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「遠野産」表記に込めた想い。発売から17年を迎える『一番搾り とれたてホップ生ビール』の誕生から今を伝う

岩手県遠野市で収穫された生ホップを24時間以内に凍結し、最速で仕込むことでホップのフレッシュな美味しさを閉じ込めた『一番搾り とれたてホップ生ビール』

鮮度のよいホップならではの香りとみずみずしさを堪能できる、1年に一度しか作られない、旬を味わうことができるビールです。

2004年、「ビールといえば苦味、コクかキレ」という認識が一般的で「香り」があまり重視されていなかった頃。『一番搾り とれたてホップ生ビール』誕生までには幾多の困難がありました。

そんななかでも特別な「一番搾りブランドの決定版」を目指したという開発背景を、当時『一番搾り』のブランドマネージャーを担当していた山田精二に聞きました。

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【プロフィール】山田精二
キリンビール株式会社企画部部長 兼 ブルックリンブルワリー・ジャパン株式会社代表取締役社長
1989年キリンビール株式会社入社。酒類、飲料のマーケティング部門を歴任。多くの商品、キャンペーン、店舗開発等を手掛ける。2020年4月からは、広島県のCBO(Chief Branding Officer)も努める。

『一番搾り』らしさとは。突き詰めた先にあった「特別さ」

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—山田さんは、2004年に発売された『一番搾り とれたてホップ』の開発を担当されたということですが、商品誕生の経緯について聞かせてください。

山田:『一番搾り とれたてホップ』の開発に至るまでの経緯は、『一番搾り』のブランドが歩んできた歴史と深い関わりがあります。

まず、2003年の春に、私は『一番搾り』のブランドマネージャーとなりその翌年には『一番搾り』にとって初となるリニューアルを行ったんです。これは結構大変なことで、数年前からリニューアルは考えていたのですが、お客様の声を聞くと「馴染みの味を変えないでほしい」という意見がたくさんあったんですよね。

—今の『一番搾り』で十分満足していると。

山田:そうです。ただ、2003〜04年頃になって、各ビールメーカーが次々と発泡酒の新商品を出してきたことによって、ビールが置き去りにされて悲しいとお客様が感じているという状況になってきました。

そこで、変化ではなく進化を目指して、「一番搾りを、もっと一番搾りらしくする」というコンセプトでリニューアルに取り組んだんです。

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—具体的には、どのような部分を変えたのでしょう?

山田:リニューアルにあたって、改めて「一番搾りとは何だろう?」を突き詰めて考えました。そこで思ったのは、やっぱり「特別なビール」ということだったんですよね。美味しいところだけを搾るって、特別じゃないですか。それこそが一番搾りらしさだよなと。

それは、心の琴線にも触れるものだと思うんです。私たちは初鰹や一番風呂、新雪が降り積もった場所に最初に足を踏み入れるとか、そういうのが好きじゃないですか。『一番搾り』にも、そういう魅力があるんじゃないかと思ったんです。

ー言われてみれば、そうかもしれません。

山田:そこが『一番搾り』の本質だと思ったんです。味でいえば、美味しいところだけを搾っているので、味わいがリッチで雑味がない。ブランドコンセプトでいえば、一番麦汁だけを搾ったという特別さがすべてを表しているんですよ。だから、そういう部分を意識してリニューアルを実施しました。

そうやって『一番搾り』本来の個性を突き詰める作業をして、その翌年に発売したのが「とれたてホップ一番搾り」でした。

ビールの“香り”にフォーカスした『毬花(まりばな)一番搾り』

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—『一番搾り とれたてホップ』が誕生する2年前に、前身である『毬花一番搾り』が発売されたとお聞きしました。『毬花一番搾り』についてもお聞かせください。

山田:『毬花一番搾り』は、キリンでホップの研究をしていた村上敦司博士が、「フレッシュなホップを使うと、これまでよりも香り高いビールができるはずだ」という考えのもとに作ったビールだったんです。

私も初めて飲んだときは驚きました。それまでのビールとはまったく違う香りだったので。当時から商品としては素晴らしくよくできたビールだったんです。

今でこそクラフトビール人気もあって、ビールも香りが注目されるようになりましたが、当時は「ビールといえば苦味」という認識が一般的でした。おそらく国産のナショナルブランドで、香りにフューチャーしたビールは、『毬花一番搾り』が初めてだったんじゃないかと思います。

ービールに「香り」という新しい評価軸を持ち込んだんですね。

山田:ちょうどその頃、私はいろんなビアフェスに足を運んでいて、個性豊かなクラフトビールをたくさん飲んでいたんですね。だから、“香り”に対する意識は常に頭にあったんです。

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山田:『毬花一番搾り』は2002年に発売されて、ある程度は売れました。だけど、本当の魅力はまだ伝わりきっていないと感じていました。

そもそも「毬花」ってちょっとわかりにくいじゃないですか。ビールに詳しい人なら、毬花はビールに欠かせない原料であるとわかりますが、一般的には馴染みのない言葉なので。だから、翌年から私が担当になったときにはすごく悩んだんです。

ーネーミングに、ですか?

山田:ネーミングはもちろん、中味についてもです。私としては、日本のビールでこんなにフレッシュなホップの香りを楽しめるビールはないと思っていたんですが、なかには「香りが強くて苦手」という意見もありました。そうすると社内でも議論になるんです。「香りが強いビールは受け入れられないんじゃないか?」って。

その翌年に少し香りを抑えた中味に改良したんですが、その結果、初年度よりも売り上げが落ちてしまったんですよね。

このことは今でもすごく後悔しています。中途半端なものを作ってしまったなと。ネガティブな意見を気にしすぎて、香りがいいと言ってくれるポジティブなお客様の期待を裏切る結果になってしまった。やっぱり『毬花一番搾り』は香りのビールだから、そこを突き詰めなきゃダメだったんですよ。

『毬花一番搾り』から『一番搾り とれたてホップ生ビール』への転換

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山田:2年目で売り上げが落ちたことで、当然のことながら「このままだと、来年は『毬花一番搾り』を出せない」という話になりまして。それで思い切ったリニューアルをすることにしたんです。

そのときにベースとなったのが『一番搾り』リニューアル時に辿り着いた「特別さ」という個性でした。その特徴を最大限に引き出した一番搾りブランドの決定版を作ろうと考えました。

—一番搾りブランドの決定版。

山田:はい。それで中味も、ネーミングも、パッケージもイチから考え直して、完成したのが『とれたてホップ一番搾り』なんです。『一番搾り』が持つ「特別さ」に、さらなる鮮度感を与えるために「毬花」という言葉を「とれたてホップ」に変更しました。

—「とれたてホップ」という言葉を使うことで、ホップのフレッシュさをさらに強調したわけですね。この変更を経て、お客さんの反応はいかがでしたか?

山田:とても反響があって売り上げもV字回復しました。それまで魅力を伝えきれていなかったので、わかりやすいようにリニューアルしたのが良かったんだと思います。それはやはり『一番搾り』のリニューアル作業をしっかりやったからこそ、できたことだったと思います。

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山田:ネーミングの一新と同じくらい大きな変更点がもう1つあります。『毬花一番搾り』のときには、缶に「凍結粉砕ホップ使用」と記載してあった部分を、『一番搾り とれたてホップ』にリニューアルした際には「遠野産ホップ使用」という表記に変えたんです。

ーそれはどういう意図だったんですか?

山田:「とれたて」って書いておきながら、産地を明らかにしないなんて地域に対して不誠実だと思うんです。

私自身、最初遠野に伺った際にホップ畑や風土を感じて「いいところだな」と感動しました。そうやって地元と触れ合う中で、ホップの力で生産地域を少しでも元気づけたいという想いが生まれたんですよね。

ただ、当時は遠野が日本産ホップの一大産地だとは一般的に知られていなかったこともあって、最初は“遠野産”ではなく“東北産”表記にしよう、という社内の声もありました。でも、私はホップ生産地としての遠野を知ってもらいたかったんです。だから、“遠野産”の表記を譲りたくありませんでした。

―そんな深い思い入れがあって「遠野産ホップ」の表記に変更したんですね。

山田:そうですね。地名を表記することで、遠野を知らない人が「どんなところだろう」と感じてもらうきっかけになる。それに、「とれたてホップ」という言葉でホップのフレッシュ感は伝わるので、“どこで穫れたか”という産地を表記することで、「とれたてホップ」という言葉の確からしさも上げたかったんです。

ー「確からしさ」ですか。なるほど。

山田:ワインでいう原産地呼称制度のようなものです。そういうことをきちんと示したいと思って、「遠野産」という文言を缶に入れました。

商品がお客様のものになったと思える瞬間

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ー現在、山田さんは『一番搾り とれたてホップ生ビール』と、どのような関わり方をしているのでしょうか?

山田:直接的に『一番搾り とれたてホップ生ビール』と関わっているわけではないのですが、日本産ホップのサスティナビリティに取り組んでいます。

—この『日本産ホップを伝う』という企画では、様々な方から日本産ホップは岐路に立っているというお話を聞いてきました。山田さんは、関わりの深い遠野産ホップについて、今後どうなってほしいという想いはありますか?

山田:去年、久しぶりに遠野へ行ったんです。そこでホップの新規就農者の方々がたくさんいるのを見て、すごく感慨深かったんですよね。『一番搾り とれたてホップ生ビール』の存在が、人や地域を変える一因になったように感じて。

よく「モノよりコト」って言われるじゃないですか。でも、我々はメーカーですからね。まず、いいモノを作ることが仕事なんです。モノがあるからこそストーリーが生まれるし、人の心も動く。「モノから、コト」ではなく、「モノも、コトも」なんですよ

そう考えると『一番搾り とれたてホップ生ビール』という商品を作れて本当によかったなと思います。

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山田:『一番搾り とれたてホップ生ビール』は、もう開発者たちのものではありません。岩手県の人たちのものであり、遠野の人たちのものであり、そして全国のお客様たちのもの。だからこそ、そういう方々を裏切れないという気持ちがあります。

ー商品がお客さんや地域の人のものになったと感じる瞬間って、どういうときでしょうか?

山田:お客様が自分のもののように、商品のよさを人に伝えている姿を見たときですね。そういう瞬間に、商品はお客様のものになったと感じます。

—なるほど。確かに遠野では、「『一番搾り とれたてホップ生ビール』は、遠野の地ビールだ」と言われていると聞きました。

山田:地ビールと呼ぶほど『一番搾り とれたてホップ生ビール』を応援してくださっていることを年々ひしひしと感じています。とてもありがたいことです。

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—現在、遠野市では「ホップの里から、ビールの里へ」というコンセプトを掲げて、様々な取り組みが行われています。先ほど山田さんは『一番搾り とれたてホップ生ビール』をきっかけに、遠野を元気づけたかったとおっしゃっていましたが、今のような状況になると想像はしていましたか?

山田:いや、ここまでのことは、さすがに想像できていませんでしたね。今の遠野は、当時の想像を遥かに超えています。

ホップの産地にクラフトブルワリーができて、ビールのおつまみ野菜である遠野パドロンの生産も行われている。『一番搾り とれたてホップ生ビール』ができた頃は、ビールを軸に活性化される姿まではイメージできませんでした。それどころか今は新規就農者もどんどん遠野に集まっていて、本当に驚いています。

—想像を超えた物語が現実に。

山田:だから、遠野はずっとホップの産地であり続けてほしい。100年後もホップを作り続けていてほしいし、それを使った『一番搾り とれたてホップ生ビール』も残っていってほしいですね。発売から17年目となる今年も心から楽しみにしています。

この時期にしか出会えない、旬の美味しさ

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2020年は、11月4日(水)より期間限定で発売される『一番搾り とれたてホップ生ビール』。今年収穫した遠野産ホップを24時間以内に凍結し、最速で仕込むことでフレッシュな美味しさを閉じ込めました。青草や果実のような新鮮でフローラルな香りが際立ちます。1年に1回しか出会えない限定ビールの美味しさを、ぜひお楽しみください。

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文:阿部光平
写真:土田凌
表紙文字デザイン:メイメイ






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