【2023年版】キリンが考える企業SNSの役割と理想の姿
あけましておめでとうございます。2023年もKIRIN公式noteをよろしくお願いします。
今年最初の記事は、キリンが考える「企業のSNS」について。
2022年はSNSにとって大きな動きのある年でした。このnoteを含めて企業のSNS発信について改めて問い直す年だったように思います。そんな節目となるような2022年を振り返り、そこで学び得たこと、確信できた方向性、そして2023年のキリンSNSはどうあるべきか?キリンのSNS担当者4名が集まり語り合いました。
どう“キリンらしいコミュニケーション”をしていくかを考えた2022年
平山 高敏(以下、平山):2022年を振り返ると、SNSを取り巻く状況にも変化があったと思います。そのなかでも特に気になるトピックや感じた変化ってありましたか?
山﨑 真理子(以下、山﨑):改めて、SNSは変化の激しい世界だなと実感しましたね。ですが、キリンのオウンドメディアやSNSを運営するうえで“キリンらしくいたい”という思いは、SNSチーム全員が変わらず持てていたと思います。
誰かの真似をするのではなくて、自分たちが本当に伝えたいと思うことを社内から見つけて伝える。私たちが伝えたいと思ったことをお客さまに届けるときに、どうアレンジしたら、お客さまが気持ちよく受け取ってくれるか、楽しく受け取ってくれるかを考えながら運営していました。
田中 碧(以下、田中):“キリンらしいコミュニケーション”をどうしていくかは、よく話し合いましたよね。そのなかでもやっぱりSNSのコンテンツの作り方はすごく変わりましたね。
山﨑:そうですね。企業の“人”や“温かさ”というところが注目されていて、そこに魅力を感じるように変わってきたなと思います。企業は変に飾らずに、お客さまの立場に寄り添って「心の底からそう思っています」と伝えた方が、お客さまにストレートに伝わるなと。
髙橋あけ乃(以下、髙橋):私はSNSチームに着任して2年経ちますが、当時からバズを狙わないコンテンツの発信は心掛けていました。しかし、それが企業エゴになってしまうことも結構多いと感じています。
企業らしさは持ちつつも、一方通行ではなくて、お客さまに共感していただけるコンテンツや温かみのあるコンテンツで、コミュニケーションを取っていくことがすごく大切だなと再認識しました。
平山:ただ「商品を買ってください」と発信するだけではなくて、「よりよい社会を目指して、私たちはこうした活動に取り組んでいます」ということをしっかり伝えながら、お客さまから共感を得られるように、今もチャレンジし続けている状況ですよね。
もちろん、「お客さまとつながっていきたい」という思いもあるけれど、それ以上にキリンが取り組んできたことや、どんな想いを持って活動しているのかを、丁寧に伝えたい。それを伝えるためには、しっかりとした箱とコンテンツが必要で、「note」という場所が的確なのではないかという期待から、公式noteが生まれた背景があります。
そしてこれが不思議と、キリンで働きたいと思っている人にも届くんですよね。企業が掲げるビジョンやミッションの意思伝達において、企業サイトでは伝えきれないことが伝わる。採用へもつながりつつあるというところでも、オウンドメディアの役割はおもしろくなってきているなと感じます。テクニックに走らずに、誠心誠意伝え続けていくことが大切なんでしょうね。
山﨑:お客さまの中でも、SNSへの触れ方が変わってきていますよね。それぞれのプラットフォームにいろいろなタイプの人がいて、いろいろな使われ方がされています。そのなかで、私たちはそのプラットフォームにどういう人がいるのかをしっかり把握して、最適な情報を最適なかたちでお届けしていくことが大切だと思います。
髙橋:手段から入らないことは、とても大切ですよね。バズや拡散を狙って発信しようと思えば、できるのかもしれない。でも、私たちはそこがゴールではないんです。お客さまに商品を買っていただいて、実際に飲んでいただく、使用していただくことが一番のゴールだと思っています。そのゴールに近づくにはどうしたらいいのかをもっと考えなくてはいけないんですよね。
平山:それもあると思いますが、私たちSNSチームの役割は、実際に飲んでみた感想やキリンの取り組みに対してどう感じているのかなど、商品やサービスを通じた体験のその先のコミュニケーションにもあると思うので、そこを見据えたうえで発信していく難しさはありますよね。
特にInstagramやTwitterはお客様とのつながりを感じやすいかなと思うんですが、印象的なシーンはありましたか?
山﨑:キリンビール公式Instagramで投稿した、工場見学のコンテンツはお客さまの反応がすごくよかったです。「全国にあるキリンビールの工場見学を回っています」とか、「次はこの工場に行くことを目標に旅行の計画を立てています」とか、「あの工場のガイドさんは元気にしていますか?」というお客さまからのコメントがたくさん届いたんです。こんなにも熱量の高いお客さまが多くいらっしゃることを再確認できたので、とてもうれしかったですね。
平山:企業や商品に対して、感動の言葉や感謝の気持ちがあっても、それを企業に伝えるということはなかなか難しいことだけど、SNSという場があることで、気軽に「ありがとう」が伝えられるのかもしれないですね。
私たちもSNSを通して、お客さまに「ありがとうございます」と伝えられるので、そういったコミュニケーションができるところも、SNSのよい面だなと改めて思います。
田中:そうですね。Twitterで言うと、『SPRING VALLEY シルクエール<白>』が発売されたタイミングで投稿した、ビールの絵文字についてのつぶやきもよかったですよね。
山﨑: この投稿は、世界には黒ビールや白ビールなど、ビールの種類によっていろいろな色があるのに「なぜビールの絵文字って黄色しかないんだろう」、「もっと色を選べたらいいのに」というアイデアをパートナー企業の方からお話いただき、その場にいた従業員みんなが凄く盛り上がったことから生まれました。
企業色が強い投稿よりも、この投稿のように“人らしさ”が感じられる投稿の反響が大きい事を改めて感じましたね。
髙橋:今の話とは逆に、商品のブランド担当からキャンペーン投稿の相談を受けることも多いですよね。
『生茶 カフェインゼロ』がリニューアル発売する際に、カフェインゼロの飲料を飲みたい方々にどうこの商品を訴求していくか悩んでいるという相談でした。広告ではなくて、SNSを使って多くの人に届けたいと。
この相談を受けて、以前『キリンレモン』が93周年を迎えた際に行ったキャンペーン投稿を思い出しました。「キリンレモンの思い出を教えてね」と添えて投稿したところ、多くのお客さまから反応をいただいたんです。
なので、今回も「どんなシーンで『生茶 カフェインゼロ』を飲みたいか教えてね」と、発話を引き出せるようなキャンペーン投稿を実施したら、多くのお客さまから反応をいただきました。
「妊娠中に安心してこの商品を飲むことができたので、本当にお世話になりました」という声や、「スポーツをしている時に飲んでいます」、「カフェインゼロの飲料っておいしくないイメージがあったけど、すごくおいしかった」など、私たちの予想外の声も多く届いたので、商品に対しても新しい発見があったなと感じました。
田中:商品に対するお客さまの思い出を引き出す投稿って、個人的にも素敵だなと感じています。お客さまが持つ“キリンとの思い出”を見ることができるのはなかなかないことなので。お客さまの大切な思い出の1ページにキリンがいることを知れて、とてもうれしくなります。
山﨑:うれしいですよね。ただ、これまで何度も感想投稿キャンペーンを実施してみて「おいしかった」「また飲みたい」といった優しいコメントが中心だったので、お客さまの率直な感想や本音を引き出せていないんじゃないかな?と正直感じていました。
そこで、『一番搾り糖質ゼロ』リニューアル時に、「新・一番搾り糖質ゼロを遠慮ナシ!忖度ナシ!で評価してください。感想をツイートいただいたお客さまの中から毎日1名様に開発担当自らお返事いたします。」という変化球の感想投稿キャンペーンを実施してみました。
そうしたら、「糖質ゼロのビールだけど、これは普通のビールに近くて苦味とコクがおいしい。ただ、飲み続けると酸味が残る感じがするのでキレがもう少し良くなるとうれしいです。」といったように、とても具体的でリアルな感想がどんどん届きました。狙い通り、お客さまの本音を引き出せたことがうれしかったです。
田中:お客さまから届いたツイートを『一番搾り糖質ゼロ』の開発担当と私たちが毎日全部読んで、開発担当自身がしっかりと返事を書いてくれました。
開発担当は普段、お客さまから届くツイートを見ることはあっても、お返事を書くことはなかったので「なんとお返事をしたら良いか分からない」とはじめは悩んでいましたね。
山﨑:140文字に苦戦しながらも、しっかりお客さまに寄り添い、向き合ってくれましたよね。
例えば、あるお客さまが感想ツイートに夕食の写真を添えて投稿してくださっていたんです。その写真に写る猫柄のお皿と箸置きもしっかり見て、開発担当が「お皿と箸置きがかわいいですね!」とお返事したり。細かいところもしっかり見てお返事をすることを繰り返すうちに、開発担当の人柄や温かさが伝わっていく感じがしました。この施策はそんなところもよかったです。
平山:大変なことも多いですが、とてもやりがいのある企画でしたよね。商品を開発した本人とお客さまが直接コミュニケーションを取る場を作ることができるのは、SNSのおもしろさだなと思います。
SNSやオウンドメディアは、“企業とお客さまをつなぐ”という役割でもありますが、“企業の従業員とお客さまをつなぐ”ということも大きな役割なのかもしれないですよね。SNSはあらゆる接点に立つことができる、多種多様なコミュニケーションができるんだということをこれからもしっかりと考えていきたいですね。
山﨑:本当にそう思います。私たちも一人の人間ですが、画面の向こうにも私たちと同じように一人ひとりお客さまがいて、画面越しに私たちの文章や写真を見てくれている。お客さま一人ひとりへのお手紙だと思って、丁寧にコンテンツを届けることを忘れないようにしていきたいです。
私たちは社内の魅力を発掘する部隊。2023年は“モーメント”に合わせてキリンの魅力を届けていきたい
髙橋:2023年こうしていきたいということや、やりたいことってありますか?
平山:もっと、“モーメント”を大事にしなくてはいけないかなと思っています。
CSV活動(※)や社会活動など、商品とは直接関わらない企業活動を発信することもSNSチームの大切なミッションですが、情報のハードルが高い分、そういったキリンの取り組みや想いをしっかりとお客さまに伝えきれていないという課題がありました。
「環境の日」や「世界人権デー」、「国際女性デー」など、社会をよりよくしていこうとする世の中の動きとともにモーメントが生まれ、世の中の興味関心が向くタイミングがあると思うので、そのモーメントに合わせて、どう伝えていくかを考えていくことが重要かなと思います。そして、発信した先に生まれるお客さまとのコミュニケーションもまだまだあるだろうなと思っています。
今年は私たちSNSチームが先導しながら、モーメントを掴んで伝えていきたいです。そこからどんなことができるかというのは、まさに今SNSチームで議論している最中ですよね。
山﨑:一消費者に立ったときに、一年中ずっと環境や人権などのことを考えているわけではないと思います。
生活していくなかで、「環境の日」や「国際女性デー」など、ちょっとしたきっかけがある日の方が目を向けやすい。そのタイミングにお届けした方が伝わりやすく、考えるきっかけになるのではないかと思いモーメントを意識したプランニングを進めています。
髙橋:ここ数年でSNSの在り方がマーケティングツールから広報的なツールへと変化してきていると思うんです。いつなにをどう伝えるかという広報の視点で、SNSで何ができるのかをしっかり考えて、アクションを起こしていかなければなりませんね。
山﨑:平山さんは以前から「キリンという会社には、まだまだ伝えられていないことがたくさんある」と言っていますが、まさにその通りだなと思います。
やはり、私たちが伝えなければならないことや伝えたいことはまだまだあるので、点で終わらせずに、一つのストーリーとして、お客さまにお届けしていきたいですね。キリングループが持っている資産を発掘して、それを届けていくことが私たちの役目でもあると思うので、引き続きどんどん挑戦していきたいなと思っています。
平山:私たちはまさに、社内の資産を発掘する部隊ですね。発掘した資産を翻訳して、より分かりやすく社外に伝えて、お客さまと握手するということが大きな責務でもあると思います。
髙橋:キリンは、ヘルスサイエンスの事業にも力を入れており、ビールや飲料だけの会社ではなくなってきました。キリンが掲げる“健康”や“ウェルビーイング”というビジョンもしっかりと伝えることが求められています。
2022年は多様化する情報をどうしたらお客さまに寄り添って伝えることができるかということを模索して、ヒントを得る年だったと思いますが、2023年は実際にアクションに落とし込んでいく年になるのかなと感じています。
そういう意味で言うと、社内のいろいろな人とより連携し、広く俯瞰して見てもらえるようにするのも私たちの役目だと思います。
私はSNSチームに来るまで、営業を担当していました。20年の秋に異動してきたときは、社内のことについて知らないことばかりで、転職したような気分でした。おそらくそれは私だけではないと思うんです。だからお客さまに対してはもちろんですが、しっかりと従業員にもキリンの資産となる情報を伝えていかないと思いますし、そこにトライできるのが私たちSNSチームなのかなと思っています。
田中:キリンが描く未来に、もちろん従業員は賛同していますが、理解しきれていない従業員もいると思います。SNSやオウンドメディアで発信する際に画面の向こうにいる一人がどんな感情を起こしてくれるかを想像することという話がありましたが、その一人の中に従業員も含まれているということですよね。
平山:そうですね。特にnoteでは、従業員に取材する機会が多いのですが、自分が話したことが記事になるのはとてもうれしいという反応をよくいただきます。
実際に記事になると、「私ってこういうことを考えていたんだと気づけた」という声や、「私の想いを素敵に伝えてくれてありがとうございます」という声をもらいます。普段の仕事では気づかない自分自身の価値や、仕事へのモチベーションに火がつくような役割もあるんだなと。
そして、その従業員が一緒に働いているメンバーに読んでもらいたいと思ってもらうことも、noteでの記事の一つの目的として運営しています。そんな役割をオウンドメディア全体で担っているのだと思います。
髙橋:わかります!商品に込められた想いや従業員一人ひとりの想いについて知ることができるので、この仕事が本当に楽しいんですよね。もちろん大変なこともありますが(笑)。幅広い部分でいいところ取りができる仕事だな、と思って仕事に取り組んでいます。その楽しさを自分だけのものにしないで、お客さまや従業員により伝えていきたいですね!
“今と未来”をキーワードに、キリンの未来に向けた資産を伝えていきたい
山﨑:最後に私からお客さまに伝えたいことは、私たちSNSチームはお客さまの反応やコメントをしっかり見ています、ということです。
企業のアカウントに届くコメントは見ていないだろうと思われているお客さまが多いような気がしていますが、私たちはできる限り全てのコメントを見るようにしています。お客さまのコメント一つひとつにうれしい気持ちになっていますし、お客さまから届いた言葉を担当部門に伝えることも私たちの仕事なんです。
お客さまからのうれしいコメントは、開発担当はもちろんのこと商品に携わっている多くの従業員にとってエネルギーになっています。改めて、この場を借りて感謝したいです!
髙橋:これからもたくさんコミュニケーションを取っていきたいですね。
山﨑:繰り返しになりますが、画面の向こうに一人ひとりのお客さまがいるということを大切にしているので、これからもそんな温かみのあるコミュニケーションは続けていきたいですね。
あとは、“キリンらしさ”を大切に、「あ、だからキリンが好きなんだ。」と思わずつぶやいてしまうようなコンテンツをお届けしていきたいなと思っています。
平山:2023年のSNSは、キリンの“今と未来”を伝えるという役割を担う場所として、さらに作り込んでいきたいですね。そして、以前よりもお客さまから「期待しているよ」と声をかけてもらえるような企業になれるようにコミュニケーションをしていきたいと思います。