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オンラインでも五感で伝えたい。『KIRIN BEER SALON』第二期の前半を振り返って

昨年11月から開始した「KIRIN BEER SALON(キリンビールサロン)」の第二期。全5回のうち2回のイベントを現時点で終了しています。

今回のサロンはすべてオンライン。画面越しでも「五感」で楽しんでもらえるか。チームメンバーは半年以上の時間をかけて練ってきました。

2回目のオンラインイベントを終えた時、なんとも言えない達成感と高揚感が手元に残りました。それは講師の草野をはじめ、参加された皆さんの声から感じました。

今感じている手応えのようなものを残しておきたい。そう思い、草野に第二期でこれまで感じたことを書き留めてほしいとお願いしました。

草野からコメントが上がってきたのはその翌日。その文字数は5,000字にも及びました。そこには草野が第二期が始まるまで感じていた葛藤、オンラインイベント実施に至るまでの工夫の数々、そしてサロンメンバーへの想いがギュッと閉じ込められていました。

この熱量を留めておくのはもったいないと思いました。今回はそんな草野からの「手紙」をお届けします。

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【プロフィール】草野裕美
キリンアンドコミュニケーションズ株式会社 企画担当 ビールセミナー講師。キリンビール横浜工場をメインに開催している「キリンビールセミナー」で、講師としてさまざまな視点で“ビールの楽しみ方・魅力”を伝えている。

「やれないかも」から始まった第二期のキリンビールサロン

キリンビールサロン講師の草野です。キリンビールサロンの第二期が11月から始まりました。以前、第二期開始にあたっての気持ちをこちらでお話しさせていただきましたが、実際に第二期が始まって以降、現時点で今、私が感じていることをお伝えさせていただきます。

第二期について、私達が検討を始めたのは2020年の3月頃からでした。コロナの影響が強く出始めた時期で、第一期の最終回の開催延期を決めざるを得ないという状況の中でした。

「第一期も終了していないのに、第二期をやるのか?」
「開催するにしても、この状況の中、開催できるのか?」
延々とチームで論議が繰り返しました。

慣れないオンライン会議で、誰も喋らない重苦しい時間が続いた後、チームの一人が「いっそ今回は全部オンラインでやればいいんじゃない?」と呟きました。その意見を聞いた瞬間、「それだ!」と全員賛成し、一気にオンラインでサロンを開催する方向性が決まったのです。

会議の空気が一気に盛り上がったので、その場では言えませんでしたが、「私にできるのか?」と内心不安に感じていました。その時点で私はオンラインでの講義などは行った事もなく、社内にも事例や知見がほとんどなく、全く未知の世界に感じていました。そんな状態からサロンを作り上げて、果たして参加された方に楽しんでいただける内容をお届けできるのか、とても不安だったのです。

第一期の段階でサロンは素晴らしいコミュニティである事は感じていました。継続させたい気持ちが強い一方で、せっかくご参加いただく方々に良いものをご提供できないのであればやるべきではないという気持ちで揺れ動いていました。

私がそんな風に二の足を踏んでいる様子を見てか、チームの一人が、まずは一回完結型で定期的に開催しているキリンビールセミナーをオンラインで行ってみて、オンラインの可能性を探ろうと提案してくれました。

その方向性で話がまとまってからは目まぐるしく時は過ぎ、8月からサロンの前段として、オンラインでのセミナーが開始しました。いざセミナーが始まり、オンラインでのコミュニケーションを体験すると、感じた事がたくさんありました。

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毎回あれこれ話し合うキリンビールサロン立上げ当初からのメンバー齋木さん・平山さんと取材を受けた際の写真(写真提供:中山秀明)。取材記事はコチラ

「ひとりひとりが楽しむ」に「みんなで楽しむ」をプラスすること

ビールセミナーの参加者の大きな目的は「学び」です。そして基本的には講師と生徒という「一対n」の関係です。なのでセミナーをオンラインにした時も、参加者の方が内容に集中できるよう、基本的には参加者同士のコンタクトはしない仕組みを採用しました。

結果として、「学び」が主目的であるビールセミナーにおいては、人目を気にせず画面からの情報に集中でき、自分のペースで「ひとりひとりが楽しむ」ことができるため、オンラインはとても相性がよいと感じました

オンラインセミナーは成り立つことは感触でつかめましたが、サロンの魅力はやはり、5ヶ月間同じメンバーで交流することで生まれる一体感でもあるので、ここについては工夫が必要に感じました。

そこでオンラインセミナーでつかんだ「各自で楽しむ要素」は残しつつ、オンラインでも一体感の醸成をプラスすることができれば、サロン立ち上げの際の私達の想いの柱である、「それぞれの価値観を認める」「ビールを軸としたつながりを感じてもらう」ことにつながる気がしました。

五感に訴えるオンラインサロンを

オンラインセミナーと通して、サロンでやるべきことの輪郭が見えてきたところでひとつの目標を設定しました。それは「五感に訴えるサロンを目指す」というものです。

なぜ、このことを掲げたのかというと、人は「つながり」を意識するには五感の共有が大切とも言われていることを思い出したからです。

「見る」「聞く」は共有できる感覚であるので、共感が得やすい一方、「触覚」「嗅覚」「味覚」の共有はお互いの感覚を言葉に表現するのが難しいとされています。だからこそ、「触覚」「嗅覚」「味覚」を共有できると人は信頼関係、つながりを強く感じると、ある研究者は記しています。

私はリアルでのセミナーやサロンでこの言葉を実感することも多くあり、これまでは「触覚」「嗅覚」「味覚」を感じていただく場面をなるべく設定し、一体感の醸成を作るように心がけていました。

しかしながら、オンラインのコミュニケーションにおいて、このことは難しく、「見る」「聞く」にほとんどが集約されています。ですが、これを克服できればオンラインの良さである「ひとりひとりが楽しむ」に「みんなで楽しむ」が加わり、新しい時代のコミュニケーションの確立につながると思い、目標としたのです。

目標は決まりましたが、具体的な案については相当な検討を重ねました。

その中で、まず思いついたのは全員一緒の「お道具セット」を毎月送ることでした。イメージとしては、子どもの頃に毎月届くのを楽しみにしていた学習雑誌。あの封を開ける時のワクワクする気持ちを皆様にもまずは味わっていただきたかったのです。

その「ワクワク」感を五感を刺激することでさらに醸成させようと思いました。実際に手に取る感触だけでなく、香りも一緒楽しめるよう「ホップ」や「麦芽」などビールの原料を入れたり、ビールに使われる「ハーブ」「米」などの副原料と呼ばれるものなども用意しお届けしました。

また、全員おそろいのお道具として、グラスやオリジナルの栓抜き、保冷バック、試飲シートやバインダーなども届けました。サロンメンバーの皆様がこれらに触れたときに「一緒のものを使って学ぶんだ」ということを意識していただきたいと思ったのです。

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肝心のビールについては、キリンの商品だけではなくなるべく多様な味わいのビールを用意しました。その上でそれぞれの味わいについてどのように感じたかを話し合う場面を設けることで、参加者同士の価値観をシェアしやすくしたり、時には中身が見えない袋に「シークレットビール」を入れてお届けし、想像力を刺激させつつ事前のワクワクを演出したり、講義中も全員で同じメニューを料理して同時に食べることで一体感の醸成につなげるなどの工夫を施しました。

こうして「飲む・食べる・嗅ぐ」などの五感の要素を盛り込む構成とすることで、全員で「ワクワク」「ドキドキ」などの想いを共有しやすい空気を作り上げる工夫をしました。

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いつもサロンでチャットや配信を担当している同じセミナー講師の後藤さんと、カメラ割りなどついて打合せ

サロンチームの一人から言われたひとこと

一方、私達が第一期から一番大切にしている想いは「それぞれの価値観を認める」「ビールを軸としたつながりを感じてもらう」でした。その先に「ひとりひとりが楽しむ・みんなで楽しむ」が生まれると考えていました。

私の好きなビール

皆様と交流すると自然と笑顔になります

ですが、この想いから一瞬遠ざかりそうになってしまう時が私自身ありました。それは、あまりに段取りなどが多いオンライン配信のことで頭がいっぱいになり、プレッシャーに負けそうになった時でした。

いつものようにチームで打ち合わせをしていた際に「とにかく楽しもう!」とチームの一人がみんなに向けるように言いました。

私はその言葉を聞き、はっとしました。「みんなが楽しむ」にはまずは私が楽しまなくては。私には「ビールを楽しく語る」くらいしかできないのに、何をそんなに堅苦しくなっていたのだろうと我に返り、そこから細かなことを気にせず、自分らしくやってみようと腹をくくることができました。

手応えを感じた遠野との中継

こんな風に、第二期が始まるまでに気持ちの上で紆余曲折はありましたが、「形になってきたな」とようやく手ごたえを感じられたのが12月に開催された2回目のサロンでした。

この回は、一期生の希望者も参加が出来る回として、第一期にも設けたテーマと同じく「今日本のビールがおもしろい!~遠野・ホップの里からビールの里へ~」というテーマでお届けをしました。

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写真提供:名和実咲

ゲストの遠野の方々の素晴らしさやこの一年間でさらなる進化を遂げている日本のビール事情に感動しっぱなしで、あっという間に時間が過ぎ終了しました。

私は無我夢中でゲストの方々の話に真剣に耳を傾けていたこともあり、参加者同士のチャットなどをすべては見きれておらず、どの程度皆さんが楽しんでいらしたかはわかりかねる部分もありました。

終了後、参加者からダイレクトメールで「草野さんのビールが好きな気持ちが伝わった。好きを仕事にできて羨ましいです」と大変ありがたいメッセージが届きました。その直後には、当日オブザーバーとして参加されていたライターの方からも「ファンベースの手本のようなコミュニティですね」とのお褒めの言葉も届きました。

その後、運営側のメンバーから「みんなの一体感がすごかったです。お疲れ様でした!」というメールが来て、ようやく「うまくいったんだ」という実感が湧いてきて涙が出そうになりました。

私は、こんな周りの方々の温かな言葉を伺い、「ひとりひとりが楽しむ、みんなで楽しむ」を少しは体現できたのかなと思えました。

サロン第二期乾杯写真

「乾杯」の瞬間は「つながり」を強く感じ、ビールの力を感じる場面でもあります

「みんなで考える」でどんどん大きなうねりをつくりたい

サロン第二期の3回目が間もなく開催されますが、サロンという場をもっと良くしたいという気持ちがサロンチーム内でもますます高まっています。そのためにも私たちで何ができるのか、皆様からいただいたアンケートのご意見などをもとにあれこれと検討をしています。

アンケートには毎回びっしりと意見や感想を書いてくださる方が多く、具体的に「もっとこうしたらどうか」といったご意見も多くあります。そんな皆様からのご意見を目にし、私が感じているのは、サロンは「みんなで楽しむ」ために「みんなで考える」場でもあるということです。

一企業のイベントでそのような場を持てることは稀有なことだと思っております。そして、毎回参加いただいているサロンメンバーの皆様は、私にとって特別な存在です。

そのことを常に忘れずに、サロンという場を皆様と大切に育てていきたいと思っています。

サロンメンバーの皆様、どうか引き続きよろしくお願いします。3回目もまた、みんなで楽しみましょう!

表紙写真:名和実咲




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