研究から販売まで、全社員が「お客様の顔が見える」ファンケルのコミュニケーション術
銀座の真ん中に、肌と健康のパーソナルカウンセリングが受けられたり、美しい空中庭園を散策できたり、さらには健康的な食事までできたりする施設があるのをご存知ですか?
2019年に資本業務提携を結んだ“食と医のキリン”と、“美と健康のファンケル”。両社の共通項や企業文化を紐解き、互いに補完しあうこれからの可能性を探る企画「#ファンケルとキリン」。
第2回は、キリンビバレッジ マーケティング部の松岡祥子と二宮倫子が、美や健康の可能性を発見できる店舗「ファンケル銀座スクエア」を訪問しました。
ファンケルの強みである「お客様とのつながり」をテーマに、お客さまとのつながりを育む姿勢、それを生かすための仕組みについてファンケル銀座スクエア館長の遠藤慎一さんから学びます。
銀座の真ん中にある“美と健康のテーマパーク”
遠藤さんに「ファンケル銀座スクエア」をご案内いただきながら、実際に体験できることや、銀座スクエアならではの「お客様とのつながり」についてお話をうかがいました。
二宮:10階から地下1階まで、ぎっしりとファンケルさんの魅力が詰まっていますね!数あるファンケルさんの店舗の中でも、旗艦店である銀座スクエアはどのような特徴があるのでしょうか?
遠藤:ショップとしての機能だけでなく、ファンケルブランドの旗艦店として、ファンケルの魅力をさまざまな体験を通してお伝えしていることが一番の特徴です。ファンケル銀座スクエアには、ショップフロア、パーソナルカウンセリングフロア、健康体験フロア、カフェ・レストラン、ロイヤルラウンジなど、さまざまな“体験”が詰まっています。
松岡:各フロアにそれぞれのプロフェッショナルがいらっしゃって、まさに美と健康のテーマパークのような場所だと感じました。
遠藤:すべてのフロアをご体験いただくとで、美と健康に関する知識とともに、ファンケルブランドへの理解もより深めていただけると思います。
そして、ファンケル銀座スクエアは従業員にとっても「お客様とつながる」とても大切な場所なんです。
二宮:たしかに。特に5階のカウンセリングフロアに研究員さんがいたのは驚きましたね。自分が愛用している商品を研究・開発している方に直接質問できる機会なんてそうそうないですし、ついあれこれ聞きたくなっちゃいました。ファンケル銀座スクエアは、買い物に来るというよりも、遊びに来るという感覚のほうが近そうですね。
遠藤:そうですね。今から18年前の2003年に、創業者の池森が「ファンケルを支えてくださっているお客さまへの感謝の場として、お客さまにとことん楽しんでもらえるような楽園を銀座につくりたい」という恩返しの気持ちでオープンしたのが、ファンケル銀座スクエアです。
その想いは今でも引き継がれており、「期待を超えるサービスを提供して、お客さまに楽しんでいただく空間」を第一に、さまざまな企画やサービスを考えています。
もちろん、ファンケルをまだ知らない方には、ファンケルブランドの想いを感じていただけるような工夫を随所に散りばめています。
二宮:各フロアのコンセプト以外に、大切にしている「楽しんでもらうための工夫」はありますか?
遠藤:ファンケル銀座スクエアでしか体験できないサービスやイベント、セミナーの開催に注力しています。特に10階の「スカイガーデン」で行うガーデンイベントは人気があります。多いときは1週間で、6,000名を超えるお客さまに来場していただくこともあります。
銀座の空に浮かぶ庭園は、まさに楽園らしさもありますよね。バラやあじさいなど、四季に合わせてガラリとお花を入れ替えるので、それを楽しみに定期的に来てくださるお客さまも多くいらっしゃいます。
ガーデンイベントでは、お客さまとお花に関するお話をすることが多いのですが、こういった場面で生まれる他愛もない会話が、お客さまと私たち従業員の親睦を深めてくれているように感じます。
毎月5のつく日は、「スクエア感謝デー」としてプレゼントをご用意しています。また、当社と長く深くお付き合いいただいているお客さまが利用できる8階ロイヤルラウンジでは、ドリンクを飲みながら休憩したり、荷物を預けて銀座でのお買い物を楽しんでいただけます。
このようにさまざまな施策やサービスを提供していますが、常に心がけているのは「スタッフとお客さまのコミュニケーション」ですね。お客さまがどうしたら感動し楽しんでいただけるかを常に考えて、親身な接客を目指しています。
顔が見えるから、親身になれる。
前回の取材で、ファンケルのDNAである「不」の解消には、相手(お客さま)の顔が見えていることが重要だとお聞きしました。ここからは、ファンケル銀座スクエアではどのようにお客さまに向き合い、関係性を築いているのかについて、遠藤さんにおうかがいします。
遠藤:お客さまに「ご満足いただきたい、お楽しみいただきたい」という気持ちを伝えるには、距離の近さが大切だと思います。企業とお客さまといっても、人と人ですから。
私たちにとってもお客さまにとっても、相手の顔が見えると心の距離がぐっと近くなり、自然にコミュニケーションも変わりますし、より親身になれるんです。
2013年の銀座スクエアのリニューアル時に、販売するスタッフだけでなく、研究員も直接お客さまと接することは重要だと考え、研究員が在籍するフロアを設けました。実際、お客さまと会話することで研究員の意識も変わり、生の声が聞けるようになってお客さま目線がより深まり、モノづくりにもいい影響を与えていると聞いています。
遠藤:さらに、定期的に研究員自らがお客さま向けセミナーも行なっています。セミナー参加者は、講師が研究員ということで、質問量も熱量もほかのセミナーとは全く違うんです。自分が長年愛用している化粧品を研究している人と直接話ができるということで、皆さん目が輝いていますね。
遠藤:社内的にもいい変化がありました。それは、研究員とファンケル銀座スクエアの距離が縮まったことです。顔を合わせてコミュニケーションをとることで、研究員から「お客さまの声を聞きたいので、こんなアンケートをとってほしい」とリクエストがあったり、こちらからもお客さまからのご要望があれば、すぐに「こんなことできますかね?」と研究員に相談できるようになりました。格段にコミュニケーションが深まりましたね。
遠藤:ファンケルとお客さまとの関係性が非常に近くて深いと、感じる瞬間があります。ファンケル銀座スクエアでは、夏季やGWの連休の時期になると年に一度、必ずお越しくださる遠方のお客さまもいらっしゃいます。
私たちも「そろそろ○○さまがお見えになる時期ですね」なんて話をしながら、お会いできることを楽しみに待っている。なんだか親戚のような家族のような、そんな関係性ですね。
遠藤:ほかにも、東日本大震災やコロナ禍のように、なかなかお会いできない時期が続いたことがありました。その間、久しぶりにお越しいただいたお客さまからは「緊急事態宣言中は出かけられなかったけれど、解除されたので久しぶりに会いに来たわ」「みなさんお変わりない?また来るわね!」と声をかけていただくこともしばしば。
会えない期間が空いていても、また落ち着いたら会える場所としてつながっていられること、そしてなによりお客さまがスタッフのことを気にかけ応援してくれていることに、銀座スクエアとお客さまとの絆を感じています。この関係性は、日々の積み重ねの賜物だと思います。とてもシンプルですが、目の前のお客さまにいかに向き合って接しているかどうか。これがすべてではないでしょうか。
美と健康の分野を取り扱っているため、お悩みはパーソナルなことが多く、こちらが想像する以上に悩まれていることも多いです。だからこそ、お客さまの気持ちに寄り添うことを何よりも大切にしています。
来店される理由はさまざまですが、最後は人と人。常連のお客さまからよく言われる「みんな本当にやさしくて親切ね」という言葉に、すべてが凝縮されていると思います。
遠藤:最近では、ライブショッピングやInstagram、オンラインカウンセリングなど、非接触でお楽しみいただけるデジタルコンテンツにも力を入れています。今後は、オンラインや非接触型のサービスが増えていくと思いますが、それでも人と人との直接のつながりやアナログの強みは絶対になくならないと思っています。
そして、体験価値はより高まるのではないかなと。だからこそ、デジタルに頼るばかりではなく、基本は強いリアルを磨いていき、デジタルとうまく融合していくことが重要だと考えています。
また、キリンさんとのコミュニケーションも深めたいと思っています。ファンケルの強みは「お客さまと近い」ことなので、キリンさんと一緒に10階のガーデンを利用してお客さまの声を聞くことができるイベントができないかなと、勝手にメンバーと話しています(笑)。
ファンケルとキリンのこれから
「企業とお客さまといっても、人と人」──これまでファンケルのお客さまとの真摯なコミュニケーションについて伺い、キリンの二人が感じたこととは。
二宮:今日ファンケル銀座スクエアをまるっと体験させていただき、ファンケルさんは「理念」と「店舗」「体験」が一気通貫している点が、本当に素晴らしいなと改めて思いました。肩肘を張らず、自然とそうなっているのがとても素敵だなと感じます。
創業当時から、今でいう「DtoC(D2C)」のような仕組みを導入されていますが、それでいて店舗もECも切り分けずに目的を共有しながら、すべてが同じ方向へ向かっているのがすごく最先端だなと。これからもファンケルさんから学ばせてもらいたいなと思いました。
松岡:ファンケルさんの大事にされている「お客様にいかに向き合っているかどうか」という姿勢は、私たちキリンもすごく大事にしていることなので、今日お話を聞きながらとてもシンパシーを感じました。
私自身、さまざまなデータを分析して傾向をつかむことも大事にしていますが、お客さまの本当の悩みや、お客さまがどういうところに小さなよろこびを感じてくださっているかって、データだけではわからないことが多いんですよね。今日お話を聞いて、顔を合わせて向き合うからこそ気づくことができる“本当のインサイト”があるんだなと、改めて学ぶことができました。私たちも、お客さまと向き合う姿勢をより一層大事にしたいと思いました。
遠藤:そうですね。データも大切ですが、メンバーには常に「データだけでなく、実際のお客さまの声や反応を聞いて、お客さまが本当によろこんでいただける取り組みになっているか考えよう」と伝えています。データと実際の声を組み合わせることで、すごく理解が深まりますよね。
二宮:私たちは、お客さまを分析するときに「紅茶ユーザー」とか「コーヒーユーザー」といった切り口で見ることが多いのですが、個々のお客さまの人となりや購入時の視点、お悩みを直接聞けるというのはすごくいいですよね。実際のお客さまの顔が浮かぶのは、仕事に向かうモチベーションの源泉にもなりそうです。
遠藤:やはり、ファンケル銀座スクエアでお客様の顔が見えるイベントを一緒に開催できたらいいですね!
松岡:ぜひお願いします。キリンの商品は、子どもから年配の方まで幅広い世代に楽しんでいただけるのが強みの一つです。この素敵な場所で互いの強みを活かしながら新しい取り組みができればと思います。
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それぞれのブランド力や研究技術、そして想いを合わせてシナジー創出を加速させていくファンケルとキリン。
今後もKIRIN公式noteでは、ファンケルとキリンが生み出す商品、そしてその背景にある両社の想いにフォーカスを当てながら、活動を紹介していきたいと思います。
どうぞ、お楽しみに!