合言葉は“楽しく続けること”。7年目のmoogyから「はじめましてBOX」と「ただいまBOX」の2シリーズが登場!
季節ごとに変わるデザインに込めた思いと、暮らしをちょっと良くするヒントを紹介する「#moogyの季節の便り」。
これまで四季にあわせて新しいパッケージデザインをリリースしてきた『moogy』ですが、2023年からは「はじめましてBOX」と「ただいまBOX」の2つのシリーズ展開へリニューアル。「はじめましてBOX」では今まで通り新作の柄を、「ただいまBOX」では過去の人気デザインを復刻してお届けします!
今回は復刻デザインの登場を記念して、これまでリリースした約150種類のデザインの背景や、7年間の歩みをmoogyチームと一緒に振り返ります。メンバーそれぞれの個性や手法がデザインに反映されてきた『moogy』のモノづくり。寺島愛子、高橋惇紀、水上寛子の三人がその制作背景を語ります。
デザイナーの個性が表れる“手づくりのブランド”
─2016年の誕生から7年、『moogy』のデザインは約150種類ほどリリースされていますが、こうして見るとすごい数ですね。振り返ってみていかがですか?
寺島:気づいたらこんな数になっていたんだなっていう感じで、あまり実感がないんです。商品化されたのは約150種類ですが、ふだんからこの何倍もデザイン案を作っているので、まだ世に出ていないものもたくさんあるんですよ。
水上:私が最初にデザインしたのは、2016年の「夏の木漏れ日」だったと思います。春夏シーズンだったから葉っぱをモチーフにしたのかな。当時からこういう自然物をよく描いていたんですけど、寺島さんや初期メンバーの遠藤さんはもっと自由気ままなスタイルで作っていて、「そんな感じでもいいんだ」と思ったのを覚えています。
寺島:長年『moogy』を見てくれている人は、誰が作ったデザインなのか大体わかりますよね。
水上:そうそう。デザイナーによって色、柄、テイストが違うから、そういう個性が見えたのはおもしろかったですね。大胆なデザインが得意なメンバーもいて、自分では絶対に思いつかないようなデザインが出てきたりと気づきも多いです。
寺島:私は思い入れが強いものでいうと、やっぱり「私にブーケ」の花柄ですね。当時の社長に『moogy』の企画をプレゼンしに行ったときにサンプルとして持ち込んだデザインで、本当にいちばん最初のイメージがこれだったんです。
水上:私もすごく印象に残ってる。『moogy』を象徴するような柄だよね。
寺島:私たちはキリンビバレッジのインハウスデザイナーですが、基本的には自分たちでデザインするというより、ディレクションを担当することが多いんです。だから自分たちで手を動かしてデザインする『moogy』は、それぞれの人となりが見えてすごくおもしろい(笑)。普通だったらブランド内でトーンを合わせると思うんですけど、個性を活かしてどんどん自由になっていってますね。
高橋:『moogy』って清涼飲料であり工業製品ではあるけれど、そういう手づくりっぽいところはユニークですよね。僕は昨年10月にチームに加入して、営業や開発などデザイン以外の部分を担当しています。そうしてあらためて感じたのは、 『moogy』はデザインも含めて「なんかそばに置いておきたいな」と思えるブランドなのかなって。
─たしかに、『moogy』のデザインには“手づくり感”がありますね。手描きの線や水彩、スタンプなど、表現もさまざまです。
寺島:私は消しゴムはんこを彫るのが好きなんですが、画材や手法もメンバーごとに得意なものが違うんですよ。水上さんはよく使う画材ってありますか?
水上:私は水彩とかクレヨンでラフに手描きした素材をパソコンに取り込んで、色を変えたり重ねたりしながら仕上げていくことが多いかな。逆に寺島さんは、ラフの段階からかなり緻密に手描きするタイプだよね。
寺島:そうかもしれないですね。消しゴムはんこを彫る前にちょっと下絵を描いてみたり、使う紙を変えてみたりとか、色々試しています。最初はペンや鉛筆を使うことが多かったのが、画材もどんどん自由になっていきました。消しゴムを彫っていくうちに三角の切れ端が出るので、それを使って山を表現してみたり(笑)。
高橋:こうやって振り返ると、デザイナーが三人いるからこそ「次はどんなのが出てくるんだろう?」っていうワクワク感がありますね。きっと同じ人だけが作っていたら生まれなかったアイデアもあるだろうし、単純に楽しいです(笑)。
寺島:それはありますね。水上さんは最初あまり大胆な柄は作らなかったけど、2018年の「月夜のうたげ」は今までにない感じのデザインでびっくりしました。
水上:二人のデザインを見て「こういうのもアリなんだ」って思ってから、どんどんフリーダムになっていった感じはあったかも。そうやって、それぞれに影響し合っているのが『moogy』のオリジナリティですね。
飲料にとどまらない、さまざまなコラボレーション
─ボトルデザインのほかには、リーフレットやさまざまなブランドとのコラボ雑貨たちも『moogy』の世界観を表現していますよね。
寺島:そうですね。最初はキャンペーンに合わせてハンカチやマスキングテープのノベルティを作ったりしていたんですが、それがだんだんと広がっていきました。手紙社さんが主催するイベント「布博」に参加してオリジナルの柄で透かし加工の布を作るワークショップをしたり、渋谷ヒカリエさんでのポップアップショップに合わせてポストカードを作ったり、蔦屋書店さんでのクリスマスイベントでギフト用のシールやタグを作ったり。
水上:もはや雑貨屋みたいな感じだよね(笑)。
寺島:イベントで配るためのリーフレットもたくさん作りましたよね。毎回、紙や仕様を変えて、読み物としても楽しめるように意識していました。
高橋:こんなにいろいろやっていたとは。飲料ブランドの枠を飛び越えていますね!
寺島:『moogy』をギフトで渡したいって言ってくださるお客さまも多かったので、ちょっとしたメッセージを貼り付けられるようにマスキングテープ「KITTA」をキングジムさんと一緒に作らせてもらったりもしました。
価値観を共有できるような会社さんと一緒に何かしたいっていう気持ちがあったので、異業種同士でコラボできる機会があるのはすごくうれしかったですね。
新しくて、なつかしい「ただいまBOX」
─2023年6月に発売された「ただいまBOX」は、過去の人気デザインを復刻したものですが、どういった経緯で決まったのでしょうか?
寺島:インスタグラムを通していただくコメントやメッセージを見ていると、「以前あった柄は買えないんですか?」という声が結構あって。特に初期の頃は16柄ずつ出していて、そこからランダムに届くので「欲しい柄が入ってなかった」という方もいたと思うんです。今回の復刻を通して、あらためてお届けしたいなというのがきっかけでした。
─「ただいまBOX」の第一弾は、2016年の「私にブーケ」、2018年の「湖畔さんぽ」、2021年の「ハイホー♪」、2018年の「ぽかぽかピクニック」ですね。最初の復刻デザインが、この4種類になった理由はありますか?
寺島:第一弾では私たちの思い入れがあるものや、印象に残っているデザインを中心に選んでいます。まずチーム内で投票してピックアップしたものから、組み合わせのバランスをみて4種類に絞っていきました。やっぱり最初に決まったのは「私にブーケ」で、たしかネーミングを決めたのは遠藤さんだったのかな?頑張っている自分にブーケを贈って、気分を上げようっていうイメージでした。
水上:ネーミングは誰がデザインしたかは関係なく全員で出し合うので、意図してなかった部分を読み取ってもらえることもあって、そこもおもしろいポイントですね。
寺島:「湖畔さんぽ」はイギリスの湖水地方を旅したときに見た風景を思い出して作ったもの。こういう水彩を大胆に使った柄はあまり描いてなかったんですけど、これも皆のデザインから影響を受けてますね。「ハイホー♪」はさっき話していた、消しゴムはんこの切り端を集めて山やキャンプを表現したものです。
水上:「ぽかぽかピクニック」は、春っぽい柄を作ろうと思って、水彩で引いた線をパソコンのデータ上で重ねてみたら、結果的にギンガムチェックのような仕上がりに(笑)。「ピクニック」っていうのは、自分からは出てこない言葉だったので新鮮でしたね。
寺島:こういう大胆な柄が一つ入ると、全体の印象が締まりますよね。並んだときのバランスもよかったので、この4つに決まりました。昔から見てくださる方にとってはなつかしく感じてもらえると思いますし、最近ファンになってくれた人にとっては新しいデザインとして楽しんでもらえたらうれしいです!
脱力感のあるデザインが揃った「はじめましてBOX」
─2023年3月に発売した「はじめましてBOX」は、すべて新しいデザインですね。
寺島:「はじめましてBOX」は、こうやって見てみると4種類とも結構ゆるい雰囲気の、脱力感のある柄を選んでいるかもしれません。「のほほんといきましょう」や「風にまかせて」は特にそんなイメージですね。ちょっと忙しい日々が続いていたので、その反動が出たような気もしています(笑)。
水上:のほほんとしたかったんだろうね。疲れてたのかな?(笑)
高橋:つい願望が出ちゃったんですね(笑)。
寺島:モチーフとしては、「のほほんといきましょう」はお花をゆる~く描いていて、ノートの端っこにある落書きのようなイメージ。色合いも春のあったかい感じを表現していて、ほんわかしていますね。「風にまかせて」はちょっとグラデーションを入れて、波や海のようでもあり、風に揺れるカーテンのようでもあって。
高橋:抽象画みたいな感じで、いろいろな捉え方ができるのがいいですよね。
寺島:「小さなエール」は遠藤さんが描いたもので、道端に咲いたタンポポを見て、元気がもらえるようなイメージですね。「ゆめのじゅうたん」は、私が学生時代に北海道の富良野の花畑を見たときの思い出をデザインにしたものです。
高橋:このシリーズは、僕がmoogyチームに参加したタイミングでちょうどネーミングを出し合っていたので、自分にとってすごく印象深かったです。季節の変化や、生活のなかで感じたことがアイデアになるのかなと思って、子どもを連れて一緒に公園に行ったときのことを思い出しながらネーミングを考えたり。
水上:その決め方いいですね。第一弾の「はじめましてBOX」は、日々の疲れを癒してくれる「春の癒しシリーズ」っていう感じになったのかな(笑)。
「なんか楽しそうだな」が伝わるモノづくりを
─最後に、これからの『moogy』について考えていることはありますか?
水上:あらためて、7年もよく続いたなあって思います。飲料ブランドってリニューアルしたり変化していくものですが、『moogy』はデザインは変わっても根本のところは何も変わってない。それって結構すごいことだと思うので、これからも変わらずにやっていけたらいいなと。同時に、デザイナーによって振り幅があったり、個人の変化やゆらぎがデザインに出ているのもユニークですよね。
高橋:清涼飲料って基本的にはコンビニやスーパーや自販機で売っているものだから、そこで目立たなきゃいけなかったりするんですけど。『moogy』はECでの販売に絞ってるからこそ、既存のスタイルをとっぱらった自由さがあって、できることがたくさんあるんですよね。そういう魅力をもっと伝えたいですし、コラボレーションも含めて『moogy』の輪を広げていけたらいいなと思います。
寺島:振り返ってみると、ブランドとして7年変わらずに続けられるというのは、好きでいてくださるお客さまの存在が励みになっているんだなとあらためて感じます。実はいちばん最初に「楽しくなくなったらやめようか」って皆で話してたんですよ。もちろん売らなきゃいけないんだけど、義務になったら嫌だなって。
水上:仕事っていうよりも、部活みたいな感じだよね(笑)。
寺島:そうですね。これからまた新しい人が入ったり、メンバーが変わっていっても、そういう感覚は引き継いでもらえたらいいなと思うんです。数字だけを追う商品にはならずに、キリンのなかでもおもしろい存在でいてほしいというか。
「この人たち、なんか楽しそうだな」っていう感じが、『moogy』のモノづくりを通して伝わってくれるといいなと思います。