん味を変えていくんですね!
味の変化はこれだけじゃありません。そろそろかなってタイミングで、今度はすりおろしたニンニク、追加のすりごま、豆板醤を投入します。辛くしたければ豆板醤を多めにしてください。するとあっという間に豆乳坦々鍋に変身。
和風のあっさり味からはじまって、どんどん濃くなっていく。徐々に変化していくというというのがいいんですよ。
ラー油を利かせた「坦々豆乳麺」でシメる
─お鍋だけで3種類の味の変化を楽しめました。最後のシメはなんでしょうか。
用意したのは中華麺です。途中から坦々豆乳鍋へと変化させたので、中華麺がよく合うんです。最初の和風豆乳鍋には、うどんが合いますよ。
もやし、ニラ、中華麺を入れてひと煮立ち。最後にすりごまをたっぷり加えて、お好みでラー油をたらしてどうぞ。
気張らず構えず、楽しさ重視のおつまみを
瀬尾さんならではのもてなしの工夫や味を変化させるアイデアで、いつもとはまったく別物の、特別感あるお鍋に仕上がりました。
「家庭の料理は気張らずに、構えずに」。いつもの家飲みの延長にある、ささやかな宴。そんな料理と会話のあいだをつなぐキリンラガービール。さあ、今夜のおともは何にしましょうか?
※こちらの記事はキリンのオンラインショップ「DRINX」からの転載記事です。
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ラガー好きのみなさんにとって今夜のおつまみが楽しみになる場になればうれしいです。