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自炊料理家・山口祐加さんの食いしん坊のためのおつまみ【#私の晩酌セット vol.01】

スーパーでスナップエンドウを見つけると、それだけで浮き足立ってすぐに買い物かごに入れてしまう。帰宅すれば急ぎ湯を沸かし、スナップエンドウの筋取りに取り掛かる。慌てるとうまく取れないことは経験上わかっているから、ここは慎重にことを進める。湯が沸騰したらさっと塩を入れスナップエンドウを投入。2分経ち茹であがったスナップエンドウをザルに上げ、水気を切ったらお皿に盛り付ける。
冷蔵庫からビールとマヨネーズを、冷凍庫から冷やしたグラスを取り出す。お皿の端にマヨネーズをたっぷりしぼり、冷えたグラスにビールを注ぐ。スナップエンドウの半分がマヨネーズでコーティングされるくらい大げさにディップして、スナップエンドウを口に放り込みつつすぐさまビールを一口。あぁ幸せ。今の季節、この瞬間が私の中で一番の楽しみなのだ。

…と、こんな個人的な晩酌の楽しみを話す機会がありました。話し終えると、聞いていた方たちが「わかります!」と急に前のめりになり、その後はきわめて個人的な晩酌のこだわりをたくさん聞くことになりました。

その時の表情がとても良かったんです。みな一様に「ニヤリ」とした表情をするんですね。普段は公に口にするのははばかれるけれど、みんな思い思いの楽しみ方があるんだなぁと、なんだか内緒話を打ち明けられたような気持ちになって嬉しくなりました。そして何より、嬉しそうに語られたその晩酌を真似したくなりました。

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気になるあの人に聞く「#私の晩酌セット」企画をスタートします

肩ひじ張らないお手軽なおつまみからこだわり抜いた至福のペアリングまで、いろんな晩酌の楽しみ方はありますが、客観的に「これがいい」とされている価値を伝えるのではなく、「個人的な晩酌のニヤリ」を見せ合ってはみんなでニヤリとするような、そういう企画ができたら面白そうだと思いました。

そんな訳で新しい企画「 #私の晩酌セット 」を始めます。

Instagramに載せられるようなキレイなものではないけど美味しくて思わずニヤけてしまうおつまみや、「名作だ」と大きな声では言えないけど時折晩酌のおともにしたくなる映画や音楽、高価なものではないけれどおつまみを載せると自然と心地よくなる器など…料理だけに留まらない思い思いの「 #私の晩酌セット 」を、その道の第一線でご活躍されている方に毎月寄稿していただくリレー企画です

初回は自炊料理家の山口祐加さんです。それではよろしくお願いします。

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【プロフィール】 山口祐加
自炊料理家、食のライター。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。著書に『週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい。』(実業之日本社)がある。好物は味噌汁。
Twitter: https://twitter.com/yucca88
Instagram: https://www.instagram.com/yucca88/
note: https://note.mu/yucca88

一人二役の誰にも邪魔されない晩酌時間

小さい頃から、親の会食の場に私も同席させてもらうことが多かった。無論、会食の席には酒のつまみばかりでお子様向けメニューなどはない。揚げ出し豆腐、エイヒレ、焼きししゃも、からすみなどを食べているうちに私の好きなものはおつまみばかりになっていた。

お酒が飲める歳になり、料理がさらに楽しくなった。夕食の時間が近づき、適当に冷蔵庫からみつくろって作ると、気づけばおつまみになっている。飲む前提で作っているのではないときも、99%の確率でお酒に合うものを作ってしまう。仕事でレシピを考える時も、酒の肴ばかり思いつく。それくらい、おつまみという食べ物が料理の思考に染み付いている。

いつものごはんは、仕事終わりにスーパーに行き、野菜売り場で旬の食材を見ながら何を作るか考える。今の時期なら、夏野菜が出始めていて彩り豊かな売り場の景色に心がおどる。冷蔵庫の中身を思い出しながら、食べたい野菜をかごにいれる。

野菜売り場と同じくらい時間を費やすのが鮮魚売り場。遅い時間になると大好物の刺身が100円引きになっていたりするので、必ず買ってしまう。醤油につけて食べるか、カルパッチョか、薬味で和えるか……と考えながら今日はカツオに決めた。

買い物の時点でいろんな食材が目に飛び込んで、気づけばお腹が鳴っている。大人になったのに食欲が全然待ってくれないタイプの人間なので、帰ったらとりあえず5分あれば食べられるものを作りたい。さっと作ってまず飲む。1品食べ終わったら、お腹と相談しながら次の料理を作る。料理をすべて整えてから食べようとするとお腹が待ってくれずにイライラしてしまうので、“作って食べる”を何セットかまわすのはおすすめだ。

一人晩酌は、心の中に『深夜食堂』の店主と『孤独のグルメ」の井の頭五郎を住まわせて、客の好みに合わせて料理を作る料理人と、料理人の気持ちを100%受け取って食べる、食べてを一人二役で演じる気持ちで作れば、二度楽しい(ちょっとおおげさかもしれないけど)

今日買ったのは、カットねぎ、絹豆腐、カツオの刺身、パクチー、赤玉ねぎ、小さなバナメイエビ、レモン。

【一品目 どっさりねぎの冷奴】

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一品目は帰ってきて1分で作れるねぎ冷奴。豆腐の上にカットねぎをこれでもかと乗せ、その上にぱらっとごまをちらし、ごま油と醤油を同じ割合で上から垂らす。これだけ。ビールを開けて、古道具屋で買った古いキリンビールのグラスに一番搾りを注ぐ。ネギの青い風味、ごま油の香り、醤油の旨味が一体となってのどを通る。ビールを追いかければ、一人居酒屋の幕開けだ。

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夏の季節は白ごはんを食べるのがしんどくなってくるので、よく豆腐をご飯がわりにする。普段ごはんに合わせているしらすや明太子を冷奴に載せれば、さっぱりして食べやすく、胃がもたれない。小さめのワンパックをすべて使うので、ある程度お腹もおさまる。そうすれば次の料理も焦らないで作れるのだ。

【二品目 旬のカツオの香味野菜マリネ】

二品目はカツオのアジアンマリネ。夏場はさっぱりした料理が食卓にほしい。酢の物でもいいし、酢を使って魚介をマリネすれば主役級のごちそうになる。

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材料はまず赤玉ねぎ。普通の玉ねぎでもいいけれど、テンションが上がるので赤玉ねぎを使いたい。合わせるのは今が旬のカツオのお刺身と、香り担当のパクチー。パクチーが苦手な人は大葉でも、ネギでも好きな薬味を合わせたら良い。食べやすいサイズに切って、ナンプラー:レモン果汁:醤油:サラダ油=2:2:1:1の割合で和える。ナンプラーだけだと味の個性が強すぎるので、醤油で中和させてもらう。きっとトマトを彩りに入れてみてもかわいらしい。

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赤玉ねぎやパクチーのシャキシャキ食感とカツオのねっとり食感が口の中で合わさり、ナンプラーとレモン果汁のコンビが抜群に合う。アジやイワシでもおいしいだろうな、ラー油などを加えて辛くさせてもビールと合うな、とおつまみを食べながらどんなアレンジができるのか妄想するのが好きだ

【三品目 カリカリエビフリット】

最後は本日のメインディッシュ、エビのフリット。京都にあるプーリア地方(南イタリア)の料理店で食べた、魚介のフリットが忘れられなくてたまに家で作る。
エビの殻のカリカリが大好物なので、殻が噛み切れる硬さの小ぶりなエビを買ってきた。揚げている途中で破裂しないように、尻尾の部分を少し切り落とす。洗い物を増やしたくないので、プラパックに下処理したエビを入れたら、そこに下味の塩を加えて蓋を閉めて振る。次に小麦粉を入れて、また蓋をして振る。そうすればボウルを出さなくて良い。

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油を中火に熱し、少し火を落として2分ほど揚げる。この間、魚屋のおじちゃんに「小さい魚介類は低めの温度で揚げると破裂しない」と教えてもらったので、弱めの中火にしたら全く破裂しなかった。

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揚げたてのエビはもちろんつまみ食いする。というか、つまみ食いがしたいからちょっと面倒な揚げ物をやっているようなものだ。エッセイストの平松洋子さんの本に『世の中で一番おいしいのはつまみ食いである』というタイトルがあって、ほんとうにその通りだと思う。ふーふー冷ましながら、カリっとエビを噛む。ど直球のおいしさに「うまぁ!」とキッチンでひとり笑ってしまった。

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揚げ物とビールというハッピーセットが整ったので、いただくことにしよう。申し訳程度のレモンじゃなくて、これでもかとレモンを絞ってほおばる。ビールとの相性は、抜群以外のなにものでもない。最高だ。揚げ物とレモンは好相性であり、悪魔のコンビだと思う。レモンをかけても揚げ物のカロリーは減らないのに、さっぱりするからパクパクと食べてしまう。ずるいけど、揚げ物にレモンはやめられない。

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揚げたエビが食べきれなければ、二品目のようにレモンと玉ねぎでマリネすれば翌日の晩酌のためのおつまみができる。エビを揚げた残りの油には、エビの香りが移っているので、青菜炒めなどをするとエビの風味がついておいしさアップ。一度揚げれば三度おいしさが楽しめる。

「どんなものが食べたい?」と自分に聞き、味の好みにばっちりはまった料理を「うまいなぁ」と言いながら食べる。一人二役の晩酌は誰にも邪魔されない、至福のひと時だと思う。キリンさんのnoteを読んでいる方々は、どんな晩酌の時間を過ごしているのだろう。日々の晩酌は日常すぎて意外と人に話す機会がない。これを機に、いろんな人の晩酌の風景をぜひのぞいてみたい。
今日もごちそうさまでした。

山口さんの今日の1杯「一番搾り」

今日の1杯

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一番搾りは旨味と苦味のバランスがよく、飲み飽きないのが好きです。買い物をするときに無意識に手に取っているのが一番搾りです。

山口さんの「晩酌セット」を読んでいると、料理はもっと「気分」で良いんだということに気付かされます。その時の気分に合わせて少し手を加える(もしくは抜く)ことで、だんだんと「オリジナル」になっていく。それが嬉しくてまた料理したくなる。いい循環です。なんにしてもお腹が空きました。早速今夜カツオのマリネを作ってみようかしら。ちょっと暑くなってきたからラー油多めでパクチーをふんだんに入れて。

みなさんの「#私の晩酌セット」もぜひお寄せください。投稿されたnoteは新設する「 #私の晩酌セット 」マガジンに格納していきます。また年末にはここで寄稿していただいた方とちょっとした催しものを行う予定です。その催しものは、投稿された方たちと一緒に開催したいと思っております(※投稿されたすべての方とご一緒できない可能性はあります。あらかじめご了承ください)。

今後はキノ・イグルーの有坂塁さん、食べチョクの秋元里奈さん、青山ブックセンターの山下優さんに「 #私の晩酌セット 」を教えていただく予定です。お酒を飲みながら楽しむ映画、夏野菜のおつまみ、酒の肴になる本…どんなお話が聞けるか楽しみにしていてください。

それでは、また次の乾杯まで。

表紙イラスト:カラシソエル



ありがとうございます!今日もおいしい乾杯ができそうです。
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