25年間中華街を歩き続けた「中華街コンシェルジュ」が語る。奥深い紹興酒の世界
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25年間中華街を歩き続けた「中華街コンシェルジュ」が語る。奥深い紹興酒の世界

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「紹興酒を広めるためには、まず中華全体を元気にしなくては!」

そんな熱い想いを胸に、中華街を歩き続ける「永昌源」社員がいた。

入社26年目、営業担当として25年間、紹興酒の魅力を伝えるため全国を飛び回ってきた内海正靖です。紹興酒をもっと知ってもらうためには、中華全体を盛り上げなくては。そのために、まずは身近な中華街を元気にしよう。

キリンのグループ企業である紹興酒・中国酒メーカー「永昌源」で働きながら、横浜中華街コンシェルジュとして横浜中華街を盛り上げることにも尽力してきた内海に、意外と知らない紹興酒の魅力や楽しみ方を聞きました。

【プロフィール】内海正靖
紹興酒・中国酒メーカー「永昌源」企画部 部長・横浜中華街コンシェルジュ入社当時から営業担当となり、25年間紹興酒の魅力を広めるため、全国を行脚。横浜中華街を元気にしようと始めたブログは、またたく間に人気コンテンツに成長。横浜中華街の情報通として、社内でも一目置かれる存在に。昨年秋より企画部に異動し、初めて商品開発に携わり、「古越龍山純龍」の商品化に尽力した。

紹興酒を広めるためには、まず中華全体を元気にしなくては!

―早速ですが、「永昌源」はどんな会社なのでしょうか?

内海:設立当初は、「櫛引(くしびき)酒造株式会社」という名前で、埼玉県深谷市に設立されました。1948年、中国・満州で酒造会社を営んでいた関係者が、日本に渡った時に立ち上げた会社です。本場で酒造りに携わっていた職人たちが、その技術と経験を活かし、日本国内向けに中国酒を製造していました。当時は、日本で唯一中国酒を製造する酒造メーカーでもあったんです。現在は、中国の紹興で造られる紹興酒を輸入販売しています。

―内海さんは、永昌源で働きながら横浜中華街コンシェルジュとしいう肩書きもお持ちですよね。具体的にはどんな活動をされていたんですか?

内海:まずは中華街にいらっしゃった方が「また来たい」を思っていただくように、ブログの配信を始めました。おいしい中華料理はもちろんですが、ノスタルジックな街並みや裏路地の楽しみ方から、中華街の噂話、料理人と焼肉を食べに行った話まで、中華街での日常をほぼ毎日通って更新したんです。多いときは、月10万人のアクセスがあるほどでした。

あとは、街のみなさんに協力いただいて、各店に永昌源の紹興酒を使った料理をエントリーしてもらい、スタンプラリーのイベントを開催したりしました。「酔仙麺(すいせんめん)」という紹興酒を練り込んだ麺を開発したり、シェフに紹興酒を使った料理レシピを教えてもらって紹介するということもしましたね。

―幅広く活動されているんですね。どうしてそのような活動を始めたんでしょうか?

内海:レストランや居酒屋でお酒を取り扱ってもらいたいと思ったとき、例えばビールだと中華やフレンチ、和食などいろいろな業態が考えられると思います。でも、紹興酒はその幅が狭い。紹興酒がメインで売れる業態が、中華なんです。ほかの業態でも扱っていただいておりますが、圧倒的に中華が多いです。営業担当としての最終目的は、“紹興酒を売る”ということではあるのですが、そのためにはまず中華全体が元気にならないと意味がないと考えたんです。

中華=中華街。一番身近だったのが、横浜中華街でした。まずは横浜中華街コンシェルジュとして活動することで、横浜中華街とそこで働く人たちを応援したい。そう思ったんです。

―中華街や中華を盛り上げることで、紹興酒も知ってもらおうと。コンシェルジュとして活動した成果はありましたか?

内海:長年通い続けて、最初は取扱店が2軒だったのが、今では多くのお客様にお取り扱いいただいております。それでも紹興酒の魅力はまだまだ知られていなくて。もっと広めていくために奮闘しているところです。

ざらめを入れるのは邪道?紹興酒のスタンダードな飲み方とは

―紹興酒といえば、温めてざらめを入れて飲むイメージです。

内海:そう、そのイメージが強いですよね。日本では昔から、ざらめや氷砂糖を入れて飲むというのが、知られていると思いますが、実は中国ではこの飲み方はしないと聞いております。

―そうなんですね!日本ではなぜ、そういう飲み方になったんでしょうか?

内海:いくつか説があるのですが、昔はいろいろな紹興酒が日本に輸入されていて、正直あまり品質が良くないものもありました。それをカバーするために、温めてざらめを入れて飲んだというのがはじまりのようです。

ただ、現代の紹興酒は、味のバランスもとても良い。そもそも紹興酒は、酸と原料であるもち米のコクと甘みとのバランスを楽しむものだから、そこに氷砂糖を入れると、リキュールみたいになってしまい、本来の良さが損なわれてしまいます。

―てっきりざらめや氷砂糖を入れて飲むのがスタンダードだと思っていました。本来どんな飲み方をするものなのですか?

内海:あくまで推奨ではありますが、常温、または夏場は冷やしてもおいしいです。冬は少し温めてぬる燗くらいがおすすめ。紹興酒は年数で味も変わってきます。若い場合は酸が強く立つ場合が多いので、思い切り温めて飲んでもいい。酸がまろやかになり、飲みやすくなります。

―さっそく紹興酒のイメージを覆されてしまいました!そもそも紹興酒とはどんなお酒なのか教えていただけますか?

内海:まず、紹興酒というのは、「紹興」という地名なんです。シャンパーニュで造られたスパークリングワインは「シャンパン」と言いますよね。それと同じです。

また、「紹興酒」と「老酒」は別物だと思っている方が多いと思うんですが、同じものです。「老酒」とは長期熟成された「黄酒」の総称で、紹興という場所で造っている老酒が紹興老酒。それを略して、「紹興酒」と呼ばれています。意外と知られていないんですよね。

ちなみに、福建省で造られているものは「福建老酒」、上海で造られているものは「上海老酒」。地酒ですから、地域によって味わいもさまざま。老酒のなかでも、日本に初めて入ってきて、中国でも一番生産が多い紹興産の老酒が、一番メジャーになったというわけです。

―中国酒って、個性的で飲みづらそうなイメージを持っている方も多いかもしれませんね。

内海:造り方は、実は日本酒と近いんですよ。日本酒はうるち米と米麹を使うのに対して、紹興酒はもち米と麦麹を使っています。日本酒と造り方は大きく変わりません。違うのは、紹興酒は何年も甕(かめ)で寝かせるということ。ワインのように産地やぶどうの品種があるということまで、まだまだ伝わっていないんです。こういったストーリーも含めて伝えていくことが、お酒を広めていくことにも繋がるだろうと思っています。

知れば知るほど奥深い紹興酒の世界

永昌源が運営するFacebook「紹興酒ファンクラブ」では、紹興酒の魅力を堪能できる名店を紹介。YouTubeにて家庭で楽しめる紹興酒レシピを発信中。

―永昌源のサイトを見ると、いろいろな種類の紹興酒がありますが、紹興酒にはどのような分類があるのですか?

内海:大きく4つに分類されます。一番若くて安価な「元紅酒(げんこうしゅ)」。それに、もち米を約10%贅沢に使ったものが「加飯酒(かはんしゅ)」と呼ばれ、日本で流通している9割が加飯酒です。そして「善醸酒(ぜんじょうしゅ)」は、善醸仕込みという製法で造られたもので、仕込むときに水だけではなくお酒を加えていて、濃度も糖度もとても高いのが特長です。

あとは、日本ではほとんど流通していませんが、醪(もろみ)に粕取焼酒の「糟焼(ツァオシャオ)」を加えて造られた香雪酒です。酒粕が雪のように真っ白で、香りがよいので、こういう名前が付きました。日本の本みりんの製造に似ています。この4つが、日本酒でいう吟醸、大吟醸のような分類になります。

【永昌源の紹興酒の分類と特長】
左から
『古越龍山善醸仕込み』…善醸酒。深い味わいと華やかな香り、濃厚で上質な甘さが特長。
『古越龍山澄龍(チェンロン)』… 加飯酒。古越龍山陳年8年原酒の上澄みのみを使用した贅沢な紹興酒。
『古越龍山純龍(ジュンリュウ)』… 加飯酒。8年物の原酒を中心にブレンドしたカラメルフリー紹興酒。
『古越龍山金龍』…加飯酒。5年貯蔵原酒を中心にセレクトした優美な味わいが特長。

―紹興酒はよく5年もの、10年ものなどと年代で違うのだと思っていたのですが、製法にも違いがあるんですね。それぞれどんな飲み方が合いますか?

内海:王道の「加飯酒」は、そのまま飲むのがおすすめです。若くて酸が強い「元紅酒」は、中国本土では料理酒としてよく使われています。「善醸酒」は、ストレートで飲むなら食前酒や食後酒に。クラッシュアイスをたっぷりと入れてキンキンに冷やして飲むと、すごくおいしいんですよ。料理と合わせるなら、断然ハイボールですね。

『古越龍山善醸仕込み』を使ったドラゴンハイボールは中華街の人たちと一緒に試行錯誤して造ったレシピでご提案しております。これを使ったドラゴンハイボールがおいしいんです。炭酸で割って、レモンをぎゅっと絞って飲むと、もう最高です。しっかりと甘さもあるから割り負けしないんです。逆に、「加飯酒」を割ると味が間延びして、酸が尖ってしまう。ただの酸っぱい炭酸水になってしまうんです。あと「善醸酒」は、杏仁豆腐やバニラアイスにかけても絶品。味わいがカラメルソースに近いので、中華街にはこれを使った紹興酒プリンを提供しているお店もありますよ。

―紹興酒プリンおいしそうですね!いろいろと飲み比べてみたくなりました。内海さんは自宅でも紹興酒を飲みますか?

内海:もちろん!紹興酒を使った料理を食べる時は、必ず紹興酒を飲みます。食中ならドラゴンハイボールで、食後にゆっくり飲みたい時はストレートで。クリームチーズやブルーチーズなどの発酵食品、チョコレートやナッツ類をおつまみにしても合います。

内海:紹興酒を飲み慣れていない方なら、『古越龍山純龍』を試して欲しいです。本来紹興酒には必ずと言っていいほどカラメルを使いますが、これはカラメルフリーで造っているので、味わいはしっかりしているのに、軽やかな飲み口で。これが本当においしいんですよ。脂っこい料理と合わせると、口中をスッキリ洗い流してくれて、さらに口の中にアミノ酸の旨味が残るから、次に食べる料理がもっとおいしくなる。酸と甘みのバランスが良いので、食中酒にも向いています。ワイングラスに注いで、もち米の香りも楽しんでください。

また、8年原酒の上澄みだけを使用した『古越龍山澄龍』も、渋みや酸が抑えられ、軽やかで香り豊か。とくにこの2本は、これまでの紹興酒の概念が一変すると思います。

餃子に、チャーハンに、野菜炒め。いつもの料理を絶品中華に格上げ

―内海さんが語ると、どれも本当に魅力的に感じますね!紹興酒は、料理にもよく使われるのでしょうか?

内海:ほとんどの中華料理に、紹興酒が使われていると言えるほど、なくてはならない調味料のひとつです。中華街にあるレストランのシェフに聞いたところ、メニューの7割くらいに使っているとか。日本人の口により合うように、日本酒とブレンドして使うシェフもいました。

飲むのはハードルが高い、お酒は弱くて飲めないという方も、料理で楽しんでもらえるんじゃないかと思い、シェフに教わるおうち中華レシピをブログでも紹介していました。結構人気のコンテンツで、なかでも紹興酒を使ったチャーシューは絶品です。今でも自宅でよく作っています。

―飲んでもよし、お料理に使ってもよしの紹興酒なら、試してみたくなりますね。自宅で気軽に取り入れるコツはありますか?

内海:日本酒や料理酒は家庭でよく使いますよね。それを同じ量だけ紹興酒にするだけ。例えば、あさりの酒蒸しも、紹興酒で蒸したら一気に中華風に。そこに、鷹の爪を加えるのもおすすめです。野菜炒めの隠し味にもおいしいんですよ。

あと、冷凍餃子や冷凍チャーハンに、キャップ1杯の紹興酒をかけてチンするだけで、いきなりプロの味に。焼くタイプなら、水と一緒に紹興酒をキャップ1杯使ってみてください。ふたを開けた瞬間、ふわ〜っといい香りが溢れます。すごくおいしいので、騙されたと思って一度試してみてください。

―聞いているだけでお腹が鳴りそうです。意外と日本の台所でも活躍してくれそうですね!

内海:紹興酒は、旨味調味料みたいなもの。アミノ酸が、香醋や黒酢と同じくらい含まれていると言われているんです。だから、おいしくならないわけがない。日本酒はお米を半分くらい削ることもありますが、紹興酒はもち米を1割しか削りません。だから、旨味がものすごく残るんです。その分オリも多いけど、アミノ酸も豊富。旨味成分の宝庫なんですよ。

―なるほど。今日は、紹興酒の新しい魅力を発見できました。

内海:少しでも、紹興酒を身近に感じてもらえたら嬉しいです。たかだか紹興酒だけど、されど紹興酒。紹興酒を通じて家庭や食、文化、生活に役立つ、喜んでもらえる情報を発信していきたいと思っています。

まだまだ知らない紹興酒の魅力をお届け!

熟成期間だけでなく、製法の違いからさまざまな味わいや風味が楽しめる紹興酒。マガジン「紹興酒のすゝめ 〜知ればもっと中華が楽しくなる〜」では、家庭やお店でもっと楽しめる紹興酒の情報を発信してきます。
次回は、家庭で手軽に取り入れられる紹興酒のおいしい使い方についてご紹介。永昌源社員による、紹興酒のおすすめの飲み方や紹興酒を楽しめる中華店のレポートなども発信していきます。ぜひチェックしてみてくださいね。

編集部のあとがき

「これまでのキリンのnote記事の中で一番”おいしい顔”が撮れたんじゃない?」取材直後にカメラマンと盛り上がりました。

取材というよりも、紹興酒を学ぶセミナーや料理教室に来たような感覚になるほど、内海さんのお話には、紹興酒愛が溢れ、とにかく”おいしそう”でした。

今後は、永昌源社員による紹興酒愛が詰まったマガジン「紹興酒のすゝめ ~知ればもっと中華料理が楽しくなる~」にたまっていく予定です。楽しみにしていてくださいね。

文:高野瞳
写真:土田凌


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