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キノ・イグルー 有坂塁さんによる「短編映画+お酒」のススメ【#私の晩酌セット vol.02】

美味しくて思わずニヤけてしまうおつまみや、晩酌のおともにしたくなる映画や音楽、おつまみを載せると自然と心地よくなる器など…料理だけに留まらない思い思いの「 #私の晩酌セット 」を、その道の第一線でご活躍されている方に毎月寄稿していただくリレー企画。

第2弾は移動映画館キノ・イグルーとして、既存の枠にとらわれることなく、自由な発想で映画の楽しさを伝えている有坂塁さんです。

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【プロフィール】有坂 塁
移動映画館「キノ・イグルー」代表。フィンランド映画界の鬼才アキ・カウリスマキから直々に名付けられた「キノ・イグルー(kino iglu)」、日本語訳で「かまくら映画館」の意。2003年に中学校の同級生である渡辺順也とともに設立。映画館やカフェ、本屋、雑貨屋、学校など様々な空間で、世界各国の映画を上映。映画のイメージにあわせた、コース料理やデザート、ライブ、写真展、イラスト展なども開催し、作品から広がる世界を表現している。
Instagram:https://www.instagram.com/kinoiglu/

僕にとって映画館は"聖地"です。

なので、おいしいものを食べながら、飲みながら作品を観るということは、まずありません。もっと言うと、映画が始まる1時間前から、何も食べない。試合へ向かっていくアスリートと同じ向き合い方をしています。

果てしない情熱を注いでくれた1本の映画に、ベストコンディションで出会いたい。そして、映画に心を鷲掴みにされたい。

それが、一度限りの“1回目”を120%で楽しむためにつくったマイルールなのです。

でも、自宅での映画鑑賞のときは違って、とことん自分を甘やかしていきます。たとえば、ドーナツとコーヒーとともにアメリカ産の学園コメディを楽しんでみたりとか、日本酒を嗜みながら小津安二郎の夕べを開催したり、ときには60年代のフランス映画を観ている間に赤ワインを1本開けるというチャレンジをしてみたり。

自宅では、キノ・イグルーとしておこなっているイベントと同じような形で、“楽しむ”を軸にした映画ライフを満喫しているのです。

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2020年に入ってからは、「短編映画+お酒」という組み合わせにハマっています。短い時間で、気軽に楽しむ。鑑賞方法も、プロジェクターではなくパソコンで。

大好きなパンをいくつも購入し、ちびちび呑んで、ちびちび観るというのを、だらだらと楽しむのです。ストイックな映画館とは対照的な、ゆるい映画じかん。

そのときのオススメ作品をいくつか紹介しますね。いずれも映画館で先に観ていたものの、“ちびちび呑んで、ちびちび観る”をしたときの方が、より楽しむことができた4作品です。

1作品目『不思議の国のアリス 1903-1915』(1903、1915)

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ウーピー・ゴールドバーグからティム・バートンまで、歴史上アリスの映画化は数あれど、なんと本作は世界最古のアリスです!(映画が誕生したのは1895年)

この貴重な映像遺産ともいえる1903年版は、上映時間たったの8分半。ジョン・テニエルの挿絵の世界を着ぐるみで再現し、当時の素朴な特撮技術を使って作り上げた幻想世界。かなりシュールなので、ほろ酔いで観るのに最適です。

サイレント映画ですが、後付けで入れたBGMが入っているので観やすいかと思います。Youtubeでも視聴可能。

2作品目『パリ、ジュテーム』(2006)

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こちらは、パリへのラブレター。世界中から集まった個性的な監督20人が、パリに愛を込めて作り上げた最高級のオムニバス映画です。セーヌ川、カルチェラタン、マドレーヌ界隈…。全部で20区に分かれているパリの、それぞれの区を舞台にした小さな「愛」のショートストーリー。各エピソード、約5分。

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この日は『パリ・ジュテーム』のお供に、レモンサワー、チョコレートのバゲットサンドを合わせてみました

そもそもオムニバス映画は1話完結のものが多いので、無理をして最後まで観る必要がなく、サクッと楽しめてしまうところにお酒との相性の良さを感じます。

さらに"才能のショーケース"としての魅力もあるので、お気に入り監督を探す楽しさもあります。本作でいうと、9区のエッフェル塔を舞台したシルヴァン・ショメ(イリュージョニスト)のエピソードが好みでした。あなたは?

3作品目『Heima〜故郷』(2007)

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残る2作品は、"音楽もの"です。

まずこちらは、世界を席巻したアイスランドの4人組シガー・ロスの音楽ドキュメンタリー。彼らが「故郷への贈り物」として国内でのフリーツアーをおこなったときの様子を、美しい映像とともに楽しめます。

アイスランドの大自然と、自由に音楽に聴き入るオーディエンスの姿の、大らかで包みこむようなその優しさに、何度、感極まり、涙を流したことか。
特に本作のハイライトでもある、彼らの代表曲「Hoppipolla」の場面は、マット・デイモン主演の『幸せへのキセキ』(2011) の感動的なラストに大きなインスピレーションを与えたシーンとしても有名です。見比べてみて!

4作品目『真夏の夜のジャズ』(1959)

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最後は、家にいながら夏フェス気分まで味わえるこちらを。

ルイ・アームストロング、アニタ・オデイ、セロニアス・モンクといったジャズ界の大御所が集った1958年ニューポート・ジャズ・フェスティバルを記録したドキュメンタリー作品。

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『真夜中のジャズ』には、ビールとソーセージデニッシュ、クリームパンを合わせてみました

この作品が面白いのは、「VOGUE」などで活躍したフォトグラファー、バート・スターンが監督を務めたという部分。

当時28才だった若きスターンは、錚々たる演奏者だけでなく、音楽に合わせてダンスをする人や、アイスクリームを食べている人など、二度と戻らないその“瞬間”を映し出していきます。そのすべてが、おしゃれでスタイリッシュ。そんな1950年代の“粋”を感じながら、お酒が楽しめる最高の1作となっています。

映画とお酒、という夢のコラボレーション。

どの作品を観るかを考える時間も十分楽しいのですが、そこからさらにテーマを決めたり、どのように楽しむかまでをオーガナイズしてみると、晩酌時間はより充実すると思います。

ぜひ試してみてくださいね。

今日の1杯

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酸味がちょうどいいバランスで、スッキリ飲みやすいレモンサワー。後味のキレがありながら、心地よい余韻。チョコレートなどの甘いものにもよく合います。

自宅で映画鑑賞をしようとすると、時間にして2時間も確保しなくてはいけなかったり、その間のおつまみはどうしよう、とか考え始めてだんだん及び腰になってしまうのですが、有坂さんの「ちびちび呑んで、ちびちび観る」は、鑑賞に入る心理的ハードルを下げてくれますし、それでいて数分で別世界へ連れていってくれていい気分転換になりそうです。

個人的にはこれからの季節に、ジャズ・フェスティバルを夕方くらいから流してワインを飲みたいです。

みなさんの「#私の晩酌セット」もぜひお寄せください。投稿されたnoteは新設する「 #私の晩酌セット 」マガジンに格納していきます。

次回は、食べチョクの秋元里奈さんに「 #私の晩酌セット 」を教えていただく予定です。夏野菜のおいしい季節。どんなお話が聞けるか楽しみにしていてください。

それでは、また次の乾杯まで。

表紙イラスト:カラシソエル

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