業界のプロフェッショナルに聞く「テイクアウト業態」について byFD BANK様 #外食レター #これからの乾杯を支える
4月15日に公開した「#これからの乾杯を支える」は、コロナ禍の中で苦しんでいる飲食店や生産者のために立ち上がった取り組みを、なるべく多くの方に広めたいという想いから始めました。
視線を内側に向ければ、キリンの商品を取り扱っていただいている飲食店様に対面している営業がいます。新型コロナの影響でお会いすることができない中、飲食店様のために何ができるかを考えすぐに実行に移したことは、より具体的で正しい飲食店関連の情報を“毎日”届けることでした。それが『外食レター』です。
これまでたくさん届けてきた『外食レター』ですが、少しでも飲食店の方のお役に立てればと思いレターの一部を転載することにしました。
今回は「テイクアウト業態」について、フードイベントの主催・プロデュースを手掛ける、株式会社FOOD&DRINK BANKの中野様にインタビューさせていただいた内容をお届けします。
※こちらの『外食レター』は5月8日に送られたものを一部改変しております。
ー御社主催の食イベント(食フェス)について教えて下さい。御社の役割は何ですか?
弊社主催の食イベントとして最大級は愛知県モリコロパークで開催された「全日本うまいもの祭り」(以下、うまつり)です。2013年より毎年GWに開催、約10万人以上を集客する食フェスです。弊社はイベント制作会社として、コンテンツ企画、出店者の募集と審査、衛生管理などの業務を担います。出店者ネットワークは、全国に300以上ございます。
ー食フェスで人気の商品は何ですか?
食フェスは複数名で来場されることが多く、かつ、「食べること」が目的なので、「シェア」できそうな料理が好まれる傾向があります。手分けして並んで様々な料理を持ち寄り、皆で少しずつ楽しみたいのではないでしょうか。イベントでしか食べられないものが人気です。不動の人気は「もちもちポテト(ロングフライポテト)」です(愛知県では)。いまだに、「タピオカ」もよく売れます。
ー人気商品の中でも特に行列ができるポイントは何ですか?
やはり、人気の商品はメディアで話題になっているものです。最近だと、「タピオカ」が顕著です。「北海道」をテーマにした食材や料理も人気です。それと食材だと「牛肉」や「牛タン」は強いです。
弊社主催の「うまつり」の場合は、ハンバーガー、ラーメン、カレーは意外と売れません。要因は、「シェアできない」、「一皿でお腹がいっぱいになりそうだ」と思われるからでしょう。また、奇抜な商品も売れません。味が想像できないからでしょう。
行列が行列を呼ぶという言葉もあります。行列ができている人気店で、お客様は買いたいと思うのでしょう。あまり推奨できませんが、あえてゆっくり調理して並ばせる店もあります。
ー行列ができる人気商品を開発するポイントは?
商品開発に力を入れているから売れているという印象は、正直少ないです。流行りものにすぐに乗っかっている店が強いですね。商品開発の技術力より、時代への対応力、柔軟性、スピード感が必要かもしれません。
それと、ターゲットにマッチした商品選択が重要です。ファミリーなのか、若者なのか、食イベントに集まる客層にマッチした商品開発ができる店が行列店になっていますね。
ー食ブースのPOP類で、お客様にアピールするポイントはありますか?
同じような商品でも、売れる店と売れない店の差が出ることが多々あります。一番は看板の見せ方です。遠くからもわかる大きな看板に、シズル感のある商品写真が鍵となります。
それと、キャッチーなコピーも鍵です。「〇〇第一位」、「限定」、「テレビで絶賛」などわかりやすいセールスポイントがあると強いです。ちなみに、「シェフの名前」、「東京の有名店舗」というのは、地方の食イベントではあまり売りにならない傾向が強いです。
価格帯は、500円前後が売れ筋です。お客様がお求めやすいプライシングなのでしょう。それより高いプライシングだと、高い理由が明確に分かる説明が必要になってきます。
ー会計当たりの単価を上げる工夫があれば教えて下さい。
食イベントでのテント出店は、1調理しかできません。フライヤーと鉄板のように2種の調理器具は不可なのです。そんな環境の中でも、メニューを複数用意し、「ついで買い」を促すことで単価アップを図っている店もあります。
肉まんやコロッケなど、その場で食べるだけでなく、お土産になるような商品を販売している店は、単価が上がりやすいです。
一番重要なのは、売り子さんのトーク技術。若いスタッフよりお喋りが上手なベテランのおばちゃんの方が売り込みが上手だったりします。
ー食イベント運営で特に気を使っていることは何ですか?
食中毒防止に向け、厚生労働省が定める食品衛生法を順守しています。食の楽しさを提供するイベントで食中毒が出たら終わり。お客様に「食の苦しさ」を提供することになりますから。食品衛生を徹底するため、独自の巡回衛生管理者を設置し、営業中も監視します。
ー飲食店がテイクアウトを行う際のアドバイスを、食イベントのプロの観点からお願いします。
家では「やりたくない」料理を提供すると良いでしょう。揚物や串焼きはその代表です。また、特別なタレやスパイスなど店独自の味を訴求するのも良いでしょう。
これから気温が高くなってきますので、店前で陳列販売している店は食中毒のリスクを絶対に気を付けるべきです。我々は、露店営業許可、移動販売許可、臨時営業許可等の方法で出店しています。最終調理工程で目の前で加熱が必須なので、米飯と生野菜、生物全般は禁止です。露店でライスものがなく焼きそばやお好み焼きが多いのはこれが理由です。米飯はそれだけ食中毒リスクが高いということです。
ラーメンにのせる薬味の葱ですら保健所から許可がおりないこともあります。八百屋から仕入れた生野菜を洗って提供するのはNG。次亜塩素酸ナトリウムで適切に消毒されたカット野菜ならキッチンカーではOKです(テントでは不可)。
あとは、カレーや煮込み料理も保健所の基準は厳しいです。しっかりと火入れしたとしても、昨日の残りを翌日使用するのはNGだと指導されることも多々あります。
地方自治体や保健所によって解釈が異なりますので、テイクアウトを始める場合には、管轄する保健所に事前相談するのが良いでしょう。
■今回のインタビューのポイント
食イベントのプロからみた飲食店テイクアウトの着眼点は、目から鱗でした。露店でライスものをほとんど見ないのは、食中毒リスクが高いからなのですね。お弁当を陳列販売している店は要注意ですね。
家ではやりたくない「揚物・串焼き」、家では味わえない「特別なタレやスパイスなど店独自の味」、それと「流行」にのった料理が鍵ですね。
コロナ自粛の中、スタミナ、免疫力アップ、ヘルシーなんかが流行ワードになるかも?店の特徴がアピールできる安全安心で美味しいテイクアウトメニューを開発できると良いですね。
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「外食レター」は以下マガジンにまとめています。こちらも併せてご覧ください。