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お客さまの声が原動力になる。お客様対応を通じてファンケルとキリンが思い描く未来

連載企画「ファンケルとキリン」では、“食と医のキリン”と、“美と健康のファンケル”の両社がタッグを組むことで生まれるシナジーと、その可能性について探ります。

2019年に資本業務提携を結び、これまで協力関係を築いてきた両社。2024年12月には、ファンケルがキリンホールディングスの完全子会社となり、その結びつきがさらに深まりました。

そこで今回は、両社が何よりも大切にしている「お客さまとの絆」に焦点を当てます。日ごろから数多く寄せられるお客さまの声。その一つひとつに、両社がどのように向き合い、お客さまへ還元しているのか。そして、お客さまの健やかな暮らしの実現に向けて、ファンケルとキリンが描く未来とは?

新たなパートナーシップのもと、両社の想いとこれからの価値創造について、ファンケルで通販部門の窓口責任者を務る小田 啓之おだ ひろゆきと、キリンのお客様相談室 チームリーダーの渡辺 珠江わたなべ たまえに話を聞きました。


共通するのは寄り添う気持ち。両社が大切にするお客さまとの関係性

話をする小田と渡辺
(左)ファンケル カスタマーリレーション部 小田啓之 (右)キリン お客様相談室 渡辺珠江

─今回は、「お客さまとの絆」についてお話しいただきます。まず、両社がお客様対応で大切にしていることを教えてください。

小田:ファンケルでは、「寄り添う心」と「共歓の心(人によろこんでいただくことで自分もうれしい)」を大切にしています。

当社は、主に通販と店舗を通じてお客さまとの接点を持っていますが、悩みや求めることは人それぞれ。私たちは、一人ひとりに寄り添いながら、お客さまの「なりたい姿」を一緒に実現していく存在でありたいと考えています。

また、ファンケルでは、創業者の「売らない勇気を持とう」という言葉を昔から大切にしてきました。これは、セールスをしないという意味ではなく、お客さまにとって本当に必要なものをおすすめしようという、ファンケルのお客様対応を象徴する言葉となっています。

話をする小田

【プロフィール】小田 啓之おだ ひろゆき
ファンケル カスタマーリレーション部
関係子会社を経て、2012年にファンケルへ入社。総務部で株主総会の運営や会議体の運営、保険、オフィス環境の最適化に関する業務を担当。2018年にカスタマーサービス本部へ異動。2024年1月より現職。

渡辺:「寄り添う」という気持ちは、私たちと共通していますね。キリンのお客様相談室では、「健やかな暮らしのサポーター」という言葉を大切にしています。お客さまが私たちに連絡をくださった理由をしっかりと考え、その想いに寄り添いながら、一緒にゴールを目指していきたい、という意味です。

もう一つは、「ノールール」という価値観です。複数のお客さまから同じ質問をいただくこともありますが、その回答は必ずしも同じとは限りません。お客さまに応じて補足情報を加えることもあれば、逆におすすめを控える場合も。生活者の視点から、一人ひとりに最適な対応をすることを心掛けています。

そこで、対応の工夫によって、お客さまの疑問や不安の解消ができた事例を振り返り、チームで共有することで学び合いにつなげる取り組みとして「すこサポ活動」を実施しています。ちなみに、この活動名は「健やかな暮らしのサポーター」を略したものなんです。

▼「すこサポ活動」については、こちらの記事で紹介しています

話をする渡辺

【プロフィール】渡辺 珠江わたなべ たまえ
キリン お客様相談室
1988年キリンビール入社。営業庶務や販売情報システムの運用を経験したのち、1996年よりお客様相談室に所属。お客様対応やバックサポートを経て、2000年から現キリンホールディングスのコーポレートコミュニケーション部お客様相談室に異動。CX推進チームで、チームリーダーを務める。

小田:「健やかな暮らしのサポーター」って、すごく自然でいいですよね。サポーターという表現は、ファンケルでも取り入れたいです。

実は、カスタマーサービスで2024年に策定した3カ年計画では、「お客さまのよき理解者として、それぞれのお客さまに寄り添い、生涯の美と健康のサポート役として一番頼られる存在になる」という目標を掲げています。

これは、「健やかな暮らしのサポーター」に通じる考え方ですよね。キリンの取り組みを深く知れば知るほど、私たちと同じ方向を目指していることを実感できて、大変心強く感じています。

─お客さまと寄り添うことを、両社とも大切にされているのですね。ふだん、お客さまからはどのような方法でお問い合わせをいただきますか?

渡辺:窓口へのお問い合わせは、電話やメールが中心です。最近では、チャットのような短い文章のメールも増えましたね。隙間時間に簡単にお問い合わせできるチャットツールは、今後さらに一般的になっていくのではないかと考え、私たちも導入しました。

話をする小田と渡辺

小田:たしかに、チャットの需要は増えている気がします。弊社もチャットを導入しました。お客さまのコンタクト方法が多様化するなか、ニーズに応じて柔軟に対応していきたいと考えています。

渡辺:時代の変化を感じますよね。キリンでは、電話とメールが主なコミュニケーション方法でしたが、最近は「ホームページのよくあるご質問(FAQ)」の活用にも力を入れています。

以前のFAQは基本的な情報のみを掲載していましたが、ブランドの魅力を伝えながら、各商品やサービスへの理解をより深めていただく場にするため、5年前から情報量を増やし、内容を充実させるようにしたんです。

すると、多くのお客さまに安心していただけたのか、内容によっては、電話やメールでのお問い合わせが減り、FAQへのアクセス数が増加したものもあります。デジタル化が進むなかで、お客さまとの接点も常に見直していく必要があると感じました。

お客さまの声を全社に届け、改善につなげることを目指して

話をする小田

─お客さまとよりよい関係を築くために、どのような施策をされていますか?

小田:代表的なのは、2002年に発足した「お客さまの目委員会」です。当社の商品をご愛用いただいているお客さまの中から、ご意見を発信していただける方を募り、「お客さまサポーター」としてご参加いただいています。

サポーターの皆さまには、商品やサービスについてのご意見を、オンラインアンケートや座談会を通じて共有していただいています。現在、お客さまサポーターは約2,300名。2023年度は座談会を3回、アンケートを5回実施しました。

渡辺:とても素敵な取り組みですね。キリンの場合、多くの商品が小売店で販売されるため、お客さまの購入情報を直接把握するのが難しく、座談会のような継続的な関係づくりが容易ではありません。

そこで私たちは、電話やメールでお問い合わせいただいたお客さまに、対応後のアンケート調査を行っています。「会話はわかりやすかったですか?」「知りたいことは叶いましたか?」といった質問に加えて、お客様相談室への改善点をおうかがいするなど、サービス改善に日々取り組んでいますね。

話をする渡辺

渡辺:また、「電話してよかった」「とても安心できました」といった励みになるお声は、スタッフのモチベーション向上につながるよう、チーム全員に共有しています。

「辛抱強く丁寧にお話をうかがったのがよかったかもしれません」と自身の対応を振り返ってくれる担当者もおり、それが今後の参考になることも。こうした声をきっかけに、いい循環が生まれているのを感じます。

─お客さまからの声を改善につなげるためには、社内の協力が不可欠だと思います。お客さまの声は、どのように社内全体に届けていますか?

渡辺:お客様相談室では、気になるお客さまの声を「改善タンク」と名付けたエクセルデータにまとめています。担当者が寄せられた声と改善案を記入し、その情報を事業会社との定例会議やメールで共有することで、全社を挙げた改善活動につなげています。

▼「改善タンク」については、こちらの記事で紹介しています

話をする小田

小田:ファンケルでは、週1回開催しているCS(※)委員会で、経営層にお客さまの声を共有する時間を必ず設けています。速報性が必要な施策や、商品・サービスについてお客さまが特に気にされていること、影響が大きいと思われる声については、その場で対応を協議。スピード感を持って対応できるようにしていますね。

※「お客様満足度(Customer Satisfaction)」の略

─お客さまの声を社内で共有したことで、改善された事例があれば教えてください。

渡辺:最近では、自動販売機に原材料一覧を確認できる二次元バーコードを設置しました。「店頭では原材料を確認してから購入できるけど、自動販売機ではそれができない。購入前に原材料を確認できたらいいのに」という声は、実は昔からいただいていました。ただ、自動販売機は商品の入れ替えが頻繁にあるため、看板の設置などが難しい状況だったんです。

そこで、改善タンクを通じて、二次元バーコードで原材料を確認できる仕組みを提案しました。スマートフォンの普及率をデータで示し、その必要性を社内で丁寧に説明した結果、お客さまのお声にやっとお応えすることができましたね。

自動販売機の二次元バーコード
自動販売機の二次元バーコード

小田:お客さまの声をただ届けるだけではなく、担当者に自分ごととして捉えてもらうよう伝えることも大切ですよね。私たちも社内で改善を進める際、「お客さまの声の代理人」という意識を常に持っています。

話をする小田

小田:ファンケルの事例として、2004年に導入した薬の飲み合わせ検索サービス(SDIシステム)があります。これは、サプリメントと薬の飲み合わせに関するお問い合わせの増加を受けて開発したものです。

医師・薬学の専門家による監修のもと、健康食品と約3,000種類の医薬品の飲み合わせをデータベース化。オペレーターがこのシステムを活用することで、お客さまの不安や疑問に迅速かつ正確に対応できるようになりました。

2014年からは、店舗でも情報を共有できるようになり、2021年からは会員登録されたお客さまがショッピングサイトから飲み合わせをチェックできる機能を追加するなど、より使いやすく進化させています。

また、商品においては、2021年に発売した「コアエフェクター」の改善事例があります。この商品は発売後、「容器が倒れてしまう」という多くのご指摘をいただき、倒れにくくするための台座をお送りして対応していました。

しかし、より本質的な解決を目指して、中身のリニューアルとともに容器も変更したんです。その結果、改善のご要望に代わってよろこびの声が届くようになり、心からうれしさを感じましたね。

リニューアル前とリニューアル後の「コアエフェクター」
(左)リニューアル前の「コアエフェクター」 (右)リニューアル後の「コアエフェクター」

お客さまのよろこびの声が、何よりの原動力となる

お客さまから届いた手紙
お客さまから届いたよろこびのお手紙

─お客さまからよろこびの声が届くと、貢献できたと実感できますよね。

小田:そうですね。わざわざ電話でお礼を伝えてくださる方もいて、それも励みになっています。また、日ごろからオペレーターや店舗スタッフに対してお手紙をいただくことも多く、本当に素敵なお客さまに恵まれていると実感しています。

渡辺:キリンでもお客さまと担当者の心温まる交流が見られます。以前、奥さまの出産に立ち会われた方が「生茶のペットボトルを渡したところ、握りやすかったのか、出産が終わるまでずっと生茶のボトルを握りしめていた」とSNSに投稿してくださいました。それを容器の開発担当者に伝えたところ、「自分の言葉でお礼をしたい」と申し出があり、その言葉をお客さまにお伝えしました。人と人とのつながりが感じられて、とても温かい気持ちになりましたね。

話をする渡辺

渡辺:また、『キリン 午後の紅茶』や『キリン一番搾り生ビール』など、歴史の長いブランドについては、「母がよく飲んでいた紅茶を今は私が飲んでいます」「父が好きだったビールが今は僕の晩酌相手です」といった声を多くいただきます。世代を越えて親しまれていることを実感でき、それが私たちの支えになっています。きっとファンケルも同じような経験をお持ちですよね。

小田:そうですね。2020年にファンケルが40周年を迎えた際、お客さまから「ファンケルとのつながり」をテーマにエピソードを募集しました。想像を超える数のエピソードが寄せられ、なかには「三世代で愛用しています」といった声も多くいただきました。

▼ファンケル40周年記念スペシャルサイトでエピソードを紹介しています

小田:最終的には、エピソードを冊子にまとめました。それらを読み返すうちに、私たちがお客さまのことを想って取り組んできたように、お客さまも私たちのことを深く想ってくださっていたことに気付かされました。
あらためて、これまでの取り組みが間違っていなかったんだと実感しましたね。

「絆エピソード40」の表紙
お客さまから寄せられたエピソードをまとめた「絆エピソード40」

小田:ちょうどコロナ禍の時期だったので、お寄せいただいたエピソードには本当に勇気づけられましたし、社内も活性化しました。今でもこの本を読むと、温かい気持ちになって涙が溢れます。

「絆エピソード40」を読む渡辺の手元
「絆エピソード40」には、受賞したエピソードが掲載されている

お互いの知見を連携して、新たな価値を創造したい

話をする小田と渡辺

─今後、両社が協力し合うことで生まれるシナジーや期待することを教えてください。

小田:お客様対応に関して、少しずつお互いの情報連携を進めています。直近では、AIの活用などがテーマに挙がりました。今後は窓口で使用しているお客様対応用ツールの強化やオペレーション面など、両社のいいところを連携したいと考えています。

渡辺:これからは、ファンケルの知見も取り入れながら、お客さまの声に寄り添うことで、お客さまとのよりよい未来を一緒につくっていきたいです。「ファンケルの取り組みを私たちも実践していきましょう」と、社内を活性化できるといいですよね。

お客さまに「よかったな」と感じていただけることが、私たちの存在価値だと考えているので、共通点の多いファンケルの皆さんと一緒にその価値を高めたいと思います。

小田:窓口や店舗は、お客さま一人ひとりの声に直接耳を傾けることのできる、唯一無二の場所です。デジタル化が進むなかで、お客さまの顔が見える場や直接会話できる場が少なくなっていくかもしれませんが、お互いの知見を活かしながら、その質を高めていけるといいですよね。これからも、この貴重な接点を大切にしていくことで、お客さまの暮らしを一緒にサポートしていきましょう。

文:高野瞳
写真:飯本貴子
編集:RIDE Inc.

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