ビール造りの裏側の物語を見た東北大学インターンシップ生たちが考えたこと
仙台市・東北大学・キリンビールが連携し、「モノづくりの上流から下流までを見てもらうこと」を学生たちに体験してもらう、キリンビール仙台工場のインターンシッププロジェクト。
その様子をレポートしてきた「#杜の都のビール学舎」も今回が最終回となります。
今年インターンに参加した東北大学の5人の学生たちは、7月にキリンビール仙台工場でビールの製造方法や歴史を学びビールが造られる現場を見学。
8月にはビールの原料となるホップの生産地として知られる岩手県遠野市まで足を伸ばし、ビールを軸にして地域課題の解決に取り組む田村淳一さんのお話を聞きました。
9月、『一番搾り とれたてホップ生ビール』の仕込式に参加。
『一番搾り とれたてホップ生ビール』が発売される11月には、直接お客さまが手に取るお店とコミュニケーションを取る営業に同行し、売り場作りの体験も。
そして、再びみんなが集まった最終回の場に、note編集部も参加させてもらいました。
5人の学生たちは今回のプロジェクトを通し、どんなことを学び、体験し、考えたのでしょう。4ヶ月間のインターンシップを振り返りました。
一年に一度の『一番搾り とれたてホップ生ビール』の仕込式
遡ること、2か月前の9月末。5人はキリンビール仙台工場にいました。『一番搾り とれたてホップ生ビール』の仕込式です。
岩手県遠野市で収穫された生ホップを24時間以内に凍結し、最速で仕込むことで、 ホップのフレッシュなおいしさを閉じ込める『一番搾り とれたてホップ生ビール』は、鮮度のよいホップならではのフレッシュな香りとみずみずしさを堪能できるビールとなっています。
ホップは麦汁煮沸工程で投入されます。仕込式は、一年に一度のイベントということで、キリンビールの関係者のほか、遠野市、ホップ生産者、そしてさまざまな媒体の取材関係者も参加。その場にいるみんながホップの投入を見守ります。
使用するホップは、8月に訪れたホップ畑で見た日本産ホップの「IBUKI」。7月、8月に豪雨があったこともあり、生育が心配されましたが、農家さんたちが丹精込めて作業してくださったおかげで今年も素晴らしいホップが遠野から仙台工場へと届けられました。
通常のビールでは、ペレットと呼ばれるホップを熱風乾燥し粉末にしてから固形にしたものを使いますが、『一番搾り とれたてホップ生ビール』で使用するホップは鮮度を保つために、収穫後すぐに酸素を追い出したマイナス20度の冷凍工場へ移送。その後、24時間以内に急速凍結し、工場へと輸送されます。
「ホップはビールに香りや苦味を与えるビールの魂とも呼ばれる原料です。農家さんの熱い熱い想いが詰まった素晴らしいホップを凍結ホップにしていますが、我々はそれを溶かすくらいの熱い想いで醸造します」と、仙台工場の荒川工場長。
遠野ホップ農業協同組合の菊池一勇組合長さんも、「私たち生産者も毎年この時期になると、自分たちがつくったホップがこうやってビールになり、ビールを愛する消費者のみなさんによろこんで飲んでいただけるということを実感し、すごく感慨深くなります」と、コメント。
さて、ホップ投入のとき。この『一番搾り とれたてホップ生ビール』では、毎年、人の手により仕込釜へと投入されていき、このあと発酵の工程を経ておいしいビールになっていくのです。
緊張感漂う仕込式で、関係者の熱い想いを間近に感じたことで、インターン生たちはすっかり感動した様子。同時に、造り手の想いを多くの人々へ届ける広報という仕事に触れる経験にもなりました。
『一番搾り とれたてホップ生ビール』発売の時に立ち会い
インターン生たちは、11月2日に『一番搾り とれたてホップ生ビール』全国発売の日に営業に同行し、販売店で陳列作業の体験もしました。
「普段スーパーなどで見ているポップの飾りや売り場は、営業さんが作っているんだ」「何気ない会話からコミュニケーションをとっていて、心配りが行き届いてすごい!」と、営業の仕事内容に驚いたインターン生も多かったようです。
これまでの体験の中で、『一番搾り とれたてホップ生ビール』に対する想いや物語を知っていたこともあり、「お客さんが手に取る現場を間近で見た時、とてもうれしかった」という感想もありました。
ついに最終回!4か月を振り返る報告会
そして、いよいよインターン最後の回。
報告会のために仙台工場に訪れた学生たちと一緒に、この4か月間の体験を振り返り、そして『一番搾り とれたてホップ生ビール』で乾杯をしました。
普段は発泡酒を飲んでいるお父さんが、毎年『一番搾り とれたてホップ生ビール』の発売を楽しみにしていて、おいしそうに飲んでいたことがきっかけでインターンに参加したという加藤さん。
「今までなんとなくしかわかっていなかったビールの造り方を知ることができました。講習や飲み比べの体験、見学を通し、麦芽、ホップ、水、酵母など原料のこだわりに触れられる貴重な機会でした。
最初の工場見学の際に、『機械で造っているが、根本は生き物に頼った昔ながらの製造』という言葉が印象的で、記憶に残っています。工業製品だと思っていたが、一人ひとりの社員が五感を使って造っているんだなと。
父にもインターンの話はしていて、年末に帰ったタイミングで、一緒に乾杯したいと話しています!」と、感想を語ってくれました。
これから就職活動に挑んでいく学生たち。これまであまり触れることのなかった働く人々との交流のなかで、“仕事”や“働く”という価値観においても影響があったようです。
「お会いするキリンビールのみなさんが楽しそうに、やりがいを持って仕事をしている様子を見て、これまであまりポジティブに感じていなかった“働く”ということに対して、『自分なら何ができるだろう?』と積極的に考えられるようになりました。
さらに、五感を通してビール造りを体験したことで、すっかりキリンビールのファンになりました。女子会などでさまざまな味のあるクラフトビールを飲んだり、遠野でのホップ収穫祭に参加してもらったり、体験することでもっとキリンビールの広められるのではないかと感じています。自分の体験を伝えることで、ビールと心の距離を縮められるかもしれないと思っています」と、今野さんは教えてくれました。
今回のインターンで「自分が何をしたいのかを見つけたい」という想いから参加した内ヶ崎さん。
「インターンを通して、ビール製造過程、『一番搾り とれたてホップ生ビール』への熱い想いを知ることができました。その物語を家族に伝えたところ、家の冷蔵庫のビールがキリンビールばかりになっていました。それは、自分が好きになり、想いを届けることで相手に伝わるんだと知るきっかけにもなりました。
noteを通してインターンの体験を綴ったことで、自分の知った物語をどうしたら多くの人に知ってもらえるかを考える楽しみを知ることもできました。商品を手にとってもらうために伝えることの重要性も知れたので、今は、伝える仕事にも興味を持っています。
同時にすべての仕事がつながっていることも知りました。それぞれの仕事にやりがいがあるんだなあと。『自分にできるのかな?』と、仕事観が変わるきっかけにもなりました」と言っていました。
もともと研究で食や農、とりわけ有機農業に興味があったことから、「ホップ生産地から、醸造工程、広報、営業までモノづくりの上流から下流まで追うこと」ができる今回のインターンに参加した山田さんは、第2回で訪れた遠野で出会ったBrewGoodの田村さんのお話に刺激を受けたと言います。
「田村さんの大きなビジョン、熱量にとにかく圧倒されました。遠野にはじめて降り立ったとき、私の地元に似た過疎化が進む田舎なのかな?と言うのが印象でした。でも田村さんのお話を聞いて、地域の未来を考える人がいれば、その土地の未来は変わるのかも知れないと感じ、自分も街の未来に貢献したいと思いました。
地域創生もビール作り届くまでには時間がかかること、多くの人が関わっているということを知れました。このインターンを通して、社会人の心構え、働くということを考えるきっかけになったと思います」。
「僕は今回のインターンでの体験を通じて、自分自身の視野がいかに狭かいかということを感じた」というのは三浦さんの言葉。
「いつも同じおいしさのビールを味わえるという当たり前のことの背景には、さまざまな努力や想いがあるんだなあとはじめて知りました。
ホップの仕込式でも広報など多くの人に商品の魅力を伝える人たちがいることを知ることができたし、営業同行でも、自分が今まで考えていた仕事以上にいろいろなことをやっているんだということを現場で見学させてもらいました。自分が知らない仕事がたくさんあるんだと知ることができました」。
インターン生の報告を見守っていた荒川工場長は、「このインターンがはじまったのは2年前からです。今年はさらに進化して、遠野へ行きホップ畑を見てもらうことと、noteへ投稿してもらうことが加わりました。みなさんのnoteを読んでいるととても臨場感が感じられ、経験したことは強いんだなと、あらためて感じました。
営業同行してもらった体験談の中で、お店の人に慕われている、気配りが行き届いていたと感想を挙げてくれていましたが、それは社員一人ひとりがそれぞれの立場で「キリンビールだからできることというのはなにか?」ということと、いつもお客さまのことを一番考えているからなんです。それがみなさんにもそれが伝わったのかなと感じてうれしかったです。
ビールは、麦芽や酵母の生きる力でできている。そういった生きる力を使いつつ、いかにおいしくするかを、たくさんの人たちが考えて造っているので、今後もキリンビールを飲むときに今回の体験を思い出してもらえるとうれしいです」と語ってくれました。
報告会も無事終わり、最後の最後。
みんなで『一番搾り とれたてホップ生ビール』で乾杯!
「やっぱりおいしい!」「爽やかで、遠野で嗅いだホップの香りがする」「普通の『一番搾り』とも違う印象がするよね。甘い麦の香りもあるよね」「飲みやすいよね!」とつぎつぎと感想があがります。
「『一番搾り とれたてホップ生ビール』が発売した頃、母の誕生日だったのプレゼントしました。『おいしい!はじめて飲んだから、これからは毎年飲んで違いを確認したいと思う』と言ってくれたんです」と、三浦さん。
加藤さんも「インターンに参加していることを知って友だちが『一番搾り とれたてホップ生ビール』を飲んでくれたんです。これからも自分の言葉で、発信をしていきたいです」と語ってくれました。
ビールの向こうにある物語の一端に触れることができ、うれしいと語るインターン生たち。
これからの人生のなかでビールを飲むとき、年に一度の『一番搾り とれたてホップ生ビール』に出合うとき、遠野で見たホップのグリーンに染まった風景やこの4か月間で聞いたさまざまな熱いお話、働く人たちの表情を思い出してもらえるとうれしいです。