お客さまも熊本の皆も笑顔に。「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」がつくる、幸せのかたち
2023年7月15日、2016年の熊本地震で甚大な被災を受けた南阿蘇鉄道が、7年間の復旧工事を経て全線開通しました。
復旧活動を近くで見守り続けてきた地域の方々や、この日を待ち侘びた鉄道ファンに見守られながら、約100年の歴史を誇るローカル鉄道が南阿蘇の田園を駆け抜けます。
駅舎に溢れるたくさんの笑顔を感慨深そうに眺めるのは、『午後の紅茶』に携わるキリンビバレッジの従業員。キリングループも熊本地震発生の5か月後から復興応援活動を始め、熊本の地域の方と一緒にさまざまな活動に取り組んできました。
その復興応援の一つとしてスタートした今年3年目を迎える「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」。支援活動で生まれた熊本との絆、そしてプロジェクトを通して得られた価値とはどんなものだったのか。
一緒に取り組んできた熊本の皆さんの元を訪ね、これまでの歩みを辿りました。
歩みを止めない、復興応援への取り組み
キリングループでは2016年の熊本地震発生の5か月後に「復興応援 キリン絆プロジェクト 熊本支援事業」を発足させ、熊本県とのつながりを育み、さまざまな取り組みを行ってきました。
そのなかで多くの反響を集めたのが、『午後の紅茶』ブランドで行った南阿蘇鉄道・見晴台駅や白川水源を舞台にしたCM(2016〜2018年)。南阿蘇村の長閑で美しい風景を全国に発信し、撮影地が観光名所となるうれしい現象も巻き起こりました。
こうしたキリングループの復興応援のバトンを引き継ぎ、復興に向けて前へ進もうとしている熊本の方々の想いと、全国のお客さまの応援の気持ちを『午後の紅茶』がつなぎ、心豊かな社会の実現に貢献したいという想いで、「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」は2021年よりスタートしました。
地域の方のニーズに応えながらサポートを続けることで、心温まる交流や復興の原動力となるよろこびがあちこちで生まれています。
熊本県産のおいしさが詰まった、特別な『午後の紅茶』
「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」の活動の核となるのが、2021年にはじめて発売された『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』です。
熊本県産オリジナルいちご『ゆうべに』(※1)と熊本県産紅茶葉(※2)を使用し、『午後の紅茶』を通して熊本の魅力を全国に発信、さらに商品1本の売上につき3.9(サンキュー)円が熊本県の被災地に寄付される仕組みを導入しました。
お客さまにも大変好評で、第二弾(2022年)の販売数量は第一弾(2021年)と比較しておよそ3割増に。2年間で87,621,488円の寄付金が集まりました。
『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』を通じた寄付金は熊本県の4つの団体に贈呈させていただき、熊本復興応援・地域活性化のために各団体で有効活用されています。
ここからは熊本の皆さんにお話を聞きながら、プロジェクトを通して生まれた価値やエピソードを振り返ります。
支援先① 食産業:JA熊本経済連
甘さと酸味が絶妙なバランスが特徴の熊本県産オリジナルいちご『ゆうべに』。熊本県農業研究センターで育種された新品種は18名の生産者で栽培がスタートし、現在に至るまで単純な道のりではなかったのだそう。
そんな『ゆうべに』をはじめとする熊本県産の農作物の魅力を全国の方に知ってほしい。そして『ゆうべに』生産への応援が、熊本の産業活性化につながり、さらには地元の方の活力や笑顔につながることを目指して、JA熊本経済連と二人三脚でプロジェクトに取り組んできました。
─ 農産業活性化活動に長年従事してきたJA熊本経済連の佐藤さん。キリンとの取り組みで新たに見出した可能性やよろこびを伺いました。
佐藤:キリンさんと連携が始まったのは、「復興応援 キリン絆プロジェクト」を行っていた7〜8年前に遡ります。当時開発したての『ゆうべに』のブランディングに入ってもらい、キリンさんがお客さまのニーズに合わせたマーケティングの知見を、JAが生産の技術を持ち寄り協働しました。
私たちはどうしても生産者的な思考で営業活動は保守的になりがちですが、キリンさんからのお客さま目線のアドバイスで視野が広がり、さまざまなご縁をいただいたおかげで、苦戦していたブランディングが大きく前進しました。『ゆうべに』の栽培面積とシェアも年々拡大し、生食だけでなく加工品の開発事業も順調です。
地元企業とのコラボレーションも盛んで、老舗の和菓子屋さんには昨年に引き続き、今年もいちごのスイーツを集めた「ゆうべにフェア」を開催していただきました。小売や流通の間でも熊本のいちご=『ゆうべに』という認識が定着し、ニーズの高まりを感じています。
佐藤:『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』が誕生して今年で3年目。SNSでは「ゆうべにおいしい」「いちごティーを見つけた!」といったコメントも多く、心の中でガッツポーズしています(笑)。
また、以前東京のスーパーで商品を買い物カゴに入れているお客さまを見かけたときも本当にうれしかったですね。遠く離れた場所からでも熊本を応援できるので、遠方に住む熊本出身者の方にとっては地元を感じ、地元貢献にもつながると、よろこんでいただけていると思います。
佐藤: 生産者の間でも、“あの午後ティー”に自分たちが育てた『ゆうべに』が使われていることや、全国の皆さんの支援の気持ちが活力になっているようです。身近な場所で商品を見かけると、「よし、次も頑張ろう!」とやる気が出ると語ってくれました。
キリンさんが背中を押してくれた『ゆうべに』の価値創出の輪が、生産者・JAグループ・行政・小売流通・消費者の中で広がり、相互の絆も生まれています。どこが欠けてもダメで、全てつながっているんですよね。学んだことをこれからも活かしていきたいと思います。
支援先② 子どもの笑顔づくり:南阿蘇村 教育委員会
かねてより「子どもの笑顔づくり支援」を精力的に行っているキリングループ。2年前から南阿蘇村の小学校や中学校、公共施設の図書室5か所に「午後ティーHAPPINESS文庫」の設置を進めてきました。
そこには震災によって大変な思いをされた地元の方々、そして子どもたちに元気を届け、学び場をつくることで笑顔を増やしたいという想いがあります。
選書にはキリンの従業員たちも協力。「人生を変えた本」「思い出の一冊」をテーマにリストアップし、キリングループにとっても想いの詰まった文庫となっています。
─ 南阿蘇村図書室の藤(とう)さん。「午後ティーHAPPINESS文庫」が開設されて、変化はありましたか?
藤:子どもたちはピカピカの新しい本が大好き。この図書室は児童書がまだまだ足りておらず古い本も多かったのですが、キリンさんのおかげで児童書をたくさん補充できて、「ここに来るとたくさんのきれいな本が選べて楽しい!」と子どもたちもよろこんでいます。
図書室に入ると真っ先に「午後ティーHAPPINESS文庫」に行く子や、小さな子ども連れの親御さんも増えて、今回のご支援をありがたく感じています。
藤:南阿蘇図書室のコンセプトは「村民のリビング」。子どもから大人まで皆が集まる憩いの場をめざしています。「午後ティーHAPPINESS文庫」が登場して利用者の層が広がっているので、思い描くコンセプトに一歩ずつ近づけているように思います。
藤:キリンの従業員の皆さんの本を通した思い出など、パーソナルな部分が見えてきて楽しいですし、コメントを読むと内面的なつながりも感じられて、親近感が湧きますよね。
あらためて思うのは、キリンさんからいただいたものは寄付金だけではないということ。南阿蘇村の子どもたちを想って支援してくださっている温かな気持ちが、関わり合いのなかから伝わってきます。
藤:今年は寄付金を活用して公園も整備されるそうです。私自身も「南阿蘇に公園があればいいのに…!」といつも感じていたので、やっと子どもたちが安心して遊べる場ができると思うととてもうれしいです。
子どもたちが本に触れ、公園を駆け回り、好奇心を高めながらすくすくと育ち、将来は彼らの子どもたちがまたここに集まって親しんでくれたらと願っています。
支援先③地域活性化:南阿蘇村 南阿蘇鉄道復旧事業
立野駅から高森駅までを結ぶ2〜3両編成の南阿蘇鉄道は、通勤・通学の足としてなくてはならない存在。そして阿蘇山や渓谷を望む絶景鉄道列車としても人気があり、街にとって大切な観光資源でもありました。
震災により線路や橋梁、トンネルなど甚大な被害を受け、長期間にわたる復旧工事がはじまりました。被害の少なかった一部区間は復旧したものの、中松駅〜立野駅の10.6キロの区間が不通のまま7年以上が過ぎたのです。
『午後の紅茶』ともつながりが強い南阿蘇鉄道。『午後の紅茶』として少しでも立て直すお手伝いがしたいと考え、駅舎新設や周辺施設の設備などの支援を続けてきました。
熊本地震から7年。ずっと心待ちにしていた、南阿蘇鉄道の全線開通です。7月15日に行われた式典セレモニーには、南阿蘇鉄道の皆さんと一緒にキリンもよろこびを分かち合いました。
─ 南阿蘇鉄道の復興を担当されている桐原さん。これまでの『午後の紅茶』の支援活動で印象的だったことはありますか?
桐原:寄付だけでなく、担当者の方がわざわざ南阿蘇村に足を運んでくださったり、イベントでは一緒にビールを売ったり、肩を並べて実働部分までサポートしてもらえて、存在を身近に感じています。
南阿蘇村の伴走支援者ですね。ここまで深く関わり協業していただき、復旧に向けて前進し続けることへの勇気と励みを、長きにわたりいただいています。
桐原:それこそ、見晴台駅を『午後の紅茶』のCM撮影地に採用していただき、かつては無名だった無人駅がフォトスポットとして話題を集め、多くの観光客を呼び込むきっかけに。
今はいちごティーの自販機を目当てに訪れる人もいて、周辺地域にも人の流れができているのを実感しますね。村が賑やかになることを、地元の方々もよろこんでいます。
桐原:以前、キリンの髙田さんからこんな相談を受けたことがありました。「鉄道復旧にかかる莫大な費用を見ると、『午後の紅茶』の寄付金は十分とは言えません。果たして、支援者の立場として全線開通のニュースを取り上げていいのでしょうか」と。
私たちは、支援金の金額云々は関係ないと思うんです。3年間も継続して被災地を応援してくれた、その気持ちがうれしいから。こうして素晴らしいプロジェクトを立ち上げてくれて、全国の紅茶ファンの皆さんに支援してもらえるような流れをつくってもらえたこと、そこに意味があるのだと。
桐原:南阿蘇鉄道もようやくスタートラインに立てました。 今まで支援してくださった方々にも感謝の想いを込めて、無事復旧して元気に前進していることもお伝えしながら地域の魅力を発信していきたいと思います。被災前よりぐんと進化を遂げ、皆さんのお越しをお待ちしています!
支援先④ 被災地復興支援:熊本県
キリングループでは、熊本県の被災地の復興支援を継続してきました。
例えば、CM撮影や商品開発など被災地支援につながる連動企画を立ち上げ、ときにはキリン従業員が「復興応援 キリン絆プロジェクト」のボランティアに参加したり、地域の魅力発信も積極的に行っています。
社内でも熊本復興の目処が立つまで同県を支援しようと、県庁の皆さんとも同じ方向を向いてバックアップを続けています。一つひとつのアクションが少しでも被災地の元気を取り戻せるきっかけになれたらという想いがありました。
─ 熊本県の蒲島知事からコメントをいただきました。
蒲島知事:熊本地震直後よりキリングループの皆さまには、さまざまなプロジェクトを通して各種復興事業のあと押しを行っていただきました。また、「復興応援 キリン絆プロジェクト」終了後も、2020年7月豪雨災害からの復興支援活動を行っていただくなど、息の長いご支援を本当にありがとうございます。こうした温かいご支援もあって、私たちが進めてきた創造的復興は目に見える成果を残すことができています。
『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』については、第一弾、第二弾と大変好評で、全国で多くの方に味わっていただいたと伺っております。今年も熊本が誇るオリジナルいちご『ゆうべに』と熊本県産紅茶の存在を、全国の皆さまに知っていただく絶好の機会になればと楽しみにしています。
『午後の紅茶』を通じて生まれ、形になった“つながり”
─ プロジェクトは3年目に突入しましたが、振り返っていかがですか?
髙田:「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」の取り組みで強く感じたのは、その地域で育ったおいしいものと、復興を応援する気持ちを、遠く離れた人にまでしっかり届けられるという『午後の紅茶』の可能性です。
多くのお客さまに愛されている『午後の紅茶』だからこそ、まだ知れわたっていない農作物や名産品にフォーカスして全国に発信できて、地域の魅力を引き上げて活性化のお手伝いができることを実感しました。
『ゆうべに』の魅力を全国の皆さんに知っていただけたこと、子どもたちの笑顔づくりのために地域ぐるみで取り組めたこと。それを『午後の紅茶』がお手伝いできたことは個人的にもいい経験になっています。
そして南阿蘇村鉄道の全線開通は、長年応援してきた私たちも本当に元気がもらえるニュース。『午後の紅茶』を通して、少しでも地域活性につなげられたのならうれしいです。
髙田: また、毎年本商品を楽しみにしてくださっているお客さまには感謝の想いでいっぱいです。「復興支援」というと心理的なハードルが高いと感じられるかもしれませんが、身近な存在の『午後の紅茶』を手にとっていただくことが熊本の応援につながっています。「今年も大好きないちごティーで熊本を応援!」というSNSでのお声を見ると、とてもうれしい気持ちになります。
『午後の紅茶』を楽しんでいただくことで、全国の応援する気持ちが支援先の笑顔につながる。文字だけでは壮大すぎてなかなか想像がつきづらいかもしれません。最初は実感できていなかったと思います。
それでも「午後ティーHAPPINESS文庫」を設立した小学校からいただいた心温まる手紙や南阿蘇鉄道の特別号に乗車する子どもたちの笑顔、首都圏のスーパーで『ゆうべに』を見つけたことなど…。いくつもの体験を重ねて、全国の“応援する気持ち”という目に見えないものが形になっていく様子を実感しました。2023年もこの素敵な循環を『午後の紅茶』を通じてつくっていきたいです。
髙田:3年目の今年の『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』は、『ゆうべに』のおいしさを活かしながら、昨年よりも紅茶の豊かな味わいが感じられるようにブラッシュアップをしました。
パッケージは感謝の気持ちやつながりを「蝶結びのリボン」で表現しているのですが、裏面の蝶結びがハートのリボンになっている隠れデザインも数量限定で登場しているので、ぜひ探してみてくださいね。
これからも『午後の紅茶』のおいしさをお客さまに届けながら、未来に向けて笑顔の輪をどんどん広げていきたいと思います。