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ゆっくり熟成された夢。富士のふもとでウイスキーを造るという仕事【キリンのグループ報 写心館#01】

キリングループ会社全体の取り組みを紹介する社内報である、グループ報『きりん』。その中の一つで、従業員の想いや活躍する姿を自分自身の言葉で伝える『写心館』というコーナーをnote上で公開していきます。

▼連載の経緯はこちら

連載の第1弾は、キリンディスティラリー株式会社の洋酒生産部 蒸留熟成チームより、ウイスキーの原料選びから仕込、発酵、蒸留、熟成と、原酒を造る全部の行程の責任者(チーフディスティラー)をしている岸より、その仕事と想いについてお届けします。

キリンディステラリーの岸信行

【プロフィール】岸 信行
1988年、キリン・シーグラム入社(現:キリンディスティラリー)。ウイスキーの熟成チームで瓶詰め・熟成・保管の工程を13年間担当後、蒸溜所の動力や排水処理を担当するエネルギーチーム、パッケージングなどを経験、2019年より蒸留熟成チームチームリーダー(チーフディスティラー)。

ゆっくり熟成された夢

御殿場蒸留所の外観

静岡県って暖かいイメージがあるでしょう?
でも、ここ御殿場市だけはちょっと特殊で、年間を通して涼しくて湿度が高い。そういう気候だと、寝かせておくお酒の揮発量が少なくなるので、ゆっくり熟成させて造るウイスキーには最適なんです。

ウイスキーの名産地に、スコットランドのハイランド地方というところがあって、そこの気候によく似てますね。ここで私は、ウイスキーの原料選びから仕込、発酵、蒸留、熟成という、原酒を造る工程の責任者をしています。

ジャパニーズウイスキーの原酒が眠る熟成庫
世界に誇るジャパニーズウイスキーの原酒が眠る熟成庫

ウイスキーを造る工程には、ブレンダーとディスティラーという職種が不可欠です。原酒を最適な比率でブレンドして、最終的な商品を造りあげるのがブレンダー。私たちディスティラーは、ブレンダーが思い通りの味を描けるように、原酒のバリエーションを増やして、一本一本の質を高めるのが仕事です。

入社して最初に担当したのが、熟成工程でした。1日360本の樽に原酒を詰め、ハンマーを使って栓をして熟成庫に入れる。樽って、空でも55㎏もあって、原酒を入れると200㎏にもなるんですよ。それを私より小柄な年配の人も軽々運ぶんです。びっくりでしょ。

当時、この会社はキリン・シーグラム(※)という名前の、できたばっかりの会社で、海外からノウハウを取り入れながら、キリングループ初のウイスキー造りに挑戦していました。新商品も毎年たくさん造って。常に新しいものに触れられるので、楽しかったです。で、13年間。そこにいた期間が一番長いかな。

その後、工場で使う蒸気をつくるボイラーや排水処理を担当するエネルギーチームや、パッケージングを経て、今は蒸留と熟成の両方を担当しています。蒸留、ずっとやりたかったんですよ。これでウイスキーの製造工程を一周したなという思いです。

正直、入社した当時は、ウイスキーの魅力は全然知らなかった。でも、ウイスキー好きな仲間と仕事しているうちに…ね。今では大好き人間です。

ウイスキーの蒸留釡
ウイスキーの蒸留釡
現在、手前にもう一つの蒸留釡を増設予定

当社のウイスキーはここ数年で、世界的な品評会で高く評価されるようになりました。今年3月には、「ワールド・ウイスキー・アワード」と呼ばれる品評会において、『キリン シングルグレーンウイスキー 富士 30年』が、世界一のグレーンウイスキーである「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞していますが、この賞をいただくのは2016年以降、今年で4回目になります。

こんな評価をいただけるなんて、入社当時は思いもよらなかった。

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今年3月に「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞した『キリン シングルグレーンウイスキー 富士 30年』

この商品は少なくとも30年以上熟成させた原酒からできてるんですけど、私は今年50歳ですから、もしかしたら世界一になった商品の中に、若い頃自分が詰めた原酒が入ってるかもしれない。そう思ったら、商品一本一品に感情移入しちゃいますね。「このお酒を詰めたとき、自分何してたかな」って。

次の目標は、富士御殿場蒸溜所が「ディスティラー オブ ザ イヤー」を獲ることです。高品質で多彩な商品を出して、ウイスキー業界に貢献したメーカー(ディスティラー)として、世界でたった一社に贈られるものなんです。

商品一つがすごくても獲れない。なので今、この蒸溜所では設備を増強して、原酒のバリエーションや量を増やす取り組みが始まっています。それに、モノづくり以外の部分でも、工場内をみんなで清掃したりとか、緊張感をもって仕事するとか。

当たり前のことなんですけど、そういう面でも工場をよくしていきたいし、結果的に目標への近道になるんじゃないかなって思っています。

実は、会社のロゴクレスト(紋章)には英語で「優れた技術を世界に誇る」って書いてあるんです。そういう蒸溜所になる夢、かなえたいですね。

キリンディステラリーの岸信行

※キリン・シーグラム株式会社…1972年にキリンビールが、JEシーグラム(米国・当時)、シーバース・ブラザーズ(英国)と合弁で設立。翌年、富士御殿場蒸溜所を開設。2002年に合弁を解消し、現在の社名になる。

noteでお届けするグループ報『写心館』次回もお楽しみに!

『写心館』では着飾っていない話を、できるだけストレートに聞くことを心掛けています。これからも、従業員の仕事に対する想い、働くうえで大切にしていることを本人の声を大切にしてお届けしていきます。
次回もお楽しみに!