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ボールひとつでつながりあう。キリンフレンドチャレンジカップで見えた、JFAとキリンの新たな価値共創

約140km離れた伊豆諸島の島と東京都心、2つの地域の小学生たちがサッカーを通じて交流し、絆を創る。そんな新たな取り組みが行われました。日本サッカー協会(JFA)とキリンが共催する「キリンフレンドチャレンジカップ2023」です。
 
10月8日に開催されたこのイベントに参加したのは、利島としま村立利島小学校と、東京農業大学稲花とうか小学校の子どもたち。人口300人規模の小さな利島を舞台に、喜びを分かち合う姿がありました。
 
日本サッカーの発展を担ってきたJFAと、1978年から日本サッカーを応援し続けてきたキリンが、共同でお伝えする連載「#サッカーがつなぐもの」

JFAとキリンがどのような想いで本イベントに取り組んだのか? 遠く離れた
離島でどんなドラマがあったのか? 今回の企画を担当し、現地を訪れたJFAとキリンの担当者が語ります。


人と人との新たなつながりを創りだす、「キリンフレンドチャレンジカップ」とは?

キリンホールディングスとJFA

─まずは、「キリンフレンドチャレンジカップ」について教えてください。

キリンホールディングス 河内佑真(以下、河内):地理条件などからつながる機会が限られている子どもたちに、つながるよろこびを届けたい。そのようなJFAとキリンの想いから、新たな取り組みとして2023年10月に開催しました。

─第1回目の舞台を「利島」にした理由とは?

河内:利島は人口300人ほどの小さな島です。一度訪れたとき、島民同士の距離が近く、子どもたちは周囲の大人に見守られながら大切に育てられていて、島全体の絆が深いことを実感しました。

一方で島民からは、こんな声も聞かれました。離島で交通の便が悪く、人の行き来が少ない。だから、人とのつながりが限られてしまっていると。それを聞いて、利島の子どもたちにサッカーを通してつながるよろこびを届けられるのではないかと考え、JFAさんに企画を提案させていただきました。

キリンホールディングス河内 佑真

河内 佑真
キリンホールディングス株式会社 マーケティング戦略部。

JFA 大塚 萌子(以下、大塚):今回はキリンさんからの提案でスタートしましたね。JFAにはサッカーファミリーを増やしたい、そして2050年までにワールドカップで優勝したいという2つの大きな目標があり、こうしたグラスルーツ(草の根)の取り組みにも力を入れています。お話を聞いて、素直に「一緒にやりたい」と強く感じ、企画を進めることになりました。

JFA大塚萌子

大塚 萌子
公益財団法人日本サッカー協会 マーケティング本部 パートナープロデュース部。

―利島でのサッカー交流を通して、どのような体験をしてもらおうと考えたのですか?

大塚:利島の小学生は1~6年生あわせて19人です。8人制の試合をするにしても体格差もあり難しく、他の地域との“サッカー体験格差”が、どうしても生じてしまいます。島外から子どもたちを招き、一緒に試合をすることで、利島の子どもたちにサッカーの楽しさを体験してもらえるのではないかと考えました。

河内:実は、事前に利島の小学生全員に話を聞いていたんです。なので、もしこのような取り組みができたらみんな心から喜んでくれるのではないかということは肌感としてわかっていました。

だからこそ、なんとしてもチャレンジしたい。JFAとキリンだからこそ、それをやるべきではないか。そして、サッカーで子どもたちにつながるよろこびを届けたい、そんな想いをチームに伝えたところメンバーも共感をしてくれて、企画を実現できました。

キリンフレンドチャレンジカップ担当者たち

河内:また、利島を訪れる小学校として、都心の稲花小学校にお声がけしました。学校としても今回の取り組みに賛同いただいたこと、そして「体験から学ぶ」ことを重視しているという校風が「外の世界とつながりたい」という利島の子どもたちの希望に合っていたことが決め手となりました。

大塚:そうでしたね。稲花小学校からは、サッカーの経験者と未経験者の両方を含む21人に参加していただくことになりました。

子どもたちの心が近づき「つながれた」イベント当日

利島の子どもたち

―そうしていざ開催されたキリンフレンドチャレンジカップ2023ですが、当日の様子はいかがでしたか?

河内:残念ながら、当日は天候の関係で、稲花小学校の子どもたちは利島へ渡ることができませんでした。子どもたちは互いに会えることをとても楽しみにしていたし、私たちとしても、「子どもたちに人と人がつながるよろこびを届けたい」と準備を重ねてきたので、非常に残念でした。

プログラムを切り替え、2校の子どもたちのオンライン交流、元なでしこジャパンの選手を交えたトークイベントを行いましたが、結果的に子どもたちの思い出に残る良い取り組みになったなと感じています。

―具体的にどんなオンラインプログラムが行われましたか?

河内:まず行ったのが、利島の交流会館に集まった利島小学校の子どもたちと、東京の竹芝に集まった稲花小学校の子どもたちをつないでの、オンライン交流会です。

先に利島入りしていた元なでしこジャパンの阪口夢穂さん・岩渕真奈さんが登場し、子どもたちとトークを楽しむ場面も。「子どもの頃に夢を持ったきっかけは?」「夢を後押ししてくれた人は?」など、仲間とつながることや夢をもつことの大切さを語っていただきました

オンライン交流会の後、稲花小学校の子どもたちには、利島小学校の子どもたちに向けたメッセージを、大きなサッカーフラッグに書いてもらいました。

キリンチャレンジカップ応援フラッグ
稲花小学校の子どもたちから利島小学校のみんなへ送られた、メッセージフラッグ。

―両校の交流は急遽オンラインとなりましたが、今回の取り組みで、とくに印象に残ったことは?

キリンフレンドチャレンジカップ交流会

大塚:実は、イベントの数日前に、オンラインで事前交流会を実施していて。それで人となりを知っていたので、稲花小学校の子どもたちは当日、手紙やお土産まで用意してくれていたんです。だから、島に行けないとわかった時は、泣いてしまう子もいて……。

河内:僕たちが思う以上に、子どもたちの距離が近づいていましたよね。
 
大塚:そうなんです。フラッグにも「オンラインでいっぱい話せてうれしかったよ」「楽しかったからまた会おう」と、あたたかいメッセージをたくさん書いてくれましたよね。
 
河内:利島の子どもたちからも、「次のチャンスで島に来てね」「忘れないでね」と、稲花小学校の子どもたちと絆が生まれていることが伝わってきました。私たちとしてもうれしかったです。
 
大塚:はいこうしてメッセージを見返すとびっしり書いてくれている子が多いですよね。あの笑顔を思い出すと、やってよかったってあらためて思います。

キリンフレンドチャレンジカップ担当者

子どもたちが「つながる」ことの意義

なでしこ阪口・岩渕

―利島では、どのようなサッカー交流が行われたのでしょうか?
 
大塚:元なでしこジャパンの阪口さん、岩渕さんの2チームに分かれて、サッカーのミニゲームを行いました。子どもたちからプロのボール捌きに歓声が上がるなど、大盛り上がりの展開となりました。
 
河内:サッカーを楽しむ中で、ボールひとつあればいろいろな人と人がつながれること、そしてつながるよろこびがあることを、子どもたちにサッカー体験を通じて知ってもらえる機会になったと思います。

利島の子どもたち

―キリンフレンドチャレンジカップを通して得られたものとは、何でしょう?

河内:利島の子どもたちは、日常でふれあう人たちが限られています。稲花小学校の子どもたちと交流したことで、島内にとどまらない社会とのつながり、人と人がつながるよろこびを感じてもらえたのではないでしょうか。

大塚:それは稲花小学校の子どもたちも同じだと思います。世の中には、普段見ている世界とは別の世界があることを知ってもらえたのかなと。利島での試合中は、子どもも大人も笑顔になっていましたね。

河内:そうですね。利島では学年や体格、サッカー経験を問わず、みんなでサッカーをしましたが、ゲストの二人やアシスタントのフォローもあって、みんな本当にいい笑顔になっていました。

大塚:イベントを観に来ていた島の大人たちにも参加してもらったんですよね。子どもも大人もひとつになって楽しみながらひとつになっていく様子が印象的でした。

河内:島を歩いていると「利島でまさかこんなことをしてもらえるなんて」「JFAさん、キリンさん、ありがとう」と、いろいろな人から声を掛けていただきましたね。

岩渕真奈と参加者
阪口さん・岩渕さんが帰るときの見送りの様子。子どもたちが自発的に話し合い、段取りを決めてリハーサルも行った。

大塚:あたたかい声をいただいて、あらためて利島で開催してよかったと感じました。ゲストの二人が帰る時のことも、印象深いシーンがありましたよね。

子どもたち同士がつながるだけでなく、サッカーを介して周りの人たちもつながって、笑顔になれたのかなと。その点でも、イベントの目的は達成できたなと感じています。

JFAとキリンの価値共創によって訪れる世界は?

キリンフレンドチャレンジカップ担当者

―JFAとキリンの価値共創の取り組みには、このキリンフレンドチャレンジカップ以外にも、老若男女のだれもが楽しめるウォーキングフットボールの大会「キリンファミリーチャレンジカップ」(※)があります。どちらも今後、全国各地での開催を目指すそうですが、両者はどうすみ分けていますか?

河内:昨年生まれたキリンファミリーチャレンジカップは、「家族や仲間との絆を、より深める」ことを目的としています。対してキリンフレンドチャレンジカップの目的は、「新しいつながりを創り、つながりを広げる」ことにあると捉えています。

(※)ウォーキングフットボール(走らないサッカー)を採用し、年齢や性別、競技レベル、障がいの有無に関わらず、誰でも一緒に楽しめることを目指した大会。2023年11月25日に福岡PayPayドームにて開催予定。

▼『キリンファミリーチャレンジカップ』に関する記事はこちら

―2023年よりキリンのパートナーシップは、「サッカー日本代表オフィシャルパートナー」から「日本サッカー協会オフィシャルトップパートナー」になりました。以前とは何が変わりますか?

河内:キリンは1978年から45年にわたり、JFAのオフィシャルパートナーとして日本サッカーを応援し続けてきました。それは、サッカーの「人と人、人と社会をつなげる力」を信じているからこそです。

サッカーを通じて、人や社会をつなげ、世の中に笑顔を届けたい。パートナーシップの形が変わっても、根本にあるその想いはまったく変わっておらず、キリンファミリーチャレンジカップも今回のキリンフレンドチャレンジカップも根底ではつながっています。

一方、新しいパートナーシップになったことで、これまで行ってきた全カテゴリーの日本代表のサポートに加え、あらゆるカテゴリーの大会や選手育成、指導者養成、審判、グラスルーツなど、JFAさんの事業全般に携わり、サッカーを通じたつながりを創出する価値共創活動となりました。

関わる範囲がグッと広がったことで、これまで以上にできることが増えました。おかげで今では、JFAさんとほぼ毎日ミーティングをするようになりました(笑)。より幅広い場面に関わるようになったので、もっとサッカーの力で人と人とのつながりを創っていきたいです。

―JFAとキリンによる価値共創の今後の展望を聞かせてください。

大塚:キリンフレンドチャレンジカップに関しては、利島から始まったこの取り組みを日本全国へいかに届けるかを、ぜひ今後もキリンさんと一緒に取り組んでいきたいです。
 
河内:都市部以外での取り組みは、今までなかなかできなかったことなので、今回のチャレンジは大きな財産です。この経験をしっかり活かしながら、JFAさんとのタッグのもと各地でチャレンジしていきます。
 
今回やってみて、「うちにも来てもらいたい」「うちも参加したい」といったニーズがかなりあることもわかりました。そうした方々から手を挙げてもらえる仕組みも、今後は整えていきたいです。
 
―最後に、お二人が思い描くサッカーの未来について教えてください。
 
大塚:現状、多くの方々にサッカーを観ていただけている反面、プレーをする人はまだ限られています。ぜひ、観るだけでなく、老若男女を問わずだれもが気軽にサッカーをプレーする社会にしたいなとそうしてサッカーの裾野をググッと広げることで、頂上=競技レベルも自然と高くなり、ワールドカップ優勝がもはや夢ではなくなる。そんな素敵な未来を、ぜひこの目で見たいです。
 
河内:サッカーのおかげで、いろいろな人やものごととつながり世界が広がった。サッカーがあって、本当によかった。できる限り多くの人にそう思っていただきながら、サッカーへ常に寄り添うキリンを、いっそう好きになってもらう。そんな世界を夢見ています。

キリンフレンドチャレンジカップ担当者たち

キリンフレンドチャレンジカップ当日の様子は、Youtubeで公開中です。ぜひご覧ください。

文:田嶋 章博
写真:佐藤 博之(イベント)、上野 裕二(インタビュー)
編集:RIDE inc.


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