自販機が防犯になる。地域の人と街を守る“目”になる「みまもり自販機」
「安全な街で安心して暮らしたい」というのは、どんな人にも共通する願い。地域で暮らす人々のための防犯活動は、市や町にとって大きな課題となっています。
「一企業として、なにか地域の安全のためにできることはないだろうか」。
キリンはそんな想いのもと、景観に溶け込みながら街の安全に貢献できる防犯カメラ付きの自動販売機「みまもり自動販売機(以下、みまもり自販機)」の設置を2018年から進めています。
「みまもり自販機」は、街の安全にどのように貢献しているのでしょうか。そして市や町内会、警察とキリンが連携することは、街づくりにどんな効果をもたらしているのでしょうか。
今回、設置先の一つである江の島近くの商店街「スバナ通り」を訪ねて、お話を伺いました。
景観に溶け込みながら、人々を見守る「みまもり自販機」
スバナ通りは観光名所・江の島につながる町のメインストリートで、平日・休日問わず地域の人や大勢の観光客でにぎわいます。2022年8月、ここに「みまもり自販機」が設置されました。
自販機には「みまもり」の文字が大きく掲げられ、商品サンプルの真ん中、ちょうど目の高さに小型の防犯カメラが取り付けられています。
「防犯カメラが稼働中であることが一目でわかるようにすることで、犯罪の抑止力が高まると考えています。この小さな高性能カメラ一つで自販機から見える広い範囲を撮影できます。夜の暗い中でも明るく撮影できるので、自販機周辺の様子を24時間わかりやすく録画してくれます」
(キリンビバレッジ・高井)
カメラの映像は、藤沢警察署を通じて地域の安全に役立てられています。
「自販機の近くで事件や事故があったときは映像が警察に提供され、スムーズに捜査が進むようになっています」
藤沢市に「みまもり自販機」が置かれた背景には、藤沢市が「防犯・交通安全対策の充実」を街づくりのテーマに掲げ、町内会と連携し、街の安全・安心の向上に注力していることがあります。
ここからは神奈川県藤沢市の鈴木恒夫市⻑、「みまもり自販機」が設置されているスバナ通り町内会の依藤光雄町内会会⻑を迎え、市や町内会が考える地域の防犯について話を伺います。
─藤沢市は街づくりのテーマに「防犯・交通安全対策の充実」を掲げています。市や町内会では、地域の安全のためにどのようなことをされていますか?
鈴木 恒夫 市長(以下、鈴木市長):市民の皆さんが安全・安心に対する関心が高いこともあり、LED防犯灯や防犯カメラの導入を積極的に進めてきました。具体的な施策として、防犯カメラを設置する自治会(町内会)に市から設置費を補助したり、駅前広場など人通りの多いエリアに市が直接防犯カメラを設置したりしています。
2023年11月現在では、約400台の防犯カメラが市内で稼働しています。
依藤 光雄 町内会会長(以下、依藤町内会会長):スバナ通りは江の島や片瀬海岸に近く、県外からの移住者も増えているエリアです。観光の方や地元住民など多様な方が行き交うため、小さいお子さんがいる世帯を筆頭に防犯への関心が高い方は増えていると感じます。
その声に応え、町内では市の補助を受けて30台ほどの防犯カメラを設置していますが、実際に犯罪の抑止力になっていると感じます。街の皆さんから「安心できる」という声も届いています。
─防犯カメラと「みまもり自販機」を併用することで、どのような効果が見込まれると思いますか?
鈴木市長:自販機は人から見えやすい場所に設置するものなので、人通りのあるところに「みまもり自販機」を置くことで、道行く人に安心感を与える効果はあると思います。また、「みまもり」とはっきり書かれていてわかりやすいですね。
依藤町内会会長:見た目は普通の自販機ですが、カメラがちゃんと付いてるのが一目でわかりますよね。
高井 美奈(以下、高井):ありがとうございます。自販機のデザインは、犯罪の抑止につながりやすいよう“カメラがある”というのを見た目でわかることも重視していますが、同時に親しみやすいイラストを入れたりカメラが目立ちすぎないようにして、街中に溶け込めることも意識しているんです。
鈴木市長:現在藤沢市内の町内会では、子どもたちの下校時に地域住民でパトロールをしたり、青パト(青色の回転灯を装備した自動車を用いて行われる防犯パトロール)の見回りをしたりといった自主的な活動があります。
そうした安全のための活動を、人手だけでなく「みまもり自販機」がカバーしてくれることで、地域の安心感の向上につながると感じています。
藤沢市、町内会、警察署、キリン。四者の協働がもたらすもの
─2021年に、藤沢市、藤沢警察署、町内会、キリンビバレッジとの四者で「安全・安心のまちづくりに係る協定書」が結ばれました。自治体と町内会と警察、企業が連携することで、街の安全・安心のためにどのようなメリットがあるのでしょうか。
鈴木市長:それぞれに専門性が違うので、「防犯」という共通した目的のためにお互いの強みをいかしながら取り組んでいます。
例えば、町内会では住民の方の経験に基づいた危険な場所や、地域の事情などの情報が共有されています。それをもとにパトロールがされていて、エリアに密着した防犯対策をとることができます。警察は専門的な知識に基づき、犯罪の抑止対策やスピーディな犯人検挙ができますよね。
藤沢市は防犯カメラの設置をはじめ、防犯や交通安全対策を充実させていく。
そしてキリンさんは、自販機の設置を通じて地域の見守りを進めていく。そのように、それぞれが役割を補完しあうことで街の安全意識や体感治安の向上につながっていくと考えています。
依藤町内会会長:おっしゃるとおりで、町内では住民同士で情報共有をしつつ、地域の中で死角をつくらないことを意識しています。夜もある程度の明るさを保つなど、街の人の声を聞きながら安全性を高める取り組みを進めています。
高井:万が一、街で事件が発生した際には、藤沢警察署が「みまもり自販機」のデータ提供をもとに、速やかな捜査に取り組むことができると聞いています。そういった事実も、藤沢市に住む方々の安心感につながってほしいと考えています。
地域防犯の模範に。「みまもり自販機」に期待すること
─これからどのような場所に「みまもり自販機」を設置していきたいですか?
鈴木市長:地域の方々が安心感を得られるように、人が多く集まる場所、また地元に密着した場所に設置していきたいですね。
依藤町内会会長:夜は明るい自販機が街角にあるだけで、犯罪の抑止力につながると思います。町内会としては暗がりをつくらないことも意識しているので、夜に人通りが少なくなる場所に「みまもり自販機」を設置していきたいですね。住宅街だと、日中はたくさん人がいても、夜になると静かになるエリアもあるので。
高井:そうですね。人が多く集まる場所はもちろん、昼と夜で人の多さがまったく違うところもたしかに安全性を重視すべき場所だと思うので、そういった場所も含め、今後も地域を見守る“目”として「みまもり自販機」を導入していただけるといいなと思います。
依藤町内会会長:最近このあたりは、お子さんも増えてどんどん賑やかな街になっています。一方で観光客など外からいらっしゃる方も多いので、「みまもり自販機」の力も借りながら、それぞれが安心して楽しく過ごせる街になったらいいですよね。
鈴木市長:キリンさんのような企業がこれまで培ってきたノウハウを市民の安全・安心を守る取り組みにつなげていただくことが、これからの街づくりにとって重要だと考えています。
─「みまもり自販機」について、他の市町村から問い合わせがあると聞きました。
鈴木市長:「みまもり自販機」の設置は、市のホームページなどでもお知らせしていて、これをご覧になった他の自治体の方から多くのお問い合わせをいただいています。市と町内会と警察、そして企業との連携による先進的な取り組みが実現できたことを、とてもうれしく思っています。
高井:キリンとしても自治体と協力しながら、「みまもり自販機」を通じて、街やそこに住む方々がより生活しやすく、安全に暮らしてもらえるきっかけづくりになればいいと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。