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産地ごとの個性が、チョコレートとオーガニックワインの可能性を広げる。「大人の嗜好品」としての楽しみ方

※本記事は、撮影時のみマスクを外しております。

「個性は、産地で決まる。その香味の違いをどこまでも楽しめる」
「本来の豊かな味わいや、土壌・気候の特徴などをダイレクトに味わえる」

ちがう品物なのに、どこか似ている紹介文。ひとつは、カカオ農家の支援から携わるチョコレート。もうひとつは、農薬や化学肥料などを用いないオーガニックワインです。実はいずれも、産地へのこだわりや製法をはじめ、似たもの同士なのです。

風土で異なる味わい、その特性を生かした“大人の嗜好品”を日本の人々へ届けていきたい。その想いをともにする両者が、この日、対話する機会に恵まれました。

カカオ豆からチョコレートに至るまで、さまざまな工程にこだわり抜いたBEAN to BARチョコレートをつくるmeiji THE Chocolateブランドを担当する、株式会社明治の鐘ヶ江明子さん。

そして、フランスやスペインといった産地から厳選したオーガニックワインを届けるメルシャン株式会社の仁保麗が、商品に込めた情熱を語り合い、さらに“チョコ×ワインのペアリング”という楽しみ方も探っていきます。

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【プロフィール】鐘ヶ江明子
株式会社 明治にて2019年よりカカオマーケティング部で「明治 ザ・チョコレート」のブランドマネージャーを務める。「明治 ザ・チョコレート」を通じて「カカオ」の奥深さ、楽しさを広めていくマーケティング活動に従事。

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【プロフィール】仁保麗
大学卒業後、2016年にキリン株式会社(現キリンホールディングス)入社。首都圏エリアでワインの量販営業を経験後、現在はマーケティング部で輸入ワインを担当。日本のお客様に高品質なワインはもちろん、ワインの魅力や楽しみ方をお届けすることを目指している。

チョコレートもワインも「産地」で個性が決まる

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─今回の対談は、仁保さんの念願だったそうですね。

仁保:幼い頃からチョコレートが大好きで、母も無類のチョコレート好きだったので、いつも明治さんの「アーモンドチョコレート」がある家で育ちました(笑)。

たしか私が大学生の頃に、「meiji THE Chocolate」と出会って、それまでミルクやストロベリーといった甘いチョコレートが基準にあったので驚きました。

鐘ヶ江:「meiji THE Chocolate」の初代は、2014年に発売されました。素材を厳選したスペシャリティチョコという品質への自信はあったものの、その頃はあまり売れ行きが奮わず…。当時はカカオ60%のものでも「苦い」と言われてしまって。

ただ、明治としては1986年発売の「コラソンカカオ※」から始まり、甘みよりもカカオの面白さやビター感を打ち出した嗜好性の強い商品には挑戦してきたんです。

※明治から最初に発売された“大人の嗜好品”を目指したスペシャリティチョコレート

─そういう意味では、消費者の趣向含めて、時代が変わってきた印象を受けます。

仁保:「違いをもっと楽しめるようになってきた」とも言えるかもしれません。実は、私はメルシャンに入社してからワインに触れ、知っていくうちに深みや渋みといった奥深さも含めて楽しめるようになったんです。

そうすると、チョコレートやコーヒーといった“苦味”にも価値をとても感じるようになり、自分としても嗜好が変化していきました。

そんな矢先に、「meiji THE Chocolate」が2020年9月にカカオの産地名を打ち出す形でリニューアルされて!「ペルーにはアルパカをあしらう」といった土地の空気感も感じさせるパッケージもかわいらしく、私の好みにぴったり合って、一目惚れしました。

鐘ヶ江:ありがとうございます。以前までは産地よりも味わいにフォーカスしていたのですが、カカオの個性は産地で決まることを伝えていく趣向へリニューアルしたんです。

仁保:産地で個性が決まるのは、まさにワインにも通ずるところです。「meiji THE Chocolate」のリニューアルをきっかけに調べていくと、ますますワインとの共通点を感じるようになり、ぜひご一緒させていただきたいと考えるようになりました。

嗜好品として日本で定着しにくかった背景

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─チョコレートとワインは出自でも、つくられ方でも、近しい部分を感じます。

仁保:それに、課題感も似ていると感じるところがあって。ワインの魅力をできるだけわかりやすくお客さまへ伝えていきたいと考えると、切り口が独特になるというか…渋みや酸味の表現、タンニンといったワイン固有の要素は、他の食べものに置き換えにくい難しさがあります。

それを「meiji THE Chocolate」では、パッケージのビジュアルを含めて産地ごとの個性をわかりやすく表現していらして、私たちも参考にしたいと思ったんです。

鐘ヶ江:伝え方は、私たちも苦心した部分です。ただ、それも日本独自の文化という面があるんですね。

戦後、子どもたちが「ギブミーチョコレート!」とアメリカ兵士にねだる話を聞いたことがあるかと思いますが、日本では昔からチョコレートといえば“子ども向けの甘いおやつ”というイメージがあります。一方、フランスでは幼い子どもでも苦いダークチョコレートを食べています。

そういった背景もあり、日本では「きのこの山・たけのこの里」に代表されるようなチョコレートスナック文化が先んじて親しまれていきました。

それはそれで良いことなのですが、幅広い味覚から自分の好みに合うものを選んでいくなかで、チョコレートにも少し違う楽しみ方があることを知っていただけたら…という願いが、私たちにはあります。

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─それが苦戦しながらも嗜好性の強いチョコレートに挑戦を続けてきた理由ですね。

鐘ヶ江:大げさに言うと、チョコレートを嗜好品としての文化にしたいです。

「おやつ」の領域にいる限り、食べられるシーンや味わい方も限られてしまいます。でも、たとえば、フランスでは食後のコーヒーと一緒にチョコレートが出てくることも多いんです。

日本人は薄味で繊細な出汁文化を理解できるように、チョコレートにおいてもその繊細な味わいの差を理解できるはず。なんとかそれを伝えていきたい。

仁保:「おやつ」以外の時間に入っていける可能性ですよね。

鐘ヶ江:その点で、ワインは羨ましい存在です。1本のボトルを複数人で味わうといったコミュニケーションで楽しまれることも多いですから、「こちらの風味のほうが好き」とか、味わいのイメージや自分以外の感覚を共有しやすいはず。

そして、料理に合うワインを選ぶとき、それだけ人はワインを通じて、自分の味覚と向き合っているのだと思います。チョコレートもワインのように、おやつ以外の時間で、自分の味覚や気分と向き合って選ばれるようになれたらいいなぁと。

それは、シガーやウイスキーといった嗜好性の強い商品とも通じますが、知識欲や探求心がくすぐられる奥深さがチョコレートにもあることを、もっともっと知っていただきたいですね。

商品とは「情熱の表現」だ

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─その思いは「meiji THE Chocolate」にも込められているわけですね。

鐘ヶ江:今やっと色んな方に知っていただけるブランドに成長してきましたが、日本人にとってビターチョコレートが「おいしいもの」ではない時代からカカオのおいしさを伝えようと、私たちの会社は何度も失敗しては市場に参入して…を繰り返してきました。明治の社員は「おいしい!」と大絶賛だけど「売れない」みたいな…(苦笑)。

仁保:あぁ、共感します。はじめは売れたけれど、その後が続かない…とか。

鐘ヶ江:それでも続けてきたのは、2006年からカカオ農家を支援する「メイジ・カカオ・サポート」という活動を展開してきたように、社内には熱心な“カカオおたく”が多いんです。

最近ではSDGsの文脈から活動への理解は当たり前のことになりつつありますが、それ以前から「カカオの生産を持続可能なものにしていくためには、まず農家を取り巻く環境を整えてから」と、社員自ら産地に足を運び活動に取り組んできました。

カカオに対する情熱から、「その面白さを伝えたい」という想いと覚悟をかたちとして表現したのが、私たちにとっての商品です。それらが年月を経て、ようやく時代のニーズとマッチしたのだと思っています。

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仁保:商品というかたちにすることで、多くの人に届きますからね。

“カカオおたく”のお話を聞いて、それもチョコとワインの共通点だと感じました。メルシャンの取り扱うワインもブドウの育て方から始まり、「純粋においしいワインを造りたい」という熱心な造り手たちに支えられています。その熱心さのひとつのかたちが、私たちが取り扱う輸入オーガニックワインなんですね。

大量生産のために化学肥料が必要とされていた時代も過去にはありましたが、ワインの原料は農作物であるブドウ100%だからこそ、質を求めていくほどに「いかに純粋でおいしいブドウをつくるか」に向き合っていく方向に転換しています。

メルシャンは「良いワインの定義のひとつとして、その土地の気候・風土・生産者によって育まれるブドウの個性を、素直に表現したものである」という考えのもと、産地の特性を活かしながら、健康的な環境下で育ったブドウで造られたワインを選ぶことを大切にしています。

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仁保:そして、日本初の民間ワイン会社という顔を持つメルシャンとして、ワイン造りに誇りを持ち、ブドウのポテンシャルを最大限活かすことの大切さを知っているからこそ、オーガニックワインでも同様の考えを通底しています。

今、販売しているものも、世界中の数ある産地や造り手から日本のお客さまに納得いただける品質基準について対等に話し合える生産者と、パートナーシップを組んで輸入しているワインたちなんです。

鐘ヶ江:私たちのサポートも、チョコレートのおいしさを突き詰めるとカカオ豆に向き合うことになり、良いカカオ豆をつくるには農園から関わらなければ実現できない、という発想で始まりました。

カカオは農作物なので天候によって味が異なることもあるのですが、いつ買っても同じ味を楽しんでいただけるようにしないといけないのは、マスメーカーの苦労でもあります。メルシャンさんも、きっとこの苦労はあるんじゃないですか。

仁保:そうですね。「どこでも手軽に、同じものを買える」ということもたしかに大切なんです。ただ、それだけでなく、新しい産地や味わい、またどんなこだわりを持って造られたかといった背景を知ることで、ワインの体験も豊かになっていくはず。あくまで入り口は安心で、その先は楽しく広大であることがいいと思います。

そうして1人でも多くのお客さまに、いかに魅力を届けられるかを日々模索中です。チョコレートとワインは、やっぱり似ているんだと今日改めて実感しました。

チョコの香味は、産地によってどれほど変わる?

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―日本での広まり方から造る側の苦労まで、重なる部分が多いチョコレートとワインですが、その製法においても共通点があります。

鐘ヶ江:ワインがブドウを発酵させて造るお酒であることは、一般的に知られていますよね。実は、チョコレートも原材料となるカカオ豆をバナナの葉などを用いて“発酵”させて、その後に焙炒するんです。この工程も味わいに大きな影響を与えます。

仁保:チョコレートも発酵食品なんですね。知りませんでした!

鐘ヶ江:カカオは品種、産地、発酵法によって味も香りも異なります。また、焙炒も「高温で焼き続ける」「低温から上げていく」など方法が異なりますし、さまざまな条件の重なりあいで決まっていきます。

どれだけ産地で味わいが違うのか。「meiji THE Chocolate」のベネズエラ、ブラジル、ペルー、ドミニカ共和国という4種類をご用意したので、それぞれの香味を、ぜひ実際に体感してみてください。

仁保:まるでワインのテイスティングのようですね。ちょっと緊張します(笑)。

鐘ヶ江:まずはリラックスするところから。そして、封を開けたら、早速香りを楽しんでみてください。

「meiji THE Chocolate」は表面にブロック状の模様が入っているのですが、割ったときの場所によっても、舌に当たる表面積が変わって溶けやすさも変わり、味の感じ方が微妙に異なるんです。カカオ感を感じるなら真ん中あたり、ミルク感なら丸みのあるところといった具合です。

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―産地の違いによる香味を感じるには、ゆっくり味わうのがおすすめだそう。まずは2口ほど噛んでから口内でチョコレートを溶かし、鼻から息を吸うと、鼻腔に香りが広がっていきます。

鐘ヶ江:「meiji THE Chocolate」には、ベネズエラなら「ナッティな香り」といったタイトルが付いていますが、その香りも溶ける過程で繊細に変化していくんです。

ベネズエラは、紅茶葉のミルクティーに始まり、ローストアーモンド、殻付きのピーナッツのようなオイリーな風味に変わっていく、王道のナッツ感ある味わいです。

ブラジルはフレッシュなオレンジ、ドライクランベリー、レモンピール、アイスキャンデーの棒をかじったときのようなウッドの香り…と変化を楽しめるんです。

仁保:鐘ヶ江さんの手引きでじっくりと味わってみると、産地ごとの違いだけでなく、香りが変化していく過程もたしかに感じられました。産地によってこれほど違いがあるのは興味深いですね。

チョコレート×ワインのペアリングで楽しみ方が広がる

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チョコレートの香味を、また一段と深く楽しめる提案としておすすめしたいのが、ワインとの「ペアリング」

相性の良いワインと料理を組み合わせることで、それぞれを口にするのとも異なる奥深い味が広がるのです。チョコレートが口中で溶け切り、まだ香りがほのかに残るくらいのときにワインを含むと、相乗効果が表れてきます。

こだわりのチョコレートには、こだわりのワインを…と、「meiji THE Chocolate」を味わいながら、仁保がメルシャンのオーガニックワインから4本を厳選。この日は持参して、鐘ヶ江さんにも試していただくことに。

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「meiji THE Chocolate ベネズエラ 70%」×「カノン・デュ・マレシャル ルージュ」(フランス/ドメーヌ・カズ)

仁保:今回はオーガニックワインの豊かさを、手に取りやすい価格で提供してくれているドメーヌ・カズのものを4本選びました。

まず、「ベネズエラ」に合わせるワインがこちら。さわやかな酸と穏やかなタンニン、フレッシュできれいな風味が心地よい赤ワインです。「ワインのタンニンとカカオのビターが強すぎると喧嘩してしまう」と思い、この組み合わせをチョイスしました。ナッティなチョコレートに、フルーツを思わせるような香りが掛け合います。

300以上の受賞歴を有し、世界の星付きレストランで選ばれ提供されているドメーヌ・カズというワイナリーは、フランスのルーシャン地方において1997年からオーガニック農法を採用したパイオニア。今ではフランス最大級※のオーガニック・ビオディナミ実践ワイナリーなんです。

※ Biodyvin2019による認証

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「meiji THE Chocolate ペルー 70%」×「カノン・デュ・マレシャル ブラン」(フランス/ドメーヌ・カズ)

仁保:「ペルー」のチョコレートには、柑橘類や洋梨を思わせる華やかな香り、スパイスやアールグレイのニュアンスも感じさせる白ワインを合わせました。マスカットやオレンジピールの風味もあり、フローラルな香りの「ペルー」とは一層の相乗効果が期待できます。

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「meiji THE Chocolate ドミニカ共和国70%」×「ドメーヌ・カズ リヴザルト・グルナ」(フランス/ドメーヌ・カズ)

仁保:フランスを代表するオーガニック天然甘味ワインで、ブドウ由来の自然な甘口が特徴です。凝縮感のある甘さと、ビロードのようななめらかな味わい。その特色が「ドミニカ共和国」のチョコレートが持つスパイシーな香りを引き立てます。

鐘ヶ江:「ドミニカ共和国」のスパイシーな余韻がより増幅されるような気がします。ワインの自然な甘さもいいですね。気持ちをほぐしたいときや、ほっと一息つきたい夜なんかにぴったり。

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「meiji THE Chocolate ブラジル 70%」×「ドメーヌ・カズ ミュスカ・ド・リヴザルト」(フランス/ドメーヌ・カズ)

仁保:「ブラジル」には、ドメーヌ・カズが誇る甘口の白ワインを。シトラスのブーケ、南国のフルーツ、ピーチ、アプリコットなどの複雑な香り、そこへキレのいいはつらつとした酸味とフルーティな甘味のバランスがよい天然甘味ワインです。まろやかな味わいが、「ブラジル」の持つ酸味を包み込んで花を開かせるような、そんな相性バッチリの組み合わせだと思います。

鐘ヶ江:「ブラジル」の香りを引き立ててくれる、とてもいい組み合わせ!個人的に、今回ご提案くださった4つの中で私は圧倒的にこのペアリングが好きです。

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仁保:私自身、今日のために色んなペアリングを試してみたなかで多くの発見がありました。ペアリングはあくまで「おすすめ」であって、正解はありません。これを機会に、1人でも多くの方にチョコレートとワインを組み合わせる楽しみを知っていただけたら嬉しいです。

鐘ヶ江:そうですね。ひとえに「チョコレート」「ワイン」と言っても産地に着目すると多様性に富んでいて、それらを組み合わせて味わうことで、さらに色んな楽しみ方ができる。新しい可能性にとてもワクワクします。

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「ペアリングに正解はない」その言葉の通り、試飲中は、仁保が選んだ4パターンだけでなく、合いそうな組み合わせを実際に試しながら探っていきました。

ときに、「ミュスカ・ド・リヴザルトはナッツ感がより引き出されるベネズエラも、味の厚みが増すようで良い」なんて、意見を交換するシーンも。ワインに重きを置くか、あるいはチョコレートを重視するかによって、組み合わせが変わってくるのも面白いところでした。

チョコレートはおやつに食べるもの。
ワインは食事と合わせるもの。

産地ごとの違いは、この「なんとなく昔からあるイメージ」がひとつの側面に過ぎず、選び方や味わい方によってまだまだ色んな可能性があることを示してくれます。そして、チョコレートとワインのペアリングは、食事のシーンでは登場が少ない甘口ワインや定番の品種以外の楽しみにも、関心の幅を広げてくれるはず。

知っていくことで、新しい興味の扉が開いていく。それは食のよろこびをより一層感じる幸せな瞬間。これぞ、嗜好品の面白さなのだと、ペアリングに咲く笑顔のそばで感じました。


明治ザ・チョコレートはnoteでも発信しています。

文:長谷川賢人
写真:木村文平

『moogy』でほっと一息、おいしい時間。
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