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【キリンのグループ報 写心館#06】分かりやすく、正直でありたい

キリングループ会社全体の取り組みを紹介する社内報である、グループ報『きりん』。その中のひとつで、従業員の想いや活躍する姿を自分自身の言葉で伝える『写心館』というコーナーをnote上で公開しています。

連載の経緯はこちら

「キリングループにはさまざまな商品を製造する工場があるけれど、つくり手の想いはグループ共通なんだろうか」。新入社員の工場研修の時に出会った温かく、厳しい工場の従業員の方を思い出しながら、そんな疑問が湧いて、協和ファーマケミカルを訪問しました。「写心館」第6弾は、協和ファーマケミカルの製造部・製造推進担当として人の命を守る製薬作りに携わる新堂隼也です。

【プロフィール】新堂 隼也
協和ファーマケミカル 製造部 製造推進担当
2013年入社。製造部にて4年にわたり原薬中間体の製造を経験後、製造部 製造推進担当に異動。品質管理部や技術部での応援を経て、現在は新規品目の製造補助やトラブル対応、製造標準書の作成や原料変更時の品質評価などを行っている。

協和ファーマケミカルへ入社したきっかけ

少し言いづらいんですが、実は、就職活動中に目指していたのは公務員でした。面接の練習になればと思って、地元で就職するつもりだったので「高岡市だったらこの会社かな?」と、そんな感じで気軽に協和ファーマケミカルを受けたんです。

それで面接担当の方と話をしたら、びっくりするほど自分とマッチ!人事の方も優しくて。結局、公務員の結果を待たずに入社を決めました。あの時決めて良かった。悔いは全然ないです。本当に良い会社だと思います。

入社後はまず製造現場に配属されました。体動かすのは好きでしたし、高校は工業系のところだったので、工場の設備の大きさにびっくりして「すご〜い!」って大興奮(笑)。自分と年の離れた40〜60歳の先輩たちと一緒に働くのも新鮮で楽しかったですね。

技術開発と製造現場の間に立つ、通訳のような役割

協和ファーマケミカルでは、有機合成をベースとする技術を使って「原薬」「原薬中間体」を作っています。薬って、カプセルや錠剤に有効成分が詰められているじゃないですか。その有効成分が「原薬」で、その一歩手前のものが「原薬中間体」です。

僕たちが作った成分が製薬メーカーでカプセルや錠剤に固められて、患者さんに届けられます。

代表的な製品は、医薬品、ヘルスケア製品、化粧品に使われる「トラネキサム酸」です。工業生産に成功しコストが抑えられるので、実は世界でシェアNo.1を維持しているんです。

もう1つは、緑内障の点眼薬や陣痛促進・分娩誘発剤などに使われる「プロスタグランジン(PG)類」。これは作るのが難しい複雑な化合物なので他社がなかなか作りたがらないのですが、協和ファーマケミカルでは約50年前から研究を続けていて、世界各国の製薬会社に供給しています。

今、所属している製造部製造推進担当では、技術開発する技術部と製造現場である工場の間に立つ、通訳みたいなことをしています。

実験室で生まれた技術を工場でそのままやってみても、作る量が全く違うため有機合成の反応がうまく進まなかったり、実験室で簡単にできることが、工場ではすぐできなかったりします。

例えば溶液を混ぜるにしても、実験室ではフラスコを振ったら混ざるけど、工場のタンクは何百リットルもあるので、「混ぜる」といっても簡単ではなくて、どう混ぜるのかとか、工場の設備の能力や配置に合わせて考えなきゃいけないことがたくさんあるわけです。

なので、新規の品目を扱う時は、開発された技術を工場で再現するための方法を考え、それを言葉に落とし込んで「製品標準書」「製造指図記録書」を作成します。

それから、製造中にトラブルが起きたら、技術部門と製造部門の両方の話を聞いたり、データを分析して原因を探って、解決策を立てたり。自分でも実験室で手を動かして検証することもあります。結構いろんなことをする仕事で、事務棟、技術棟、工場と、社内のあちこちに出没します(笑)。

入社後に製造部を経験した後、半年ほど技術部で新規品目の開発に携わる機会がありました。今の仕事では双方の意見や困り事を理解して、噛み砕いてもう一方に伝える場面が多くあるので、その時の経験が役に立っています。

大切なのは正直に仕事をすること

仕事をしていて一番うれしいのは、新規品目の最後の品質評価でいい結果が出た時ですかね。ホッとします。ここを通れば製品化となりますが、だめだったら市場に出せなくなる大きな分かれ道ですから。

製薬メーカーさんも製品化に向けて準備をしながら、品質評価の結果を待っていることもあるので、プレッシャーもありますが、成功するととにかくうれしいですね。

人の生命を左右する薬に携わっているので、作り出す製品は最初もその後も完璧じゃないといけないんです。後で改善していけばいいとか、最初だけ良くて後はダメというのは、絶対にあってはならない。

だから誰がやっても同じ品質で安定して作れることが大事で、そのために分かりやすい製造指図記録書をどう作るか、そこがかなり難しいところです。

「製造指図記録書」は例えると料理のレシピみたいなもので、小麦粉100gを入れて、水を10g入れて…って「書いてあることを守れば誰でもできる」と言えるほどの分かりやすさを目指しています。

もっと言えば、軽量カップはこのサイズで、フライパンはテフロン加工のあるもの、と器具の種類まで指定します。

恥ずかしいんですけど、僕が新人のとき、酸性の材料をステンレスの容器に入れたら錆びることを知らなくて失敗したことがあるので。使う道具を明記するのも大事かなと。記録書で目指すのは、“ものすごく分かりやすいレシピ”です。

それから大切なことは、各工程で起きた失敗やトラブルを隠さないこと。工場で製造をしていた頃、先輩に「なんか違うと思ったらすぐ言え。絶対に怒らんから」と何度も言われました。この教えは今の仕事でも大事にしています。

人間ですから失敗したら、恥ずかしいし、知られたくない。でも、それでは安全なものは作れない。とにかく正直に仕事をすることが一番大事なんです。

人の生命を救うものを作っていることに責任と誇りを感じています。お店に並ぶ風邪薬を手に取ると成分表に「トラネキサム酸」の文字があって、「すごいものを作っているんだ」と実感します。

これからは、会社で作っている全ての品目について詳しくなるというよりは、まずは「この品目のことなら、新堂に言えば解決できる」。そんなふうに思ってもらえる “かけがえのない人間”を目指したいです。

そのために、言われたことをただやるのではなく、なぜこれが必要なんだろう?と常に疑問を持って、一つずつ解決していく。レベルアップしていきたいです。

以前、実際に使用されていたという巨大な陶器製のフラスコ。今ではすっかり玄関を飾るオブジェのようになっています。
2年前に建った新工場では様々な材質や容量の反応槽があり,溶液の性状や用途により使い分けます。製造中の品質管理が重要なため、溶液の色や温度をデータで細かくチェックしています。

グループ報編集部のあとがき

今回から、「写心館」の記事についてもグループ報編集部からあとがきをお届けします。グループ報は2021年からweb上に移管しましたが、webならではの仕掛けとして、それぞれの記事に従業員が「いいね」ボタンを押せたり、コメントができるようになっています。記事を通じて従業員同士のコミュニケーションがとれたらグループ内のコミュニケーションの活性化につながると思い始めたことです。

今回の記事は、グループ会社で作るものは違っても、「お客様のことを考えて品質本位でありたい」と話す新堂さんの熱い想いをグループ従業員に感じてほしいと思っていました。記事公開後、コメント欄にこんなメッセ―ジが入りました。

「人間ですから失敗したら、恥ずかしいし、知られたくない。でも、それでは安全なものは作れない。とにかく正直に仕事をすることが一番大事なんです 」同じグループで働く仲間として、なんだかとても感動して、元気をもらいました。ありがとうございます。

 つくり手の想いは、グループ共通に違いない、このコメントを読んで確信できました。

noteでお届けするグループ報「きりん」次回もお楽しみに!

グループ報『きりん』では着飾っていない話を、できるだけストレートに聞くことを心掛けています。

キリンのグループ報のコンテンツをnoteで掲載するこちらのコーナーでも、一般的に社外に向けた会社のメッセージとは少し違った一面をお届けします。

次回もお楽しみに!

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