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研究に一発ホームランはない。地道に積み上げた成果と「感謝」を胸に、思い描く三方良しの社会【#わたしとキリン vol.17 城内健太】

キリングループでは、「よろこびがつなぐ世界へ」というコーポレートスローガンを掲げています。そのために社員が大切にしているのが、「熱意、誠意、多様性」という3つの価値観。

これらをベースに、各自が大切にしている第4の価値観をミックスすることで、社内では新たな取り組みがたくさん生まれてきました。

そんな社員たちの取り組みから、多様な働き方を考えていく企画が「#わたしとキリン ~第4の価値観~」です。

今回の出演者は、キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業本部のヘルスサイエンス研究所で主務を務める城内健太。研究者としてプラズマ乳酸菌の発見に携わり、免疫ケアのブランド『iMUSE』の立ち上げにも参加。現在は、プラズマ乳酸菌の医薬品化に取り組んでいます。

「研究に一発ホームランはない」と語る城内。彼が大切にする第4の価値観には、革新的な成果を支えてくれた人たちへの想いが込められていました。


小岩井乳業に入社し、キリンの研究所へ出向。大学時代と企業での研究で感じたレベルの差

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

【プロフィール】城内 健太じょうない けんた
キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業本部 ヘルスサイエンス研究所 主務。
2007年に小岩井乳業に入社し、品質管理部で働いた後、2008年にキリンホールディングス フロンティア技術研究所 長期出張。2015年からは、国立長寿医療研究センターで研究生として活動。その後、小岩井乳業のマーケティングを担当し、2021年からキリンホールディングス株式会社 キリン中央研究所に出向。また、国立感染症研究所のエイズ研究センターでも、協力研究員として活動している。

─はじめに城内さんが担当されているお仕事について教えてください。

城内:キリンの免疫ケア商品やサプリメントの開発・研究を行うヘルスサイエンス研究所に所属していて、現在はプラズマ乳酸菌の医薬品化に取り組んでいます。これまでプラズマ乳酸菌は食品に使われていたんですけど、もう少し活用の範囲を広げて、医薬品として使えないかを研究しているところです。

─プラズマ乳酸菌は、健康な人の免疫機能の維持をサポートするという目的で使用されていますが、医薬的な効果も研究されていると。

城内:そうですね。またいつ訪れるかわからないパンデミックに備えて、そういう薬が作れたらいいなと思い、研究を重ねています。あとは、直近でマネジメントの役割も担うようになり、少しずつグループの運営にも携わっています。自分は先輩や上司から自由にやらせてもらってきたので、みんなも自分らしくやってもらえばと思っているし、そもそも自分のキャラクター的に人を引っ張っていくようなタイプではないんですけど(笑)。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─城内さんは、もともと小岩井乳業に入社したそうですね。

城内:私は小岩井農場のある岩手県で育ったので、小岩井には馴染みがありました。あとは友人に誘われて、私も受けてみようかなって(笑)。実はもともと私はアパレル志望だったんです。友人の誘いに乗って、軽い気持ちで応募しました。

ただ、選考が進んでいくうちに、おもしろい研究をしている会社だということを知って。本気で入社したいという気持ちが大きくなりました。その友人がいなかったら、そのままアパレル業を目指していたと思います。

─アパレル業界への心残りはありますか?(笑)

城内:ないですね(笑)。そう思えるのは、実際に小岩井乳業に入社してみて、仕事がおもしろかったというのが大きいです。小岩井乳業に入社して1年目は、東京工場の品質管理部に配属になり、牛乳やヨーグルトの成分調査、微生物の検査などを担当しました。

社会人2年目からはキリンに長期出張して、当時のフロンティア技術研究所で乳酸菌と免疫を研究するチームの配属に。大学の頃に取り組んでいた領域の延長のような仕事をさせてもらうことになったので楽しかったですね。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─大学では、どんなことを勉強されていたんですか?

城内:大学では生物資源科学部(いわゆる農学部)で、乳酸菌を使って花粉症やアレルギーを抑えられないかという研究をしていました。学生の頃から研究は好きだったんです。

─大学での研究と企業での研究には、どんな違いを感じましたか?

城内:スピード感が全然違いましたね。研究室にもよると思うんですけど、大学では比較的ゆっくり研究を進めていました。だけど、企業の研究には納期もあるのでスピーディーだし、研究にかけられる費用も企業は大きかったので、いろんな研究ができて、どんどん仕事にのめり込んでいきました。

当たり前を疑うこと。存在しないと思われていたプラズマ乳酸菌の発見

キリン ヘルスサイエンス研究所で研究している様子

─フロンティア技術研究所では、具体的にどのような仕事をされていたのでしょうか?

城内:私は2年という期間内に、効果のある乳酸菌を見つけるのがミッションだったので、さまざまな乳酸菌を免疫細胞に反応させる研究をしていました。だけど、1年目は成果が得られなくて。2年目からは、当時の同僚で後に上司となる藤原大介さんに声を掛けてもらい、一緒に研究を進めることになりました。

─今のヘルスサイエンス研究所の所長ですね。

城内:藤原さんと進めたのは、ターゲットとする免疫細胞を変えることでした。まずは、彼がアメリカ留学中に研究していた「プラズマサイトイド樹状細胞」を活性化させられる乳酸菌を探すことにしたんです。

─「プラズマサイトイド樹状細胞」とは、どのような細胞なのでしょうか?

城内:簡単に言うと、「免疫の司令塔」ですね。一般的な乳酸菌は、一部の免疫細胞のみを活性化しますが、プラズマサイトイド樹状細胞を活性化させられる乳酸菌が見つかれば、免疫細胞全体が活性化され、外敵に対する防御システムが機能することになります。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

城内:ただし、プラズマサイトイド樹状細胞に働く乳酸菌はない、というのが定説だったんです。そういう論文も既に報告されていたので、周りからは無理だと言われていたし、私自身も気乗りはしない研究でした。

─自分で確信が持てないものを探し続けるのは、精神的にもタフな作業ですもんね。

城内:そうなんですよ。だけど、プラズマサイトイド樹状細胞に100種類以上の乳酸菌を添加していったら、確かにすでに論文に報告されている通り、ほとんどの乳酸菌はプラズマサイトイド樹状細胞に働くことはできませんでしたが、わずか数株に働くものがあって。そのうちの一株がのちに名付けることになるプラズマ乳酸菌だったんです。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─見つかった瞬間は、どんな気持ちでしたか?

城内:藤原さんとは別の部屋にいたんですけど、飛んでいって見せましたね。「反応しました!」って。自分としても、反応のある乳酸菌が見つかると思っていなかったので驚きました。そのときに、当たり前を疑うことって大事なんだなって思ったんです。

─常識を疑うことから新しいものが見つかることもあるわけですもんね。

城内:研究に一発ホームランはないんです。だから、どんなに新しい発見も、地道にコツコツ積み上げていった先にしかないのだと思います。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─プラズマ乳酸菌を発見したときの周囲の反応はいかがでしたか?

城内:自分たちはすごく手応えを感じていたんですけど、周りはそこまで興味を示してくれませんでした(笑)。そこからさらに研究を続けていくうちに、免疫細胞を活性化させるというデータが揃ってきたんですよ。それからは徐々に評価してくれる仲間が増えていきました。

マーケティングを経験したからこそ、わかる。研究と売り上げの切り離せない関係性

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─2017年からは、小岩井乳業に戻ってマーケティングの仕事をされていたそうですね。かなり中身の違う仕事だと思うのですが、いかがでしたか?

城内:私としては、もう少し研究を続けていたかったのですが、異動してからは『iMUSE』ブランドの立ち上げなどに関わっていました。今まで免疫細胞の研究ばかりしていたのに、いきなりパッケージデザインなどのマーケティング業務に関わるようになったので、最初は大変でしたね(笑)。周りの人に助けてもらいながら、なんとか食らいついていました。

─自分たちで発見したプラズマ乳酸菌が、今では多数展開されている『iMUSE』というブランドの商品になって世に出ていく様子は、どのように見ていましたか?

城内:商品化されて、実際に店頭でお客さまがカゴに入れる瞬間を見たりすると、うれしかったです。正直に言うと、研究をしていたときは自分が楽しければよくて、商品の売り上げにはあまり興味がなかったんですよ。だけど、マーケティング担当になってからは、もっと売れるためにはどうしたらいいのかを真剣に考えるようになりました。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─現在は再び研究所に戻られていますが、久しぶりの研究生活はいかがですか?

城内:久しぶりすぎて、だいぶ忘れていました。意外とマーケティング脳になっていたというか(笑)。だけど、やっぱり研究は好きだなと実感しています。

─城内さんが思う研究のおもしろさって、どういうところなのでしょうか?

城内:世の中の誰も見たことのないデータを、自分が一番先に見られるというのは、研究職の特権だなと感じています。それをチームのメンバーと共有して、「すごいじゃん!」みたいな話ができるのがすごく楽しいですね。あとは、自分が予想した期待通りのデータが出たときは、うれしい瞬間です。

─研究者の立場からは、商品の売り上げというのをどのように捉えていますか?

城内:やっぱり商品が売れないと、何のために研究してきたのかがわかりにくいですよね。売れることで次の研究もしやすくなるので、企業の研究員として、売り上げは大事だなと思うようになりました。

キリン ヘルスサイエンス研究所で研究している様子

─昨年は、プラズマ乳酸菌の発見と商品化が全国発明表彰で恩賜発明賞を受賞しました。健康食品素材としては初の、食品企業では59年ぶりの受賞だったそうですね。

城内:研究だけじゃなくて、事業化まで成功したことが評価されて、それはとてもうれしかったです。自分たちとしてはすごい発見をしたと思っていたけれど、ここまで大きな広がりを見せられるとは思っていませんでした。今は医薬品に向けた研究も進めていますし、プラズマ乳酸菌にはまだまだ可能性があると思っています。

▼詳しい受賞内容はこちら

個々の健康を守ることは、社会の健康を守ることにもつながる

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─『わたしとキリン』という企画では、キリンが掲げている3つの価値観(熱意、誠意、多様性)に加えて、社員の方それぞれが大切にしている第4の価値観についてうかがっています。城内さんが仕事をするうえで大切にされている、第4の価値観を教えてください。

城内:いろいろと考えたんですけど、私が大切にしているのは「感謝」です。私はもともと小岩井乳業の人間ですが、キリンに出向して研究に没頭できる環境を与えてもらっていることにすごく感謝していて。

研究チームのメンバーが、プラズマ乳酸菌をもっと広めようと頑張ってくれていることも、自分が忙しいときに家を支えてくれている妻にも本当に感謝しています。私を研究所に呼び戻してくれた藤原さんにも、本当にありがたいなと思っています。

─たくさんの方の支えによって、仕事に集中することができているということなんですね。

城内:当たり前ですけど、仕事も家庭も自分だけでは成り立たないことを日々感じています。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

─「感謝」という価値観を大切にしながら、今後はどういう仕事をしていきたいですか?

城内:これからはプラズマ乳酸菌をCSVにつなげていきたいと考えています。プラズマ乳酸菌でお客さまが元気になり、その人が所属する社会やコミュニティが元気になり、キリンにも利益が生まれるという、三方良しの状況を創っていきたいですね。そのためにも今は医薬品の開発を進めています。

─ヘルスサイエンス事業とCSVって、すごく相性がよさそうですね。健康な社会を目指した商品開発が、企業の利益にもつながるという。

キリン ヘルスサイエンス研究所の城内健太

城内:うちは子どもが二人いるんですが、子どもが体調を崩すと親は仕事を休むことになるじゃないですか。そうすると、その人が担っている役割はストップしますよね。そういう状況を変えたくて。家族が元気でいてくれることで思いっきり働けるし、それで会社が利益を出すことは、世の中にもいい影響があると思うので。

─なるほど。個々の健康を守ることは、社会の健康を守ることにもつながるということなんですね。

城内:だからこそ、ヘルスサイエンスはやりがいのある領域だなと思っています。

文:阿部光平
写真:土田凌
編集:RIDE inc.

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