時代に合わせて進化する「メルシャン・ワインズ」。Bar Bossa林さんと考えるこれから の“日常のワイン”
世界のつくり手とメルシャンのつくり手の共創で生まれた新ブランド「メルシャン・ワインズ」。もっと気軽にワインを楽しんでほしいという思いはもちろん、サステナブルへの挑戦をコンセプトに掲げ、ワイン造りをスタートしました。
この夏、「メルシャン・ワインズ」から、オーガニックワイン『サニーサイド オーガニック』が発売となります。
今回は、東京・渋谷にあるワインバー「Bar Bossa」を営む林伸次さんをゲストにお招きし、開発に携わったメルシャンの須永和子とともにこれからのワインの楽しみ方を探ります。
林さんが「メルシャン・ワインズ」の『ブレンズ』について、ご自身のnoteで書いていただいたことがきっかけで、対談が実現。「メルシャン・ワインズ」のこだわり、『サニーサイド オーガニック』に込めた想い、そして、林さんがお店に立つなかで見てきたワインの楽しみの変遷まで、お話は巡りました。
おいしいワインをもっと気軽に楽しめる、“入り口”のような存在に
─「メルシャン・ワインズ」は、どんなブランドですか?
須永:メルシャン・ワインズは、“世界のつくり手とメルシャンのつくり手の共創によって生まれる今までないワインの楽しさ”をコンセプトにしたメルシャンの新ブランドです。
お客さまからの「輸入ワインはラベルを見てもなかなか覚えられない」「選択肢が多く楽しみ方も増えた分、選ぶのが難しい」などのお声をもとに、ワインをもっとわかりやすく、直感的に楽しむための入り口になりたい、ワインの楽しみをもっと広げたいという思いで誕生しました。
メルシャンでは、これまでのワイン造りを通して、さまざまなパートナーとお付き合いしてきたなかで、あらためてサステナブルにワイン造りを続けていくためには、どういったパートナーと付き合っていくべきか考えました。
そこで生まれたのが、お客さまとの4つの約束(クレド)です。
「環境への負荷軽減・産地との共存・人への負荷軽減・情報の見える化」。これからは、この考えに共感してくれるパートナーと一緒にワイン造りをしていきたいと考えています。そして、さらに魅力を伝えるための3つの価値もあります。「日常をもっと楽しくする」「おいしさを進化させていく」「誠実なワイン造り」。この3つを柱に、商品に思いを反映しています。
─これまで「メルシャン・ワインズ」から、2種類のワインが発売されましたね。
須永:2022年3月に『ボルドー』と『ブレンズ』を発売しました。『ボルドー』は、フランス・ボルドーにある家族経営のワイナリーとの共創です。一般的にボルドーワインは、「カベルネ・ソーヴィニヨン」と「メルロー」をブレンドした、いわゆる「ボルドーブレンド」が主流ですが、これはマルベックとメルローを使用していて、通常のボルドーワインとは違う味わいが楽しめます。
『ブレンズ』は、スペインとオーストラリアのワインをブレンドしています。『ブレンズ』は、林さんも飲んでくださっているそうですね。
林:はい、スーパーで見つけて試してみたら、すごくおいしくて驚きました。違う国のワインを混ぜるなんて聞いたことない。すごい発想ですよね。
須永:そうですよね。世界で見ても、国を超えてブレンドすることはなかなかありません。
林:ブレンドすることで、お互いの足りないところをうまく補い合っているなと感じました。バランスがよくて、唐揚げでも中華でも、和食でもなんでも合いますね。
須永:ありがとうございます。日本の食卓は、醤油や酒、みりんの少し甘辛い味が多いので、ワインがドライすぎると酸味や渋みを強く感じてしまうところがあります。だから、少しだけ糖度を調整して、どんな食卓にも合うよう意識しました。
林:これまでは、“おいしくないから混ぜる”という発想だったし、単一であればあるほど素晴らしいとされるこの時代に、「混ぜる」ってすごい。それによって新しいおいしさ、第3の味が生まれている。まさにマリアージュですよね。
環境配慮と手頃な価格を実現した、「サニーサイド オーガニック」
─今回発売する『サニーサイド オーガニック』はどんなワインですか?
須永:スペイン中央部のカスティーリャ地方で造るオーガニックワインです。開発がスタートしたのは、2021年夏頃。まさにコロナ禍で、爆発的に感染が広がっていた頃でした。お客さまからは、「毎日とにかく頑張っている」「コロナで大変だから、自分を労いたい」「友人と会えなくて寂しい」などの声があることが調査でわかりました。
それと同時に、健康志向の高まりもあって、できるだけナチュラルなものを選びたいという声も多くいただきました。お客さまの求めていることの根っこにあるものってなんだろう、大切な人と過ごす休日に楽しむワインってなんだろうということをコンセプトに落とし込み、「優しいひだまりに包まれるような、そんなワインでお客さまの希望に応えたい」という思いを込めました。
─味の特徴やこだわりを教えてください。
須永:渋みや酸味が前に出るようなものではなく、日本のお客さまに好まれるシンプルで果実味のある味わいに仕上げています。赤ワインは、「テンプラニーリョ」に「シラー」を40%ブレンド。白ワインは、「アイレン」と「ビウラ」を半々でブレンドし、マスカットで香りづけしています。“豊かな果実味”をキーワードに造りました。
林:赤ワインは、シラーのスパイス感もしっかりあります。白ワインはミネラル感もしっかりあって、お刺身などの和食にも合いますね。600円という手頃な価格でこの味が造れるなんて、驚きです。
須永:蒸し鶏などはもちろん、アジの南蛮漬けとも酸同士がぶつかり合わず、フルーティな部分をうまく拾ってくれておいしいんです。
林:「テンプラニーリョ」だけだとシンプルすぎて、「安くておいしいね」で終わってしまいそうですが、そこに「シラー」を加えたことで、スパイス感と複雑味がプラスされています。「シラー」は高価だから、これ以上使うと今度は価格が高くなってしまう。40%というのも絶妙なバランスが、「メルシャン・ワインズ」が目指す、“手頃なデイリーワイン”を実現させているんですね。
須永:そうなんです。高くておいしいワインは世の中にたくさんありますが、あくまで私たちは、日常的に楽しんでいただけるワインを目指しています。輸入オーガニックワインでよく売れているブランドでは800円〜999円くらいが多く、普段500〜600円くらいのワインを飲んでいる方からすると、ちょっと高いと感じてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。だから、“オーガニックワインの入り口”になるような価格帯を設定しました。
─『サニーサイド オーガニック』は、手頃な価格でおいしいだけでなく、環境に配慮したワイン造りも実現しているんですよね。
須永:『サニーサイド オーガニック』は、スペインの「ペニンシュラ」という、マスター・オブ・ワイン(※)を二人有するワイナリーとの共創で生まれたワインです。
技術もワイン造りの思想もしっかりしていて、スペインの国が認めるサステナブル認証を取得した六つのワイナリーの一つを保有しており、先進的でサステナブルなワイン造り、未来に続くワイン造りを目指しています。
カスティーリャ地方には、いい造り手やブドウがたくさんありますが、その品質よりも安価で取引きされているという現状があります。環境問題と地域経済への貢献をどうにか共存できないかという課題にアプローチしたのが、「ペニンシュラ」が立ち上げた「エコエコプロジェクト」です。
環境のエコロジー、経済のエコノミー、二つのエコをかけ合わせた言葉ですね。そこに共感し、我々から一緒にやらせてほしいと願い出て、『サニーサイド オーガニック』の共創が実現しました。「メルシャン・ワインズ」の目指すワイン造りを色濃く反映させた商品でもあります。
高級ワインを好む時代から、カジュアルにワインを楽しむ時代に
─林さんは、24年間お店でワインの変遷を見てこられたと思いますが、どんな変化がありましたか?
林:僕がお店をオープンした24年前は、まさに高級ワインブームでした。その頃は、お店も朝まで営業していて、夜な夜な高級ワインを注いだ大きなワイングラスを、くるくると回す姿を見てきました。今でこそブームになっているナチュラルワインを当初から扱っていましたが、飲む人はまだ少なかったですね。
その後、バルブームに。スペインバルのように、ピンチョスやアヒージョ、生ハムなどの小皿料理をおつまみに、ワインをコップで飲むというスタイルが流行りました。立ち飲みでカジュアルに飲むのがおしゃれで、ワインがぐっと身近なものになったと思います。
自宅でデイリーに飲む方も増えて、メーカーからもリーズナブルなワインが登場しました。そのあとに、今でも人気店の渋谷の「アヒルストア」と三軒茶屋の「ウグイス」がオープン。以来、ナチュラルワインが注目され、今に至ります。
─須永さんは2007年に入社して以来、ワイン造りに従事していますが、造るワインも時代に合わせて変化がありましたか?
須永:時代によって求められるワインの味は変わってきています。ポリフェノールが流行った頃は、濃い赤ワインが人気でしたが、今は果実味のある飲みやすいワインが好まれているようにも感じます。ですから、日々お客さま調査をして変化に合わせて調整を続けています。林さんはいろいろなワインをご存知だと思いますが、普段リーズナブルなワインもいろいろと飲まれているのは意外でした。
林:この値段で、この味わいが出せるってすごい!というワインを見つけるのが好きなんです。妻と二人でスーパーに売っているようなリーズナブルなワインを飲みながらああでもないこうでもないと言いながら、よく分析するのが楽しくて。
須永:メルシャン・ワインズも手に取っていただけて嬉しいです。最近のお客さまはどんな味を好まれますか?
林:先ほどおっしゃられていたように、日本では「飲みやすい」というのが好まれますね。渋みや酸味など、引っかからない、ネガティブな要素がないものが好まれる印象です。その点、『サニーサイド オーガニック』は少し酸が強めですよね。これは狙いですか?
須永:そうです。狙いました。『サニーサイド オーガニック』は、オーガニックワインを好む方をターゲットにしています。そういう方は割とヘビーユーザーで、週1以上ワインを飲む方が多い。そういう方々がデイリーに飲めるものをと考えました。ワインを飲み慣れている方なら、少し酸が高くても許容されるかなと。逆に『ブレンズ』は、もう少し飲む頻度が低い方にも飲みやすいように、『サニーサイド オーガニック』より酸が穏やかになっています。
林:そういう違いがあるんですね。ワインは、酸がある方が飲み飽きないですよね。リーズナブルな価格で、高品質でいろいろな味のワインが楽しめる時代になってきて、うれしい限りです。
時代に合わせて進化させることで、ワインはもっとおもしろくなる
─これからのワインの楽しみ方について、どんな風に考えていますか?
林:おいしいワインの選択肢が増えて、より身近なものになってはいますが、ワインに限らず、最近はお酒を飲まない人が増えていたり、飲む人でも頻度が減っているというのも事実です。度数が低いワインや日本酒ができたら、もっと気軽に楽しむ人も増えるんじゃないかなと個人的には考えています。
須永:ノンアルコールや低アルコールのものも増えていますよね。世界でもアルコール離れが進んでいるようです。
林:やっぱりどんなお酒も、気軽に簡単に飲めるものがいいですね。ワインはスクリューボトルのものも増えているし、缶のものも出てきていますよね。味わいもボトルも、時代とともに進化しているのがおもしろい。
須永:造り手の思想をインポートしてお客さまに伝えることも大切ですが、メルシャン・ワインズでは“一緒に創っていく”というおもしろさがあります。時代やお客さまの嗜好に合わせて、味わいをチューニングしていき、どんどん進化させていけたらと思っています。
“ワインを楽しむ入り口になりたい”という思いを形にできるよう、これからも伝統と革新をテーマに、日本のお客さまのためにワイン造りを続けていきます。期待していてください。
林:僕、実は、シャトー・メルシャンの畑に行ったことがあって、それ以来夫婦でファンなんですよ。これまでもかなりメルシャンのワインを飲んできました。『ブレンズ』の革新的な造り方もそうですが、大手メーカーが、固定観念にとらわれず、変化を恐れず、どんどん新しいことに挑戦する姿勢が素晴らしい。これからも楽しみにしています。
編集部のあとがき
個人的に「これはいい記事になりそうだ」と思う取材は、決まってインタビュアーが置いていかれるくらい対談者同士が話にのめり込んで盛り上がるっている時で、今回もまさにそんな光景が目の前で繰り広げられていました。
こうして記事になっているのは、現場で交わされた言葉の1/3にも満たないくらい。取材現場ではもっとマニアック且つワイン熱ほとばしる話が満載でした(正直追い付けない内容もありました)。
林さん、とても楽しい現場をありがとうございました!また「Bar Bossa」に飲みに行きます。
文:高野瞳
写真:飯本貴子
編集:RIDE inc.