どんな未来をツクる?キリンの研究員たちに聞いた研究開発のおもしろさと、よりよい社会への想い
キリングループは、酒類・飲料を中心とした「食領域」、医薬品を中心とした「医領域」、健康課題の解決に貢献する「ヘルスサイエンス領域」の3領域で事業を展開しています。それらの事業を支えながら事業とともに成長してきたのが「研究開発」であり、キリンは7つの研究所で研究開発に取り組んでいます。
研究開発と聞くと、一見馴染みがないように感じるかもしれませんが、キリンの研究員たちが目指すのは「お客さまの未来・ライフシーンをよりよくするための研究」。
キリンの研究開発ってどんなことをしているの?研究のおもしろさってどんなところ?研究開発を通じて、描きたい未来とは?
そんな問いの答えとともに、キリンの研究員を紹介するショート動画連載企画「未来をツクる ~未来の◯◯をツクる人~」 がキリンホールディングスのXアカウントでスタートします。
それに先立ち、今回はそれぞれの研究所に所属する5名の若手研究員が集まり、キリンの研究開発が描く未来について語り合いました。
私たちが「キリンの研究員」になった理由
─本日は皆さん初対面とのことなので、まずは自己紹介をかねて、皆さんが「キリンの研究員」になろうと思った理由と、普段感じている「キリンの研究所ならでは」の特徴を教えてください。
落合(ヘルスサイエンス研究所):よろしくお願いします!今日は気合いを入れて新しい白衣を持ってきました(笑)。
私がキリンに入社した理由は、飲料だけでなく、さまざまな商品を世界規模で展開しており、だからこそ、より多くの方によろこびを届けられると思ったからです。自分がお世話になった先輩から「キリンは確かな技術力と、それを届ける力がある」と聞いたことも印象的で、そうした理由もあり、自分もキリンの研究員の一員になりたいと感じたんです。
キリンの研究所の特徴…。一言で言えば、「誠実さ」だと思います。お客さまに対しても、データに対しても、誠実に向き合う。出てきた課題をサイエンスで解決していくという誠実さが、キリンならではの姿勢なのかなと思っています。
天方(飲料未来研究所):おっしゃる通りだと思います。キリンは論理的に「この技術はこういう理由で効果がある」と技術の価値を伝えることを大切にしていますが、これはどの研究所でも共通していますよね。
僕は大学で微生物に関する研究をしていた経験を活かせる仕事を探していました。キリンが発酵やバイオテクノロジー分野で技術力の強みを持っていることを知り、自分も携わりたいなと思ったんです。発酵技術に関する仕事はほかにもありますが、自分が好きなお酒に関われることを魅力的に感じ、キリンを選びました。
國分(パッケージイノベーション研究所):技術の価値を裏付けるには膨大なデータが不可欠なのですが、データを取得するための研究を積み重ねるには、お金も労力も必要です。研究開発に力を入れ、確かなデータを収集し、それを商品の価値としてお客さまにしっかりと伝える。これはキリンらしい姿勢だなと思います。
私がキリンの研究員になろうと思った決め手の一つは、事業分野が幅広く、研究員としてもいろいろなことに挑戦できる環境があることでした。複数の分野に取り組むからこそ、見えてくるおもしろいことがあるのではと思ったんです。
佐伯(キリン中央研究所):私は中途採用でキリンに入社したのですが、研究領域や商品の幅広さ、そして挑戦できる環境は、私にとっても魅力でした。
前職では体外診断薬用の原料をつくる会社で働いていたのですが、その経験を活かし、キリンでは植物を用いた物質生産に関するプロジェクトで採用されました。 現在は研究領域が変わって、ペットボトルなどのリサイクル研究を行っています。
社納(バイオプロセス技術研究所):幅広い分野の研究と広いネットワークを通じて、さまざまな課題を見つけやすいのも特徴かなと。見つけた課題を研究で解決できれば、よりよい未来につながり、グループの利益にも貢献できると期待しています。
私がもともと所属していた協和発酵バイオでは、微生物を用いて生産された化合物の分子構造の推定や、その物質の定量法について研究をしていました。キリンに転籍した理由は、キリンのグループの広さを活用し、もっといろいろなことに取り組めると感じたからです。希望が通り、現在に至っています。
「酒造りの神秘」「課題の発見と検証」…今、研究がおもしろい!
─次はフリップボードを使って、お題に回答してもらおうと思います。最初のお題は「あなたが感じる研究のおもしろさとは?」です。一言で書いて説明をお願いします!
天方(飲料未来研究所):まずは、私から。「酒造りの神秘」と、洒落た言葉で書かせてもらいました(笑)。
私は飲料未来研究所で主にウイスキーの研究をしています。例えば、微生物を使って特徴的な香りを生成する発酵方法や、どのように蒸留すれば好ましい香りをより精製・抽出できるのか、また樽での熟成がどのように進むのかといった研究です。
特にウイスキーの熟成って、未知の部分が多いんですよ。「この樽の中に入れるとこうなる」という経験則はありますが、実際に樽の中で何が起こっているのかのメカニズムは解明されていないことが多いんです。
このような酒造りに関する「神秘」を少しずつでも解明したいと思い、入社1年目から研究開発に取り組んでいますが、まだまだ分からないことだらけ。そこが一番おもしろいところですし、情熱を持って取り組んでいる部分です。
社納(バイオプロセス技術研究所):私がおもしろいと思うのは、「解明」です。
品質管理室や製造現場から「分析が必要だけど、何をしたらいいか分からない」と相談を受けることもあるのですが、私たちは相談に乗りながら、どのような分析を行うべきか計画を立てます。分析を重ねて原因物質が「解明」できたり、それによって問題の再発が防げたりすると、心の底からよかったなと思うんです。
「解明」によって状況が改善し、安心安全につながることは、難解なパズルゲームを完成させたり、探偵として“真犯人”を突き止めたりするような達成感があります。この達成感があるからこそ、仕事を続けられていると思います。
落合(ヘルスサイエンス研究所):私は「挑戦」という言葉を選びました。
私はプラズマ乳酸菌に次ぐ免疫素材の基礎データの集積や、その素材の作用メカニズムを解明する研究に取り組んでいます。現在研究している素材は、それ自体は素晴らしいのですが、飲料などに混ぜると乗り越えなければならない課題が多くあるんです。このままでは商品化できないので、なぜそのようなことが起きるのかを正しく理解し、対策を講じる必要があります。
商品化のタイミングは決まっているため、スピード感を持ちながら、さまざまな仮説を立てて課題を抽出し、多くの実験を重ねていきます。この商品が世に出るかどうかは、自分たちの研究の成果にかかっているんです。研究員としての腕の見せどころだと思いますし、「絶対にこの商品をお客さまに届けるんだ」という強い使命感を持って日々研究をしています。緊張感はありますが、挑戦の日々にはとても大きなやりがいを感じています。
國分(パッケージイノベーション研究所):私が感じる研究のおもしろさは、「課題の発見と検証」です。
私は、PETボトル以外のPET素材からPETボトルを再生するケミカルリサイクルの技術開発や、包装資材に関わる新素材の研究開発に取り組んでいます。どの研究開発テーマでも、誰が何に困っているのかという具体的な問題は、自分たちで実際に手を動かしてみないと分からないことが多いんですよね。
実験や情報収集を重ねるうちに、「こういう技術課題があるから、まだ社会に浸透しないんだな」「こういう社会構造だから、リサイクル材料収集に工夫が必要なんだな」などと、課題が明らかになっていく。そうして発見した課題をどのように解決していくか、あらゆる方法を試しながら検証し、一歩ずつ解決していく過程にやりがいを感じます。
佐伯(キリン中央研究所):私は「自由な発想」が、研究のおもしろいところだと思います。
私もケミカルリサイクルの研究を行っているのですが、ペットのケミカルリサイクルと一口に言っても、アプローチの仕方は無限にあるんです。そのなかで、どんなところに着想して、課題解決をしていくのか。ここがまさに「おもしろさ」だと思うんです。
例えば、最近発表された論文や、埋もれていた過去の論文からヒントを得て、「これは使えそうだな」と思ったらその知見を試してみます。いろいろな研究や情報にアンテナを張り巡らせ、自由な発想で実験をしていく。これは研究の醍醐味ですし、おもしろい部分なのかなと思いますね。
若手研究員が研究の先に目指す「未来」とは
─続いてのお題は、「あなたが研究で目指す未来とは?」です。一言で書いて説明をお願いします!
天方(飲料未来研究所):「美味しさの感動を届けたい 」。これが私の目指す未来です。
「アルコールの適正飲酒」という酒類メーカーにとって重要な課題にも向きあわなければならないという前提ですが、世の中には感動するほど美味しいお酒があって。私自身、学会でスコットランドやアメリカに行った際、その土地土地のスコッチウイスキーやバーボンウイスキーなどのお酒の味に感動しました。自分も同じように、美味しさで人を感動させられるようなモノをつくりたい。そのための技術を生みだしていきたいと考えています。
社納(バイオプロセス技術研究所):私が目指す未来は、「安心安全」です。
私がやっている分析の仕事は、今開発している品目の安心安全な未来を担う重要な仕事だと思っています。特性が分からない未知物質の生成を製造プロセスの中で抑えられないと、何かしらの問題につながる恐れがありますから。
私の役割は、何かを付加価値として加えることではなく、リスクを回避することが主な目的です。つまり、何も問題がないことが価値であり、安心安全につながると考えています。キリングループでは、問題を絶対に起こさせないぞという強い意思を持って、日々の仕事を頑張っていきたいです。
國分(パッケージイノベーション研究所):私は「All PET to PET」と書きました。
PET製品はPETボトルだけでなく、卵パックや化粧品ボトルなど、さまざまな形で私たちの身近に存在しています。ただ、異なる用途のPET製品からPETボトルへの再生を行うことは、現在主流なリサイクル技術では難しく、最終的には廃棄されることが多いんです。
でも、私たちが実用化を目指しているケミカルリサイクルが成功すれば、すべてのPET製品からPETボトル等へ使用できる高品質な素材を再生することが可能になります。結果として、廃棄物を減らし、うつくしい環境を未来へつなげることができる。
ただし、この技術を実用化するには課題も多く、引き続き研究と開発が必要です。
社納(バイオプロセス技術研究所):人間に対するペットボトルの安全性だけでなく、捨てられたペットボトルを生物が呑み込んでしまう事例も多く見られるので、そうした観点からも、包装が担う責任も増しているのかもしれませんね。
國分(パッケージイノベーション研究所):そうなんです。リサイクル技術が進化していっても、材料が集まらず環境中に流出すると環境保全は困難になってしまいます。多くの方がPETボトルをきれいに洗ってリサイクルに出してくださっていますが、引き続きご協力いただくとともに、PETボトルやそれ以外の身近な製品についても、ごみではなく資源として循環させていけるような未来を目指していきたいです。
佐伯(キリン中央研究所):私の大きな目標は「地球環境の改善!」です。先ほど國分さんもお話ししていましたが、私もペットのケミカルリサイクルを通じて、地球環境の改善に貢献したいなと思っています。
現在はキリングループ内での技術の実装を目指していますが、将来的にはケミカルリサイクル技術が社会全体に貢献できるようになればいいなと。
例えば、海洋汚染やマイクロプラスチックの問題を解決するような技術に成長させたいなと思っています。キリングループでこの技術を実装できれば、その成果を社会全体に広めることができるだろうという期待がありますね。
落合(ヘルスサイエンス研究所):私が目指しているのは、「健康というよろこびを守り、つなぐ」ことです。
健康でいることの大切さやありがたみは、病気になって特に実感しますよね。ただ、病気になってから健康を取り戻すのは難しいこともある。だからこそ、キリンの商品を通じて、予防段階で皆さんの健康をサポートしたいです。
また、健康は自分一人のものではないと思っていて。自分が病気になると、周りの人たちも悲しみます。キリンの商品を通じて、みんなが健康というよろこびを共有できる世界を創っていけたらいいなと。価値ある商品があれば、周りの人にも勧めたくなりますよね。お互いに健康をシェアできるような商品を一つでも多く生み出したいと思います。
それぞれの研究所で切磋琢磨しあって、明るい未来へ
─最後に、座談会に参加して、皆さんいかがでしたか?
天方(飲料未来研究所):ふだんの業務では、ほかの研究所の皆さんと関わる機会が少ないので、今回は皆さんの研究や思いを直接聞けてとても楽しかったです。将来を見据えた長期的な研究をしている皆さんの姿や、その試行錯誤の過程を楽しんでいるところが印象的でした。
社納(バイオプロセス技術研究所):私は工場に隣接する研究所で働いているので、目の前の具体的な問題解決に注力していることが多いのですが、今回皆さんの広い視野や未来に向けた話を聞いて、とても新鮮でした。分野は違えど、明るい未来に向かって一緒に進んでいきたいと思いました。
國分(パッケージイノベーション研究所):私は皆さんの話を聞いて、諦めない気持ちの強さを感じました。研究開発は簡単な仕事ではなく、まだ実現されていないことをどう実現するか考えなければなりません。
例えば、「手間がかかる素材だけど絶対にお客さまに届けたい」「まだ分からないことが多いけど、おいしいお酒をつくりたい」といった強い意思が、未来を切り開く力になるんだなと。同じ会社でこんなに高い志を持った方々と働けることをうれしく思うとともに、私も諦めず頑張っていこうと思いました。
佐伯(キリン中央研究所):研究職は未来を創る仕事だと思っていましたが、具体的な商品や分析についての話を聞いて、市場に近い研究も盛んに行われているんだと再認識しました。それぞれの研究所が異なる役割を担っているなかで、自分が所属する研究所で何をすべきかを見直すいい機会になりました。
落合(ヘルスサイエンス研究所):今回の座談会で初心に戻ることができて、とてもワクワクしました。異なる研究分野であっても、同じ志を持っているからこそ、多様な商品が生まれているんだとあらためて実感しました。
こんなにさまざまな分野の研究所を持つ企業はあまりないと思うので、キリンのR&D全体で力を合わせ、互いに切磋琢磨すれば、何かもっとすごいことができるんじゃないかとワクワクしました。
それぞれの研究員たちが「ツクる」未来
今回は5名の研究員に、研究のおもしろさやそれを通じて思い描く未来について話してもらいました。
キリングループでは、社会ニーズや社会課題の解決に取り組むことで、社会的価値の創出と経済的価値の創出を実現し、社会とともに持続的な成長を続けていくCSV(Creating Shared Value)経営を掲げ、その実現に向け取り組んでいます。
広い研究領域を見渡しながら、よりよい未来を描き、人や社会の課題解決につなげるために日々取り組む彼ら研究員の姿は、まさにCSVの実践であると言えるのかもしれません。
これから、キリンホールディングスのXアカウントにて、ショート動画でキリンの研究員を紹介する連載企画「未来をツクる ~未来の◯◯をツクる人~」が始まります。
作る・造る・創る。その言葉にはさまざまな意味があり、その領域も一つではありません。本企画のタイトルにある「ツクる」という言葉は、多様な領域のなかでよりよい未来を見据えながら、価値あるものを生み出すべく、さまざまな工夫を積み重ねながらそれぞれの分野で前に進んでいく——。そんな研究員の姿を表しました。
サイエンスを通じて未来を「ツクる」さまざまなキリン研究員。彼らを通じて、少し先のいい未来を覗いてみませんか?
これから随時ご紹介していきますので、キリンホールディングスのXアカウントをフォローのうえ、ご覧いただけるとうれしいです。ぜひ、お楽しみに!