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農家と一体になっておいしいビールを。キリンビール仙台工場とホップ生産者の歩み

日本随一の日本産ホップ生産地(栽培面積全国一位)として知られる岩手県遠野市。その歩みは、今から57年前にキリンビールと共にスタートしました。

ビールの消費量が右肩上がりだった1960年代、キリンビールは良質な日本産ホップを調達するため遠野で契約栽培を開始。生産拡大や品質向上を目指し、地域農家と二人三脚でホップ栽培に取り組んできたという歴史があります。

2004年には、遠野産のホップをふんだんに使用した『一番搾り とれたてホップ生ビール』が発売され、そのフレッシュな香りがビールファンを魅了しました。今ではすっかり秋の定番商品となっており、今年も11月4日から全国で販売が開始されます。

長年に渡って良質なホップを作り続けてきた遠野のホップ農家さんと、それを使って美味しいビールを造ってきた仙台工場。

両者の歩んできた道から持続可能な生産体制を考えていくために、遠野ホップ農業協同組合の組合長である菊池一勇さんと、キリンビール仙台工場の工場長・荒川辰也にお話を伺いました。

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【プロフィール】菊池一勇
昭和19年遠野市生まれ。昭和50年からホップ生産に携わり品質向上、生産者の技術向上に取り組むとともに遠野市のホップ産業の活性化に努める。現在は、新規就農者を積極的に受け入れ、ホップ一大産地の維持に向けた取り組みを実行している。令和2年4月より「遠野ホップ農業協同組合」代表理事組合長に就任。

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【プロフィール】荒川辰也
1990年キリンビール株式会社入社。研究開発部門、取手、岡山工場でエンジニアリング部門に所属した後、2005年から2010年までタイに駐在し、海外飲料事業に携わる。
その後、包装容器の研究開発や福岡、岡山工場の副工場長を経て、2019年より仙台工場長に着任。

キリンと遠野が共に歩んできたホップ生産、57年の歴史

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―遠野でホップ作りがはじまったのが1963年。長い歴史がある産業ですが、そのなかで「遠野ホップ農業協同組合」は、どんな役割を果たしてきたのでしょうか?

菊池:遠野のホップ作りはキリンビールとの契約栽培としてスタートして、その2年後に現在私が組合長を務めるホップ農協(=遠野ホップ農業協同組合)ができました。そうして、キリンビール、生産者、農協が密接に繋がって栽培してきたというのが、遠野のホップの歴史です。

今は、ホップ農協が生産者の指導、協力、援助なども行いながらホップの生産に取り組んでいます。生産者にとっての拠り所になって、ホップ産業を支えていくことが我々の役割ですね。

荒川:当時はビールの消費がどんどん伸びていた時代で、キリンとしてはビール造りに欠かせないホップの調達は重要な課題でした。東北地方の冷涼な気候はホップ栽培に適した環境だったこともあり、遠野市とお付き合いがはじまりました。

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―ホップ栽培がはじまってから57年の歴史のなかで、品質向上のためにしてきた工夫などがあれば教えてください。

菊池:やはり作付けしているホップ畑の土質や、生産者の技術によって品質に差が出ることはあるんですけど、我々としてはとにかく病気や害虫の被害を減らす努力をしています。適地適期の管理作業によって病気や害虫の被害を避けられれば、自ずと品質はよくなるので。今年のホップは非常にいい出来で、全体の94%が一等品の認定でした。

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―長年の知識や経験の蓄積によって、遠野産ホップの品質は着実に上がっているんですね。実際にビールを造られる側の立場として、荒川工場長もホップの品質向上を感じていらっしゃいますか?

荒川:そうですね。毎年、遠野産のホップを使わせてもらっていますが、本当に品質の高さを実感しています。キリンにも岩手県奥州市江刺にホップ管理センターという施設があり、そこで品種改良の研究をしたり、生産者の方たちと一緒に品質を上げるための話し合いなどを定期的に行っています。

「持続可能なホップ栽培」という共通の課題

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―遠野市は事業者や生産者と協力して「ホップの里からビールの里へ」という構想を掲げていますよね。実際に市と生産者の方々は、どのような関係性でホップ産業に携わっているのでしょうか?

菊池:遠野市は全国有数のホップ産地ということで、行政もホップの生産には非常に力を入れていて、支援していただいています。おかげで、地域おこし協力隊としてホップ栽培に取り組んでいる方も多く、現在までに6人の方がホップ農家として独立しました。

そういう動きは、ホップ農協にとってはもちろん、他の生産者の励みにもなっていますね。ここまで生産者と市の協力体制がしっかりしているというのは、他の産地ではあまり聞きません。

―市にとっても、それだけ重要な産業なんですね。

菊池:そうですね。若い新規就農者が増えている一方で、最近は高齢化による離農者の増加も問題になっています。ホップは蔓(つる)が長く伸びる植物なので、高所作業が多く、どうしても高齢になってくると難しいというのがあるんです。

それと、今最大の課題になっているのは、ホップを乾燥させる加工施設の老朽化です。建てられてからかれこれ40年以上経つ施設なので処理能力が落ち、整備にも手がかかっています。さらに農家が減少し生産者ひとり当たりの負担が増えているのが現状で、生産性を上げようにも上げられないんです。

―施設そのものの高齢化も課題となっているわけですね。

菊池:はい。安定的な生産のためには施設の新設が必要なんですけど、大きな額がかかることですからね。解決策を見つけようと、行政やキリンビールとも日々話し合いを行っています。

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―ホップ農家さんが辞められたり、生産量が減少するというのは、キリンにとっても他人事ではない問題ですよね。

荒川:そうですね。遠野で作られている『IBUKI』という品種は、日本産ホップならではの素晴らしい香りがあります。今、キリンでは「一番搾り とれたてホップ生ビール」や「一番搾り プレミアム」のほか、クラフトビールを中心に使っていますが、多様なビール文化を伝え、いろんな飲み方を提案するにあたって欠かせないホップですので、いかに持続可能な生産を実現していくかというのは我々の課題でもあります。

―生産量が落ちてきているという現状に対して、何か取り組んでいることはありますか?

荒川:2018年に持続可能なホップ栽培を担う農業法人BEER EXPERIENCE株式会社が設立されました。キリンも出資をし、社員派遣も行っています。ホップ栽培の他、BEER EXPERIENCE株式会社と営業部門が連携し、酒販店様や量販企業様などを遠野にお連れして、ホップのよさ・ビールの楽しさを体感いただくビアツーリズム事業も行っています。

今年は工場との連携も実現し、遠野のホップ畑を仙台工場とオンラインで繋いで、ホップ畑も楽しめる「オンラインビール工場見学」を開催しました。

ホップ生産の集大成として造られた『一番搾り とれたてホップ生ビール』

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―キリンと遠野の生産者の方々が取り組んできたホップ栽培における、ひとつの集大成ともいえるのが『一番搾り とれたてホップ生ビール』だと思います。その誕生には、どのような背景があったのでしょうか?

荒川:我々は常に新しいビールの造り方を研究しているのですが、キリンでホップの研究をしていた村上敦司博士が「収穫したばかりのホップを凍結して使ったら、おいしいビールができるんじゃないか?」という仮説を立てて、いろんな試作をしていたんですね。その中で、非常に香りが立った、バランスのいいビールができました。それを商品化したのが『一番搾り とれたてホップ生ビール』です。

『一番搾り とれたてホップ生ビール』は、ホップのフレッシュさを閉じ込めるために、収穫して24時間以内に凍結するという製法が肝になっています。それを実現するためには、収穫から加工、仕込までを最短で行える日本産のホップが欠かせません。

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—菊池さんは、『一番搾り とれたてホップ生ビール』が完成したときのことを覚えてらっしゃいますか?

菊池:もちろん覚えています。私は、かれこれ40年以上ホップを栽培していますが、あのときに驚いたのは、ビンや缶に「岩手県遠野産ホップ」と書かれていたことです。これはすごいことだと思いました。ここまで遠野市をバックアップしてくれるのかと思って、心強かったですね。

―生産者の方々の反応はいかがでしたか?

菊池:みんな喜んでましたよ。今でも毎年『一番搾り とれたてホップ生ビール』が発売されると、離れて暮らしている家族や親戚に送っています。遠野からの贈り物として、すごく喜ばれるんですよ。

荒川:遠野には、「『一番搾り とれたてホップ生ビール』は遠野の地ビールだ」と言ってくださる方もいます。そう言っていただけることが私たちは本当に嬉しくて。ですから、仙台工場としても思い入れのある、大切なビールなんです。

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―今日(取材日当日)は『一番搾り とれたてホップ生ビール』の仕込式ということで、丹精込めて作ったホップを釜に投入されていましたよね。そういう瞬間に立ち会った感想はいかがでしたか?

菊池:この仕込式では、例年遠野市長や工場長、農協の組合長が参加し、ホップの投入をしているのですが、今年4月に組合長に就任した私にとって、はじめての体験だったんです。

私は、ホップを冷凍トラックに積むところに検査員として立ち会っています。ここから、粉砕する加工場まで運ばれるのですが、今年も足掛け7日間で毎日2台のトラックを送り出しました。

自分たちの作って送り出したホップが、こうやってビールになる様子を目の当たりにすると感慨深いですね。

―畑から送り出したものが、加工されて戻ってきて、仙台工場で再会を果たしたということですもんね。

菊池:そういうことになりますね。いつもは送り出した後に再会するのは、ビールになったものですけど、今回はホップとして手に取ることができました。

荒川:今はビールを造る上で、手作業の工程はどんどん減ってきています。ですが、『一番搾り とれたてホップ生ビール』に使う凍結ホップは、今でも人の手で投入しているんですよ。そうすることで、素晴らしいホップの香りが感じられますし、そこで改めてホップ農家さんの想いを感じることができる。生産者の方にちょっと近づけるような気がするんです。

—そうやって、まさにキリンと生産者の方が一体になって作られているのが『一番搾り とれたてホップ生ビール』なんですね。お2人のお話を伺って、今年の発売がますます楽しみになりました。

***

丹精込めて遠野で育て上げた良質なホップを凍結し、それをビールとして造り上げる工場。今となっては地元だけでなく全国の方に愛される存在となった『一番搾り とれたてホップ生ビール』は生産者と工場の想いが詰まった商品です。

そんな日本産ホップを中心とした取り組みは、キリンビール工場だけにとどまらず地域の酒造とも協力しながらさらなる可能性を広げています。

続く後編では、未来につながるホップの取り組みを積極的に行う、仙台工場副工場長と、岩手県で「いわて蔵ビール」を造る、世嬉の一酒造の佐藤代表による対談をお届けします。どうぞお楽しみに。

『一番搾り とれたてホップ生ビール』の誕生ストーリーはマガジン「#日本産ホップを伝う」でも公開しています。

>『一番搾り とれたてホップ生ビール』商品情報はこちら

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文:阿部光平
写真:土田凌



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