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千歳市に根ざして50年。キリンビール北海道千歳工場が掲げる、地域密着型のワクワクする未来

北海道の玄関口である新千歳空港から車で20分。この地にキリンビール北海道千歳工場(以下、千歳工場)ができたのは、今からちょうど50年前のこと。ナイベツ川の湧水が流れる千歳市で、清涼飲料の工場として操業をスタートしました。

真っ白な雪に覆われた工場で、取材班を迎えてくれたのは工場長の宮﨑知宏。これまで6つのビール工場に勤務し、キリンヨーロッパでは代表を務めた経験もあります。

「千歳工場は規模が小さいからこそ、従業員一人ひとりの顔が見えて一体感がある。さらに、日々お互いに刺激し合うことが普通であり、ユニークでおもしろい」と話す宮﨑に、千歳工場の魅力や、工場全体で目指すありたい姿を聞きました。

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

【プロフィール】宮﨑 知宏
キリンビール株式会社 北海道千歳工場 工場長
1995年、キリンビール株式会社に入社。その後20年に渡り、生産本部で各地のキリンビール工場と本社にて勤務を経験。2015年にキリンヨーロッパ(ドイツ・デュッセルドルフ)の代表に就任。2018年に帰国し、デジタルマーケティング部、生産本部を経て、現在に至る。


フロンティアスピリッツを持ち、連帯感のある千歳工場

キリンビール北海道千歳工場

─千歳工場は今年で設立50周年を迎えます。キリンがこの場所に工場を建てた経緯を教えてください。

宮﨑:まずは水ですね。ビール造りにはやはり水がとても大切なんです。設備の洗浄にも大量の水を使うので、きれいかつ十分な量の水を確保する必要がありました。

千歳工場では「日本名水百選」に選ばれているナイベツ川の湧水を使用しています。北海道には昭和に選ばれた名水百選が3か所あって、ナイベツ川の水源は自然環境保全地区に指定されているので立ち入りが制限され、厳格に守られているんです。

そうやって守られているおかげで、自然そのままの原生林のなかで、すごくきれいな水が湧き出ています。味わいは柔らかく、夏でも冷たくて、とてもおいしい水なんです。

─そういう水が得られる場所として、千歳市が選ばれたんですね。

宮﨑:千歳市は北海道内でも雪が少なく、近くには苫小牧港もあるので、原材料を運ぶうえでのメリットもある土地でした。キリンが北海道の市場に進出していくにあたり、まず1975年に清涼飲料の工場としてスタートし、そのあと1986年からビールの生産が始まったというのが千歳工場の成り立ちです。

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

─宮﨑さんは、2024年3月に千歳工場の工場長に就任されました。これまで全国各地のビール工場を経験されてきた宮﨑さんから見た、千歳工場の特長はどんなところでしょう?

宮﨑:全国に9か所あるキリンビール工場のなかでは小規模な施設なので、従業員一人ひとりの顔がよく見えるのが魅力だと感じています。お互いの仕事を認識しやすく、コミュニケーションも密に取れるので、チームとしての一体感が強いですね。

こうした環境が、意見やアイデアを言いやすい空気をつくっていたり、前向きで挑戦的な姿勢につながっているのかなと。実際、新しい技術を率先して検証したり、何事にも積極的にチャレンジする気質の人たちが多いですね。

そもそも北海道は各地から多様な価値観を持つ人たちが集まっている土地なので、互いに協力し合いながら何かを成し遂げるという連帯感もあるように思います。従業員同士の連携が強く、温かい空気感があるからこそ、千歳工場ならではのオリジナリティを生み出せているのかもしれません。

キリンビール北海道千歳工場

─場内報として毎月発行されている『HASCUP ハスカップ』には、工場での取り組みの紹介や新商品の案内だけでなく、千歳工場を離れた従業員に話を聞く「あの人は今…」というコーナーもあって、すごく温かさを感じました。

宮﨑:工場を離れた人を追いかけ続けるなんて、あまりないじゃないですか。だけど、一度つながりを持った人とは工場を離れたあともつながっていたいという想いがあって、こういった企画も行っています。

─千歳工場を離れた人たちが現在の仕事や家族の話をされていて、年賀状みたいなページですよね。いい企画だなと思いました。

宮﨑:たしかに年賀状みたいですね(笑)。まさに、人と人の距離が近いからこそ生まれたコンテンツだと思います。

キリンビール北海道千歳工場内のSL
千歳工場敷地内に設置されているSL。 さらに、工場見学ツアーの実施や、北海道の素材で作られた料理とおいしいビールが楽しめるレストランも隣接している

50年かけて築き上げた、地域に根付く存在

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

─千歳工場は地域との関わりも強いと聞きました。具体的には、どのような交流をされているんですか?

宮﨑:昔は工場を解放してビアフェスティバルを行っていました。今も地域のお祭りやイベントには積極的に参加させていただいています。

「千歳のビールはキリンだよね」と言ってくださる方が多くて本当にありがたいですね。千歳の皆さんは我々に対してすごくアットホームに接してくれますし、50年間の積み重ねで地域との信頼関係を築けたんだなと常々思っています。

キリンビール北海道千歳工場

宮﨑:地域との関わりとして、「千歳キリンビール会」というのも定期的に開催しています。工場に原材料を提供してくださっているサプライヤーの方々や、市役所・市議会議員の方々、自衛隊の方々、ガスや電気などインフラ関連の企業、商店街の方々など、幅広い皆さんと一緒に、工場直送のビールを楽しむ会なんです。

ほかのビール工場でも同じような取り組みはしているのですが、大体年に1回か2回くらいです。だけど、千歳では年に5回ほど開催していて、毎回150名ほどが集まっているんですよね。先日でなんと483回目でした。50年前からやっていたとしても483回目って、計算が合わないじゃないですか(笑)。昔はもっと頻繁にやっていたんでしょうね。

私たちとしてもビールを通して地域の方々とつながりたいと思っているので、そこでビールを出したり、意見交換をしたり、新入社員を紹介したりしています。キリンのお客さまでもある方々のリアクションを直で見ることができる機会ですし、業種を超えてさまざまな人たちが集まるコミュニティのような場になっています。

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

宮﨑:また、千歳工場がある千歳市工業団地は、270社を超える企業が集まっています。企業間の横のつながりもあるので、昨年は千歳市工業団地に工場を置く食品メーカー4社(キッコーマン株式会社、フジッコ株式会社、カルビー株式会社、キリンビール株式会社)協同で『おいしさはっけんバスツアー』を開催しました。各社の工場を見学して、商品がつくられている様子を見てもらい、地域のことを知ってもらおうという企画です。

─楽しそう!工場がたくさんある地域ならではの企画ですね。そうやって企業間で連携できると、できることの幅も広がりそうです。

宮﨑:そうですね。本州と離れている北海道という土地だからこそ、他社との間にも「お互いに頑張ろう」という連帯感が生まれるのかもしれません。だからこそオープンな関係が築けるし、地域や他企業とのつながりも深まっていくんだと思います。

キリンビールの顔として、地域に見える存在。工場長の役割とは

キリンビール北海道千歳工場敷地内の景色

─宮﨑さんは、工場長の役割をどのようなものと捉えていますか?

宮﨑:社内に対しては従業員が働きがいを持てる工場にしていくこと、そして社外に向けては常にキリンビールという顔が地域に見えるよう、広告塔のような存在でいることが役割だと思っています。実際に工場長としての業務で固定のものは多くなく、工場のマネジメント全体を見つつ、環境変化に応じてしなやかに発想を変え、新しい取り組みに挑戦していくことが求められるポジションだなと感じています。

─工場長になってみて、これまでの宮﨑さんご自身の経験が活かされていると感じる部分があれば教えてください。

宮﨑:キリンに入社してからいろんな業務を担当しましたが、特に活かされていると思う経験は2015年にキリンヨーロッパの代表としてドイツに行ったことですかね。向こうでは営業とマーケティング業務を担当していたのですが、担当範囲はヨーロッパ、ロシア、中東までありました。その広い範囲で『KIRIN ICHIBAN※』を販売するのがミッションだったんです。

※海外で販売されている『一番搾り』

宮﨑:日本のビールである『一番搾り』の魅力をヨーロッパに広めていくことは、純粋におもしろかったですし、新しいことに挑戦できたのもよかったですね。

当時のキリンホールディングスの経営トップが「宮﨑くん、自由にやってみなさい」と言ってくださり、それがとてもうれしかったです。現地では多くの方に協力していただきながら、それまでになかった大型の広告キャンペーンを行うこともでき、とても盛り上がりました。

振り返ってみると私自身、いつも新しいことに挑戦したい気持ちがあるのかもしれません。人がアッと驚くようなことをやりたいんです。

「KIRIN ICHIBAN」広告キャンペーン
キリンヨーロッパ代表時代に実施した『KIRIN ICHIBAN』の広告キャンペーンの様子。パリの地下鉄ホームに大型の広告が多数設置された

─そうした挑戦の精神が、現在の工場長としての役割にも活かされているんですね。

宮﨑:そうですね。今も新しい技術を駆使して工場を進化させ、地域との連携も大切にしながら、常に新しいことにチャレンジしていきたいという気持ちでいます。その姿勢が、工場全体の成長や従業員の働きがいにもつながるといいなと思いますね。

従業員の皆で考えた「千歳工場が目指す、ありたい姿」

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

─「千歳工場をこんなふうにしていきたい」という、今後のビジョンがあれば聞かせてください。

宮﨑:千歳工場では、2022年から「ありたい姿実現ワクワクプロジェクト」というのを実施しています。これは従業員に “2042年のありたい姿”を募り、その意見をもとに工場が進むべき方針を決める企画です。

みんなからあがってきた意見を、「モノづくり」「地域コミュニティ」「働きがい」「地球環境」という4つのジャンルに分けてまとめたもので、その意見を集約してビジュアル化したのがこちらの絵です。

キリンビール北海道千歳工場のありたい姿のイラスト
従業員が描いた、「千歳工場のありたい姿」のイラスト

宮﨑:かなり味わいのあるビジュアルになってます。この4つのジャンルを簡単に説明すると、まず我々の製造規模は小さいので、モノづくり観点では技術力で勝負しなければいけません。ほかの工場ができないような技術を率先して試し、全工場への技術展開をリードしていきたいと思っています。

その次は、イラストにもあるようにお客さまが工場内にあるコテージで結婚式を挙げる、そんなアイデアも考えていて。23万平米ある広い緑地を活かして、人をたくさん呼び、地域に開かれた工場でありたいというビジョンですね。

─モノづくりの会社の展望として、コテージで結婚式というアイデアがあるのはおもしろいですね。

宮﨑:3つ目として、働いている人たちは充実した気持ちで、仕事や暮らしを楽しんでいる。そんな工場を目指しています。

最後に、環境問題への積極的な取り組みとして、カーボンニュートラルの実現を目指していきたいです。すでに工場内の電力はすべて再生可能エネルギーに切り替えました。

それと、ここは冬になると雪が降って、足場をつくりにくい状況なので、タンクの上を点検するためにドローンの活用も積極的に行っています。将来的には、現場の計器類を確認するために、ロボットの使用等もどんどん取り入れていきたいですね。

キリンビール北海道千歳工場

宮﨑:安全・安心で、おいしいビール造りというのは、もちろんこれからも変わらず続けていきます。そのうえで、地域の皆さんによろこんでもらえる取り組みとして、ビール造り以外にも何かおもしろいことができないかと従業員全員で考えているところなんです。

例えば、千歳工場は今年で50周年、新千歳空港は来年で100周年を迎えるので、一緒に記念商品をつくったり、地域の皆さんに還元できる活動をこれからもしていきたいですね。

やりたいことが盛りだくさんですね!宮﨑さんがおっしゃっていた、人との距離が近くて、チャレンジする姿勢があるというお話も、すべてこの絵のなかに詰め込まれているような気がします。

宮﨑:そうですね。みんなで考えた指針をベースに、これからの千歳工場をつくっていきたいですし、私自身、従業員から出てくるアイデアや提案をさらに膨らませて、常に後押しできるような工場長でありたいと思っています。皆が自由に意見を出し合い、それを実現できる環境をつくることが、私の役目ですから。

あとは、これからもしっかり地域と連携して工場の存在価値を高めていきたい。もっともっと「千歳にキリンの工場があってよかった」と思ってもらえるようになりたいですし、千歳から札幌圏内、そして全道でもシェアを伸ばしていけたらなと思っています。

キリンビール北海道千歳工場 工場長 宮﨑知宏

─未来の展望を語る宮﨑さんは、とても楽しそうですね。

宮﨑:足元のことをコツコツやるのも大切ですが、私は大きな絵を描いて、そこに向かっていくことが楽しくて。

千歳工場のように地域に開かれていて、新しい技術を駆使して、積極的にチャレンジしていくという姿勢があるのは、ものすごく強みなんです。それができる環境と人が揃っているので、これからも千歳工場の将来像を描きながら、ありたい姿の実現に向けて皆で進んでいきたいと思います。

文:阿部光平
写真:三村健二
編集:RIDE inc. 

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