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人生100年時代の健康課題とは?これからの健康経営を考える【CSVチャンネル vol.4】

「2027年にKIRINが世界のCSV先進企業となる」

そんな未来をイメージしながら、座談会・勉強会などを通じて、従業員がCSVを自分ごと化して考えていく過程をお届けしていく「CSVチャンネル」

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イベント募集時の告知バナー

今回はKIRINの掲げる「世界のCSV先進企業」に向けて、特に「健康」にフォーカスしたイベントを開催。さまざまな企業のマーケティングに関わりながら、健康経営の概念づくりにも邁進されてきたNPO法人健康経営研究所副理事長の平野治さんに、人生100年時代の健康課題について講演していただきました。

「健康」という広い領域の中で、社会にはどのような健康課題があるのか?なぜ今、健康課題が存在しているのか?さまざまな疑問を平野さんにぶつけてみました。

実施したイベントの様子を、キリンホールディングスCSV戦略部でCSVの社内浸透を担当する須賀がレポートします。それでは、よろしくお願いします。

【プロフィール】須賀 香菜美
2011年キリンビール入社、千葉支社営業部で業務用の酒類営業を経験後、2016年にCSV推進部(当時)へ異動。日本産ホップの持続可能性強化のプロジェクトなどに携わったのち、2021年からはCSVの社内浸透担当を務める。

企画実施までの経緯

キリングループが掲げるCSVパーパスの「健康」では、「健康な人を増やし、疾病に至る人を減らし、治療に関わる人に貢献する」ことを目指しています。

近頃、様々な場面で「人生100年時代」と言われていますが、そもそも「健康」という言葉がとても広く大きな概念だと感じていました。そこで少し調べてみると、WHOが以下のように定義していました。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」

つまり、イメージのしやすい肉体的な健康に加えて、社会的、そして精神的な健康も重要になっているようでした。

私自身、人生100年時代における健康課題は、肉体的なものを中心に想像していました。実際に、厚生労働省の調査によると、約75年後の2107年には主な先進国で半数以上の方が100歳よりも長生きする可能性があり、日本では2050年に平均寿命(女性)が90歳を上回る可能性があることが示されています。

世界の7割の人はいわゆる“生活習慣病”(非感染性疾患)で亡くなっており、そのリスクは不健康な食生活や運動不足、喫煙、そしてアルコールの有害な摂取などによって高まることもわかっています。

加えて、いろいろと調べていくうちに私たちは「肉体的な健康」だけではなく、「精神的な健康」の面でも社会に貢献できそうなことが分かってきました。

その1つのきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大です。世界各国では、新型コロナウイルスの感染拡大の前後で、精神疾患を抱える方の数が2倍以上に増加していることや、日本においても社会的孤立者の割合が増加していることなどから、社会とのつながりが分断され、精神的な健康面でも、満たされていない方が近年増えているのではないかと考えています。

このように、「人生100年時代」における「健康」の課題は、心身の両面で多岐にわたって存在しています。企業として持続的な成長を目指しながら社会に貢献してきたいと考えるキリングループは、このような社会の状況を踏まえ、どのようにCSV経営を推進していくのがいいのかを考えるべく、平野さんにお話を伺うことにしました。

ここからは、イベント当日の平野さんの言葉をお届けします。

【プロフィール】平野 治さん
株式会社H2O綜合研究所 代表取締役
医薬品や消費財のメーカー、鉄道会社のマーケティング支援に従事しながら、人的資本に早くから注目し健康経営の概念を構築。現在はNPO法人「健康経営研究会」の副理事長を務める。2020年7月には、「一般社団法人わーくふるねす」を設立。


社会構造の変化が「健康」に与えた影響

現代社会は、1790年頃からの産業革命に始まり、機械化や工業化をすることで成長を遂げてきました。エネルギー産業、さらにはIT産業の大きな飛躍がある中で、今までは目に見える工業を中心とした産業の進化や変化の中で、経済発展を基盤に社会を発展させてきました。しかし、ここ数年のテクノロジーの変化は設備や機器だけではなく人や情報などによるものも大きく、人々の暮らしに大きな影響を与えています。それにも関わらず、その変化が見えにくくなってきたこと自体が大きな転換点だと考えられていました。

新型コロナウイルスの感染拡大以前から人々のコミュニケーションの取り方が大きく変化してきたと考えています。それはスマートフォンやインターネットの存在です。

昭和の時代は、例えばお茶の間で紅白歌合戦などを見るなどのテレビを囲む姿はとても自然な家庭の光景でした。しかし、インターネットおよび携帯電話やスマートフォンの普及率が上がり、ネットでの交流などが増えました。その影響で、高齢者やお母さん世代など多くの世代でコミュニケーションの取り方が変わり、希薄になった印象があります。

ITが人々の生活を豊かにすればするほど、フェイスtoフェイスのコミュニケーションは明らかに減少し、片側通行の情報伝達が多くなり、他人と何かを議論する機会も減ってしまいます。

世の中の構造、つまり社会がシステム化や効率化、合理性を追求する中で変化しているのに対し、人間の元来持っている感情や生活のリズム、自然を感じることなどとの間にギャップが存在するようになったのではないか?そしてこれらこそが健康を害している1つの理由や証になりうるのではないか、と私は考えています。

人は感情が行動を左右します。人間は交わることで新しいものが生まれる、だからこそ、「一緒に」や「みんなで」、「集まる」「楽しい」「面白い」「嬉しい」などの感情を大事にしていかなければならないと考えていますし、それらが「ココロの健康」を支えているものだと思います。

ビジネスとしての健康経営

人々が健康であることは、ビジネスの観点からも重要です。健康経営を一言で言うと、「人という資源を資本化すること」です。人的資源=コスト(費用)から、人的資本=キャピタル(資本)へと考えを転換させることが重要だと考えています。

今、日本は少子高齢化社会へ突入していますが、広い視点で見ると日本が強い国であるためには、生産性を高めていくことは必須であると考えています。そのためには、人を資本としてとらえ直し、新しい企業価値を創造するための投資と考えることが大切です。会社の資本=社会の資本と考えることで、企業が社員のパフォーマンスを引き出していくことがとても重要視されていると思っています。

人と事業(会社)と社会が密接につながっている現代で、パーパス経営の実践やエシカル観点での人と社会との共創、SDGsへの貢献、などの“持続性”に注目が集まっている今だからこそ、それらを実現する働く人の心と体の健康はとても大事なことです。

Work Life Balance から Work in Life へ

これからの時代は生き方の中に仕事が含まれる、いわゆる“Work in Life”な働き方が主流になるのではないでしょうか。兼業・副業が当たり前の社会に近づき、今までのように企業に勤め、時間で切り、管理される働き方型ではなく、自分が居心地のいい生き方や働き方を選択する、つまり仕事は人生の中の一部分であるという考え方が広く浸透していくのではないかということです。

Work in Lifeな社会では、IKIGAI(いきがい)がとても大事になってきます。ある地方の話ですが、クリニックの待合室に「ここは○○さんの席」のような約束された場所があるそうです。長く生きる時代の中で、病気になってしまうことはあるかもしれない。でも、その中でも自分の居場所を地域社会の中に見つけることで、ココロは健康でいられる。そんなことを考えると身体的な健康だけではだめで、精神的な健康や社会的な健康もとても重要になってくるのではないかと思っています。

長い人生ですが、100年生きると年々寂しさはもしかすると増えていくかもしれません。仕事をしているといろんな出会いがあったりしますが、仕事を辞めてしまうと関係性が希薄になり孤独感などが増してしまうことも考えられます。

そういう意味ではやりがいのある仕事が生きがいになっているような働き方が理想だと感じます。そのためにも、会社の中の仕組みで何かするだけではなく、自分の場を外に置くことを考えることが重要です。
もちろん会社の制度として兼業副業を実現することは重要ですが、自己実現はバラバラな中で、従業員が主体的に自分の幸せを感じとることが、とても大事な気がします。人それぞれ幸せの形が違う中で、「自分の幸せは何だろう?」と、探していくことが大事ですし、それらを仕事の中でも感じられるようになると、ベストだと感じます。

お話を振り返って。 Work in Lifeな世の中で、私たちは何を感じる?

平野さんのお話を伺い、社会構造や人々のコミュニケーションの取り方が変化し、生き方や働き方の考え方が変わった結果、人々の「心身の健康」に大きな影響を与えていることを学びました。

今後の人生100年時代の健康を考えたときに、自分が人生をどう生きたいのか、主体的に考え、その中で居心地のいい場所や居心地のいい働き方、居心地のいい自分のコミュニティを積極的に作っていくことがとても重要なことを痛感しました。

今回の企画を通じて、改めてキリングループのお酒やソフトドリンクなどの飲み物は、お客様の心の健康に貢献できるのではないか、と思いました。飲みものには、コミュニケーションを円滑にし、人や社会のつながりをつくる力があります。飲みものを通じて、前向きな人生を生きていきたいと思うお客様を増やし社会に貢献していくことが、我々の使命だと再度感じることができました。
また、キリングループの商品やサービスを通して社会に貢献していくためにも、まずキリングループ自身が健康経営を実践することも、同時に重要だとも思いました。

私自身も、新型コロナウイルスの感染拡大による長引いた自粛生活の影響もあり、会いたい人に会えない時期が長くなり心配事が増えたり、閉塞感を感じたりすることがありました。だからこそ、人と人がつながること大事さやこれからの人と人とのつながり方を考えるきっかけを与えてもらったと感じています。

次回は、健康経営を推進し、またお客様の心身の健康をサポートする商品・サービスを多数展開されている小林製薬さんとの対談です。「あったらいいな」を掲げる小林製薬さんが大切にしているサステナビリティや、CSVを自分ごと化するまでの経緯についてお話しいただきました。