
長野県椀子での新しい挑戦。シャトー・メルシャンが見つめる日本ワインの未来
1877年に設立された『大日本山梨葡萄酒会社』を前身とするシャトー・メルシャン。日本産ワインの歴史とともに歩んできた同社は、「世界に認められる日本のワイン」をつくるべく、長きに渡ってブドウと向き合ってきました。
誕生から140年の歴史を積み重ね、2019年には長野県上田市の椀子(まりこ)に新たなワイナリーが完成。これまで椀子で収穫されたブドウは山梨県甲州市にある勝沼ワイナリーで醸造されていましたが、椀子ワイナリーが出来たことで、ブドウの栽培からワイン醸造およびボトリングまで全行程を同じ場所で行うことが可能となりました。
「ワイナリーというのは単なる生産拠点ではなく、人が集まる場所。だから、私たちは地元の方たちと一緒に椀子を盛り上げて、外からのお客さんも迎えられるようなワイナリーをつくりたいんです」
そう語るのは、メルシャン・マーケティング部の神藤亜矢と、シャトー・メルシャン椀子ワイナリーの小林弘憲。彼らはマーケティングと生産という両面からワイナリーを支え、地域と協力して椀子に新たな経済圏をつくることを目指しています。
収穫が最盛期を迎えた秋晴れの日。見渡す限りに広がるブドウ畑で、日本のワイン文化と共に歩んできたメルシャンの歴史や、椀子という土地の個性であるテロワール、地域と共に取り組んできた、世界からも注目されるフィネスとエレガンスをテーマにしたワイン造りへの想いなどについて話を聞きました。
【プロフィール】神藤亜矢
メルシャン入社後、1998年~1999年(約6か月)英国留学にてロンドンを中心としたイギリスにおけるワインビジネス及びマーケティングを学ぶ。帰国後マーケティング部で約10年間、輸入ワインブランドマネージャーとして、ロバート・モンダヴィ、コンチャ・イ・トロなどの新世界ブランド及びシャンパーニュ、カバ等、数多くのブランドを担当。2017年4月以降はマーケティング部にて、ポートフォリオの刷新、桔梗ヶ原ワイナリー、椀子ワイナリーの計画・建設に携わる。「日本を世界の銘醸地に」というビジョン実現のため、国内外でシャトー・メルシャンのブランディング活動を精力的に行っている。
【プロフィール】小林弘憲
1999年メルシャン入社。その後ワイン研究の道に進み、ボルドー大学やオーストラリア他、世界で醸造技術を学ぶ。2003年、甲州ブドウから今まで感じることのできなかった柑橘系のアロマを感じるキュヴェを発見し『甲州きいろ香』を生み出す。甲州ワインの特徴香の研究で博士号取得。2010年シャトー・メルシャン製造課兼技術係に着任。2017年から2年間、本社生産部を経験し、桔梗ヶ原ワイナリー、椀子ワイナリーの計画・建設に携わる。2019年4月より椀子ワイナリー長兼農地所有適確法人ラ・ヴィ-ニュ株式会社に従事。栽培から醸造まで一貫したワイン造り探究をする。
椀子にワイナリーができるまで
—最初に、椀子ワイナリーがつくられた経緯について教えてください。
神藤:私はもともと輸入ワインの部署で働いていて、世界各地のワイナリーに行っていたんです。その度に、「やっぱりワイナリーっていいなぁ」と思っていて。一面に広がるブドウ畑を眺めながら働けるのは、最高だなと。
それで、いつかはワイナリーで、それも日本ワインをつくっているワイナリーで働くことに憧れていたんです。
—輸入ワインから、日本ワインの仕事へ。
神藤:はい。ワイナリーって、単なるワインの生産拠点ではなくて、お客さんをお迎えして、おもてなしをする場所でもあるんですよ。
だから、地元の方たちと一緒に地域を盛り上げて、外からも人に来てもらって、ひとつの経済圏になるようなワイナリーをつくりたいという想いがありました。
—そういう光景を海外のワイナリーで見てきたんですか?
神藤:そうですね。最も影響を受けたのは、カリフォルニアワインの産地として有名なナパバレーです。
ワイナリーって、いかに効率よくワインを造り、経営として安定させて運営するかを考えなきゃいけないんですよ。大前提として、ワインを生産する場所なので。だけど、それだけが役目ではなくて、地元の人がブドウづくりに参加できる場所であり、そして自分たちが関わったワインをふらっと飲みに来る場所でもあり、そこを目指して都会から人が集まる場所でもあるんです。
—ワインをつくる場所であると同時に、人が集まる場所でもあると。
神藤:ブドウ畑を眺めたり、ワインを飲んだりしながら過ごしてもらって、それをきっかけに地域にも興味を持ってもらえたら、ワイナリーだけじゃなくて、その周辺の経済も潤っていくじゃないですか。ナパバレーは、そういうふうに盛り上がっていった地域なんですよ。
―ワインを出発点に、地域の産業ができていった街なんですね。
神藤:そういうことを日本でも実現したいなと思っていました。それで、ワイナリーリゾート構想というのを考えて、会社に提案したんです。
小林:当時、既に山梨県の勝沼にシャトー・メルシャンのワイナリーがありました。徐々にブドウの生産量が増えてきて、勝沼のワイナリーだけではキャパシティが足りなくなることが予想されたので、もうひとつワイナリーをつくろうという構想があって。
神藤:でも、私は、それに待ったをかけたんですよ。「それじゃダメ!」って(笑)。
―単に生産工場を増やすだけでは意味がないと。
神藤:そうです。それで、「単なる生産拠点ではなくて、とにかく地域の方と一緒に新しい経済圏をつくるためにやらせてください」と提案したら、会社が「やってみなさい」と言ってくれて。それで、小林と一緒にプロジェクトを進めることになったんです。
―小林さんも、そういうチャレンジングなことに取り組みたいという意思で、このプロジェクトに参加されたんですか?
小林:いや、僕は人事異動で。
一同:(笑)
神藤:こんなこと言っていますけど、実際、このプロジェクトを進められるのは、彼以外にはいなかったと思います。ワイナリーを任されるのって、相当の経験が必要なので。
だから、彼がこのプロジェクトに参加してくれて、本当によかったです。
小林:当時、私は生産部にいたので、ワインのつくり手という視点から様々なアイデアを提案しました。どうやったら美味しいワインを効率的につくれるかを、あれこれ考えて。
神藤:私はマーケティング畑の人間なので、売り上げとか利益を計算して、どうやってワインを売っていこうかということを考えました。
そうやって生産側とマーケティング側との二人三脚で、どうしたら地域と一緒に経済圏をつくれるかというイメージを膨らませていったんです。その提案が通って、椀子にワイナリーの新設が決まったのが、2017年のことでした。
100人の地権者の協力によってつくられた広大なブドウ畑
—ワイナリーを新設するにあたって椀子が選ばれたのは、どういった理由だったのでしょう?
小林:ワイナリーができる前から、私たちはこの土地でブドウをつくっていたんです。畑は2003年からスタートしました。
—この場所がブドウづくりに適した環境だったんですか?
小林:もちろん、土壌だとか気候といった基本的な条件がそろっていたというのはあります。
それともうひとつ重要だったのは、まとまった広さがあるという点です。この条件を満たす場所を見つけるというのが、なかなか難しくて…。今ではきれいなブドウ畑になっていますが、当時このあたりの土地は遊休荒廃地だったんです。
それを陣場台地研究委員会(この土地の有効活用を検討している委員会)の皆さんと旧丸子町(現在は上田市)の役場の方々が、地権者の取りまとめをしてくれて、私たちに貸し出してくれたんです。
神藤:この土地は1枚の畑に見えますけど、実は地権者の方が100人以上いるんですよ。それを上田市がまとめてくれて2003年からブドウ畑として活用できるようになり、土壌や気候など色々な条件がそろい素晴らしいブドウが生まれました。
—上田市と100人以上の地権者の方々が、この土地でブドウづくりをすることに協力してくれたってことですか?
神藤:そうなんです! 本当にありがたいことに。
小林:本当にありがたいですよね。しかも、ここにブドウ畑をつくるときにも、地元の方々が協力してくれたんですよ。植樹も一緒にやってくれたりして。
神藤:今も収穫の時期には、たくさんの方々が応援に来てくれているんですよ。
―地元の方たちが?
小林:東京や神奈川から手伝いに来てくださる方たちもいますが、地元の方が多いですね。
そうやって地域の協力を受けて、ここまでブドウ畑が広がっていったんです。だから、僕たちはワイナリーをつくることで、少しでも地元の方々に恩返しができたらなと思っています。
他所にはないブドウを育てる、地域の個性「テロワール」
小林:椀子ワイナリーができるまでは、この畑で収穫されたブドウは勝沼に送られて、そこでワインになっていたんです。勝沼には、いろいろな産地のブドウが入ってくるので、順番待ちになってしまう事もありました。
ワイン造りにとって収穫のタイミングは非常に重要なポイントです。なので、収穫したブドウはなるべく早く醸造する、いわゆる「ブドウには旅をさせない」方がいいんですよね。畑とワイナリーは、近ければ近いほどいいと思います。
神藤:ここから勝沼のワイナリーまでは、1、2時間かかりますけど、今は畑から醸造タンクまで1分みたいな距離ですからね(笑)。ワインづくりをするには、これ以上ない環境なんです。
小林:椀子にワイナリーができたことで、椀子ヴィンヤードでつくったブドウをボトリングするところまで一気通貫で、できるようになりました。これは、今まで協力してくださった地元の方々もすごく喜んでくれています。
—ここでつくられているブドウは何種類くらいあるんですか?
小林:白ブドウ品種が2種類、赤ブドウ品種が6種類の、合計8種類です。品種としてはメルローやシャルドネといった、欧州系のブドウを栽培しています。
―ブドウの品種は、日本でつくると別の味になるんですか?
小林:個々のブドウ品種で優良と言われているクローンを持ってきて育てるんですけど、日本と欧州では気象条件が違いますので、味も見た目も変わります。例えば、粒の大きさだったり、房の長さだったりとか。
神藤:そういう産地が持つ個性のことをワインの世界では、「テロワール」というんです。
小林:テロワールというのは、その土地が持っている気象条件とか土壌条件などを、すべてをひっくるめた個性のことをいいます。
例えば、椀子だったら強粘度の土壌が挙げられます。ここの土壌は、すごくカチカチの粘土で、雨が降ってもあまり水が染み込まないんです。そうすると、ブドウの木がなかなか水分を吸えなくなる。
だけど、ブドウにとって水分ストレスというのは非常に重要なんですよ。少ない水分で育ったブドウは粒が小さくて、味が凝縮した味わいになります。
—実は小さくても、味は濃くなるんですね。
小林:常に風が吹いているというのも、椀子ワイナリーの大切な個性です。風が吹くと何がいいかというと、房の周りが乾くのでブドウが病気になりにくいんです。
さらに、ブドウの房と房が風に揺られてぶつかるので、果皮が厚くなります。果皮が厚くなることで、力強い味わいのブドウになるんです。
—粒が小さくて、皮が厚くて、味が凝縮されたブドウができる。
小林:そうですね。もうひとつは、周りが360度山に囲まれているという個性です。これが天然のシェルターになっていて、あまり雨雲を寄せつけません。
これらが椀子のテロワールとなり、少しスパイシーなニュアンスが出たり、力強い味わいのブドウがつくられたりするのだと思います。ヨーロッパにも勝沼にもない、椀子だけのブドウが、この土地のテロワールによってつくられているんです。
日本ワインが世界に誇る「フィネスとエレガンス(調和のとれた上品な味わい)」
椀子ヴィンヤードは垣根栽培のため、地面にもしっかりと日があたる。そのため、良質で広大な草原環境が生まれ、自然環境保全に大きな意味をもつことも調査で明らかになっている。
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—この土地ならではのブドウを使用して、椀子ワイナリーではどのようなワインがつくられているのでしょう?
小林:昔は我々も、カリフォルニアのこんなワインがつくりたいとか、ボルドーのこういうワインがつくりたいといった気持ちがあったんです。
だけど、ボルドー五大シャトーのひとつ『シャトー・マルゴー』の総支配人だったポール・ポンタリエ氏がシャトー・メルシャンの醸造アドバイザーに就任してくれ、様々な意見交換とともに、目から鱗のようなことをいろいろ教えていただきました。
小林:まず、畑を見てとてもきれいに管理していることに感心し、「日本の皆さんはすごく勤勉である」とほめていただきました。それと同時に、自分たちのブドウをよく見なさいと言われました。
つまり、私たちが育てているブドウは、フランスのブドウでも、アメリカのブドウでも、オーストラリアのブドウでもない。日本のブドウなんですよね。その日本のブドウの持つ良さを最大限に活かすべきなんです。
小林:そのときに、我々が目指すワインの方向性として定まったのが、「フィネスとエレガンス(調和のとれた上品な味わい)」というテーマでした。
神藤:私たちは、それを「日本庭園のようなワインづくり」と言っています。
小林:日本庭園には、突出したものはないですよね。大きな岩がドーンとか、木がガーンとか、滝がダーンとか、太鼓が…
神藤:あのぉ、フランスのベルサイユ宮殿には、巨大なシンメトリーの建物があって、豪華絢爛な噴水とか、煌びやかな塔とかがあるじゃないですか。そういう突出したものはなく、だけど完璧に調和がとれているのが日本庭園。そういうことが言いたいんですよね?
小林:その通りです。
一同:(笑)
神藤:外国からのお客様は、我々のワイナリーを見て、仕事の丁寧さに驚かれるんですよね。ブドウ栽培にしても、ワインづくりにしても、「どうして、あなたたちは、そんなに細かいところにまで気を使っているの?」って。
小林:そういう緻密なワインづくりというのは、ひとつ日本ワインの特性で、他所にはない部分なんじゃないかなと思いますね。
―その丁寧さが、ワインのオリジナリティになりうると。
小林:そうですね。そういう丁寧な仕事が、「調和のとれた上品な味わい」に繋がっているので。
神藤:実際、外国のお客様には「フィネスとエレガンス」とか、「日本庭園のようなワインづくり」といったコンセプトに、すごく共感していただけるんです。
「あなたたちのワインは強くはないけど、とても整っていますね。こういう繊細で、緻密に計算されたワインは他の国では見たことがない」と言っていただくことが多くて、そこはすごく手応えを感じています。
―“調和”が個性として認められるって面白いですね。
神藤:そうですね。時代が、だんだんそういう風になってきているのかなというのも感じます。
―インパクトではなく、コンセプトへと。
神藤:おっしゃる通りです。15年くらい前までは濃いワインがみんな大好きでしたから。
だけど、お肉でも濃厚なソースではなく、塩とペッパーで素材の味を楽しむというような人が増えてきて、それと寄り添うようにして、ワインもエレガントなものが好まれるようになっている印象はありますね。
畑をつくってから、ワインができるまでの約20年間
神藤:ワインづくりにおいては、「はじめにブドウありき」というのが、我々の信念のひとつなんです。まずは、ここでとれるブドウの最大のポテンシャルを引き出そうと。
小林:「ワインづくりは減点方式だ」って言われるんですよね。つまり、ブドウの味わいは収穫された時点がピークだって。ですから、収穫の時期にはとても気をつけています。
神藤:その上で、我々ワインメーカーは、いかに減点を少なくできるかを考えながらワインづくりをしているんです。
小林:それとブドウをつくる上で、樹齢っていうのも実はすごく重要で。5年〜10年くらいだと、まだまだお子ちゃまなんです。
―古い木の方が、いいブドウが実るということですか?
小林:そういうわけでもなくて、ピークがあるんです。年齢を重ねると、木もだんだんと疲れてきて、ブドウが実りにくくなっていくんですよ。
日本のように雨が多い環境だと、ブドウ樹も40年〜50年となってくると、だんだんブドウの実がつかなくなってきます。ピークがいつ頃なのか見極める必要があると思いますが、充実したブドウの実をつけるのに、少なくとも15年くらいは必要かなと思っています。
小林:椀子のシャルドネも、収穫できるようになった最初の頃は、味わいの広がりが少ないかなと思ったんですけど、樹齢を重ねていくことで評価がどんどん上がってきています。
ここの畑がはじまったのが16年前なので、その頃に植えられた樹は、まさにこれから真価を発揮してくれるんじゃないかなと期待しています。
—ブドウの実がいい状態になるまで15年って、すごく長いスパンの話ですね。
小林:農業ですからね。やっぱり成果が出るまでが長いんですよ。
神藤:畑をまっさらな状態にしてから、苗木が届くまでに2年。そこから初収穫までが3年。その時点でもう5年かかりますから。
小林:さらに木が成長して、いいブドウが収穫できるようになるまでに10年。そこから熟成期間を経るので、赤ワインだったらプラス3年かかります。
―ワインとして世の中に出るまで、20年近くかかるんですね。
小林:ここの畑も、5年くらい前から本当にいいブドウがとれるようになってきて、ワインの評価も非常に高くなってきています。
―では、これからどんどんよくなっていくんですね。
小林:よくなるしかないです!
一同:(笑)
小林:ブドウとワイナリーの距離も近くなりましたし。
神藤:もう言い訳できないよね(笑)。
小林:大丈夫です(笑)。期待してください!
ブドウを育て、ワイナリーをつくり、日本のワイン文化を培っていく。
―椀子ワイナリーは今年完成したばかりということは、ここでつくられたワインはまだ世に出ていないわけですよね?
小林:ええ、まさに今収穫しているものが、椀子ワイナリーの初仕込みです。通常であれば、白ワインは秋につくったものを、6ヶ月くらい樽で育成させて、春頃にボトリング。そこから少しビン熟成を経て発売するような流れですね。
なので、順調にいけば今年つくった白ワインは、2020年のオリンピック前になんとか出せるかなと。赤の場合はもう1年間育成させるので、2021年になると思います。
―それはもう、地域のみなさんも心待ちにしてるんじゃないですか。ここでつくられるワインを。
小林:今はまだ、売っているワインも、勝沼ワイナリーで醸造したものですからね。それでも皆さん応援してくれて、遊びにも来てくれていますけど、それがいよいよ椀子ワイナリーでつくられたワインとなったらね。僕らも本当に楽しみです。
―いい乾杯ができそうですね。
神藤:ワイナリーができてから、地元の方たちが「ようやく友達を連れてこられる場所ができた」って言ってくださって。今までは畑を見るだけしかなかったけど、ここだったら親戚や友達を連れて、ワインを楽しめるって声がすごく多いんです。
小林:そういうことを言っていただけると、「ワイナリーがつくれて、本当によかったー」って思いますね(笑)。
神藤:ただ、ワインってまだまだ日本人の暮らしに寄り添った飲み物になってないと思うんです。
―ちょっと難しいというか、やや権威的なイメージはありますよね。
神藤:ですよね。だけど、ここには地元の方たちが、「ちょっと、あそこに飲みに行こう」みたいな感じで、ふらっとワインを飲みに来てくれるんですよ。それが、自然な風景になっていて。
改めて、「ワイナリーがあると、ワインも身近な存在として飲んでもらえるんだな」ってことを感じています。
小林:そういう感じで気軽に使ってもらえるのは、本当に嬉しいですね。構想の段階から、そんな場所になってほしいと思っていたので。
神藤:ワイナリーが身近な場所になると、ワインへのハードルももっとなくなっていくと思うんですよ。
「この前飲んだ長野のワイン美味しかったよね」みたいな気楽さでワインを楽しんでもらう。そういった体験をつくるのがワイナリーのミッションだと思っています。
―そういう気軽な体験は日本のワイナリーじゃないとできないですもんね。
神藤:そうなんですよ。フランスまで行こうと思ったら、10時間以上かかりますからね。
一同:(笑)
小林:だから、ワインへのハードルを下げて、もっと間口を広げて、みなさんに普段から楽しんでいただくっていうことをね、我々もやっていかなきゃいけないですよね。
―お客さんがふらっと来て、ワインを飲んでいくというのは、まさにハードルが下がっているという光景ですよね。
神藤:もっとそうなっていくように頑張りたいですね。
―ブドウをつくって、ワインをつくって、文化をつくっていくという。つくっているのはブドウであり、ワインですけど、目指しているのは、日本で当たり前にワインが飲まれる土壌だということなんですね。
神藤:気どらず自由に、ワインを飲んでもらえるようになってほしいなと思っています。
―今日のインタビューも、ワインを飲みながらやったらよかったですね(笑)。
小林:あー、それもいいですね! どうぞどうぞ、飲んでください(笑)。
文:阿部光平
写真:土田凌
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こちらでワイナリーの風景やシャトーメルシャンの活動をお伝えしております。
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【椀子ワイナリー】
【椀子ワイナリーワインツアー】
ワイナリーツアーは、畑、醸造施設、樽庫を見学した後、ワインのテイスティングを行います。お天気の良い日には“welcome”の気持ちを込めて、ブドウ畑での乾杯も!