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企業WEBサイトに「人格」を。サイトリニューアルの裏側と今後の展望

企業のWEBサイトは何のためにあるのか?

2021年夏、キリングループはWEBサイトのリニューアルを実施しました。このリニューアルは、システム面・運用面のアップデートを図ることが目的の一つでしたが、改めて、WEBサイトの役割を見直すとともに、私たちがお客さまにどんなことを伝えていきたいかを考える機会となりました。

今回は、企業WEBサイトリニューアルを経て感じた、これからのWEBサイトの在り方について担当の児島が語ります。それでは児島さん、よろしくお願いします。

キリンの児島由布子

【プロフィール】児島 由布子
キリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部
自動販売機の企画担当等を経て、グループの商品やサービス等の情報を扱う「商品・サービス情報Webサイト」の運用を担当。


企業のWEBサイトは何のためにある?

最近、いつ企業のWEBサイトを訪問されましたか?また「企業のWEBサイト」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますでしょうか。

私たちのように日常で接点の多いメーカーの場合であれば、商品の品質情報を確認したり、好きなタレントさんのCMを見るために検索して訪問する方もいらっしゃるでしょう。投資家の方や就活中の方であれば、直近の業績や理念・歴史に触れようと訪問することもあるでしょうし、私と同じようなWEB業務担当の方は、他社研究で意識的に企業のWEBサイトをご覧になる方もいらっしゃるかと思います。

ただ、ほとんどの方は、SNSのタイムラインを何気なく見ているときにたまたま流れてきた情報が気になって見に行ったり、目に留まったニュースメディアなどからリンクで辿ったりすると思います。あらかじめ目的をもって検索窓に言葉を打ち込んで企業サイトに行くことは、意外と少ないのではないでしょうか。

さまざまな理由で訪れる企業のWEBサイトですが、今回のリニューアルのプロジェクト発足時には「なんのために企業のWEBサイトはあるのか?」を明確にすることからスタートしました。

サイトリニューアル前夜。課題と役割の再定義

キリングループではさまざまなWEBサイトを運用していますが、今回リニューアルをしたWEBサイトは「商品・サービス情報WEBサイト」と「企業情報WEBサイト」です。平たく言えば、前者は「B to C」、後者が「B to B」のWEBサイトですね。

▼商品・サービス情報WEBサイト(B to C)

▼企業情報WEBサイト(B to B)

二つのWEBサイトはこれまでも存在していましたが、前回のリニューアルから既に約8年が経過し、WEBサイトの見せ方として古くなってきていました。更にはこの8年で私たちのビジネスもアップデートされていたので、それに合わせる形で、WEBサイトの構造を抜本的に変更する必要があり、2019年にWEBサイトリニューアルの構想が立ち上がりました。

2020年1月にプロジェクトを発足させ、WEBサイトの役割の再定義を行うことからスタートしました。

・そもそもどのような方が閲覧されているのか
・求めている情報はどのようなものか
・今のWEBサイトで足りないものは何か

まずは上記3点の整理を行い、WEBサイトでの「ありたい姿」を設定することに。「商品・サービス情報WEBサイト」では、「お客さまの体験価値を向上できる」「もっとキリンのことを好きになってもらえるようなサイト」でありたいと定義しました。

WEBサイトを一丁目一番地のメディアに。コロナ禍で見えた役割

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しかしながら、こうした整理ができるのとほとんど同じタイミングで、新型コロナウイルス感染症が拡大していきました。

お客さまを取り巻く環境が大きく変化していくのを肌で感じました。また、コロナ禍以前から兆しのあったSDGsや、グローバルな問題への関心が、ここにきて加速度的に高まってきている空気感もありました。私たち「企業発信」を担う役割としてできることは何だろうか?と、あらためて考えざるをえない状況でした。WEBサイトを含めて、「オウンドメディアはお客さまとどのように接していきたいか」「オウンドメディアはどんな存在でありたいか」何度も議論を重ねました。

議論を重ねるほどに、企業のWEBサイトこそがキリンとお客さまの「最初で最大の接点」であり、キリンの顔になるべきなのではないか、という想いが強くなっていきました。

度重なるチーム内での議論の末、WEBサイトは、ただ単に商品やサービスを紹介するだけでなく、その企業らしさや人格・メッセージ・姿勢を最も示すことができる「一丁目一番地のメディア」でありたいし、そうあるべきだと結論づけました。

同時に、お客さまから関心が高くなっている社会課題について、グループ全体で取り組んでいることについて、どうやったらお客さまにしっかりと伝わり共感していただけるかについても、リニューアルの検討課題のひとつになりました。

「人格」と「ストック」をメディアのコアに

こうしてうまれたものが、「noteやSNSコンテンツのストック機能の新設」です。たとえば、このような記事です。

noteの記事じゃないかと思いましたよね?実はこれは、noteの記事をそのままWEBコンテンツに転載したものなんです。

キリンのSNSコンテンツは、商品に込められた想いを語ったインタビュー記事や、商品をつかったアレンジレシピの記事など、読み応えのあるコンテンツが多くあります。一方で、SNSはメディアの特性上、時間が経つとどうしても流れていってしまいます。このため、SNSコンテンツをWEBサイトにストックし、何時でも見られる設計にアップデートしました。

企業のWEBサイトは、企業のオフィシャルな情報を、タイムリーに、過不足なく、分かりやすく示す必要がありますが、その一方で、どこかあたたかみや、おもしろみに欠ける傾向があります。そういった意味で、現在noteやSNSで投稿している「人格」をもったあたたかさや、見ていて気分が上がるビジュアルをWebサイトに盛り込むことで、サイトに血を通わせようとしたわけです。

ストーリー記事を作ってよかったことがもう一つあります。SNSコンテンツをWEBサイトにストックし、何時でも見られる設計にアップデートしたことで、googleの検索結果でも上位表示されるようになりました。たとえば、こちらの「ストーリー記事」。

「iMUSE」の記事キャプチャ

2020年12月にキリンビバレッジの公式Instagramで投稿したものを転載したコンテンツですが、今では「プラズマ乳酸菌 とは」で検索すると、5番目以内にヒットする強力なコンテンツとなりました。

リニューアル時に施した6つの工夫

上記の「ストーリー記事」以外にもさまざまな工夫を取り入れています。具体的な施策をご紹介します。

 1.グループスローガンをトップ面に
トップページに「よろこびがつなぐ世界へ」というグループスローガンを冠したコーナーを新設しました。このコーナーでは新旧を問わずに商品・サービス、活動を通じた「想い」を紹介しています。

以前のトップページでは、新商品や新着情報など「最新の情報」を並べることを最優先にしておりました。リニューアル後も新着コンテンツを並べることには変わりませんが、このコーナーの導入により、コンテンツを通じて「キリンの人格」のようなものをお届けできればと思っています。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

2.「健康」カテゴリを充実
「健康食品」カテゴリーページをアップデートし、CSV領域の重要な要素のひとつである「健康」、今後育成していく「ヘルスサイエンス領域」に関する商品や活動を、WEBページでも組み込むことができる設計にしました。また、協働がはじまったファンケルの商品も含めて、各社の代表的な商品を掲載できるようなページを設計しました。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

3.「酒類」コンテンツの出し分け
酒類情報をディレクトリで分断し、20歳以上であることが確認できた方にのみ、アルコール関連の商品情報が掲載されたページに切り替わる仕組みを採用しました。
実はトップページにこの仕組みを導入するのは国内酒類業界では初めて。「キリン=ビールの会社」というイメージを抱かれる方も多い中で、企業の姿勢を打ち出すための思い切った判断でした。法定飲酒可能年齢に満たない方には酒類に関する情報を提供しないという世界的な潮流もあり、酒類を取り扱うメーカーの責任として一歩踏み込んだ対応を実施することにしました。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

4.商品検索メニューの刷新
商品検索メニューは、画面を見やすく・検索しやすくアップデートしました。また、商品・品質情報では、再生ペット樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」や「熱中症対策飲料」といった、健康や環境に紐づく商品のラベルを付与するなどの社会的課題に関わる情報が前面に出るよう工夫を取り入れました。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

5.体験コンテンツのリニューアル
工場見学は、キリンのモノづくりをお客さまに「体験」していただけるコンテンツです。コロナ禍において工場見学はオンライン化やツアーリニューアル等を進めており、その方針に合わせるようにコンセプト設計やページ構成等を刷新しました。あわせて、「キリンビールサロン」「キリンビールセミナー」といった、工場見学同様キリンのモノづくりを体験いただけるコンテンツも一緒にデザインしました。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

6. モバイルファーストUIの徹底
見やすさ・使いやすさの観点で、モバイルファーストを意識しつつ、WEBサイトのトーン&マナーの調整や見やすさ、UI等を検討しました。なかには、社内外で数か月にわたり議論を重ねたアイコンや色使いもあります。スマートフォンでは移動しやすいナビゲーションも採用しました。

キリンWEBサイトのリニューアルキャプチャ

企業WEBサイトのこれから

お陰さまでリニューアル後は、社内外よりポジティブな声をいただいています。リニューアル前後で比較すると、ページ全体で滞在時間やセッション数が増加しており、お客さまがじっくり読んでくださっていることがうかがえます。

今後よりよいものにしていくために、私が特に注力したいのは「ストーリー記事」の取り組みです。

キリンのオウンドメディア、特にnoteやInstagram等のSNSは、商品開発担当だけでなく、営業・人事・生産など、あらゆる従業員の声を伝える場となっています。また、今年の夏に運用を開始した「KIRINto(キリント)」では、社会の観点を踏まえたコンテンツを発信しています。

各メディアはそれぞれの場所で更新を重ねていますが、WEBサイトでは、これらを「特定のテーマ」にまとめて紹介することができます。ひとつのトピックスに関して複層的に紹介するというのは、一丁目一番地のメディアならではの贅沢な見せ方です。

また、noteやSNSのコンテンツを、適切に整理してWEBサイトにストックすることで、サイトに来てくれたお客さまに、公開後に時間が経過したコンテンツでもシームレスに楽しんでいたき、新たな発見や楽しみにつなげていくことも可能です。「ストーリー記事」はWEBサイトの可能性を拡げてくれます。もっと楽しんでいただけるWEBサイトにするために、「ストーリー記事」の取り組みを継続しながら、より拡張していきたいと思っています。

私たちの商品がお客さまのお手元に届くまでに、多くの従業員が誠実に真剣に自分の仕事に向き合っています。今回のWEBサイトリニューアルを通じて、さまざまなコンテンツと向き合うなかで、あらためてそのことを感じました。

想いを持つ従業員の生きた声をもっと伝えていくことで、お客さまとのより温かい関係を築くことができるのではないか。そんな確信に近い可能性を感じていますし、まさにこれこそがWEBサイトのミッションであると思っています。

これからも、WEBメディアをはじめとするキリンのオウンドメディア展開にぜひご期待ください。

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