業界のプロフェッショナルに聞く「ECビジネス」について byヤッホーブルーイング #外食レター #これからの乾杯を支える
4月15日に公開した「#これからの乾杯を支える」は、コロナ禍の中で苦しんでいる飲食店や生産者のために立ち上がった取り組みを、なるべく多くの方に広めたいという想いから始めました。
視線を内側に向ければ、キリンの商品を取り扱っていただいている飲食店様に対面している営業がいます。新型コロナの影響でお会いすることができない中、飲食店様のために何ができるかを考えすぐに実行に移したことは、より具体的で正しい飲食店関連の情報を“毎日”届けることでした。それが『外食レター』です。
これまでたくさん届けてきた『外食レター』ですが、少しでも飲食店の方のお役に立てればと思いレターの一部を転載することにしました。
今回は「ECビジネス」について、ECサイト「よなよなの里」を運営している株式会社ヤッホーブルーイング望月様にインタビューさせていただいた内容をお届けします。
※こちらの『外食レター』は5月26日に送られたものを一部改変しております。
ーEC事業を始めたきっかけは何でしょうか?
1997年6月(楽天市場オープンの年)に楽天に出店しました。当時はまだ世の中に「ネットでお買い物」の習慣がない時代。当時ヤッホーは創業まもない時期で、地元を足がかりに流通マーケットをこれから開拓しようとしていたんです。
ー自社のECサイトではなく、モール(楽天市場)での出店をした理由は何ですか?
当社の場合、早い時期のオープンだったのでモール出店以外の選択肢はありませんでした。モールの一番の強みは「集客力」です。
ECでは、指名買いや第三者推奨での買い物を除くと、大多数の方が使い慣れたショッピングモールで比較購買をする傾向があります。なので、購買意欲のある顧客がもともと集まっているモールに露出できるのは大きなチャンス。
デメリットとしては、出店や露出のためにかかるコストが挙げられますが、自社サイトを運用する場合も集客コストは必要、かつモールより難易度が高い場合が多いです。
ーECを始めるために必要な準備は何ですか?
出店先(自社orモール)と目指す規模によりますが、最小単位なら店長1名でのスタートが可能です。必要な準備は以下4つです。
自社の場合はこれらを自力で整える必要がありますが、モールならある程度パッケージ化されています。EC初挑戦の方は、一般的にオープンに数ヶ月を要するのではないでしょうか。
ー店頭での販売と比較して、EC事業だからこそ気を付けるべきことは何ですか?
顧客からすると、対面での説明がなく現物も見れないECは、店頭購買と比べ不安になるポイントが大変多いです。商品についてのしっかりした説明はもちろんの事、注文からお届けまでの流れ・配送までに要する期間・荷姿などの基本情報を分かりやすくお伝えし、不安を解消してあげることが大切です。
また、購入者のレビューを見て常に改善に取り組む事もお勧めします。こうした基本的な部分を押さえた上で、いかにWEBページ上で商品を魅力的に訴求できるかを追求することが重要です。
ー新規顧客へのアプローチで重要なポイントは?
型番商品が主体であれば登録商品を増やしてPR、オリジナル商品であれば購入ハードルが低い「入口商材」を準備してPR、というのが第一歩だと思います。
また、一度購入してくれた顧客に、定期的に次の商品をおすすめしていくとよいでしょう。息長く続けるために、店舗名や商品名をどれだけ顧客に覚えてもらえるか、最初から考えておくのが大事です。モールの場合、大概のお客様は「楽天で◯◯を買った」という具合に、店舗名を気にしていないか、すぐに忘れてしまいます。次に商品を買う時に思い出してもらえる事が重要です。
ーリピーター獲得・継続のために重要なポイントは?
一度でも商品を購入してくれた顧客を大事にしましょう。定期的にお店のセールや限定商品のおすすめなど、お客様が喜ぶオファーをする事をおすすめします。また、御社がすでにお持ちの顧客基盤(リアル店舗の来店者や常連さんなど)は、できるだけ最初からフルに活用できるよう考えましょう。
ーコロナの影響で、売上や購買行動に変化はありますか?
輸出や観光地のお土産需要などは急減速しました。一方で、家庭内需要は堅調に推移しています。対面で会いづらくなっているため、ギフト需要も旺盛な感触です。
ーコロナの影響を受けて、コミュニケーションやプロモーションで変えたもの、工夫したものはありますか?
料理とのペアリングや、ビールに関するうんちくなど、「ご自宅でのビールの楽しみ方」が増すような情報発信を心がけています。
ーこれからECビジネスを始める飲食店の方に、メッセージをお願いします。
飲食店がECを「一つの販路」として持っておく事は、普段会えない顧客を開拓できる事に加え、有事の際の販路分散など大きな意味があると思います。
ネットは常連の顧客の輪から始めて徐々にファンを拡大するためにも使えますし、一定数の商圏人口がある場合は、ジャンルの違う特徴ある店舗同志で協力して「お取り置き」のようなサービスもできます。
ECの苦手分野である「送料」負担を軽減したり、ネットワーキングを促進できる、リアル店舗ならではの施策があると思っています。
■今回のインタビューのポイント
テイクアウト・デリバリーに取り組む飲食店様も多いですが、その分競争も激しく、また、気温が上がってきている中で衛生面の管理も気になるところです。
そんな中、今後、EC(ネット通販)を1つの販路として持っておくことは、ビジネスのリスク回避としても有効なだけでなく、リアル店舗を持っている飲食店だからこその強みを発揮したコミュニケーション・施策がとれる可能性があります。
ECビジネスと聞くとハードルが高そうに感じられますが、やり方次第では店長1人で始められるとのこと。新たなビジネスの柱の1つとして、挑戦する価値はあるかもしれません。
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「外食レター」は以下マガジンにまとめています。こちらも併せてご覧ください。