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飲料から広がる絆。生産者と開発者が語る『小岩井 純水東北ミックス』への想い

被災地のみなさんが各地で立ち上げたプロジェクトと手を携え、継続的な支援に取り組んできた「復興応援 キリン絆プロジェクト」。その一つが福島県の果樹農家による「“桃の力”プロジェクト」との取り組みです。

そして、今年3月2日に発売になるのが『小岩井 純水東北ミックス』。東北6県の果物を使用したミックスフルーツ味の飲料(※)で、福島からは「キリン絆プロジェクト」でともに活動をした果樹農家の桃を使用しています。

農家のお二人と飲料の開発を務めたキリンビバレッジの社員が、この10年に築いてきた「キリン絆プロジェクト」、さらにはそれぞれの絆に対する想いを語り合います。

(※)果汁10%未満

たかはし果樹園代表の高橋賢一

【プロフィール】髙橋 賢一
たかはし果樹園代表/ふくしま土壌ネットワーク代表
福島県福島市にて「たかはし果樹園」を営み、福島市観光農園協会会長も務める。原発事故による風評被害を払拭するため、「ふくしま土壌ネットワーク」を設立。活動の一環として「“桃の力”プロジェクト -福島には本当のおいしさがある-」を立ち上げる。

果樹園きつない代表の橘内義知

【プロフィール】橘内 義知
果樹園きつない代表/ふくしま土壌ネットワーク 副代表
東日本大震災の前年である2010年、福島県福島市にて70年余り続く「果樹園きつない」を先代より受け継ぐ。同市の果樹農家である髙橋氏らとともに「ふくしま土壌ネットワーク」を立ち上げ、風評被害の払拭や福島産果物のPRに従事。

キリンの山岡加菜

【プロフィール】山岡 加菜
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 ブランド担当
2015年入社、名古屋支社営業部に配属。2019年より本社マーケティング部に異動し、主に小岩井ブランドを担当、開発にも従事。東日本大震災から10年の節目に発売される『小岩井 純水東北ミックス』では、企画から開発まで統括的に携わる。


心に響いた、被災地と手を携える協働姿勢

福島の果樹園代表二人

─東日本大震災の発生以降、キリングループではさまざまな支援活動を行い、キリンビバレッジも例外ではありません。

山岡:キリンビバレッジが本格的な支援活動を始めたのは、震災発生から半年後。弊社の主力である『午後の紅茶』を軸に、被災地の子どもたちをお招きした「紅茶で笑顔を。〈ティーパーティー〉」というイベントを開催したのが始まりでした。

以降、被災地の皆さんと手を携え、協働するような活動も行っています。2015年に発売した『小岩井 東北のおいしい果実Sparkling』も、その一例。東北6県の果物を使用し、売上の一部を復興支援金として寄付するという取り組みです。

キリンの山岡

髙橋:私たち「ふくしま土壌ネットワーク」がキリングループさんの支援に出合ったのも、2015年のことでしたね。

橘内も私も震災以前から、福島で果樹園を営んでいます。それが震災以降、原発事故の風評被害によって、消費者が離れてしまった。“果物王国・福島”として親しまれていたブランドに、大きな傷が付いてしまったんです。

そうした状況を打破しようと、当時若手だった県内の果樹農家が集まり、結成したのが「ふくしま土壌ネットワーク」。キリンさんが、私たちの活動に目を留めてくれたんです。

橘内:全国の皆さんに安心して、福島のおいしい果物を食べてもらいたい。“果物王国・福島”のブランドを復興させるべく、放射線量の測定をしたり、果物の洗浄を強化したり、その安全性をPRしたり。

必死に、地道に活動を続けていましたが、私たちの取り組みが本当に全国に届けられているのか、不安があったことも事実です。そうしたタイミングに出合ったのが、キリングループさんの支援活動でした。

復興応援 キリン絆プロジェクト

山岡:キリングループ全体で行ってきた「復興応援 キリン絆プロジェクト」ですね。一方的な支援ではなく、支援先の皆さんとともに地域の課題を解決していくことを大切に活動してきました。

髙橋:キリンさんが目を留めてくれたのが、私たちが取り組む「“桃の力”プロジェクト -福島には本当のおいしさがある-」でした。梨もりんごもさくらんぼも、福島にはおいしい果物がたくさんありますが、特に生産量が多いのが桃なんです。

このプロジェクトに対し、キリンさんは多くの支援をくださった。ただ、金銭的な支援以上にありがたかったのが、山岡さんのおっしゃった「被災地(支援先)とともに」というところ。まさに協働の部分です。

ポーズではない支援は、被災地に一生残り続ける

福島の果樹園代表二人

─キリングループの掲げる想いが、被災地の方にも伝わっていたのですね。

橘内:キリンさんとのお付き合いが始まった2015年には、復興の兆しが見えつつありました。大きくマイナスになっていた状況が、ゼロに戻りつつあったんです。でも、そこから何を軸に進んでいくことが、さらなる復興につながるのか。確固たる答えを見出せず、もやもやしていましたね。

そうした私たちにキリンさんは親身に耳を傾け、筋道を照らしてくれた。私たちが新たなスタート地点に立てたのは、キリンさんのおかげです。

髙橋:私たち農家はおいしい果物は作れても、その周知に関しては素人です。復興の先を目指す強い意思はあるものの、うまく言葉にできない。その点、キリンさんには広報のプロも、マーケティングのプロもいらっしゃいます。

私たちから具体的な言葉を引き出し、「今後も引き続き、桃を柱に活動を続けていきましょう」と背中を押してくれたのもキリンさんでした。単なるポーズではない、ひざを突き合わせるような支援は、福島の果樹農家に一生残り続けます。

山岡:被災地のみなさんと手を携え、一緒に課題解決に取り込むことはもちろん、解決できたら終わりにはしたくない。築いた絆をつなげ、未来にも価値ある支援をするためには何ができるのか。我々も悩み、模索してきました。

そこで今日、髙橋さん、橘内さんから「一生残る」というお言葉を聞くことができ、私たちは間違っていなかったんだと、胸をなでおろすような想いです。

東北との絆を込めた『小岩井 純水東北ミックス』

キリンの『小岩井 純水東北ミックス』

─福島の果樹農家とキリンビバレッジ。両者の絆がつながり、東日本大震災から10年の節目に発売されるのが『小岩井 純水東北ミックス』です。

山岡:『小岩井 純水東北ミックス』は、東北6県の果物を使用した飲料です。この商品の売上一本につき1円を、被災地の教育支援のために活用する取り組みも行います。

福島からは桃を選ばせていただきましたが、調達には髙橋さん、橘内さんにもご協力をいただきました。

正直、安易に「震災から10年の節目」という言葉を使うことに躊躇はありますが、消費者のみなさんに向け、あらためて東北に想いを馳せるきっかけを作りたい。そうした気持ちを込め、私が企画した商品です。

果樹園きつない代表の橘内義知

橘内:そうでしたか、山岡さんが商品を企画してくださったんですね。東日本大震災、そして原発事故から10年。私たちに東北の人間にとっても、これは一つの節目です。

震災発生からの数年間は、本当に苦しい毎日でした。今でも当時の苦しさがフラッシュバックすることがあります。それでも福島の農家の多くが苦しさを頭から外して、仕事に打ち込むことができています。震災直後からすれば、想像もしなかったことです。

髙橋:だからこそ、震災発生から10年という節目に、再びキリンさんからこんな風にお声掛けいただけたことに感激しましたね。

私たちはキリンさんからいただいた支援を一生忘れませんが、キリンさんも私たちを忘れてはいなかった。感謝の想いと同時に、奮起させられもしました。これからも変わらず、おいしい果物を作り続けねばいけない、と。

果樹園代表の山岡と『小岩井 純水東北ミックス』

山岡:ありがとうございます。『小岩井 純水東北ミックス』は、白桃を中心にしたミックスフルーツ味。桃の味わいをベースにした理由も、福島との絆にあります。私にそんな気づきを与えてくれたのは、まさに「キリン絆プロジェクト」の支援先の皆さん。

プロジェクトの一環として“キリン絆ボランティア”という従業員ボランティアに参加し、被災地にお邪魔した時のことですが、ビックリするくらい、現地の方々から感謝の言葉をいただいて。

キリンの山岡

橘内:そうでしたか。私たちは本当に、心から感謝しているんです。感謝というか、感謝と労いの両方ですね。遠いところから、どうもありがとう。この気持ちは、支援に来てくださる方が想像する以上に強いと思います。

山岡:はい、想像以上のものでした。私は入社から4年間、営業を担当していましたが、当時は目の前のお客さまとの絆を築くことに精一杯。キリングループではさまざまなCSV活動を行っていますが、私たちの取り組みが社会的な価値をもたらすなんて、どこか絵空事のように感じていたんです。

そうした疑心暗鬼を払拭してくれたのが、被災地のみなさんでした。かつての私のような営業担当にも、支援活動の意味やCSVの実現を自分ゴトとして捉えてほしい。実は『小岩井 純水東北ミックス』には、こうした想いも込めているんです。

飲料を通じ、東北が誇るおいしさを伝えたい

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─東北の農家さんの想いも、開発者の想いも詰まった『小岩井 純水東北ミックス』。お味はいかがでしょう?

橘内:発売前に試飲させていただきましたが、素直においしかったですね。すっきりした味わいなのに、大人しくないというか。

ゴクゴクと飲めて、なおかつ東北6県、それぞれの果物の味をしっかり感じることができます。白桃がベースとあって、私たちが手塩にかけて育てた桃も、いい仕事をしていますね(笑)。

山岡:「おいしい」の言葉を聞けて、本当にホッとしました。開発チームのみんなに伝えさせていただきますね。橘内さんのおっしゃる通り、果汁の満足感はありつつも、ゴクゴクと飲めるすっきり感が特徴です。同時に苦労した点についても、橘内さんが触れてくださいました。

白桃をベースにしながらも、りんご(青森)・山ぶどう(岩手)・和梨(宮城)・洋梨(秋田)・さくらんぼう(山形)、6種類すべての風味を感じていただくため、バランスの取り方には、かなりこだわりました。

『小岩井 純水東北ミックス』

髙橋:いや、本当に見事ですよ。特に桃に関しては、すっきりとした飲料に仕上げるのが難しい果物。桃の良さを打ち出そうとすると、濃厚な味になりがちなんです。それがしっかり桃の風味がしつつも飲みやすく、6種類の果物が、きちんと一つの味わいになっています。

それに東北地方の地図が描かれた、パッケージも素敵ですね。東北の人って郷土愛も、県同士の絆も強いんです。飲料を通じて東北6県の絆を表現していただいたようで、被災地の人間だけでなく、東北のみんながよろこびますよ。

山岡:東北の方の郷土愛の強さは、本当にそうですよね。小岩井ブランドの原点である、小岩井農場があるのも岩手県です。130年もの歴史がある小岩井農場の、素材への愛情・おいしさにこだわるモノづくりの精神に基づき、キリンビバレッジの小岩井ブランドも商品開発をしています。

『小岩井 純水東北ミックス』を通じて、小岩井ブランドの価値はもちろん、おいしい食材の宝庫である東北の魅力をあらためて伝えることができれば、開発者として、これ以上のよろこびはありません。

生産者も消費者も企業もつなぐ、絆という輪

『小岩井 純水東北ミックス』

─東日本大震災から10年。これはあくまでも節目であり、日々はこれからも続いていきます。

橘内:繰り返しになりますが、『小岩井 純水東北ミックス』の原料に私たちが育てた桃を使用していただいたことで、あらためて奮い立たされました。桃は生で食べていただく機会が多く、一切の誤魔化しが利かない果物です。

だからこそ、愛情を込めて栽培した桃は、飲料になってもおいしい。生まれ変わってもなお、おいしい桃の味を再確認することができ、髙橋や私だけでなく、福島の果樹農家全体が活気づき、日々の栽培に力が入るはずです。

髙橋:同時に震災から今までを振り返る、いい機会をいただきました。私たち福島の人間はこの10年間、震災の被害も原発事故の被害も、なんとしても次世代に残してはならないと働いてきました。

正直、私たちの活動が正しかったのか、今はまだ、正解とは言い切れません。それでも今回、飲料開発に協力できたことで、私たちの活動が認められたのではないか、という想いです。

キリンさんの支援を思い出すことによって、改めて私たち農家もしっかり期待に応えねばと襟を正され、さらに前に進んでいけます。

木になっているりんご

山岡:襟を正されたのは、むしろ私たちのほうです。『小岩井 純水東北ミックス』は東北の果物があってこそ。

東北のみなさんと弊社の絆が深まることはもちろん、この商品によって、全国各地のお客さまが東北に想いを馳せ、東北の果物のおいしさを実感くださるものと信じています。

このように生産者のみなさんにも、消費者の方々にも、そして弊社にも価値をもたらす飲料をつくることが、我々ができるCSV活動の一つだと感じています。お二人のお話を聞き、そう再認識させていただきました。

今回の学びをきっかけに、さらに生産地のみなさんとの絆を深め、その輪を広げ、飲料メーカーだからこそできる社会貢献を続けていきたいと思います。

▼東北とともに歩んだ10年間

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※本記事はキリンのwebサイト内「東北とともに歩んだ10年間」から転載したものです。

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