日々の対話と経験から思考力と専門性を高め、仕事に+αを【3年目の旗じるし vol.2】
多くの企業において、“新⼈” “新⼊社員”と認識されているのは、⼊社2年⽬までと⾔われています。つまり、社会⼈3年⽬はその枠から抜け出す年次であり、会社や上司からの期待値が⼀段上がるタイミング。
連載企画「3年目の旗じるし」は、仕事に慣れ、任せられる領域も広がり始めた社会人3年目の社員が、リーダーとの対話を通じて⾃分なりの新しい指針を見つけていく企画です。
第2回に登場してもらうのは、社会人3年目を迎えたキリンビール福岡工場の醸造エネルギー担当の安藝萌と、その上司である村田聡子。
女性で技術職という共通点を持つ二人が、お互いを重ねたり比べたりしながら、未来への展望を語り合いました。
岩手県遠野市でのホップの取り組みを知って、キリンに入社
─最初に、お二人がどのようなお仕事をされているのかを教えてください。
安藝 萌(以下、安藝):私は、ビールの中味を造る醸造部門で、麦芽とホップ、水を主な原料として、ビールのもととなる“麦汁”を造る工程を担当しています。
村田 聡子(以下、村田):私は、ビールの中味を造る醸造工程と、ビール造りに使用する水や炭酸ガス、電気などを供給するエネルギー工程の取りまとめをしています。
─お二人がキリンに入社した理由は何だったのでしょうか?
安藝:一番の理由は、キリンが掲げる「よろこびがつなぐ世界へ」というコーポレートスローガンに共感したことです。
私は東北にある大学の農学部に通っていて、授業で仙台工場の見学に行った際に、キリンが岩手県遠野市でホップの取り組みをしていることを知りました。それが、日本産ホップにフォーカスしながらも、未来の街づくりを見据えた取り組みだったんです。
モノづくりだけに留まらず、人や社会とのつながりを考えていくという価値観が素敵だなと思い、キリンへの入社を希望しました。
▼日本産ホップの取り組みに関する記事はこちら
─会社のビジョンやCSVへの取り組みが決め手になったんですね。
安藝:ほかにも、自分らしく挑戦しながら成長できる環境があるところにも惹かれました。入社前の説明会で出会った従業員の方のお話から、「多様性を重んじ、違いを力に変えていく」という価値観をキリンが大切にしていることを知ったんです。
そして、その価値観に従業員が共感しつつ、一つの方向に進んでいることを感じました。そんな雰囲気のなかでなら、私も自分らしく働けるかもしれないと思えたのも大きかったです。
村田:安藝さんの話を聞いていて、しっかりしているなと思いました(笑)。ビールって、生活必需品ではないけど、たくさんの人が嗜好品として楽しんでいるものじゃないですか。私はそういった、人を幸せにする商品を扱う仕事は楽しそうだなと思い、キリンを受けました。
あとは、私も学生時代に従業員の方々と話す機会があって、人の良さと雰囲気に惹かれたのも入社を決めたきっかけです。
個人の達成感から、チームでの成果に変化した仕事のやりがい
─安藝さんは入社1年⽬と3年目の今を比べて、会社やチームメンバーなど、周りから求められることに変化は感じますか?
安藝:感じています。入社1年目のときは、与えられた仕事をルールに則ってやり切ることが求められていました。
今は、全体の目標に向かってやるべきことを自分で考えて、チームメンバーに協力してもらいながら前に進めていくような役割も増えました。なので、これまでと比べて、前に立って引っ張っていくような役割を求められていると感じます。
─それによって、仕事のやりがいも変わりましたか?
安藝:入社1、2年目のときは、一つの業務をやり切れた達成感や、担当した商品が市場に出ることによろこびを感じていました。個人的な感情がやりがいになっていたというか。
最近は、単にモノをつくるのではなく、それぞれ商品の良さをしっかり理解したうえで、造り込んでいくことを意識しています。その試行錯誤をチームメンバーと一緒にしていくなかで、それぞれのビール造りに対する想いに触れ、目指すものが一致したときに、チームとしてのやりがいを感じるようになりました。
─逆に社会人3年目を迎えて、直面している課題があれば聞かせてください。
安藝:先ほどの求められていることの変化にも通じますが、社会人3年目になってからは、課題の本質を捉えたうえで、物事の方向性を決めなければいけない場面が増えました。
ただの作業であれば指示書に則って進めればいいですが、私たちの仕事は、何かを決めるときに今までの経験や醸造の知識を軸にして、課題の本質を抜け漏れなく見る必要があると思います。そんな不確実な状況が多いなかで、状況を俯瞰的に捉えて、これまでの知識や経験を軸に、自分の力で判断して前に進める力を身につけることが今の課題です。
自分で考える力を持っている人は強い。マネジメントで意識すること
─村田さんは、入社1年目や2年目の若手社員から悩みを相談されたとき、気をつけていることはありますか?
村田:なるべく答えは言わず、質問して本人の考えを引き出すことです。答えを伝えたとしても、それは私の答えであって、相手がどう思うかはまた違うと思うんです。なので、なるべく質問を含めた会話で、本人の答えに辿り着くようなコミュニケーションを意識しています。
安藝:村田さんに相談しているときは、ストレートな答えが返ってくるのではなく、それに辿り着くまでの考え方を教わっているなというのはとても感じます。それは、目の前の課題だけではなくて、また別の問題にぶつかったときにも応用できる力になるんだろうなと。
─前例のある問題の解決法を教えてもらうのではなく、課題に直面したときに、どう乗り越えるかの力を身につけているんですね。
村田:今までいろんな人と一緒に働いてきて、自分で考える力を持っている人は強いという実感がありました。だから、自分もそうなりたいし、メンバーにも自分で考えられる人になってほしいんです。
何でも答えを言ってしまうと、「答えを教えてくれる人」と思われて、自分で考えないまま頼られてしまって、それではよくないなと。
─村田さんがチームのマネジメントをするうえで、難しさを感じるのはどういう部分ですか?
村田:初めて部長補佐に就いたとき迷ったのが、メンバーにとって適切な負荷はどれくらいかということでした。負荷を与えすぎるのはかわいそうだと思って分担を減らすと、「あまり頼られていない」「仕事を任せてもらえない」とネガティブに捉えられることもあると知ったんです。
自分でやり切ったと実感できるくらいの適切な負荷がないと、仕事は楽しくないんだなと感じました。そのちょうどいいバランス感というのは、今でも本当に難しいです。
─適切な負荷って、人によっても違いますもんね。
村田:私もこれまでに多くの上司がいて、マネジメントの方法も人それぞれだったので、いろんな人のいい部分を参考にしながら、うまくマネジメントできるようになりたいです。
安藝:「うまくマネジメントできるようになりたい」というお話がありましたが、仕事面やメンタル面でも日々、村田さんに支えていただいていることを実感しています。
以前、新商品の醸造を担当したことがあったのですが、初回製造時に醸造途中のお酒の分析値が大幅に外れてしまったんです。何百キロもあるタンクに入っているお酒の分析値が外れると、すべて出荷できなくなってしまいます。だから、あのときは本当に焦ってしまって。
村田:すごく暗い顔をしていたよね(笑)。
安藝:もう本当に余裕がなかったです。商品をお届けできないというのは、工場として一番やってはいけないことですから。製造責任の重さを、身をもって感じました。
そんな状況でも村田さんは冷静で、対策を一緒に考えながら、落ち着かせてくれるような言葉をかけてくださったんです。それは今でも鮮明に覚えています。
─リーダーが冷静でいてくれると、周りも落ち着きを取り戻せますよね。
村田:あのときのことは、私もよく覚えています。その場でいろいろと判断しなくてはいけない状況だったので、何がダメだったのかを検証して、こうしたら立て直せるのではないかという仮説を立てて動きました。考えられるだけのことをやって、あとは祈りましたね。
安藝:それから、他のメンバーの方にも協力していただいて、なんとか無事に出荷できました。村田さんがいなかったらどうなっていたんだろうと思うと恐ろしいです。
あらためて、村田さんは本当にすごい人だなと。私も村田さんのように多くの経験を積んで、村田さんのような役割を果たせる存在になりたいと思います。
仕事に+αを生み出すための思考力と専門性を磨いていく。社会人3年目に掲げる旗じるし
─「3年目の旗じるし」という企画では、あらためてこれまでを振り返りながら、社会人3年目として掲げたい旗じるしを伺います。安藝さんが掲げる「3年目の旗じるし」を教えてください。
安藝:与えられている仕事のアウトプットに自分なりの+αを乗せて返せる人になりたいと思っています。その+αをどうしたら作れるのかは、まだはっきり見えていませんが、思考力と専門性が必要なのかなとは感じています。
思考力というのは、村田さんとの日々の対話で培っている課題解決に辿り着くまでの考え方を確立していくこと。専門性というのは、醸造の知識やビール造りに関わる経験を積んでいくことで身につけたいです。
そういった積み重ねを活かして、業務の中でPDCAサイクル(※)を回していくことが、最終的には+αで返せる人間につながっていくと思います。
─村田さんから見た安藝さんって、どういう人ですか?
村田:即断即決で動くというよりは、しっかりと自分の思想をもって動く人だと思います。私とは真逆かもしれない(笑)。
安藝:やりたいことを実現するために、逆算して、今やるべきことを考えたりします。この先も自分らしく働けるように、しっかり自分と向き合って、できることを増やしていきたいです。
村田:私は安藝さんのように、自分と向き合って振り返る時間をあまり作れていないので、素直に見習おうと思いますね。年齢など関係なく、本当に教わることが多いです。
─村田さんは、ご自身が入社3年目だった頃のことを覚えていますか?
村田:入社3年目は、ちょうど初めての異動を経験した年でした。最初に配属された栃木工場が閉鎖になっての異動だったので、人との別れも多くて寂しかったのを覚えています。
異動先では、入社3年目など関係なく、工場勤務経験者として見られていたので、期待に応えられず苦しんでいた時期でした。
安藝:それは初めて聞きました。村田さんにも、そんな時期があったんですね。
村田:それは、みんなありますよ(笑)。
自分の役割は、福岡工場の目標を現場に根付かせて、その先も続いていく状態にすること
─安藝さんに対して、村田さんが期待していることがあれば聞かせてください。
村田:私も3年目のときに初めての転勤を経験したので、きっと安藝さんも異動のタイミングがもう少しで来ると思います。なので、福岡工場でやり残していることがあれば、今のうちにやってもらいたいですね。
安藝:醸造部門の業務以外に、福岡工場全体のブランド育成活動のけん引役を担っており、その役割は重要だと思っています。
組織全員で、ブランドや品質コンセプトを理解し、技術力をもって、常によりおいしいビール造りを追求すること、それによってブランドの価値を高めることをブランド育成と呼んでいます。
中味造りに携わる醸造エネルギー部門はもちろんのこと、工場で働く一人ひとりが、自分の業務が最高品質のものづくりやブランド育成につながっていることを実感できるような状態をゴールとしているんです。
短期間で達成することは難しいですが、自分の役割は、ブランド育成に対する福岡工場の目標や方向性を現場に根付かせて、担当者が変わってもスムーズに続いていく状態にすることだと思っています。そこまではしっかりやり切りたいですね。
村田:会社としても力を入れたいことなので、とても意味のある仕事だと思います。昔はブランド育成というと、マーケティング担当が商品のブランディングや広告を考えていて、生産はそれを実際に商品として具現化するという役割分担になっていました。
でも、生産を担う私たちもキリンの看板を背負っているので、商品についてきちんと語れないといけないじゃないですか。理解したうえで、造るほうがやりがいをより感じられます。
工場で毎日ビールを造る人たちにブランドを理解してもらうためには、どうしたらいいかを考えようというのが、安藝さんが取り組んでいるブランド育成です。福岡工場ではもちろんのこと、異動した先でも、安藝さんにはその取り組みを続けていってほしいと思います。
─最後に、安藝さんは「自分が成長できる環境がありそう」というのが入社動機の一つだとおっしゃっていましたが、キリンには求める環境がありましたか?
安藝:人によって仕事の価値観は違うと思いますが、業務を通して挑戦したい人にはとてもいい環境だと思います。自分がやりたいと思ったことを伝えると、しっかりフォローしてくれる先輩や上司がいるので。
それにキリンは、ヘルスサイエンス領域など多岐に渡る領域があり、希望することもできるので、幅広いフィールドで活躍できる可能性がある会社だと思います。
─それはキリンならではですね。
安藝:学生時代の友人のなかには、新卒で入った会社で行き詰まってしまい、転職している人も結構いるんです。そういう話を聞くと、一つの会社にいながら、いろいろな経験ができるのは、本当に恵まれているなと思います。
なので、今後もキリンでたくさんの経験を積みながら、自分のやりたいことに向かって頑張っていきたいと思います。