「果実とお酒だけでつくる」新しさとは。『本搾り™プレミアム』が受け継ぐ、モノづくりのDNA
発売から21年、「果実とお酒だけでつくる」おいしさにこだわり続ける『本搾り™︎』シリーズ。
『本搾り™︎』シリーズが生まれたのは、現在はキリンのグループ会社であるメルシャンでした。
果実そのものの香りやジューシーさをお客さまに届けたい。その想いで「果実とお酒だけでつくる」という未知なる挑戦に臨めたのは、ワインメーカーとしての経験があったからこそ。そう語るのが、初代開発担当者の山崎哲弘です。
現在の『本搾り™︎』中味開発担当である大橋優隆は、誕生から変わらない『本搾り™︎』のDNAを受け継ぎながら、その先の「新たな味わい」を提案するべく、2024年2月27日に発売した『本搾り™プレミアム』シリーズの開発を担当。果実を大切にするキリンのこだわりを守りながら、時代にフィットした商品をお客さまにお届けするために、全国各地を飛び回って「最高の果汁」を探し求めたそう。
『本搾り™︎』だからできる、おいしさとは。変わらない「らしさ」は、どこにあるのか。
初代開発担当者と現在の担当者と一緒に、『本搾り™︎』の魅力について深掘りしていきます。
『本搾り™︎』誕生のきっかけは、居酒屋で目にした生搾りレモンサワーだった
─『本搾り™︎』初代開発担当の山崎さんにお伺いします。『本搾り™︎』が生まれたきっかけや、開発で苦労したことを教えてください。
山崎:私は当時、メルシャンでRTD(※Ready to Drink、蓋を開けてすぐに飲めるお酒)を開発していました。『本搾り™︎』の開発がスタートした2002年は、キリンから『氷結®』が発売され、大手ビールメーカーも続々とチューハイ市場へ参入してきていました。
そこでメルシャンとしても、ほかとは異なる価値観を持ったRTD商品を出していきたいと考えました。どんな商品がつくれるのかと考えているときに、居酒屋でフルーツ搾り器を使った「生搾りレモンサワー」を目にして、ピンと来たんです。「あっ、これがつくれたら一番おいしいだろうなぁ」と。
私も居酒屋に行くと、最初はビールを飲んでいますが、最終的には生搾りレモンサワーへ行き着くことが多くて(笑)。なんとかこの味わいを缶チューハイで再現できないものかと、スタッフと話し合って開発を始めたのが『本搾り™︎』です。
山崎:いざつくろうとすると、「生搾りレモンサワーのおいしさを再現するための適切な果汁量はどれくらいか?」「どんな商品コンセプトにすべきか?」と、課題はさまざま。それなら、まずは実際に居酒屋の生搾りレモンサワーを調べてみようと、10軒以上の居酒屋を巡りながら、注文しては搾って味わって、サンプリングするところから始めました。自分たちが「おいしい!」と思えるものは、どんな果汁量なのかと。
『本搾り™︎』の果汁量は缶にも表記があるとおり、レモンは12%、グレープフルーツは28%、ピンクグレープフルーツは29%と、数値がどこか中途半端に見えると思います。それは、開発者自ら、居酒屋で生搾りサワーを作ったときに、平均にするとこの果汁量になったからなんですね。
大橋:山崎さんたちが導き出した果汁量のバランスの考え方は、今でも変わりません。ただ、時代に合わせて使う果汁の産地や品種などを変えることで、甘みや苦みなどは微調整してきました。そのときどきの「果実とお酒だけでつくる」おいしさを味わっていただけるように時代に合わせてつくり続けています。
山崎:「苦み」という観点で生搾りの味を再現するには、混濁成分(パルプ分、繊維質など)を除去した透明果汁だけを使っても出せない。果実をまるごと搾ったような香りのよさも欠かせません。混濁果汁やピューレ状のものを使いながら、つくり込んでいきました。開発には2年ほどかかりましたね。
なければ、自分たちでつくる。メルシャンで受け継がれてきたモノづくりのDNA
─2年間の開発の中で、特に苦労した点を教えてください。
山崎:やはり、果汁の調達ですね。香りや味わい、ピューレに適しているかなど、産地によっても果汁の特徴が違うので、集めるのに苦労しました。今と比べると、当時はそこまで果汁の種類がなかったんです。
突破口になったのは、同僚からの一言でした。当時のメルシャンは、ワインをはじめ清酒、焼酎、RTD、リキュールやウイスキーと、ビール以外は何でも手掛けていました。なので、職場に行くと異なる商品の担当者がいて、困ったことがあればいつでも相談できる環境。
「香りのいい果汁がなかなか見つからないんだ」と同僚のワイン開発担当にこぼすと、「自分でつくればいいんじゃない?」と軽く返されました(笑)。でも、たしかにそうだと思ったんです。ワインメーカーとして果実に向き合ってきたメルシャンには、それをつくるノウハウも考え方もあるのだから、その視点で産地を調べ直して、自分たちで足を運べばいいんじゃないかと。
そこからは、「搾りたてのみずみずしい香りや完熟した果汁の香りを出すために、この時期のこういう果汁がほしい」など、細かなところまでオーダーして、メーカーと一緒につくり上げた果汁もあります。私の上司は海外の産地まで足を運び、自分の目と舌で果汁をたしかめて納得したものを輸入していました。
なければ、自分たちでつくる。これは、メルシャンのDNAと言っていいでしょう。先人たちから引き継がれている、モノづくりの考え方の一つなんです。
─『本搾り™︎』発売当時の反応はどうでしたか?
山崎:私たちとしては「10万ケース出荷できたらいいな」と思うくらい、控えめな目標でした。通常は数百万ケース売れる商品もあるのですが…。まだまだRTD市場も大きくなかったですし、果汁12%のチューハイなんて世の中になかったから、手に取ってもらえるまでが大変でしたね。でも、生搾りレモンサワーが好きな方々からは「これを探していた!」と好評で、ファンのみなさんが買い支えてくれた。出荷量は大きく伸びないけれど、安定した売上を維持しました。
当時のRTD開発チームは、私を含めて3人くらい。今振り返れば、チーム全員が「自分たちが飲んでおいしいと思えるチューハイをつくりたい」という一心でした。果実本来の甘さだから食事とも合うし、居酒屋で飲んでいるような気分にもなれる。そこまで納得できて商品化しましたし、これでダメなら仕方ないといった思いもありました。
大橋:ちなみに、2023年は約800万ケース(※350ml缶換算)を出荷しています!
山崎:すっかり大きくなりました(笑)。ただ、自分たちが納得いくものだったからこそ、あくまで結果ではありますが、20年以上もシリーズが続いている秘訣かもしれません。
─なぜ『本搾り™︎』は今の時代にもマッチしているのでしょうか?
山崎:現代では、身体に気を遣ってなるべく甘さを控えめにしたいという健康志向の方が増えています。そういう方たちにとっては、香料や砂糖を使用せず、シンプルに果実とお酒だけでつくられた『本搾り™︎』がフィットしたのかなと。
大橋:私も同感です。今はシンプルなものほど支持されているように思います。レモンとお酒だけ、グレープフルーツとお酒だけみたいな、分かりやすくてメッセージ性の強いもの。そういうストレートなものを、自分の嗜好に取り入れようと思っていただける。
山崎:そういう意味では、時代の流れにようやく『本搾り™︎』が追いついてきたというか、世の中に認められるようになってきたのかもしれませんね。
─長年愛されてきた『本搾り™︎』のDNAを守り続けるのは、とても大変なことですよね。
大橋:本当にそう感じます。例えば、海外でハリケーンが発生して果樹が倒れ、果汁の調達ができなくなることもあるんです。そんなとき、どの産地を探せば同じような特徴が再現できるか、農家さんや果汁サプライヤーと連携しながら世界中を探し回ります。『本搾り™︎』の味わいを守り抜く努力、このディフェンスのプロセスが一番難しいですね。
一方で、『本搾り™︎』として、長年果汁に向き合ってきた経験を活かして新たな提案ができないかと思い始めていたんです。居酒屋で楽しまれる生搾りチューハイという文脈は大切にしつつ、私たちにしかできない「果実とお酒だけでつくる」という新しい価値を生み出せるのではないか、と。
今日は、そんな着想から生まれた『本搾り™プレミアム』をぜひ山崎さんに味わっていただきたいです!
4種は製造方法の違い。「レモンまるごと」の複雑味を表現
山崎:では……(グラスに鼻を近づけて、香りを嗅ぐ)……おぉ〜、いいですね!
『本搾り™︎』の魅力は、なんといっても「香り」。搾りたての果実を思わせるような、みずみずしくジューシーな香りが再現されているかどうかは、私なりのポイントです。『本搾り™プレミアム』も、まさに搾りたてを感じる香りのよさがあります。
味わいも、しっかりとした酸味や苦味まで込められている『本搾り™︎』のこだわりが表現されています。私たちがつくり始めた頃のDNAがちゃんと受け継がれているなと、あらためて感じました。
大橋:『本搾り™︎』って、香料を使用できないからこそ、ダイレクトに果汁のよさが出てきますよね。しかし、加工方法によっては自分たちが求めていない香りや味わいが出てくる果汁もあります。なので、理想の果汁を求めて全国各地を回りました。
『4種のレモンと日向夏』の「4種」は、パッケージにも小さく書かれていますが、製造方法の違いを表していて、果汁の種類としては4種類以上使っているんです。
「混濁」「透明」「皮ごと」「ピューレ」という果汁の製造方法の違いで生まれる特長を生かし、甘味を出したり、香り出しに特化していたり、味わいのベースラインになるような果汁だったりと、それぞれを組み合わせることで、複層的でありながらみずみずしい味わいを意識しました。
山崎:「プレミアム」というからには、何か特別な魅力がほしいですよね。
大橋:今までにない、違ったおいしさを表現するために、さまざまな果汁を組み合わせて、飲んだときに立体感を感じるようなつくりを目指しました。「レモンだな」とか「ライムだな」という個別の主張ではなくて、全体的な味のバランスとして果汁のよさが追いかけてくるような「流れ」を意識しているんです。
─「流れ」ですか...?
大橋:イメージとしては、まずトップに柑橘を搾った時の皮のような香りがふわっと広がり、徐々にふくよかな味わいのベースラインが盛り上がります。そしてボディが感じられて、最後に苦味できゅっと後口を引き締める。料理に合わせても味を邪魔せずに、次の一口が楽しみになるように設計しました。
─たしかに「流れ」を意識すると、果汁のおいしさが一層感じられる気がします。
山崎:あらためて4種のこだわりを見ると、これらを全て足したらまるごと一つのレモンになるような組み立てになっているんですよね。特に、口に含んだ瞬間のふわっと広がる感じは、混濁果汁やピールを使わないと表現できません。まさにこだわりが詰まった「プレミアム」という名に相応しい味わいだと思います。甘さも糖ではなく、果実本来の甘み。本当に食事と合うのは、こういうことなんだろうなと感じますね。
苦みできゅっと締める。理想のシークヮーサーを求めて沖縄へ
─『3種の柑橘とシークヮーサー』の味わいはいかがですか?
山崎:こちらは香りが優しいですよね。『4種のレモンと日向夏』に比べると、オレンジが主体となっているので、全体的に柑橘のまろやかさがあります。酸味の感じ方も柔らかく、甘みが大きい割にはくどくない。甘さとくどさのバランスは難しいですが、とてもいいバランスで感じられます。
大橋:そうですね。果汁を増やせば増やすほど、どうしてもジュースのようになってしまうんです。オレンジとグレープフルーツをベースにすると、なおさら甘くなりがちなんですよ。ジュースのような味わいも一つの選択肢ではありますが、上質な果汁感をよりしっかりと感じられるアクセントがほしいなと。
そこで、レモンを加えて香りの高さと苦さを引き出しつつ、シークヮーサーで青々とした香りと苦味をプラスしました。ジュースっぽさを抑えて、苦味できゅっと引き締める。この最後の苦みで、『本搾り™プレミアム』シリーズ共通の特長を表現しました。
大橋:ただ、シークヮーサー選びも試行錯誤の連続でした。沖縄の果汁メーカーに相談して、一般的に出回るシークヮーサー果汁を試してみたけれど、それだと求める香りと苦みが弱く、うまくハマらない。
そこで私たちも沖縄へ飛んで、プレミアムにふさわしい果汁探しから始めました。今回は現地の農家さんたちが「カーアチー」と呼んでいる厚い皮にとてもいい香りを持つタイプのシークワーサーと出会い、さらに通常の搾り方ではなく、皮ごとすり潰して香りを引き出す搾汁方法を採用しました。青々しい爽やかな香りが、とてもいいアクセントになってくれましたね。
山崎:私たちは昔から、香りと味わいが特徴的な果汁を使い分けることを考え続けています。同じレモンでも、産地や収穫時期でも違いが出てくる。実に奥が深いですよ。条件の掛け合わせで、選択肢は数十通りにもなる。その中から最高の香りを見極めていくのは、開発者としての醍醐味であり、挑戦でもありますから。
大橋:おっしゃる通りです。だからこそ、『本搾り™︎プレミアム』の飲み方としておすすめしたいのは、缶から直接飲んでもおいしいのですが、一度グラスに注いで飲んでいただきたい。香りの面では、それが一番わかりやすいと思います。グラスに注ぐことで、トップ香が立ちやすくなるんです。含み香や戻り香も、バランスよく感じていただけると思います。
山崎:香りの変化を楽しむために、あえてゆっくりと向き合ってみる。それこそウイスキーを、時間をかけて香りを開かせながら味わうことにも似た発想ですよね。
『本搾り™︎』のDNAを受け継ぎつつ、新しい価値を提供し続ける
─お話を聞くほどに、「果実とお酒だけでつくる」おいしさへの追求は大変そうですね。
大橋:こだわりを持っているからこそ、本当に大変だし、努力も必要だなと感じますね。僕はもともと『本麒麟』など、ビール部門の中味開発担当だったんです 。なので『本搾り™︎』の開発担当になった当初は特に大変でした。みんなが話している言葉が宇宙語に聞こえるくらい(笑)。果汁メーカーの名前を言われても、レモンなのかオレンジなのか、どの果汁メーカーか全然わからない。ひたすら勉強の日々でしたね。
果汁の契約時期、収穫時期、南半球と北半球の違い、赤道直下ならではの特徴など、基礎から学んでいきました。妻が調達部で、『本搾り™︎』の原料果汁の調達も行なっていたので、いろいろ教えてもらったり。産地から「おもしろいものが収穫できたよ」と連絡があったら、とりあえず送ってもらって味見する。そんな試行錯誤の連続です。
▼『本搾り™』を支える調達部、通称「果汁ハンター」の記事はこちら
山崎:メーカーや産地によって、つくり方も搾り方も全然違いますからね。同じ国の果汁でも、海側と山側で味が違う。安定調達のために奮闘する調達部の苦労は、並大抵じゃないと思います。
大橋:常に先を読んで動かないといけないんです。来年の話どころか、3年後、5年後のことを考えて戦略を立てないと。お客さまのニーズがどう変わるのか、そのために限定品を出すなら、少なくとも2年前から準備していかなきゃいけない。常にアンテナを張り巡らせて、手を動かし続けることが大切ですね。
─あらためて、この20年で変わらなかった、そしてこれからも変わらない『本搾り™︎』のDNAとは何でしょうか?
山崎:果実のおいしさを最大限に引き出す、シンプルイズベストの思想そのもの。『本搾り™︎』こそがチューハイにおいて、最もシンプルでおいしい形だろうと、私は今でも思っています。その考えが20年以上経った今も受け継がれ、お客さまにも伝わっているのは、開発者冥利に尽きますね。
最初はそこまで売れませんでしたから、自分たちの考えが間違っているのではないかと不安になったこともある。それがここまで大きくなったのは、関わったすべての人が努力した賜物だと思います。これからの発展は、今後の担当者がさらに切り拓いてくれるはず。開発者の一人として、どう進化していくのか楽しみでしかありません。
大橋:「果実とお酒だけでつくる」というキャッチコピーにも表れていますが、「果汁とお酒」ではなく、あくまで「果実」であることが大切。果実まるごとのおいしさを引き出すのが、『本搾り™︎』のDNAだと捉えています。
今後は、まだ出会ったことのない果実や、新しい魅力を発見し続けていきたいです。『本搾り™︎』では今求められる味わいを追求しつつ、『本搾り™プレミアム』ではお客さまが体験したことのない果実の発見に挑戦する。そんな両輪で、前進できたらいいなと考えています。
『本搾り™︎』シリーズと、『本搾り™プレミアム』シリーズは全国で発売中
果実そのままのすっきりとしたおいしさを楽しめる『本搾り™︎』シリーズと、複数果実のブレンドと、香り高い柑橘の余韻が楽しめる特別な『本搾り™プレミアム』シリーズは、全国で発売中。どうぞ、グラスに注いで飲んでみてくださいね。
▼『本搾り™︎』のブランドページはこちら
6月18日(火)には『本搾り™︎プレミアム』初の期間限定品『5種の柑橘と愛媛産甘夏』が登場!こちらもぜひお試しください。