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若手社員が向き合う伝統の重みと、商品愛が支える「小岩井らしさ」の源泉

1976年に創業し、厳選した素材と妥協のない製法で乳製品を作り続けてきた小岩井乳業。その歴史を振り返り、改めて商品の魅力を知るための社内行事が、若手社員主導で行われました。

コロナ禍で入社し、以前のような研修やコミュニケーションができない社員もいる中、会社が積み上げてきた「らしさ」を継承するためには何ができるのでしょう。

小岩井乳業が受け継いできたモノづくりの精神や、おいしさの秘密に触れる特集『#小岩井とはなやぐ暮らし』。

今回は、3人の若手社員に小岩井乳業の個性や従業員に共通する特徴、直面している課題と展望などについて聞きました。

「商品が好き」という志望動機

天野美羽
天野 美羽(首都圏支店 販売推進第一部)

─皆さん、どのようなきっかけで小岩井乳業に入社しようと思ったのでしょう?

天野:私はずっと食品業界に興味があって、暮らしに幸せや、よろこびを与えてくれる食品を提供する仕事に就きたかったんです。もともと小岩井乳業の『生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』が好きでしたし、自分が自信を持って届けられる商品に関わりたいと思っていました。

実際に営業として仕事を始めてからは、お客さまから直接「おいしい」と言っていただく機会がたくさんあるんですよね。まさに入社前に考えていた「好きな商品を自信を持って届ける」という仕事ができていることを実感しています。斎藤さんの入社理由は何だったんですか?

斎藤航大
斎藤 航大(経営戦略部 人材担当)

斎藤:私は小学校の頃からずっとハンドボールをやっていて、「体作りのベースは食品」という考えから、食品業界に興味を持ったんです。
小岩井乳業を知ったのは天野さんと同じで、昔から実家で『小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』を食べていて。初めて口にしたとき、「これ、めちゃくちゃおいしいな」と驚いたのを覚えていて、小岩井乳業を受けてみることにしました。

天野:私は1年目から営業ですが、工場の勤務ってどんな内容でしたか?

斎藤:入社してすぐに担当した総務での資材管理は、すべての製造現場を回って「今月はこの容器がいくつ必要か」など、商品に必要なものをチェックして発注する仕事でした。

営業に配属される同期が多い中、総務への配属は珍しかったと思います。ただ、製造現場を間近で見られて、最終的にスーパーに商品が並ぶまでの流れを知ることができたのは、すごくいい経験になりました。出井さんは?

出井麻里
出井 麻里(関西支店 販売推進部)

出井:私は大学で農学系の勉強をしていたので、その流れで食品メーカーを意識するようになったという感じですね。
ある日、就活中に家族と乳業メーカーの話をしていたら、祖父母が「小岩井」というワードにすごくピンときていて。それだけブランド力がしっかりしている会社なんだと知って興味を持ちました。

実際、入社前に社員の方々に話を聞いてみたら、皆さん強いこだわりと自信を持って商品作っていることが伝わってきて、私も一緒に働きたいと思うようになったんです。

斎藤:小岩井乳業の社員って、商品愛の強い人が多いですよね。

天野:それ、本当にそうですよね!自分たちが商品愛を持っているというのはもちろんありますが、取引先の方から「小岩井さんの商品はおいしい」と言っていただけることがさらに自信につながっているのだと思います。

出井:あと、自分が好きな商品を売ることができるというのは、本当に恵まれていますよね。私自身が小岩井ブランドのファンだからこそ、一つひとつの商品のこだわりやストーリーを自分の口からきちんとお客さまにお伝えすることができるので、私得というか、営業としてはとてもありがたいことだなと。

ブランドの魅力を再発見した、45周年行事

葉っぱ

─2022年には、この3名を含む事務局メンバー6名を中心に、社員向けの45周年行事を開催したと伺いました。どのようなイベントだったのでしょうか?

斎藤:「小岩井ブランドを強化していく」、そしてそのためにも「会社の原点・価値を改めて知り、社内の一枚岩化を図る」という会社の経営課題があって、そのための一つの動きとして、創立45年の節目に周年行事をやることになったんです。

当初考えていたのは、社員全員で岩手の小岩井農場へ行って、ブランドの原点である自然や歴史を体感するという企画でした。

出井:だけど、コロナ禍の影響で農場へ行けなくなってしまいましたよね…。

斎藤:そうなんです。事務局で活動を開始しつつも、企画構想中に農場に行けなくなってしまいましたね。なので、一度白紙に戻して、オンラインイベントに切り替えて企画を練り直しました。

─天野さんと出井さんは、どういう経緯でイベントの運営チームに加わったんですか?

斎藤:天野さん、出井さんは周年行事事務局に立候補されたんです。私とあと3名メンバーがいるのですが、各部のリーダーからの推薦でチーム編成されました。

天野:私はちょうどコロナ禍の入社だったので、先輩方よりも農場に行ける機会が少なくて、社内の関わりも限られていたんです。もっと農場のことを知りたいし、社内の行事に参加して、いろんな方と交流を持ちたいと思って、運営メンバーの募集に手を挙げました。

出井:私は営業としてお客さまと話す機会が多かったので、改めて会社のことを学べる機会になると思って参加しました。入社5年目でも、まだまだ会社について知らないことがあったので。それに、関西にいると社内で会える人も限られてしまうので、もっと社内のつながりが増えるといいなと思って。

「小岩井」45周年行事の運営メンバー
45周年行事の運営メンバー

─具体的なイベントの内容は、どのように決めていったんですか?

斎藤:まずは、今回の課題を解決するプログラムとして「小岩井農場の歴史を知る」「商品・品質を知る」「社内の仲間を知る」という三つの軸を定めました。

そこから、それぞれのテーマを形にするためのコンテンツを考えていった感じです。動画を作ったり、会社の歴史に詳しい、現在小岩井乳業を退職されているOBの方々にインタビューしたりして。

天野:「小岩井農場の歴史を知る」というパートで出てきた話では、牛のフンを利用して肥料にしたり、岩手山の水で植物、牛を育てる「循環型」を取り入れている点が印象的でした。

今でこそ「循環型」という考え方をよく目にしますが、サスティナブルとかSDGsという言葉が使われるずっと前から、そういう姿勢を大事にしていたんだなと。その話を聞いたときには、すごく誇らしい気持ちになりました。

斎藤:「農場は見せるための場所ではなく、生産現場だ」という話もすごく良かったですよね。小岩井農場には観光のお客さまが来る「まきば園」という施設があるんですよ。お客さまが来る場所だから、いつもキレイに保存されているのだと思っていましたが、実際には農場の美しい景色を見せるために整備するのではなく、「生産現場として使い続けている」というお話で。その精神が素晴らしいなと思いました。

小岩井農場
『#小岩井とはなやぐ暮らし』小岩井農場の記事より

天野:「商品・品質を知る」というパートでは、『小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』を取り上げて、商品開発に携わった製造とマーケティングの担当者にインタビューしました。

発売された1984年当時は、すでに他社さんがプレーンヨーグルトを出していて、小岩井乳業は遅れてのスタートだったそうです。そういう状況のなかで商品を売っていくために、「なめらかで、クリーミー」という、新しいコンセプトの商品にチャレンジしたと。その話がすごく印象深かったです。

出井:『小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』の開発は、たった4人のメンバーで始まったんですよね。生産現場の担当2名とマーケティング担当2名でチームを作ったところから、今の商品が生まれたという話には驚きました。その先輩方にもインタビューをすることができて、当時の開発秘話を社内に伝えられたことは貴重な経験になりましたね。

小岩井 生乳100%ヨーグルト
『小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』

斎藤:「社内の仲間を知る」というパートでは、小岩井乳業で働いている従業員が、どうしたらさらに団結力を増すことができるのかを考えました。
もともとは、みんなで農場へ行くことで同じ想いを共有できるんじゃないかと考えていましたが、イベントがオンラインになってしまったので叶わなくて。そこで、従業員名鑑を作ることになりました。

─従業員名鑑とは、具体的にどんなものですか?

天野:総勢300人。従業員全員のプロフィールと好きな商品、一言メッセージなどを集めてまとめたんですよね。WEB冊子としてイントラで公開されることで、小岩井乳業にはいろんな従業員がいることを知るきっかけになったし、ポジティブなメッセージが多くて、読んでいてうれしかったですね。

出井:私は仕事でよく物流センターの方に電話をするんですけど、名前は知っているけど顔がわからないという方も多くて。この従業員名鑑を通じて、普段一緒に働くいろんな人の顔が見えるようになってよかったです。

動画を撮影・編集することも、社内イベントを企画するのも初めてで、しかもオンライン開催ということで大変な部分もありましたが、参加したみなさんから「おもしろかった!」と言っていただけてうれしかったです。終わったときにみんなで「お疲れ!」って言い合えた達成感は大きかったですね。

「小岩井らしさ」を支える、愛のある仕事

小岩井乳業の天野美羽

─それぞれのお仕事や、45周年行事を振り返ってみて、「小岩井らしさ」ってどういうところだと思いますか?

天野:おいしい商品を作るためには手を抜かないし、いつもお客さまを第一に考えているのが小岩井なんだなと思います。
45周年行事で『小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト』の開発秘話を聞いて思ったのは、前例がなくても「どうやったらお客さまがおいしいと思ってくださるか」を追求するのが小岩井らしさの一つなのかなって。

斎藤:さっきも話に出ましたけど、やっぱり商品愛の強い人が多いですよね。社内で雑談をしていても、自然と好きな商品の話題になったり、ホームページに掲載しているレシピの話になるんです。

「この前あのレシピを作ってみたけど、おいしかったよ」とか。そういう話が日頃の会話で自然と出てくるのは、やっぱり商品愛があるからこそなんだろうなと。

あとは、ヨーグルトにしてもバターにしても、素材や製法にこだわって作っているからこそ、価格が少し高めなんです。だけど、その理由を自信を持って示せる。そういったプライドを持って商品作りをしているところが、小岩井らしさだと思っています。

出井:小岩井乳業の人に共通しているのは、農場や商品、仲間のことが大好きであること。そうやって、一人ひとりが愛を持って仕事をしているのが、小岩井ならではなのかもしれないですね。
あと、うちの会社って、本当に誠実で、真面目な人しかいないんですよ。それはやっぱり小岩井ブランドに対する愛があるからなんじゃないかなって。

斎藤:それは私も思いますね。年齢問わず、みなさん本当に話しやすい。それは“人のよさ”が土台になっているのかなと。

出井:それは新しく入社してくるメンバーにも共通していますよね。本当にみんな素直で、温かい人が多いです。斎藤さんは人事の仕事をしているけど、採用するうえで設けている基準はあるんですか?

斎藤:採用で重視しているのは、志の高さでしょうか。商品に対する愛情が垣間見られたり、小岩井の歴史をもっと学びたいという思いだったり。しっかりと自分の気持ちを持っている人を採用したいと思っています。会社としては、そういう意欲に対する育成環境を整えて、個々が成長していくという流れを大事にしていますから。

壁を突破するための若い力

小岩井乳業の斎藤航大

─仕事も職場環境も、とても充実しているような印象ですが、現状で感じている小岩井ブランドの課題はありますか?

斎藤:若い世代への認知不足ですね。小岩井は長年続くブランドや歴史を大切にしているからこそ、商品化するまでのハードルが高く、頻繁に新商品に挑戦しづらいというのが現状かと感じています。コンスタントに商品を出すことができれば、若い世代も取り込めるのではないかなと。

天野:小岩井乳業の商品は一度食べてもらえればおいしさがわかってもらえるし、継続的に購入していただける方も多いんですよね。

ただ、大きくプロモーションをするのが難しくて、実際に食べてもらうきっかけが作りづらいという課題もあります。なので、自分たちができる範囲で、なるべく多くの方と接点を作る仕掛けを考えなくてはいけません。

出井:私は課題の一つとして、企業のかたさがあると思います。営業の仕事をしていると、他社さんのキャンペーンを見ては羨ましく感じることが実はあって…。ノベルティー付き限定商品や、カフェとのコラボ企画など、お客さまとの接点を作るための仕掛けを工夫されているんですよね。

伝統があることは素晴らしいし、それを守っていくのは一つの使命でもあります。だけど一方で、伝統があるからこそ、新しいチャレンジへのハードルが高いのかもしれません。そういう部分は少しずつ変えていけたらいいなと思っています。

小岩井乳業株式会社の出井麻里

─最後に、これからの展望を聞かせてください。

天野:今もいろんなことに挑戦させてもらっていますが、こういう環境が今後も続いて、立ち止まらず挑戦し続ける姿勢でいたいなと思います。先輩は皆さん温かいし、好きな商品に対して自信を持って売る仕事ができているので、小岩井乳業に入って本当によかったです。

斎藤:私は、やはり多くの方に食べてもらえる機会を作っていきたいです。食べたらおいしいと思ってもらえる商品なので。仕事の環境としては、若手でも裁量を持って任せてもらえるし、困ったら助けてくださる先輩がたくさんいることもありがたいですね。

出井:私は同世代のお客さまに、小岩井の魅力を届けるにはどうすべきかを考えていきたいです。物を買うときの決め手っていろいろあって、例えば商品のバックグラウンドを知ることで愛着がわくこともあると思うんです。小岩井はバックグラウンドを語れる商品が多いので、私たちがしっかり伝えていきたいです。

小岩井乳業の斎藤航大

【プロフィール】斎藤 航大
小岩井乳業株式会社 経営戦略部 人材担当
2018年入社。1年目は岩手県の小岩井工場に配属。総務の仕事を経験したのち、現在は経営戦略部の人材担当として採用や研修などを担当している。

小岩井乳業の天野美羽

【プロフィール】天野 美羽
小岩井乳業株式会社 首都圏支店 販売推進第一部
2020年入社。首都圏のスーパーなどを中心に小岩井ブランドの営業活動を行う。商品の魅力を伝えるために、店頭での販売プロモーションを担うことも。

小岩井乳業株式会社の出井麻里

【プロフィール】出井 麻里
小岩井乳業株式会社 関西支店 販売推進部
2018年入社。首都圏エリアでの店頭活動の経験を経て、2年目で関西支店に異動。神戸・大阪エリアのスーパーを中心に小岩井ブランドの営業活動を行う。

文:阿部光平
写真:土田凌
編集:RIDE inc.


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