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"仕事って楽しいんだ"キリンのインターンシップを通じて感じた、働くことへの価値観の変化

モノづくりの上流から下流までを見てもらうことでキリンビールのファンを増やしたい──。
そんな想いでスタートした、キリンビール仙台工場のインターンシップ。

2022年度のインターンシップでは、『一番搾り とれたてホップ生ビール』が商品になるまでの製造工程やそこに関わる人たち、仙台工場と地域の関わりを体感してもらうプログラムを行いました。

モノづくりのさまざまな側面を見てきた学生たち。このインターンシップで得た気づきや学びを発表する報告会で、ついに最終回を迎えます。

昨年まではキリンビール社員に向けて行っていたプレゼンテーションですが、今年は東北大学に舞台を移し、キリンビール社員に加えて大学でともに学ぶ学生や大学職員の方々の前で発表しました。

“ビールへの印象がガラリと変わった”
“働く人みんなが商品を愛していて、どれだけ情熱があるかを感じた”
“実際に目で見て、触って、五感で感じた体験だったからこそ地域への愛着がわいた”

緊張しながらも、経験したことや感じたことを真っ直ぐに堂々と発表する学生たちの姿は、インターンシップ初日よりもグッと頼もしくなった様子。
あらためて、このインターンシップを通して彼らは何を見て、何を学び、感じたのでしょうか?
インターンシップ報告会の様子をお届けします。

東北大学の学生たち
東北大学連携インターンシップに参加し、プレゼンテーションを行った学生。左から、岡田さん、久東さん、成さん。

東北大学で行ったインターンシップ報告会。学生たちが得た学びとは?

インターンの成果を発表する東北大学生

トップバッターは大学院農学研究科の岡田さん。しっかりと作り込まれた資料をもとに、堂々と発表をスタートしました。

岡田さんは『一番搾り』と『一番搾り とれたてホップ生ビール』のおいしさへのこだわりを、「製造」「CSV」の二つの側面からまとめて説明しました。実際にホップを手で触れて感じた印象を自分の言葉で表現し、「キリンのCSVへのこだわりもまた“おいしさ”につながる」と話します。

「モノづくりだけで終わらず、そのうえで社会的にどう活用できるかを目指しているキリン。細かいところまでこだわりを感じました」。

仙台の街に近い場所に位置するキリンビール仙台工場だからこそ、「地域との関係性」「持続可能」ということがキーワードになっていると感じたといいます。

インターンの成果を発表する東北大学生

締めくくりは、「ビールやモノづくりに対する感覚の変化」について。

「今までは、ビールを飲んでも『ビールの味だな』と思うだけでしたが、製造現場を見たりホップの香りを嗅いだり、ビールについて知ることで楽しむ幅が広がりました。クラフトビールにも関心を持つようになり、ビールのおもしろさを感じています。香りや奥深さなど、ビールの魅力を知ることは、近年の若者のビール離れに対しても有効ではないかと思いました」。

モノづくりについても、裏側を知ることで製品への愛着が持てるようになったと言います。

「これまでは消費者目線でしかなかったけれど、今は製品を見ると、たくさんの人が関わっているんだなと頭に浮かび、愛着が持てるようになりました。今回のインターンで、いろいろな人が連携して一つの製品をつくっていることを知り、製造業にも興味を持てるようになったと同時に、東北ならではの取り組みを知って地域への愛着もわきました。
これは、実際に目で見て、触って、五感で感じた体験だったからこそ。もっと周囲にも発信していけたらと思っています」。

インターンの成果を発表する東北大学生

次に発表したのは、大学1年生の久東さん。まだビールが飲めない未成年の発表に、来場者も関心を寄せていました。
久東さんがインターンシップに参加したのは、「インターンシップを通して幅広い業界を見たい」と考えていたとき、先生の勧めで応募したのがきっかけでした。

「参加前はビールに対して、二日酔いや病気の原因になるなど健康に悪影響を与えるものだという印象がありました。いいイメージを耳にすることもなかったので、大人になっても飲まないだろうなと」。

そんな印象が、インターンシップを経て大きく変化したそうです。

インターンの成果を発表する東北大学生

そのきっかけとなったのが、インターンシップ二日目。岩手県遠野市を訪れたときのことでした。

「初めてホップ畑で嗅いだホップの香りがフルーティで華やかで、驚きました。また、地域でビール事業を盛り上げている方々や、マーケティングを担当している方のお話を聞けたのも貴重な体験でした。
お客さまを大事にしているだけでなく、産地も大切にしている姿勢が伝わってきて、そこがキリンの魅力だと思いました。ビールには造り手や農家の方々、支える人たちの想いも詰まっているんだと感じ、ビールへの印象がガラリと変わりました」。

インターンの成果を発表する東北大学生

最後に発表したのは成恩恵さん。学部の先生を通して知ったキリンビール仙台工場のインターンシップに、普段から飲んでいた『一番搾り』のすべてを感じられる内容に魅力を感じて応募しました。

そんな成さんの心を打ったのが、初日にキリンビール仙台工場の工場長から聞いた「キリンの商品を好きになってもらう自信がある」という言葉でした。

「働く人みんなが商品を愛していて、どれだけ情熱があるかを感じました。工場見学でもそれを感じていましたが、工場長のこの言葉がとても印象的でした」。

インターンの成果を発表する東北大学生

「この言葉を聞いて、キリンビールのモノづくりに触れ、『一番搾り』がおいしくないわけがないと感じました。自信を持ってつくられた商品は、おいしいに決まっている。また、ホップ農家の課題などを知ることで、ホップが他人ごとではなく身近に感じられるようになりました。今では、自分にとって守るべき、守りたいものになりました」。

香水業界を志していた成さんですが、ホップの香りを嗅いだ経験から飲料にも興味がわいたと言います。

「香水業界だけに絞る必要はないかもしれないと思いました。飲料にもさまざまな香りがあることに気づいていなかった。進路についても選択肢が増えました」。

最後に成さんが語った言葉が、「Do what you can with what you have where you are.」

“自分の立場で、自分にできることを頑張る人は素晴らしい”という意味です。農家の方、営業の方、それぞれが自分の立場で頑張っている姿を見ることができました。私は大学でチアリーダーをしていて、頑張っている人たちを応援しています。頑張っている人たちはかっこいい。私も自分の立場で自分がやれることを頑張っていきたい。頑張っている人は輝いています」。

プレゼンテーションを聞いて、来場者が感じたこと

質問をする学生

今回のプレゼンテーション発表会には、インターンに参加した学生の友人たちも来場していました。彼らは発表を聞いて、どのように感じたのでしょうか?

「今までビールは好きではなかったけれど、製造の裏側や日本産ホップへの取り組みを知って、ビールに対する印象が変わりました」。

「あまりいいイメージがなかったビールにも親しみを感じるようになったという話を聞いて、実際に体験を通して知ることの大切さを実感しました」。

そう感想を述べる友人学生たちにも、キリンやビールへの印象が変わったようです。

東北大学の職員

日頃から学生たちを近くで見守る東北大学の職員の方々からも、さまざまな感想が寄せられました。

「インターンを通して、地域や社会の課題、そしてその先にいる働く人たちの姿を見てきたんだと感じました。今後もその経験を活かしてほしいと思います」。

「働くことに対して不安を抱いている学生が多いなか、キリンの方々が社会に出るうえでいいロールモデルを見せてくれたのだなと、学生の発表を通じて感じられました」。

働くことの価値を見出すきっかけになったと思います。自分が大事にしたいことについても、漠然としていたものが明確になったのではないでしょうか」。

キリンビール社員

また、キリンビールの社員からも次のような感想がありました。

「工場見学でも、人がどのように携わっているかをもっと伝えていきたいと感じました。原料のよさや農家の想いはもちろん、キリンビールの想いや、造り手の情熱もさらに伝えていきたいと思います」。

それぞれの立場で、感じることや視点はさまざま。インターン生だけでなく、発表を聞く側にも多くの学びと気づきがある時間となりました。

プレゼンテーションを終えて。あらためて振り返る、自身の成長

東北大学の学生

発表を終え、緊張の糸が解けた学生たちのほっとした笑顔が見られました。インターンシップと報告会を終え、あらためて感じたことについて聞きました。

─プレゼンテーションでは、どんなことを意識しましたか?

岡田:意識したのは、参加していない人たちにどう伝えるかということです。自分がキリンビール側だったら、と仮定してアピールしたいことを考え、資料作りと発表に臨みました。

久東:こういった長い発表は初めてでしたが、無事に終えてホッとしています。未成年は僕だけだったので、ビールの味はまだわからないけれど、参加前の印象や体験を通して感じた変化を未成年ならではの視点で伝えることを意識しました。

成:私は、学生の視点で気持ちをまとめました。インターンシップに参加したからこそ味わえた経験を、素直な言葉で伝えたかったんです。まだまだ知らないことが多い学生だからこそ、新しい情報を得たときに起きる心境の変化はとても貴重。その貴重な経験を伝えたいと思いました。

東北大学の学生

─インターンシップを経て、働くことに対しての価値観に変化はありましたか?

成:仕事はお金を稼ぐ手段であるけれど、自分が好きなことや情熱を持てるものを通してお金を稼げるのがいいなと思いました。
以前は「やりたいことがあっても、将来は無理せず、このくらいで許容して生きていくんじゃないか」と考えていたんです。でも今は、自分が目標にしていることを明確にして頑張っていきたいと思うようになりました。

岡田:仕事が楽しめることって素敵だなと思いました。私は接客業のアルバイトをしていますが、今は勉強が中心で、アルバイトにはあまり重点を置いていないので、それが楽しいか楽しくないかは大きな問題ではありません。
でも、将来、仕事が人生の中心になったときにそれが楽しいかどうかは、人生が楽しいかどうかに大きくつながると思います。生き生きと働いている方々を見て、将来に希望を持てたし、自分もそうなりたいと前向きになれました。

久東:働くことや仕事に対しては、もともとどうしても負のイメージがあったけど、生き生きと働いている姿を見ると、「仕事って楽しいんだな」と勇気づけられました。

東北大学の学生

─これからのインターンシップに求めることはありますか?

岡田:とてもいい経験だったので、たくさんの人に参加してほしいと思います。募集人数を増やしてほしいという気持ちもありますが、大人数になると学生同士で密接に意見交換ができない可能性もあるので、今の人数がやりやすいとも思っています。香りや手触りは言葉だけでは伝えきれないので、もっと多くの人に知ってほしいと思いました。

久東:今回は『一番搾り とれたてホップ生ビール』がメインだったけど、ほかの商品はどんな風に作られているんだろうと興味がわきました。ほかの商品の背景について知る機会があれば、さらにキリンのファンが増えるのではないかなと思います。

成:モノづくりの上流から下流まで、ほぼすべての工程を見ることができたのはよかったです。個人的には、『一番搾り』や『一番搾り とれたてホップ生ビール』の飲み比べ会があったら、もっと楽しかっただろうなと思います(笑)。

学生たちの成長や学びから見えた、これからのインターンシップの形

最後に、学生と近い距離で見守っていた東北大学の講師、門間由記子先生と、キリンビール仙台工場で総務広報を担当している當房貴久に話を聞きました。

学生のプレゼンテーションを聞いて感じたこと、学生の成長の様子、そしてこれまでの振り返りを通じて、これからのインターンシップについても考えていきます。

東北大学講師の門間

【プロフィール】門間 由記子
東北大学 高度教養教育・学生支援機構講師
専門は地域社会学・労働社会学。キャリア支援センターの教員として全学教育科目や個別相談を担当。産学連携によるPBLやインターンシッププログラムの企画・実施を通じ、学生の仕事に対する前向き意識の醸成を目指す。政府機関のインターンシップ関係委員を歴任。

キリンビール仙台工場の當房

【プロフィール】當房 貴久
2016年キリン(現:キリンホールディングス)入社。3年間、キリンビール名古屋工場にて、主に働き方改革や組合窓口などの人事労務を担当。2019年よりキリンホールディングス経理部に異動し、工場原価などを担当。2020年春よりキリンビール仙台工場にて、工場での原価管理や採用などの人事労務を幅広く担当し、大学と連携したインターンも企画・実施している。

東北大学講師の門間

─学生のプレゼンテーションを聞いていかがでしたか?

當房貴久(以下、當房):もともと「キリンのモノづくりのこだわりを知っていただきたい」という想いで始めたインターン企画で、「キリンのファンになってほしい」というのが最終的なゴールでした。

学生のみなさんから自然に出た言葉で、「キリンのファンになった」、「モノづくりのこだわりを知れた」、さらにはご自身のキャリアにおいても「将来の選択肢の幅が広がった」という声を聞けたことは、私もうれしかったです。大学生ならではのニュートラルで素直な言葉が印象的でした。

門間由記子(以下、門間):例年、インターンを終えると「楽しく働く大人を見た」という感想が多く、働くことが楽しいと気づいて帰ってくる学生たちを見て、キリンさんのおかげだと思っています。
それに気づいて初めて、働くことや自分のこれからの学習に対して前向きになれるんですよね。そして、その経験を誰かに伝えることで、より理解も深まります。

インターンシップで、いろいろな立場や役職で活躍する大人と触れ合うことで、大人との関わり方も少しずつわかるようになっていきます。これも経験しないとわからないこと。楽しく働くために、自分の興味があることを理解できたというのは、何より大きな収穫だったと思います。

キリンビール仙台工場の當房

─これまでのインターンシップを振り返ってどう感じていますか?

當房:仙台工場は、工場と統括本部、そしてビールの原料であるホップの産地が近いことが特徴です。それを活かして、製造からお客さまに届けるまでを見てもらうインターンシップを、これまでも企画してきました。

今回は、マーケティング部にも参加してもらい、さらに上流を見ていただくことができたことで、「すべての工程を見ることができた」という学生の声があったのはとてもうれしいです。

個人的なことですが、私も学生時代に地元企業に対して、大学と企業が連携した取り組みをしてほしいと働きかける活動をしていたんです。
会社員になったらいつか逆の立場として大学に入り込んでいきたいという想いを持っていたので、それが実現できたことに感謝しています。東北大学の先生方には大変感謝しています。

門間:通常、インターンシップは人事だけで完結することや、オンラインでの実施が多く、キリンのように複数の部署で現場を見せていただける機会は非常に少ないです。
今回、生徒たちの感想にも「五感で感じる」という言葉がありましたが、リアルに体験することで感情までも動くようなインターンシップは、とてもありがたいことですね。

さまざまな部署を見たことで、農学部の学生がマーケティングに興味を持ったり、製造現場に関わりたいという学生がいたりと、幅広い視点を得られる機会になったと思います。
また、友人や職員の前で発表したことで、人に働きかけると成果が生まれることを知ったり、自分が感じたことを人に伝えたいという思いを持ったりすることも、非常に大きな成長だと感じています。

東北大学講師の門間

─企業、大学、地域との関わり方も含めて、これからのインターンシップの在り方や期待することを教えてください。

當房:仙台工場としては、地域に愛される工場となり、そのなかでお客さまとともに繁栄していきたいという想いを持っています。しかし、若者の認知が低いといった課題もあります。

だからこそ、工場や地域、大学が連携したインターンシップを通じて、よりよい関係が築ければと考えています。仙台は「学都」と言われるように学生が非常に多い都市であり、だからこそ拡大の余地はあるはず。もっと広げていきたいと思っています。

門間:こうした機会は大学だけでは作れません。企業や地域の協力があってこそ実現できる。学生も仙台に来て学んでいますが、なかなか地域と接点を持つ機会がないなかで、この地域、この大学だからこそ学べることは貴重です。

このインターンシップは、その一つではないかと思います。ここにいるからこそ得られる視点、つまり東北との関わりや復興地域との関わりは、ここでしか学べないことだと思います。
キリンさんが地域とのネットワークを持っているからこそできることです。学生が今しか学べないことを学べる機会が増えることを、今後も期待しています。

集合写真

今回のインターンを通じて、企業・ビール・仕事への印象が変わった参加学生たち。同時に、自分自身への大きな成長や変化にもつながったのではないでしょうか。
これからの人生で、この経験を思い出しながら、活躍していってほしいと願っています。

来年も実施予定のキリンビール仙台工場インターンシップ。どんな内容になるのか、乞うご期待ください。

文:高野瞳
写真:上野裕二
編集:RIDE inc.

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