日常にもっとワクワクや特別感を。お客さまとの共創から生まれる「ホームタップ」の新しいクラフトビール体験
「工場のタンクから注がれる、つくりたてのビールのおいしさをご自宅で楽しんでいただけたら、どんなに豊かな時間になることだろう」
そんな従業員の想いをきっかけにスタートした、会員制サービス「キリン ホームタップ(以下、ホームタップ)」。“Tank to Glass”をコンセプトに、ワクワク感や特別感とともに、つくりたてのビールのおいしさをご自宅へお届けするサービスです。お客さまとの直接のつながりを大切に、クラフトビールをもっと身近に、よりビールを楽しむ文化の醸成を目指しています。
そして、お客さまからのさらなる期待に応えるべく「WE CRAFT project」という新しい取り組みもはじまっています。「ホームタップでしか飲めない特別感がほしい」というお客さまの要望から実現した、お客さまと一緒にオリジナルのビールを造るプロジェクトです。
ゆっくりと、少しずつ、お客さまとの信頼関係を築いているホームタップだからこその特別な体験とは?担当の榑林未來と占部友理を招いて、ホームタップのはじまりとこれからについて話を聞きました。
工場でつくりたてのビールのおいしさをお届けする「Tank to Glass」
―ホームタップのはじまりや想いについて教えてください。
占部友理(以下、占部):ホームタップのコンセプトは「Tank to Glass」。工場でつくりたてのビールのおいしさをお届けするというコンセプトです。工場で飲むできたてのビールのおいしさは格別なのですが、それは工場で働く関係者しか味わえないもの。このサービスの起点には、つくりたてのビールのおいしさをお客さまにお届けして、家飲みビールの理想に近い状態で楽しんでいただきたいという想いがあります。
工場で飲むできたてビールって、本当においしいんですよ。それをビール好きのお客さまと共有したいというシンプルな気持ちがホームタップの入口なんです。
実は、ホームタップの前身として、2015年にはじまった「ブルワリーオーナーズクラブ」というサービスがありました。
―それはどんなサービスだったのですか?
榑林未來(以下、榑林):「ブルワリーオーナーズクラブ」は、ビールサーバーとビールを直接ご家庭にお届けして専用サーバーで楽しんでいただくサービスでした。今のホームタップと近いものでしたが、限定数でのサービスでした。たしか100人くらいしか申し込みの枠がなかったと思います。
占部:当初は、お客さまの食生活のなかでビールの付加価値を高めたい、そして、ビールを飲む瞬間だけじゃなくお届けの仕方と楽しみ方にも工夫したいという想いがありました。ビールがある暮らしや、ビールを楽しんでもらうことでビール自体の嗜好性を取り戻していきたい気持ちもあったと当時の担当者からは聞いています。それによってビール市場全体の魅力アップにもつなげられたらと考えていたんです。
キリンとお客さまが直接つながり、双方向のやり取りが実現できれば、つくり手の想いや人柄、ストーリーを知っていただくことができます。そこから共感が生まれて、キリンのファンになってもらえるのではないかと。なので、会員制という点には強くこだわっていました。
榑林:そんな「ブルワリーオーナーズクラブ」のコンセプトを受け継ぎながら、生ビールだけにこだわらず、クラフトビールのラインアップを増やし、より自由にビールを楽しんでいただける機会を提供しているのがホームタップです。実は「ブルワリーオーナーズクラブ」時代からホームタップも引き続き継続してくださっている会員さまもいらっしゃいます。
お客さまの声と“特別な時間”に寄り添って
―2021年の本格展開以降、会員を増やしているホームタップですが、利用されているお客さまからはどんな声が届いているのでしょうか?
榑林:ご家族の方が店員さんのように注いでくれて、いつも以上においしかったというあるお客さまの声を聞いて、人と人をつなぐきっかけにもなれたと感じました。もともとホームタップは「特別な瞬間」に貢献したいといつも考えているので、お客さまの特別な時間に寄り添えたことはうれしいですね。
逆に少しショックだったのは、長く継続してくださっているお客さまから、ホームタップ用のペットボトルを冷やしていると「冷蔵庫に入っている牛乳みたいな存在に感じてしまうときがある」という声をいただいた時です。
―日常に欠かせない存在とも捉えられますが、なぜショックだったのでしょうか?
榑林:いつもおいしいビールが冷蔵庫にあるという意味もあれば、当たり前の存在でワクワク感やドキドキ感がちょっと薄れているとも言えるなと。冷蔵庫を開けるときも、ホームタップから注ぐときも、飲むときも、もっとワクワクしてほしいと思ったんです。
―なるほど。特別感、ワクワク感というと、例えば日常のどんなシーンをイメージしますか?
占部:日常なんだけどちょっと体温が上がる、みたいな感覚かなと思っています。お休み前の夜、仕事終わりにコンビニへ行くときって、普段コンビニへ行くときとは少しテンションが違ったりしますよね。今日はちょっと贅沢しちゃおうかな!みたいな、そんな感じです。
そこにプラス、今日は何にしようかなと選べることでワクワク感ってより高まると思うんです。そういうドキドキ、ワクワクをもっと感じていただくために、今新しいプロジェクトも動き出しています。それが「WE CRAFT project」です。
お客さまとの「共創」から生まれた「WE CRAFT project」
―「WE CRAFT project」とは、どういうプロジェクトですか?
榑林:ホームタップの会員さまと一緒に、まだない特別なビールを造るプロジェクトです。20名のアンバサダーの方々をキリンの本社に招いて、クラフトビールについて学び、それぞれに飲みたい・つくりたいビールを考えていただくワークショップも行いました。ビールのコンセプトから味、デザインまでリアルでの飲食会やオンライン投票などを経て、1年かけて一緒に商品をつくりあげていきます。
「WE CRAFT project」は、ダイレクトにお客さまの声をしっかり聞いてサービスに反映させたい、というところからはじまったプロジェクトなのですが、お客さまにお話を聞くと、「ここでしか飲めない特別感」への要望が想像以上に強いことがわかりました。それに応えるには何ができるだろうと考え、会員さまと一緒にオリジナルビールを造ることにしました。
なので、このプロジェクトで大切にしているのは「特別感」と「ワクワク感」。お客さまの日常に“忘れられないおいしさとよろこびの瞬間”を届けることが目的です。
榑林:ワークショップでは、常陸野ネストビールを製造する木内酒造さんにご協力いただき、ビール造りの基本から多様なクラフトビールのスタイルまで、幅広く学びました。実際にホップの香りを嗅いだり、何種類かご用意した麦芽を実際に食べていただいたりと五感で愉しみながらビール造りの知識を深めていきました。
そして、「こういう味にしたい」、「こういう香りにしたい」、などつくりたいビールのイメージを考えてもらいました。とにかく皆さんの知的好奇心が素晴らしくて毎回驚かされています。
占部:「楽しそう、ワクワクすると直感で感じることができる」「ビール好きにはたまらない企画なので、どんどん驚かせてください」などのコメントもいただいています。なかには「会員であることの特別感を感じられる企画はとてもうれしい」といった声もありました。ホームタップ会員だからこそのよろこびを提供したいというところがこのプロジェクトの出発点でもあったので、とてもうれしく、私たちのやりがいにもつながっています。
―今回は、常陸野ネストビールを製造する木内酒造さんにご協力いただいてクラフトビールを醸造中だそうですが、木内酒造さんからはどんな反応がありましたか?
榑林:「おもしろいことはどんどんやっていきましょうよ!」と言っていただいています。木内酒造さんが今年運行を始められたタップ付きのサロンバスを使って会員限定のツアーを組んでくださるなど、たくさんのご協力をいただいています。ワークショップにも参加いただき、「直接お客さまとお話できるっていうところも楽しい」とおっしゃっていただきました。
―「WE CRAFT project」が目指すゴールについて教えてください。
榑林:ホームタップはビールを愛する会員さまが多いのですが、その想いこそが最高のビール造りの源泉。このプロジェクトを通じて、「ホームタップを介してキリンとつながるからこそ得られる特別な体験」をしていただけるとうれしいです。完成まで1年という長い期間ですが、ワクワク感や特別感の鮮度は保ちつつ、発売を待ち遠しく感じていただけるよう、定期的に情報を発信していきます。
ホームタップだからこそのよろこび、特別な体験を食卓に届けたい
―お客さまとの共創で新たな取り組みがはじまったばかりですが、これからどんな風にホームタップを盛り上げていきたいですか?
占部:今まさにはじめようとしていることがあります。ホームタップに携わるキリン社員がお客さまのご自宅にお邪魔し、お客さまの生の声を直接聞くことで、お客さまの声をもっと解像度高く集める活動をしようと話しているところです。
実際にスタッフが会員さまのご自宅に伺って、ふだんホームタップをどんなふうに楽しんでいただいているのか、生活のなかでホームタップはどんな位置付けなのかをヒアリングしていくんです。よりキリンやホームタップのファンになっていただくために、サービスのヒントをお客さまからいただけたらと考えています。
あと、個人的にはサーバー自体もまだまだ改善の余地がたくさんあるなと感じています。年齢や性別などに関わらず、どんなお客さまでも直感的に操作できるサーバーにしたいなと。サーバーに関する困りごとのリアルな声も聞いていけたらいいなと思っています。
―そういえば、付属のサーバー用受け皿もお客さまの声から生まれたんですよね。
占部:そうなんです。サーバーからビールを注いだあと、どうしてもポタポタと液が垂れてしまって…。お客さまからも「ティッシュや布巾を敷いています」といった声や「せっかくインテリアに馴染むデザインなのに、ここがちょっと残念」という声をいただいていました。それで生まれたのがこの受け皿です。
これは会員さま全員に無料でお配りしています。これをお配りしたときに、「待っていました!」とか「痒いところに手が届くことをしてくれるのがうれしい」という声をいただけました。
―今後、他にはどのような取り組みを考えていますか?
榑林:キリンが持っている資産を活かして何かできたらとも思っています。例えば、新しいビールをホームタップ限定で発売し、会員さまに先行して試していただく。ビールが大好きなお客さまの声を反映してさらにより良いビールを生み出し、全国へ展開していく。そんなことができたらいいですね。
占部:あとは、「食卓を豊かに」という領域でもっと広げていきたいと考えています。コロナ禍で一時期需要が増えたのですが、状況が落ち着き、外で飲む機会が増えたことで、家で飲む機会が減ったという声も出ています。だからこそ、ビールだけのサービスではなく、もっと広い視野で「食卓を豊かに」することに貢献していきたいと考えています。
契約されているお客さまはホームタップを愉しんでいただいていても、一緒に暮らすご家族のなかにはビールを飲めない方やお子さまがいらっしゃるということもあります。家庭に置くからには、ビールを飲むことができる方だけではなく、ご家族全員で食卓を楽しんでいただきたい。それが本来の目指したい姿でもあり、最初に立ち上げた時にも想い描いていた姿です。それを今「グルメセレクション」というかたちで進めています。
―「グルメセレクション」はどういったものでしょうか?
占部:グルメセレクションは、今年1月からスタートしました。ビールに合うグルメを提案し、販売しています。現在はホームタップの取り組みに賛同いただいたブランドの食品をホームタップの会員さま向けにお届けしています。今後は珍味などのお酒のアテになるものに加え、普段の食事にも組み込みやすいメニューなど、ラインナップの幅を広げていくことも検討中です。
ビールとのペアリング提案にも力を入れています。さまざまなスタイルや味わいのあるクラフトビールとグルメの掛け合わせも楽しんでいただけたら、クラフトビールの楽しみ方は無限大になるはず。それも含めて、「ホームタップだからこそできる体験」として楽しんでもらえたらうれしいです。
―最後に、ホームタップだからこそ提供できるビール体験として、目指しているのはどんな姿ですか
占部:「豊かな食卓」に続く話でもありますが、ご契約いただいているビール好きの方はもちろん、周りの方も含めて、ホームタップを楽しんでいただきたいと思っています。
ホームタップは、「つくりたてのビールのおいしさをお届けし、お客さまの日常に忘れられないよろこびの瞬間を創り出す」ことを目指しています。忘れられないよろこびの瞬間って、自分自身だけじゃなくその周りにいる方たちとの乾杯や関わりを通して浮かび上がってくるものだと思うんです。そういうところにも意識を向けたグルメ以外のサービスも、お客さまの声を聞きながら企画していきたいです。
榑林:あとすごくプライベートなことですが、もうすぐ2歳になる子どもがいるので、20歳になったらホームタップを囲んで乾杯したいなぁと。それまでずっとこのサービスが愛され続けることが密かな夢でもあります。