ビールの定番「枝豆」にキリンシティがこだわったら、日本各地から旬を集める産地リレーになっていた
スーパーなどの店頭に並ぶ「枝豆」、そのパッケージをまじまじと見ることはありますか?
実は、産地や品種もさまざまで、時期によって旬が移り変わり、しかもその期間がとても短いのです。たとえば、6月下旬から7月上旬にかけては埼玉県産の品種『湯上り娘』がいい塩梅。8月上中旬には新潟県産の『新潟茶豆』がおいしい頃…といったように。
丁寧に積み重ねてきた「おいしい」と、こだわりの詰まった「おいしさ」でおもてなしするビアレストラン「キリンシティ」では、毎年6月~10月にかけて「枝豆産地リレー」を開催しています。
『初だるま』『おひさまの香り』『味ゆたか』『ひかり姫』…これらすべて、枝豆の品種名です。味わいや粒の大きさも異なり、すべてが枝豆でありながら、どれ一つとして同じ「枝豆」ではないことを楽しめるのが、キリンシティの「枝豆産地リレー」ともいえます。
ちなみに、2023年に開催中の「枝豆産地リレー」は以下のとおり。キリンシティでは日本各地から旬の枝豆を取り寄せ、さらに「オーダーごとに」茹で上げてから提供しています。
今回は、キリンシティで商品企画を担うマーケティング部の中島駿介が、以前キリンシティの料理を実食いただいたフードユニット「ごはん同盟」のお二人と、埼玉県の枝豆農家を訪問。ごはん同盟のしらいのりこさん、シライジュンイチさんは、過去に「枝豆好きを集めた枝豆を食べ尽くすイベント」を開催したこともあるほどの、大の枝豆好きでもあるそう。
畑を見学した後には、とれたての枝豆をつまみながら、中島&ごはん同盟のお二人による試食会も開催です!
▼前回のごはん同盟さんご出演記事はこちら
“有機農法の先駆者”とつくる、香り高き枝豆
「ここは日本でも一番というくらいに暑いけれど、陽射しも長くて、農業をするにはいいところだね。熊谷、伊勢崎、高崎の真ん中にあるんだから。去年あたりは6月なのに40度近くまで気温が上がったこともありましたよ」
そう話すのは、埼玉県児玉郡上里町で「須賀農場」を営む、須賀利治さん。群馬県との県境にある上里町は、日照時間が長く、一日の気温差も比較的大きな土地。四季ごとの気候がはっきりと表れやすいため、1年を通して旬の野菜を作るのに向いた土地です。
須賀農場では、須賀さんのお父様の代から60年以上にわたって、農薬や化学肥料、動物性堆肥を使わない有機農法で野菜や穀物を栽培しています。須賀さんも「農家の長男」として、いずれ家業を継ごうと思いながら育ちました。幼い頃からプランターや畑の隅に種を蒔いては野菜を育てるのが好きだったそう。農業大学を卒業後、家業に入って就農します。
手間暇がかかる有機農法に取り組んだのは「もともと父親が大病を患ったのがきっかけ」だと言います。自らが食べるものを変える一貫でもあり、植物堆肥のみを使う農法で野菜作りに精を出すと、食べ物だけでなく環境も変わったのか、お父様も復調。その作り方は須賀さんにも受け継がれ、“有機農法の先駆者”としても知られるようになっていきました。
「20年ほど前ですね。お付き合いのある会社さんから、キリンシティに出すいい野菜はないかと聞かれまして。それで一つ、有機栽培の枝豆でやってみようかって。私らも外食の会社さんと直接やり取りするのは初めてで、トラブルもたくさんありましたよ。最初に納品した枝豆が黄色くなってしまったから、次からは箱にドリルで穴を開けて風通しをよくするように変更したり…」
一つずつ改善を重ねながら、須賀さんの枝豆はキリンシティでもなくてはならない一品になっていきます。ある時期には、キリンシティの新入社員が「畑の実地研修」として、数日泊まり込んで農作業を経験させてもらっていたことも。
「新入社員の皆、最初は腰を痛めて青い顔をするけど、帰る頃には日焼けして赤くたくましい顔になるもんですよ。私ら生産者仲間でも、キリンシティには連れ立って飲みに行くこともあって」
そう笑う須賀さんに、実地研修を体験したことのある中島もうれしそうな顔を見せていました。生産者を知り、よりよい食材を提供しようとするキリンシティの姿勢が、20年近くをかけて培われていったことの一端をのぞいたような気持ちでした。
日々、草取り。手をかけた枝豆は、キリンシティのテーブルへ
須賀さんが案内してくれた畑には、枝豆が青々とふっくら実っていました。ふだんは、気温の高くならない毎朝5時半から収穫などの作業を始めると言います。雨の日でも雑草の除去など、手をかけることは休みません。台風などの天災は避けられず、過去には「大雨で浸水した畑に船を出して作業したこともあった」といいます。
枝豆は品種にも寄りますが、だいたい90日が収穫の目安。須賀さんは『湯上がり娘』という品種を栽培し、キリンシティへ出荷しています。さまざまな野菜を育て、肥沃な土を作り上げた畑に、育てた枝豆の苗を定植。生育は天候を常に見ながら、雨が少なければ水を適宜撒くなどして調整します。狙った収穫時期までにいい状態へ枝豆の仕上がりを導けるかが、腕の見せどころです。
「だいたい3月に種を蒔いて、6月から7月で採る。昔は8月の手前まで作ったんですけど、そうすると虫だらけになってしまうんですよ。うちは有機農法で自然任せですから、殺虫剤や除草剤も使いませんし。いちばん手間がかかるのは草取りですね。手遅れになっちゃうと、もう雑草か枝豆か、どっちを育てているのかわからないくらいになる(笑)」
須賀さんが育てた『湯上がり娘』は涼しい朝のうちに収穫され、昼には枝からもいで選別作業に。そこからはスピードを重視して、収穫した当日の午後には配送業者へ送られた後、キリンシティの店舗へ届けられます。
中島は久しぶりに訪ねた須賀さんの畑を見て、「20年以上のお付き合いがあるなかで、いろんな苦労を重ねてきて今に至ることは感慨深いですし、いい関係を続けていただけているのは、すごくありがたいです。その歴史があるからこそ、今このおいしい枝豆を提供できることの強みをあらためて感じました」と話します。
ただ、上里町でも農家は減るいっぽう…。須賀さんは「大規模で大量に作る野菜ならできても、やっぱり手の込んだものはできないですね。有機農法はただでさえ大変で、始めてもすぐにやめてしまう人も。でも、農家がいっぱいいれば、それだけいろんなものが作れるようにもなるんです」と口にします。
須賀さんの育てた枝豆には、ふわふわな白い産毛が、たくさん生えています。自らを守る役割があるとされ、鮮度の証でもある産毛を見ながら、この一粒ずつを味わえる今と未来をつなげて考える機会にもなりました。
枝豆大好き新潟県民、驚く
須賀さんの畑から分けてもらった『湯上がり娘』を手に、キリンシティ本社へ戻ってきた一行。ここからは、中島とごはん同盟のお二人が、新鮮な枝豆を試食しながら(もちろんビールも!)、止まらない枝豆トークに花を咲かせました。
中島:須賀さんの『湯上がり娘』、茹でたてでお持ちしました!
のりこ:すごい!テーブルに運ばれてきただけで、すごくいい香りがします。早速一ついただいて…わぁ、歯ごたえがいい!とてもおいしいですね。
枝豆の甘み、ほどよい塩気、そこに飲むビール…甘じょっぱいのループで、やめどきがわからなくなる(笑)。私たちは新潟県出身なんですけど、これは「枝豆が大好きで食べ尽くしている民族」も驚きの味です!
中島:そんなに食べているんですか?
ジュンイチ:「実家の枝豆が一番おいしい」なんて、皆よく言いますよ。新潟県の枝豆の栽培面積は全国1位なんですが、出荷額は全国7位(※)と下がるのは、家庭内消費が多いせいらしいですしね。いやぁ、この『湯上がり娘』は甘みのある香りが本当にすばらしい。しっかりと“瞬間的なおいしさ”を感じさせてくれるけれど、食味はさっぱりしていて。
のりこ:お米で言うと『ササニシキ』みたいな感じ。今日は須賀さんにお会いして畑を見て、日々作業されていることがわかる様子も拝見してからだと、おいしさも増しますね。農家さん皆でキリンシティのお店へ行っている、というお話もグッときましたし。
中島:本当ですね。キリンシティでお出しする枝豆は、品種ごとに茹で時間も変えているんです。その年の最初に収穫されたものを、商品開発部のプロ達が茹で時間を変えながら試食して、「3分でいこう」「いや、3分半だ」なんて言いながら、適した時間を決めています。枝豆は生の状態で店舗へ届けられて、ご注文いただいてから茹で上げるのもこだわりです。
のりこ:そのこだわり、もっと強く伝えたほうがいいですよ!しかも「枝豆産地リレー」なら、なかなか出会えない品種も味わえますね。スーパーだと品種がそれほどなかったり、メジャーどころだけしか置いてないことも多かったりしますから。秋に近づくほどに味わいがだんだん濃厚になっていくのも、季節を感じられていいです。
ジュンイチ:そもそも枝豆にこれほど種類があって、しかも旬の時期が2週間くらいで変わってしまうことを知らない人も、きっと多いでしょう。
中島:たしかに僕も、枝豆の味に違いはそれほどないだろうと思っていたら、まったくそんなことはなくて。キリンシティはやっぱり「ビールのお店」ですから、相方と言えば、枝豆は当然に挙がってきます。全国で桜前線ならぬ「枝豆前線」があるなら、そのときどきでおいしいものを提供したいな、と。
ジュンイチ:おいしいビールを用意するなら、それに見合う枝豆にしたい、と。枝豆は「だいたいこれくらいの味だろう」というイメージもあるし、それなりに平均点を出しやすいですから、想像を超えるものに出会えるとやっぱり驚きがあります。
シンプルだから、おいしさが際立つ。知れば、記憶に残る味
のりこ:枝豆とお米って似ているところもあるんです。調理するときには水や塩しか使わないですし、足すものが少ないから、より本来の味の差がわかりやすい。それから、残念ながら、あんまりおいしくなくても食べれちゃうのに、すごくおいしいものはとびきりおいしい。一度知ると記憶に強く残るから、ある意味では残酷だけど(笑)。
中島:キリンシティで枝豆の「違い」を感じるきっかけができたら、お客さまに提供できる体験としてもいいのかな、と思います。
ジュンイチ:そうそう。居酒屋でよくある「とりあえず」で頼むのではなくて、「この枝豆が食べたいから頼む」という一皿ですね。それに須賀さんが言うように、農家が減っておいしい野菜を作れる人が減ってしまうという話は、米農家でも課題の構造が似ているんです。でも、おいしいものを知って求める人がいれば、結果作ろうとする農家も増えるので。
のりこ:だからこそ、「おいしいものを知っている人を増やす」というのは大事なんですよね。キリンシティさんのような企業が安定した需要を保証してくれるなら、農家さんも応えて頑張ってくれる。私たちはビールを飲みながら、消費者としての応援をいっぱいする。そうすればいい循環が生まれるでしょうし。
中島:そうですね。枝豆だけでなく、全国各地の生産者さんとお会いしていますし、需給バランスの条件が整ったいいものは、どんどんこれからも提供していきたいです。また、ぜひお二人にも召し上がっていただきたいです。
のりこ:なんだか、キリンシティさんって、そういったこだわりの打ち出し方が全体的に控えめですよね?もっとアピールしないと!
中島:僕らのシャイな部分が出ているかもしれません(笑)。みんなで話し合ってみます!