新連載「フランスは今日もワイン日和」を始めます!
はじめまして。
メルシャン株式会社の春日井琢記です。
私は今、フランス・パリに住んでいます。メルシャンの欧州事務所に今年2月より赴任しており、現地窓口としてメルシャンが輸入しているワイナリーの品質管理担当、イタリアワインのブランドマネージャー、イギリスでのシャトー・メルシャンのプロモーションを担当しています。
本日より、連載『フランスは今日もワイン日和』をスタートすることになりました。この連載では、パリでの生活や仕事を通じて感じた「ワインの楽しみ方」についてお伝えしたいと思っています。
初回である今回は、私の人となりとnoteでどんなことを伝えていくのかについてお届けます。
“お酒を通して人を笑顔にしたい”“空間を創造していきたい”。
私が大学生の頃に飲料業界を志望した理由です。こう思うようになった出会いがあります。
みなさん、“渋谷のんべい横丁”という場所をご存知でしょうか?
数人しか入れないほどの小さな店舗が、40店ほど密集した昭和の雰囲気やロマンが残る渋谷にある横丁です。
大学が渋谷にあったこともあり、学部の友人に連れて行ってもらったことがきっかけで私の人生の方向性が決定づけられることになりました。
のんべい横丁では、店主さんを中心に居合わせたお客さんと会話をしながらお酒を交わす文化が広がっていました。狭いので必然的にそうなるわけですが、今まで気の知れた仲間とお酒を飲んでいた私にとって、この光景は新鮮であり、一気に惹きつけられました。
もう一つ、私をのんべい横丁に惹きつけたのは、そこに集う“人”です。
店主さんはもちろん、のんべい横丁に来るひとたちがとてもおもしろいんです。かっこいいオトナが集まる場所でした。年代も20代から90代と幅が広く、業種もさまざま。
ある老舗の店では、“ここは人生の大學である”という札が貼られていましたがまさにその通り。お酒を交わしながら人生の大先輩たちから多くのことを教わり、刺激を受けました。
そんな人情味あふれるのんべい横丁ですが、当時は“再開発でなくなってしまうかも”と噂を耳にすることもありました。
この場所を無くしてはいけない。こういう時代だからこそ、この文化をもっと多くの人に知ってもらわないといけない。そんな想いから大学の先輩が発起人となり“渋谷のんべい横丁祭り”を開催。
後に私も代表を務め、3日間で3,000人が来場するという大きな祭りになりました。
先輩や私が卒業した後も想いは引き継がれ、この祭りは今でも後輩たちが運営してくれています。結果的に、のんべい横丁はオリンピック後も残ると聞きました。東京に帰ったときは必ず顔を出す大切な場所なので、この知らせには、ほっと胸をなで下ろしました。
このような経緯があり、冒頭にある“お酒を通して人を笑顔にしたい”“空間を創造していきたい”という想いが生まれ、飲料会社を中心に就職活動を行い、縁あってキリンに入社することになりました。
入社後はキリンビール福岡工場で2か月半の研修を経て、ワインメーカーであるメルシャンの営業部配属となりました。はじめの仕事は、飲食店様の営業担当として、レストラン・バー・ホテルにワインを提案する仕事でした。
正直に言えば、ワイン事業に携わるとは私自身想像もしていなかったので、「自分がワインを売ることなんてできるのか!?」と、はじめはとても不安でした。
というのも、私が大学生の頃にアルバイトをしていたイタリアンレストランは、かつてイタリアに住んでいたオーナーがソムリエでもあり、イタリアンワインが豊富にありました。ただワインのラベルやメニューを見ても何が商品名なのか、何が地名なのか、何が品種名なのかが分からない。さらには、せっかくおぼえてもラインナップは頻繁に変わっていくのです。
ワインってむずかしい!
私が学生時代にワインに対して抱いた率直な印象でした。
配属直後は、右も左もわかりませんでしたが、社内はもちろん、お得意先さまからも丁寧にワインについて教えていただき、多種多様なワインを飲むことで、少しずつワインのおもしろさがわかるようになってきました。
わかってくると今度はもっと知りたいと思うもので、積極的にワインの勉強もするようになりました。ついには、ソムリエ資格の取得もしました。
昨年は、世界的に人気のワイン産地であるカリフォルニアのナパ・ヴァレーにも訪れ、ワイナリー巡りの楽しさを知ることができました。
入社前では想像もつかないほど、今ではワインの魅力にのめりこんでいます。ワインという共通の話題で、国内外でたくさんの人と出会うこともできましたし、ワイナリーを訪れることでその土地の食文化に触れることもできました。
ワインに出会ったことで、確実に私の世界は広がりました。
ワインの魅力としてよく言われるのは、「食事とのペアリング」です。ワインは幅が広いお酒なので、食事に合わせて選ぶ楽しさもあります。さらに言えば、ワインは造られた土地や気候で味わいが大きく左右されるお酒です。同じ銘柄でも出された年代によって、味わいが変わるのもワインの特徴です。そんな複雑さもワインの魅力です。飲むたびに新しい発見があるお酒なんですね。
それでもやはりワインは“むずかしい飲み物”だと思います。知れば知るほど奥の深さに驚かされます。
※
約3年半の営業を経て、今はパリに異動して半年がたちます。半年経ち、パリジャンの暮らしと接する中で感じることは、パリには“日常にワインがある”ということです。
テラスではパリジャンたちがワインをカジュアルに楽しんでいたり、街中にはワインショップがたくさんあり、お客さんと店主が談笑したり、スーパーではワインの棚が大きく展開されていたり。わたし自身日常的にワインを買う頻度は増え、ビストロやカフェでも飲む機会が増えました。
フランスにおけるワインの日常性は、いつかの渋谷ののんべい横丁で過ごした空気を思い起こさせます。
フランスのように日本でもワインをもっと気楽に楽しんでもらえたら。この連載を通じて、ワインの本場フランスから、“ワインの楽しみ方”をお届けすることで、一人も多くの方が、「ちょっとワインを飲んでみようかな」「ワインもおもしろそうだな」「ワイナリーに行ってみようかな」そう思っていただけたら、うれしいです。
メルシャンは「ワインのおいしい未来をつくる」というビジョンを掲げています。ここnoteでフランスからワインの楽しみ方をお届けし、「ワインがある日常」をみなさんと一緒につくっていくことで、おいしくたのしいワインの未来に一歩でも近づければと思っています。
次回はフランスで盛り上がりをみせるロゼワインについて、フランスではどのように楽しまれているのかについてお届けする予定です。お楽しみに。